開運童子のブログ -24ページ目

紫陽花の雨傘

青年は夕立になって仕方がなく雨宿りする事にした。傘を持たずに歩いていると突然の雨に立ちすくんでいた青年あるが偶然にも人家の軒先があった。隠れることにした青年が夕立が過ぎるのを待っていると梅雨には珍しい夕立は自然の誇りを少しだけ洗い流して小道を綺麗にしてくれていた。青年は雨が弱くなってくるのを知って周囲を見回して歩き出すタイミングを考えていた。

「急に雨が降ったけれどこの大きな軒先があったので助かった。」

青年は言った。

「この家には誰が住んでいるのだろうか?」

青年は言いながら人家の様子を伺ったが今は人の気配は感じられなかった。

「雨が止みそうだ。」

青年はホッとしたように言うと少しだけ微笑んだのである。やがて雨が止んで周囲の空気が透き通ったように塵や誇りを浄化してくれると青年は歩き出そうと目を向けた時に近くで紫陽花が咲いているのを見つけたのであった。

「こんなところに紫陽花が咲いている。」

青年は言った。

「小さいけどしっかり地に根をつけている。」

青年は感心したように言うと

「いつまでも綺麗に咲いてください。」

青年は紫陽花に向かって言った。青年が歩き出してその場から帰って行くのを紫陽花の花びらは見ているようであった。

 何日か経って青年は同じ場所を歩いているとまた夕立になったのである。

「急に雨が降ってきた。」

青年は言ってから雨宿りをする場所を捜して先日と同じ軒先で時間を過ごす事にした。強く降る雨が時間の経過とともに少しずつ弱くなっていった。やがて青年は紫陽花が咲いていたのを思い出してその方角を見ると紫陽花は今日も綺麗に咲いていた。

「元気そうに咲いていてくれてよかったよ。」

青年は微笑みながら言った。

「また来るからね。」

青年は言うと足早に歩いていったのであった。

 更に何日か過ぎて青年は同じ場所で夕立にあったのである。

「今まで晴れていたのに急に雨が降ってきた。」

青年は言うと小走りで軒先に入っていた。

「この場所を通ると必ず夕立になるのが不思議だな。」

青年は言うと不思議に思いながら軒先で雨が止むのを待っていた。今日はなかなか雨が止みそうになく長い時間が経っても雨は強く降り続いていた。

「仕方がないから走っていこうか?」

青年が言った時に傘を差した着物姿の婦人が青年の傍を通りかかったのである。

「雨が止みそうにありませんね。」

その婦人は青年に言った。

「先日の夕立はすぐに止んだのですが今日は止みそうにありませんね。」

青年は言った。

「よかったら私の傘に入りませんか?」

婦人が言うと青年は落着いた大人の女性が微笑みかけてくれるのを青年は素直に喜んで心は弾んでいた。

「ご迷惑ではありませんか?」

青年は照れ婦人に言うと

「どうぞ構いませんよ。」

婦人が微笑みながら言うと青年は素直に微笑んで婦人と視線を合わせたのである。

「ありがとうございます。」

青年が言うと

「どうぞ。」

婦人も微笑んで言った。

「その前にいいですか?」

青年は目線を紫陽花に向けてから言うと婦人も目線を紫陽花をやさしく見たのであった。

「とても素敵な紫陽花ですね。」

婦人が優しく微笑んで言うと

「小さいけれどひっそりと咲いていますね。」

青年は言うすぐにと婦人の傘に入っていた。ふたりが歩き出すのを紫陽花は優しく見守っているようであった。

 その日から数日に一度のペースで青年がその場所を通ると必ず夕立になるのであった。そして約束したように婦人が傘を持って現れて軒先で立っている青年を傘に入れてふたりは散歩を楽しんでいた。紫陽花はいつも鮮やかな花びらを青年に見せてくれて婦人はいつも青年に優しく微笑んでくれた。そんな癒しのひと時が青年の心を少しだけ成長させていた。まるで日課のように青年は夕立が来るのを楽しみにして婦人との楽しい時間を過ごしたのであった。季節が終わろうとするある日も青年は婦人と散歩を楽しんでいると

「今日はあなたにお別れを言いに来たのよ。」

婦人が青年に言うと青年は驚いて婦人の顔と目を合わると悲しい気持ちになっていた。

「どうしてなのですか?」

青年が言うと

「今は言えないわ。」

婦人はそれだけ言うと口を閉ざしたのである。

「何かあったのですか?」

青年が言うと

「何もないわよ。」

婦人は落着いた口調で言った。

「時間が経ってひとつの季節が過ぎたとしか言えないわ。」

婦人が言うと青年は婦人を見ただけでその先の言葉が浮かばなかった。婦人が少しだけ寂しそうな表情なのを青年は見逃さなかった。傍でいつも綺麗に咲いていた紫陽花も元気がなさそうに咲いていたのであった。

 次に青年がその場所を通った時には不思議な事に夕立が来なかったのである。青年は不思議に思ってしばらく立ち止まっていたが雨は降らなかった。軒先に立って待っていても雨は降らないのが青年には寂しかたのである。

「今日は雨が降らないとは不思議だな。」

青年は言うと傍に咲いていている紫陽花に目線を移していた。紫陽花の季節は終わったようであり枯れた紫陽花の花でひっそりと影を落としていた。青年はその時になってある事に気づいたのであった。

「今更気づいても遅いかな?」

青年が言うと婦人の声がかすかに青年の耳に聞こえてきたのであった。

「だから私が言ったでしょう。」

婦人は優しく言った。

「会えなくなるとはこういう意味だったのですか?」

青年が言うと

「もう別れの季節なのよ。」

婦人が言うと青年にはその婦人の姿が見えたような気がしたのであった。


雨のあとに虹・Part2 その29

「久しぶりだね。」

矢島の行きつけの料亭で俊之は言った。純子はバイトで来られないために俊之と久美子に育子と矢島が来ていたのである。

「2週間ぶりだけれど長く感じますよ。」

育子が言った。

「俺は育子さんに会うのは空港以来だね。」

矢島が言った。

「あの純情ドラマ以来ですね。」

育子が冗談交じりで言うと

「育子さんもやめてくださいよ。」

久美子は照れた声で言った。

「あれは俺の目から見ても良かったよと思うよ。」

矢島は言った。

「矢島まで言うから意識してしまうよ。」

俊之が言うと

「いいじゃないですか。」

育子は言った。料亭にアルコールは欠かせないがたくさん飲む人はいなかった。矢島も以前と違って理を楽しんでいて最近では飲む量は減ってきていたのであった。

「みんなにはお世話になっていて本当にありがたいよ。」

俊之が言うと

「高村さんはサッカー選手に久美ちゃんを取られたらダメよ。」

育子は言った。

「サッカー選手とは誰の事?」

俊之が言うと

「三田人志選手に久美ちゃんが口説かれそうになっていたわよ。」

育子が冗談交じりに言った。

「そんな奴は俺が投げ飛ばしてやるよ。」

矢島が言うと

「育子さんがすでに投げ飛ばしましたよ。」

久美子が笑いながら言ったのである。

「明日になればお金が出来ると思います。」

泰子は携帯で涌本に言った。

「それは助かるよ。」

涌本は感謝の声で言った。

「それは構いません。」

泰子が言うと

「感謝しているよ。」

湧本はい言った。

「お金を何処に持っていけばいいですか?」

泰子が言うと

「夕方に湾外沿いの倉庫に来てくれないか?」

涌本はあ言った。

「いつか連れて行ってくれた倉庫の事ですか?」

泰子が言うと

「ひとりで来られるかい?」

涌本は言った。

「解りました。」

泰子は言って電話を切ると

「やめておいた方がいいよ。」

横で聞いていた関口は言った。

「私がやっと掴みかけた幸福だから仕方がないのよ。」

泰子は関口に言った。

「銀行員だって言う事が嘘だとばれたら意味がないよ。」

関口は言った。

「今さら元レディースでしたって言えないからね。」

泰子が言うと

「涌本というファンドマネージャーはどんな男なのか知っているの?」

関口は泰子に言った。

「湧本さんはとても優秀な人よ。」

泰子は沈んだ表情言った。

雨のあとに虹・Part2 その28

「おい!」

矢島が言って手を上げると俊之は矢島の方に歩いて来た。

「少し遅刻したようだね。」

俊之は時計を見て言った。

「少しくいらい構わないぞ。」

矢島は言った。外はまだ明るいが矢島にしては珍しく若者が寄るようなおしゃれなショットバーに俊之を呼び出していたのであった。

「こういう店も来るのもたまにはいいね。」

俊之が言うと

「軽いカクテルでも飲むか?」

矢島は言った。

「たまには飲んでみるよ。」

俊之は言った。

「お前は情報堂に知合いはいるか?」

矢島は俊之に言った。

「ご無沙汰しています。」

久美子が言うと

「久美ちゃんとは久しぶりね。」

育子は言った。

「離せよ!」

三田は声にならない声でやっと言った。

「今度来る時には世界一になってから来なさいよ。」

育子は言うとすぐに三田の手首を離した。

「合宿はもう終わったのですか?」

久美子が言うと

「1次合宿は終わったよ。」

育子は言った。

「純子は正式に育子さんに会うのは初めてよね?」

久美子が言うと

「でもテレビでは拝見しています。」

純子は言った。三田は青い顔をして会話を聞いているだけであった。

「高村さんと食事をしようと思ってね。」

育子は言った。

「それはいいですね。」

久美子が言うと

「決まりでいいね。」

育子は言った。

「俊さんに電話してみます。」

久美子が言った時に三田が育子に殴りかかろうとしていた。純子は久美子の横で信じられない光景を見る事になった。三田が育子に投げられて大きく宙を舞って地面に叩きつけられたのであった。

「ぼくは情報堂に知合いはいないよ。」

俊之は言った。

「それはある意味で幸運だな。」

矢島はカクテルを口につけて言った。

「何かあったのか?」

俊之が言うと

「お前の秘書さんの件で気になったからな。」

矢島は言った。

「川嶋さんの事で何かあったのか?」

俊之が言うと

「情報堂の社員に付きまとわれているみたいだぞ。」

矢島は言った。

「情報堂の社員にかい?」

俊之は言うと珍しくカクテルを口に持っていった。

「お前が力を示す時が来たようだな?」

矢島は言った。

「春香さんですか?」

走るタクシーの中で英国紳士は電話の向こうにいる春香に言った。

「ケンじゃないの?」

春香は驚いて言った。

「春香さんとはお久しぶりです。」

英国紳士のケン・ダッドリーは言った。

「急に電話をくれるとは珍しいわね?」

春香は驚いて言った。

「メディカルエレクトロニック社が日本にも支社を出す事になってね。」

ケンは言った。

「やっと日本に来たわね。」

春香は懐かしそうに言ってケンの顔を思い出していた。

「正式には10月から赴任するけど今回は前準備だよ。」

ケンが言うと

「会える時間はあるの?」

春香は言った。

「もちろん会える時間をつくるよ。」

ケンは言った。

「高村さんも元気にしているわよ。」

春香が言うと

「ミスター高村にはどうしても会っておきたいと思っているよ。」

ケンは言ったのである。