開運童子のブログ -111ページ目

雨のあとni虹 その29

俊之は昼をすませて一区切りをつけると矢島建設を出た。矢島や早苗とかるく今後の大まかな予定を確認したのだ。今は全体を把握して数字を頭に入れるだけである。そのあとに矢島の経営戦略を聞いて俊之が的確なアドバイスをしょうとしていた。それに管理職のように社員たちとのコミュニケーションを円滑にする役割も俊之にはあった。今後は多少の雑務もこなさなければいけない。俊之は考えをめぐらしながら大通りから裏道に曲がった。

「翔ちゃん。」

俊之が人の気配を感じて言った。

「はい。」

翔太は言って俊之の背後からすっと現れた。

「いつもすまないね。」

俊之が言うと。

「さすがよく気付きましたね。」

翔太が言った。

「何の事だい?」

俊之が言うと

「昨夜も僕たちが見張っていた事を気付いていたでしょ?」
翔太が言った。

「そうだったの?」

翔太に背を向けたまま俊之はとぼけたように言ったが翔太はそれは無視して

「途中経過の報告です。」

と言った。

「うん。」

俊之が言って翔太の方を向いた。

「12年前の真相にもう少しで近づきそうですよ。」

翔太が言うと

「進展はあったのかい?」

俊之は言った。

「この件に三友商事の榊原和馬さんや経営コンサルタントの斉藤弘子が絡んでしますね。」

翔太が言った。

俊之は残念そうな顔をして

「やはりそうだったか。」

とだけ小さく言った。

「それと貴志義孝と田所健二という評判の良くない社員も関係しているようですが詳細はまだ解りません。」

翔太が言った。

「いつもすまないね。」

俊之が言うと翔太は

「いいえ。」

とだけ短く言った。

「ありがとう。」

俊之が言い終わらないうちに翔太の気配が消えていた。 28歳で自称探偵と名乗る笹川翔太も謎が多い男だ。今のところは俊之の影になって力を発揮してくれている。忍者のように現れる翔太は何者なのだろうと俊之は考える時もあった。昨夜だけではなくボランティアの時もそうであった。俊之の行く先に突然現れて協力をしてくれる翔太が今の俊之にはありがたかった。そんなことを考えながら大通りに出た俊之は足早に駅へ急いだ。


「ちょっと来てくれ!」

矢島は田崎に言った。

「はい!」

元気よく田崎が言った。

「お前は高村とは気が合うらしいな?」

矢島が言った。

「高村さんは良い人ですね。」

田崎が言った。

「それなら高村のサポート役をやってくれないか?」

矢島が言う。

「僕でいいのですか?」

田崎が言うと

「頼むよ。」

矢島が言うと

「勿論ですよ。」

田崎が言った。

「手当てをつけるからな。」

と矢島が言うと

「それは嬉しいですね。」

体育会系の田崎は元気よく言った。

雨のあとni虹 その28

久美子は講義を受けていた。もう少しで冬休みだからきちんと講義を受けないと単位が取れないのだ。決して勉強が嫌いなわけではないが気分が乗らない時もある。つい気がそれてしまいがちであるがなんとか集中力を維持していた。

「どうしたの?」

純子が横から言った。

「何でもないよ。」

久美子が言った。

「ここは大事なところですよ。」

教授の大川文弘の声が響いた

「この講義は難しいね。」

純子が小声で言うと

「静かにしないとダメよ。」

久美子も小声で言った。

「ここは試験に出ますよ。」

大川教授は大きな声で言った。

「それでですね。」

田崎が言った。仕事中であるが多少の小休止ならかまわないだろうと俊之も少しだけ雑談に参加したのだ。

「それでどうしたの?」

俊之が言うと

「見事に失恋しましたよ。」

田崎が言った。

「それは残念だったね。」

俊之が言うと

「仕方がないですよ。」

田崎が言った。

「どうして?」

俊之が言うと

「ライバルは金持ちのイケメンですよ。」

田崎が言った。

「それはイケメンの方が良いわよ。」

みどりが横から会話に入って言った。

「やはりそういうものかな?」

俊之が言った。

会話が一区切りしたタイミングで

「お疲れ様。」

と言って早苗が入ってきた。

「おはようございます。」

みんな声をそろえて挨拶をした。

「おはようございます。」

俊之も言った。

「高村さん。」

早苗は言った。

「ご無沙汰しています。」

俊之が早苗を見た。

「今日のお昼はこれでも食べてね。」

早苗が言った。

「それはありがとうございます。」

俊之が言うと。

「みなさんにもありますからね。」

早苗が言った。

「いつもありがとうございます。」

田崎が素早く言った。

「みんなで食べるのよ。」

早苗は言うとみどりも

「ありがとうございます。」

と言った。

「高村さん!」

早苗は俊之と視線を合わせた。

「何か?」

と俊之が言うのを待って

「あとで社長室まで来てください。」

と早苗は俊之に言った。

「今日は堀川さんお休みだったわね?」

ひとみは小百合に言った。

「今日は大学だそうですよ。」

小百合が言うと

「そうだったわね」

ひとみは言った。小百合に言われて思い出したのである。

「明日は出勤の予定ですよ。」

小百合が言うと。

「ありがとう。」

と言ったひとみはフロアーから外に出て人気がないのを確認してから電話をかけた。相手が出たようである。

「今日は休みだから明日状況を聞いてみます。」

ひとみはそれだけ言うとすばやく電話を切った。

雨のあとni虹 その27

「明日は高村が出社するから昼食の用意を頼むぞ。」

矢島は早苗に言った。

「高村さんは何が好きかしら?」

早苗が言った。

「あいつは何でも食べるさ」

矢島が言うと

「好き嫌いがないのは好いことよ。」

早苗が言った

「ちょっと待て!」

矢島が言うと

「どうしたの?」

早苗が言いながら矢島を見た。

「高村は納豆がダメだったな。」

矢島が言った。

 久しぶりに夜の公園を歩く俊之は横に久美子がいるのが自然に思っている自分が不思議だった。既に何回も会って散歩しているようである。当たり前だが今夜が初めてである。俊之も久美子も打解けていたのは事実だった。久美子が住むマンションの前で

「今日は久しぶりに楽しい時間を過ごせたよ。」

と俊之が言った。

「私も楽しかったです。」

久美子が言った。

「ずっと前から久美ちゃんと出会ってような気がしたよ。」

俊之は正直な気持ちを言った。

「私もです。」

久美子が言った。

「また近いうちに会おうよ。」

俊之が言った。

「今度はもっと俊さんの事を教えてください。」

久美子も積極的な態度で言った。

「楽しいエピソードそんなに無いけどね。」

俊之が言うと

「何でも良いです。」

久美子は言った。

「そうかい。」

俊之が言うと

「いろいろと聞かせてください。」

久美子が言った。俊之は久美子が部屋へ入り明かりが点くのを確認するまで待った。久美子の影が窓越しから見えたのを確認してから俊之は歩き出した。 少し離れた物陰でところでいつの間にか翔太ともうひとりの若い男がふたりを見ていた。

「高村さんもここで帰ってはだめですよね。」

若い男が言うと

「そこが高村さんのまじめところでもありじれったいところであるわけだ。」

翔太が言った。

「そんなものですか?」

男は言った。

「関口もそのうちに解るよ。」

翔太が言うと

「なるほど。」

と関口久夫は言った。

「今日も無事終了だ。」

翔太が言うと

「ストーカー野郎が出てこなくて良かったですね。」

関口が言った。