川のほとりに立つ者は

寺地はるな 双葉社 2022年10月




カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。 松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。 「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。



カフェの店長清瀬は、店員の品川さんの対応に困っていた。


そんな時、恋人の松木が、知り合いとけんかして階段から落ち、意識が戻らない。

同じく怪我をした知り合いの身内の人と話したり、松木のアパートに行くうちに、松木の知らなかったことがわかってくる。


さまざまな人がいる。


障害があることがわかっていたら、接し方が違っただろうか。

障害者としての接し方を相手は望んでいたのか。

むつかしい問題だ。


目が悪ければメガネをかける。

ケガをしていれば、杖を使う。

字がうまく書けない人は、書けるように努力が必要なのか?


恵まれてない天音さんは、生きるのに必死だったが、これから、どのするのだろう。


さまざまな人がいる。

手を差し伸べても、振り払う人もいる。

どのように接していけばいいのか。


いろいろ考えさせられる作品だった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


 


監督 鈴木雅之

出演

窪田正孝 本田翼 広瀬アリス 浜野謙太 丸山智己 矢野聖人 山崎育三郎 ・ 若月佑美 渋谷謙人 ・ 原日出子 ・ 高橋克実 ・ キムラ緑子 八嶋智人 ・ 髙嶋政宏 浅野和之 ・ 和久井映見

72時間——。 それは、人の生死を分ける時間。 甘春総合病院の放射線技師・五十嵐唯織(窪田正孝)は落ち込んでいた。 大好きな甘春杏(本田翼)が、放射線科医としての腕を磨くため、 ワシントン医大へ留学することが決まったからだ。 「72時間を切ってしまいました」 お別れまでのカウントダウンを胸に刻む唯織のことを、 ラジエーションハウスのメンバーは元気付けようとするが、 唯織への秘めた想いを抱える広瀬裕乃(広瀬アリス)だけは、自らの進むべき道について悩んでいた。

そんな中、杏の父親・正一が危篤との連絡が入る。 無医島だった離島に渡り小さな診療所で島民を診てきた正一だが、 杏が父のもとに着いてほどなく「病気ではなく、人を見る医者になりなさい」との言葉を残し息を引き取る。 生前、父が気に掛けていた患者のことが気になり、島に一日残ることにする杏。 そこに大型台風、土砂崩れ、そして未知の感染症が襲いかかる。 遠く離れた地で杏が孤軍奮闘していることを知った唯織は、 大切な仲間を守るため、苦しむ島民を救うため、ある決心をする。 8人の技師たちが選んだ未来とは。 「別れ」の時刻が近づいている―



TVドラマで見ていて、劇場版が放映されたので鑑賞。


いつもの面々にまたあえてうれしい。


広瀬が、若手から、頼れる 技師に成長してた。



杏が行った島で、なぞの感染症。

コロナの記憶と重なって、緊張が走る。

生死をわける72時間の壁。

医師も薬もない島で、病人を助けられるのか?


甘春総合病院の技師たちは、

院長から、止められても、島へ向かう。

仲間を、島民を助けようとする姿がよい。


杏と唯織の今後の関係が気になる~


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

こちら横浜ポートシティ不動産

右手盛賢富 講談社 2023年5月





勤め先の倒産で、横浜市中区にある横浜ポートシティ不動産に勤めはじめた浜野マリ。けれど勤め先の社長は一見なにも仕事をしていないようで、夕方から車内でお酒をのみはじめるという変わった人物。1週間くらい会社に顔を出さない期間もしばしばだ。しかしそんな社長のもとにさまざまな人々が訪れ、社長と話をしたあとは笑顔になって帰っていくのを、マリは不思議に思っていた。 そんなある日、ポートシティ不動産に弱々しげなひとりの老婦人が訪れる。彼女は2か月前に急逝した地元の大地主永田金蔵の妻、永田君子で「資産家だった夫が急逝したことで相続争いが起こっているので、助けてほしい」と言う。横井とマリはクセ者ぞろいの相続人たちに話を聞きながら、金蔵の遺した資産の全容に迫っていくが、しだいに金蔵の知られざる一面が明かされることになる――。「相続」「不動産」をテーマとして横浜市を舞台に繰り広げられるミステリ・エンターテインメント小説!


ポートシティ不動産。

ゴルフ好きの横井社長と新人の浜野マリが、相続問題を解決へと導いていくもの


思ったことをズケズケ言うマリは、読んでいる私たちの 気持ちをそのまま言ってくれているようで、気持ちがいい。


資産家の相続問題は、たいへん。

それぞれが好き勝手なことを言っている。

そんな中、話はまとまるのか?



亡くなった人が、どのようにしたいかが第一



作者は、不動産、相続問題に詳しいのだろう。

税金問題や法律のことなど、わかりやすく説明されていて、リアリティがある。

最適な方法が示されていたと思う。


相続人みんなが幸せになることを願う気持ちに感動!



お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

うるうの朝顔

水庭れん 講談社 2023年6月






綿来千晶は、息子に手を上げた夫と離婚したばかりで鬱々とした日々を過ごしていた。彼女は、偶然入った霊園事務所で日置凪という青年に出会う。親しみやすく価値観の合う凪に、ぽつぽつと悩みを打ち明ける千晶。すると彼は「ひとつだけ、おとぎ話をさせてください。」と「うるうの朝顔」という不思議な朝顔の種を取り出した。

なんでもその花を咲かせると、現実とはほんの少しだけ変わった過去をもう一度体験でき、その瞬間から始まっていた心の「ズレ」が直るという。その夜、千晶には、姉が父に殴られた日の記憶がよみがえり……。



うるう」とはうるう年のうるうのことで、ズレを修正するというもの。


うるうの朝顔で、ズレを直す、その設定がおもしろいと思った。



息子の万引きの謝罪の帰り道に、手をあげた夫に価値観の違いを感じ、別れた千晶。


会社の先輩である香椎さんのことが気になる国見。しかし香椎さんは薬指に指輪をはめている。


マサの遺骨を引き取った三多介。

昔、三多介はマサと雪枝さんと過ごしたことがあり、ある秘密を抱えていた。


亡くなった先生が見えるひまり。


最後は、この朝顔の種を持っていた日置凪という霊園事務所で働く青年の話。


たったの1秒でも、大切なことはある。

その 人だけにしかわからないことが…

大きな変化はなくても、次の一歩となるのだと思った。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

コーダ あいのうた

監督 シアン・ヘダー

出演

エミリア・ジョーンズ トロイ・コッツァー マーリー・マトリン ダニエル・デュラント フェルディア・ウォルシュ=ピーロ エウヘニオ・デルベス 






 豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聞こえる。 陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から、“通訳"となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。 新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。 すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧める。 だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。 悩んだルビーは夢よりも家族の助けを続けることを選ぶと決めるが、思いがけない方法で娘の才能に気づいた父は、意外な決意をし・・・。


この内容知ってると思ったら、「エール!」のリメイク版なのね。



の聞こえない家族のため、通訳として、ずっと働いてきた高校生のルビー。

しかし、歌の才能があることがわかり、音楽大学の受験を目指すが …


ルビーは家族のために働くことが当たり前のようになっていた。

決して家族のことがきらいなわけではないだろうが、新たな道を見つけて、 進もうとする。


戸惑う家族。

ルビーや家族の葛藤がよく描かれていた。


手話でけんかする場面は、迫力がある。

漁業の仕事は、たいへんなことも多いが、ユーモアのある映画になっている。



ルビーの歌声は、素晴らしい。

試験で、手話を使って歌う場面は感動的。


ラスト、ルビーを快く送り出す家族の姿がよかった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


エレクトリック

千葉雅也 新潮社 2023年5月





1995年、雷都・宇都宮。高2の達也は東京に憧れ、広告業の父はアンプの製作に奮闘する。父の指示で黎明期のインターネットに初めて接続した達也は、ゲイのコミュニティを知り、おずおずと接触を試みる。轟く雷、アンプを流れる電流、身体から世界、宇宙へとつながってゆくエレクトリック。新境地を拓く待望の最新作!


 

オーム真理教の地下鉄サリン事件、阪神淡路大震災があった頃の話。


インターネットが普及し始めたのもこの頃で、

インターネットがつながり、世界とつながった時の感動は大きかったことだろう。



高校生の達也は、

Kとふたりで遊ぶようになり、ユニットを結成し作曲するようになる。

同姓にも関心を持つようになり、インターネットでゲイのコミュニティに参加する。


そんな達也の日常。

何者でもない青臭い青春を感じた。


最初のハンドパワーの話。

最後の方で、達也もコップ動かせたかも!?


《轟く雷、アンプを流れる電流、身体から世界、宇宙へとつながってゆくエレクトリック。》

紹介文を読んで、題名の意味を考えてみた。


お気に入り度⭐⭐⭐

小池水音 新潮社 2023年5月




息をひとつ吸い、またひとつ吐く。生のほうへ向かって――。 喘息の一息一息の、生と死のあわいのような苦しさ。その時間をともに生きた幼い日の姉と弟。弟が若くして死を選んだあと、姉は、父と母は、どう生きたか。喪失を抱えた家族の再生を、息を繋ぐようにして描きだす、各紙文芸時評絶賛の胸を打つ長篇小説。新潮新人賞受賞作「わからないままで」を併録。注目の新鋭による初めての本。


息」

ぜんそくの主人公。

発作が起き、息が苦しくなった時の描写が細かくて、読んでいる私も、息苦しくなってくる。


10年前の弟の死を受け止められず、苦しんでいる姉と両親。


ぜんそくの描写と相まって、苦しさが増す感じがする。



弟の恋人だった綾子さんと話をしたことで、少し変化が…


風の動きや自身の感情の変化など、表現が、きめ細やかで、弟への思い、喪失感、死、生…といったものが、強く感じられた。




「わからないままで」は、誰の話なのか、わかりにくかった。

ぜんそく、死、喪失…

「息」と似たような内容。


その中で、

卒園式の当日、幼稚園に行きたがらない子供。

その子には、別れの意味がわかっていたからという話と、「わるいイルカっている?」という5歳の子供の素朴な疑問…

これが印象に残っている。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

ビギナーズ家族

小佐野弾 小学館 2023年5月




 

 

セレブ一家に生まれた秋は、同性パートナーの哲大と静かな日々を送っていた。しかし、急逝した実父に2歳の異母弟、蓮がいたことが判明した。蓮の後見人となって哲大とともに「家族」をはじめることを決意。三人は名門私立小学校への受験を試みる。それは世間の偏見とのたたかいでもあった――。 血縁も地縁も希薄になりつつある現代――。 家族とは何か? つながりとは何なのか? 「母からは、俺たち三人は“家族ごっこ”だって言われた。だから、養子縁組もしたんだけどね。でも家族ってなんだろ、って思うよ」 ――秋たちの切なる問いは、の当たり前を優しく揺り動かす。





多様性の時代、同姓カップルも認められつつある現代だけど、まだまだ、昔からのしきたりが残っていることは多いと思う。


秋と哲大が、あることから、2歳の連の後見人となり、育てることに ~


秋の母の母校でもある名門小学校を受験することに~


ここで取り上げられている名門小学校受験。

受験するための幼稚園に通う園児は、皆ライバルで、親は、蹴落とそうと必死で、多額のお金が動く。

おそろしい世界。


ここでは、小学校受験の話がメインではなく、親との確執や秋と哲大の家族の日々の葛藤が描かれていて、家族とは何かを考えさせられる。



さまざまな困難を乗り越えて、家族になっていくのだと思う。それは、性別には関係ないこと!


装丁の絵にホッとする。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

透明な夜の香り

千早茜 集英社 2020年10月




 

 

元・書店員の一香がはじめた新しいアルバイトは、古い洋館の家事手伝い。 その洋館では、調香師の小川朔が、オーダーメイドで客の望む「香り」を作る仕事をしていた。人並み外れた嗅覚を持つ朔のもとには、誰にも言えない秘密を抱えた女性や、失踪した娘の手がかりを求める親など、事情を抱えた依頼人が次々訪れる。一香は朔の近くにいるうちに、彼の天才であるがゆえの「孤独」に気づきはじめていた――。 「香り」にまつわる新たな知覚の扉が開く、ドラマティックな長編小説。



香り」を作る仕事をしている朔。

その屋敷で家事手伝いとして働き始めた一香。


臭いで体の不調など、なんでもわかってしまうほど、嗅覚が働くのは、いい面もあるけど、つらいことも多いだろう。

指摘された人は、ぎょっとするだろう。



朔の作りだす香りは独特。

その朔の元に依頼に来る人たちの話は、それぞれにおもしろい。


一香は、過去 に問題を抱えていそう。

乗り越えられるのか?



朔と一香の関係が、澄んだ空気のようでステキ!

ラストがとても好き!


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

闇祓

辻村深月 KADOKAWA 2021年10月




 

 



「うちのクラスの転校生は何かがおかしい――」 クラスになじめない転校生・要に、親切に接する委員長・澪。 しかし、そんな彼女に要は不審な態度で迫る。 唐突に「今日、家に行っていい?」と尋ねたり、家の周りに出没したり……。 ヤバい行動を繰り返す要に恐怖を覚えた澪は憧れの先輩・神原に助けを求めるが――。 身近にある名前を持たない悪意が増殖し、迫ってくる。一気読みエンタテインメント!


転校生、ママ友、会社…

最初は、ささいなことだったのに、

身近で起きるできごとの中に、悪が、じわじわ入ってきて、いつの間にか 身動きができなくなってしまう。


どこにでもありそうなことなので余計に、こわかった。


「祓」この字、なんと読むのかわからなかったけど、「はら(う)」の「はら」→「ハラ」→「ハラスメント」のことなのね。


題名も秀逸。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐