あなたへ

森沢明夫  幻冬舎文庫 2012年2月



 

 

刑務所の作業技官の倉島は、亡くなった妻から手紙を受け取る。妻の故郷にもう一通手紙があることを知った倉島は、妻の想いを探る旅に出る。夫婦の深い愛情と絆を綴った、心温まる感涙小説。



高倉健主演の映画は以前見たが、この作品は、森沢明夫さんが映画の脚本をもとに書かれた小説だと知り、読んだ。

森沢明夫さんらしいやさしさの詰まった小説だった。


夫を残してこの世を去らなければならない洋子は、どれだけ無念だっただろう。

しかし、自分がいなくなってからの夫のことを思っての遺言。

洋子の想いに泣けた。



最愛の妻を亡くし、傷心の英二だったが、この旅で、様々な人としては出会い、交流を深めるうちに変わっていくところがよい。


旅で出会った人たちのこともていねいに描かれていて、その人たちの人生を感じた。


人との関わりの中で生きていくものだと思った。


他人と過去は変えられないけど、自分と未来は変えられる〉

〈人生には賞味期限がない〉

洋子の言葉が心に残る。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐



答えは市役所3階に 2020心の相談室

辻堂ゆめ 光文社 2023年1月



 

 

コロナ禍がもたらした、幾つもの「こんなはずじゃなかった」。市役所に開設された「2020こころの相談室」に持ち込まれるのは、切実な悩みと誰かに気づいてもらいたい想い、そして、誰にも知られたくない秘密。あなたなりの答えを見つけられるよう、二人のカウンセラーが推理します。最注目の気鋭がストレスフルな現代に贈る、あたたかなミステリー。


コロナの影響を受けた 人たちの相談。


希望の業種の就職先がない女子高生の進路。

医療従事者ということでまわりから差別を受け、うまくいかなくなった恋人との関係。

子どもを 産み、ひとりで育てることになった女性。

仕事が減ったホームレスの男性。

授業がオンライン授業になり、ひきこもりになった学生。


コロナ禍では、あるあるのできごと!!

同じような思いをした人もいたはず…


カウンセラーのふたりが相談者の話を聞く。

相談者は、話を聞いてもらうだけで、気持ちが軽くなるのかもしれない。

 

カウンセラーは、話の中から、相談者のうそを見抜く。すごいね。

でも、相談者の秘密がわかっても、暴くことなく、相談者の気持ちにより添っているところがいい。


相談をきっかけに前向きになれたらいいな。


相談者のつながりにも注目!


お気に入り度⭐⭐⭐⭐



罪の境界

薬丸岳 幻冬舎 2022年12月





 

 

約束は守った……伝えてほしい……」 それが、無差別通り魔事件の被害者となった飯山晃弘の最期の言葉だった。 自らも重症を負った明香里だったが、身代わりとなって死んでしまった飯山の言葉を伝えるために、彼の人生を辿り始める。この言葉は誰に向けたものだったのか、約束とは何なのか。



の境界は、人を殺すか殺さないか。


犯罪を起こす人も、人の子で母親はいる。

その生い立ちに同情すべきところがあったとしても、罪の境界を超えてはならない。


刑務所に入れば、食事の心配をしなくていい。刑務所に入りたいから、事件を起こすなんてもってのほか。

許されるはずがない。


明香里は事件の時の恐怖から、家に閉じこもる。

しかし、自分を助けて、亡くなった飯山晃弘の最後の言葉を誰に伝えればいいのか、飯山晃弘のことを調べる。

そうすることで、立ち直ることができて、よかったと思う。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

いえ

小野寺史宣 祥伝社 2022年2月




 

 

友がいて職場があって、ひとが築く、まち。 その中に暮らす我が家。近くて遠い、家族。 社会人三年めの三上傑には、大学生の妹、若緒がいた。仲は特に良くも悪くもなく、普通。しかし最近、傑は妹のことばかり気にかけている。 傑の友だちであり若緒の恋人でもある城山大河が、ドライブデート中に事故を起こしたのだ。後遺症で、若緒は左足を引きずるようになってしまった。 以来、家族ぐるみの付き合いだった大河を巡って、三上家はどこかぎくしゃくしている。教員の父は大河に一定の理解を示すが、納得いかない母は突っかかり、喧嘩が絶えない。ハンデを負いながら、若緒は就活に苦戦中。家族に、友に、どう接すればいいのか。思い悩む傑は……。



ひと」「まち」に続く物語。

前作の店や登場人物がでてきて、つながってる感じがいい。



妹に怪我を負わせた友達の大河を許せない。

そのことで、考え方の違いから、いえのなかが、ぎくしゃく。

働くスーパーではパートさんとうまくいってない…


妹のこと、家族のこと、友達のこと、仕事場でのこと。

傑は、いろいろと悩むことが多い。



しかし、

許すこと、謝ることにより、見方が変わっていくるところがよかった。


仲のいい兄妹だな。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

ラブカは静かに弓を持つ

安壇美緒 集英社 2022年5月


 



 少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。 ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。 目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。 橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。 師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り……



音楽教室への潜入捜査を言い渡され、ミカサ音楽教室の講師、浅葉にチェロを習い、練習の様子を録音する橘。


上司の命令だから仕方がない。


橘は、証拠をつかみ、法廷で証言する日はくるのか?



橘は、浅葉を師と仰ぎ、チェロの練習には、まじめに取り組む。

そして、音楽を通して仲間もできた。


そんな出会いが、橘を変えていく。


師弟の関係がいいなと思う。

悪夢も見なくなり、仲間もできて、よかった。


そんな日々を過ごすうち、

橘は、騙していることを苦痛に感じるようになる。





壊れた信頼を修復させることは時間がかかりそうだけど、秘密のなくなった橘は、これから、信頼を取り戻してほしいと思った。


作中にある映画「戦慄きのラブカ」見てみたい。




お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

まち

小野寺史宣 祥伝社 2018年11月


 



 尾瀬ヶ原が広がる群馬県利根郡片品村で歩荷をしていた祖父に育てられた江藤瞬一。高校卒業とともに上京し、引越の日雇いバイトをしながら荒川沿いのアパートに住んで四年になる。かつて故郷で宿屋を営んでいた両親は小学三年生のときに火事で亡くなった。二人の死は、自分のせいではないかという思いがずっと消えずにいる……。『ひと』から広がる新たな傑作!




江藤瞬一は、高校卒業後、上京。

大学生になるとか、就職先が東京というわけではない。

バイトで生計を立てている。バイトといっても、まじめに生活している。


走ったり、図書館に行ったり、喫茶店へ行ったり…

そんな瞬一の日常の様子が描かれている。


隣の住民の虫を退治したり、バイト仲間に正社員の道を譲ったりと、瞬一の人の良さが伝わってくる。


ていねいに生活を送る瞬一に好感が持てた。


上京してきたおじいちゃんと過ごした3日間、貴重な時間。

おじいちゃんの思いが詰まっていた。


時間がかかったが、瞬一は、自分の やりたいことを見つけられて、よかったと思う。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐




監督 ピエール-ピノー

出演 カトリーヌ-フロ メラン-オメルタ ファッシャ-ブヤメッド

 

 フランス郊外。あふれる才能と魔法のような指で新種のバラを開発し、数々の賞に輝いてきたエヴ。だが数年前から巨大企業のラマルゼル社に賞も顧客も奪われ、亡き父が遺してくれたバラ園も今では倒産寸前に。助手のヴェラが何とか立て直そうと、職業訓練所から格安で前科者のフレッド、定職に就けないサミール、異様に内気なナデージュを雇う。だが3人は全くの素人で、手助けどころか一晩で200株のバラをダメにしてしまう。そんな中、エヴに新種のアイディアが閃いた! 交配に必要なバラがラマルゼル社のバラ園にしかないと知ったエヴは、フレッドにある“特技"を披露させる。パリの新品種コンクールまであと1年、はみだし者たちの壮大な奮闘が幕を開ける──!



今、バラがきれいな時期なので、この映画を見た。


倒産寸前のバラ園、立て直すことができるのか?


助手のヴェラが雇ったのは、素人のワケあり三人。

こんな人たちの手助けで大丈夫?


それに新種のバラを作るために、そんなことしていいの?


と前半は、いいところがなかった。


ところが…


奇跡のバラができたのは、みんなの思いが強かったからだろう。

三人との交流も描かれていていい感じだ。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

いつか君が運命の人

宇山佳 佑 集英社 2023年3月


 



 

指輪って、心とつながるものなんだよ」 その指輪をつければ、「運命の赤い糸」が見える──。 切ない願いが込められた指輪がつむぐ、ひとつなぎの恋物語。 「自分なんかじゃ絶対に無理だ」と思っていた片想いの相手と、運命の赤い糸で結ばれたいと願いつづけたら──「僕らはあの頃と変わらない」 つれない恋人との関係に不安を抱いていたところ、指輪の力で相手が運命の人ではないことを知ってしまい──「どうして機嫌のいいときしか好きって言ってくれないの?」 ……など、“奇跡の指輪”をめぐる6つの恋模様を収録。



指輪をつけると運命の赤い糸が見える。

そんな指輪をめぐる6つの物語。


自分の運命の人かの見極めを指輪に頼ってしまうというのは、ちょっといや。


でも、運命の人との出会いを大切にする気持ちはわかるけど…


家出したときの女性との出会いが、進路について 、決心するきっかけになる話。

恋の話をすることで得た友情の話。

認知症になってしまった母親とのトラウマを克服する話。

これらは、その人自身を成長させる話 で、とてもよかった。



最初の話は、花耶の一途な想いが征一 に届いてよかったと思ったのに、悲しい結末になって、どうなるのと思ったけど、最後の章 へと話がつながっていた。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

君といた日の続き

辻堂ゆめ 集英社 2022年10月




 

 コロナ禍のリモートワークを言い訳に自宅に引きこもるばかりのある日、 僕はずぶ濡れの女の子を拾った。 1980年代からタイムスリップしてきたらしい彼女は僕の大切な人の命を奪った連続少女誘拐事件に関係しているのか……。 その時の僕は知るよしもなかった、すべての過去の意味を。 その答えは、今の僕が持っていたんだ。



初読み作家さん。


我が子を病気で亡くし、ひきこもっていた譲が、タイムスリップで過去から来た少女ちぃ子と、一緒に過ごすことで、我が子と過ごすはずだった時間を取り戻そうとする。


譲とちぃ子の交流がよい。


 ちぃ子が一昔前の言葉を使うこともあり、昭和を思いだして、懐かしい気持ちだった。



ちぃ子は、どうなってしまうのか?



連続少女誘拐事件の話も出てくるから、痛ましい部分もあるが、ほのぼのと心あたたまる話だ。


SFであり、ミステリー要素もあり、伏線がうまく回収されていた。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

ポテチ


監督中村義洋

出演

濱田岳 木村文乃 大森南朋 石田えり 中林大樹 松岡茉優 阿部亮平 中村義洋 桜金造


 

 


 仙台の街で生まれ育った2人の青年の奇妙な運命を独特の切り口で描いた感動の人間ドラマです。 プロ野球のスター選手・尾崎と、空き巣を生業とする凡人・今村、別々の人生を歩んでいるかのように思えた2人は、目に見えない強い力で引き寄せられていった・・・。 そんな運命に翻弄される主人公を通して、家族や恋人、友人、大切な人を想うあたたかな気持ち、 運命に負けない強い心を独特のユーモアで描いていきます。




いて伊坂幸太郎の映画化作品を見た。

「フィッシュストーリー」の中のポテチ。


留守電なんて、スマホが普及した今では考えられないが、盗みに入った家の留守電に今から死ぬというメッセージを聞いて、ほっておけない泥棒、今村。


今村の上司で人の気持ちがわからないという黒澤 。


この人たちは、泥棒でも、優しい心の持ち主なのだ。



伊坂幸太郎さんらしいユーモア。

ちりばめられた伏線。


ラストには、家族愛を感じる素晴らしい作品になっている。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐