ずっとそこにいるつもり

古矢永塔子 集英社 2023年10月




 

 

念願だった映画の宣伝会社に転職した弥生。そんななか、夫から切り出された「ある提案」を受け入れられず、忙しさにかまけ、決断を先延ばしにしていた。だが、その日は確実に迫っていて……(「あなたのママじゃない」)。

優良メーカーに内定が決まった大学生の健生。サークルで知り合った友達以上恋人未満の彼女から同棲を仄めかされるが、うやむやにしていた。そんなある日、アパートに帰宅すると、かつて池袋で共に暮らした美空が現れ……(「BE MY BABY」)。初対面なのに物怖じせず、屈託のない転校生の美月を前に、副担任の杏子の心はざわめいた。懸念されることの一つは、クラスの中心的人物で問題児でもある莉愛が虐めの標的にすることだったが……(「まだあの場所にいる」)。

ほか全5話。閉塞的な現実を背負う人たちの、さまざまな葛藤の中で現れた「気づき」とは……。



あなたのママじゃない」

義母がいい感じ。女同士の関係が結べそう。


「BE MY BABY」

美空とは、そういう関係だったのね。

これが一番だまされたって感じ。


「ビターマーブルチョコレート 」

実家のことに関するうそ。

一度ついた うそは、訂正するのはむつかしいかも。

地元の幼なじみの関係って変わらない?


他2編




どの短編にも、最後に、そうだったのかというだまされ感があり、新鮮。


登場人物たちは、立ち止まり、葛藤を繰り返しながらも、新しい道へと進んでいく。


題名が秀逸。

まだそこにいるつもり?一歩前に出しなさいって言ってる気がする。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐



わたしを永遠に眠らせて

神津凛子 幻冬舎 2023年11月




 

 

夫と死別し、後に流産した秋夜。悲しみを断つためにも再婚し、善財家に嫁ぐが、そこに安寧はなかった。義母からの苛めに心が壊れかけてしまう。そんな時、近隣に住む小学生の優真と出会い、交流が始まった。優真もまた家庭に問題を抱え、二人は互いの拠り所になっていく。
ただ平穏に暮らしたい。だが、二人の願いは叶わない。秋夜はついに家から逃げ出すが、義祖父の訃報で家に引き戻されてしまう。さらに同じ頃、優真の親友の身にも悪意が迫っていた……。連続する悲劇は「不運」で片づけられるのか? 秋夜の絶望は次第にある疑念へと変貌していく――。



おぞましい世界だ。


善財家では、

嫁 秋夜が働くのは当然と、こき使う義母珠子。

学歴で見下す義父。

嫁にもいかず実家で暮らす義妹。


一方、

小学生の優真をしつけと称し虐待する継父孝道

孝道は優真の友達太陽にまで……


読むのがつらい。


そんな秋夜と優真が出会い、交流を深めるが、不幸は続く。


終盤に向けて、怒濤の展開!

スカッとしたような、恐ろしさが増したような……


優真が救われたことに安堵!


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

まだ終わらないで、文化祭

藤つかさ 双葉社 2023年11月





 

毎年、生徒の誰かがサプライズを起こすことが慣例となっている八津丘高校の文化祭。
2年前、ゲリラライブで人が殺到し教師がケガを負ってしまった。その様子はSNSにアップされて炎上、ニュースにも取り上げられ大問題に。
しかし、今年の文化祭初日。まるで宣戦布告をするかのように2年前の文化祭ポスターが学内掲示板に貼られている。
文化祭実行委員の市ヶ谷のぞみたちは生徒達に話を聞きにまわるが……。



2年前の文化祭ポスターは、誰が貼ったものか?

文化祭で、何かのサプライズが、今年も起こるのか?


高校の文化祭って、普段と違って、非日常。

恋の告白があったり、いつもと違う一面を見ることができたりと、なにか、わくわくする。


生徒それぞれの主観で描かれていて、感情がよくわかった。


謎解きも最後に回収。


お気に入り度⭐⭐⭐

君を忘れない


監督 渡邉孝好

出演

唐沢寿明/木村拓哉/松村邦洋/袴田吉彦/反町隆史/池内万作/堀真樹/戸田菜穂/水野真紀/長塚京三/平田満/高嶋政宏

 

 

太平洋戦争も終わりに近い1945年、夏。海軍航空隊のエリート望月大尉(唐沢寿明)は、特攻作戦への反発から302特別飛行隊を結成し、7人の個性的パイロット(木村拓哉、反町隆史、松村邦洋など)を集結させるが…。



最近、「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」を読んだので、特攻隊つながりで、この映画を見た。


なぜパイロットをめざしたのか。

かっこよくありたいからとか、女の子にもてたいからとか、そんな理由?

昔も今も、そう変わらない。



上からの命令は絶対で、理不尽なこともある。



でも、ここで訓練を受けた日々 は、彼らにとって、忘れられない青春の一コマであり、仲間意識が芽生えたに違いない。

そのつながりは深い。


お気に入り度⭐⭐⭐

17歳のビオトープ

清水晴木 幻冬舎 2023年11月







舞台は高校。
恋愛、ガチャ、SNS……現代特有の悩みを抱える高校生たちを、校務員・平人生(通称:人生先生)が導いていく。
「誰にでもビオトープ(居場所)があるということを分かっていてほしい」という著者の想いが詰まった、青春物語。

第1章 恋と愛のちがい
第2章 運とかガチャとか
第3章 不幸せになる方法
第4章 生きる意味って
エピローグ 人生のビオトープ



4人の高校生が、悩みを校務員の人生先生 (名前が人生だから)に相談する。

先生は、すぐに答えを出すのではなくて、生徒たちに考えさせる。

生徒たちは、先生の助言に従って、答えを見つけていく。


この人生先生っていったい何者?って思う箇所があった。謎の人物?


人生先生の返答は、とてもわかりやすく、腑に落ちる。


「誰にでもビオトープ(居場所)があるという作者の思い、受け止めた。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

汐見夏衛 スターツ出版 2023年6月




 

 

親や学校、すべてにイライラした毎日を送る中2の百合。母親とケンカをして家を飛び出し、目をさますとそこは70年前、戦時中の日本だった。偶然通りかかった彰に助けられ、彼と過ごす日々の中、百合は彰の誠実さと優しさに惹かれていく。しかし、彼は特攻隊員で、ほどなく命を懸け戦地に飛び立つ運命だった――。のちに百合は、期せずして彰の本当の想いを知る…。涙なくしては読めない、怒濤のラストは圧巻!



映画化されたので、原作を読んでみた。


これ、汐見夏衛さんのデビュー作を新たに単行本として刊行された作品らしい。


百合は、タイムスリップして、戦時中の日本に。


百合を助けてくれた彰も食堂のツルさんも、とてもいい人で、百合に優しく接してくれる。


現代では、不満の多かった百合だが、不便な生活の中にも、充実した日々を過ごすようになる。



彰は、特攻隊員で、まもなく、命をかけて戦地へ飛び立つことが決まっていた。


国のために命を投げ出すことがおかしいとはっきりいう百合。

しかし、国民の多くが国のために戦うことを疑わなかった。


戦争は愚かなことだと再認識させられる。



百合と彰。

お互い、あんなにも愛し合っていたのに、

本心を言えなかった。


それが、ああいう形で、気持ちを知ることになろうとは!


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

君をおくる

泉ゆたか 光文社 2023年4月




 

 

 「一緒にいてくれて、ありがとう。おうちに来てくれて、ありがとう」
命を見おくること、それは君に、幸せな最後の時間をおくること。
ある動物病院を訪れた、小さくて温かい4匹のペットと、不器用な人間たちの、出会いとお別れの感動ストーリー。



動物病院 を訪れた

野良猫のぶーさん、ミニブタのサクラちゃん、チワワのクッキー、アメリカンショートヘアのタタンといった4匹の動物たちと飼い主たちの出会いと別れを描いている。


動物病院の獣医さん、動物との関わり方が温かい。


家族同然のペット。

いるだけで幸せな気持ちになる。

しかし、寿命が短いから、別れは必ずやってくる。

その時の覚悟……


命の重さと最期をどのような形で看取るのか、いろいろ 考えさせられる内容だった。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐



掬えば手には

瀬尾まいこ 講談社 2022年7月




 

 

大学生の梨木匠は平凡なことがずっと悩みだったが、中学3年のときに、エスパーのように人の心を読めるという特殊な能力に気づいた。ところが、バイト先で出会った常盤さんは、匠に心を開いてくれない。常盤さんは辛い秘密を抱えていたのだった。だれもが涙せずにはいられない、切なく暖かい物語。




大学生の梨木のバイト先のオムライス店の店長の大竹さん、口が悪い。これでは、バイトが立て続けてやめるのも無理はない。


ここに新しくバイトに来た常磐さん。

感情を表に出さず、何か事情がありそう。


この大竹さんと常磐さんと梨木の3人。

うまくやれるのかと思いきや、

集まって誕生会とかしてる。


それは、梨木が中に入って、いろいろ行動に移しているからだろう。

 

梨木は、普通がいやで、人の心が読める特殊な能力があると信じていた。

その力うんぬんより、相手の気持ちになって考えて、行動に移せる所が、梨木のいい所なのだろう。


店長も、接してみれば、いい人なのだ。


大学生の河野さんと梨木の関係、気づかなかったなあ。



店長主観で書かれたアフターデイ、その後の様子がわかってよかった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

獣の夜

森 絵都 朝日新聞出版 2023年7月




 

 

原因不明の歯痛に悩む私が訪れた不思議な歯医者(『太陽』)。女ともだちをサプライズパーティに連れ出す予定が……(『獣の夜』)。短編の名手である著者が、日常がぐらりと揺らぐ瞬間を、ときにつややかにときにユーモラスにつづった傑作短編集。


の中で踊る

コロナ禍で、旅行に行けなくなったリフレッシュ休暇の最終日、フットマッサージにいくつもりが、海を目指し、男と一緒に行くことになり……

思ってもいなかった方向に話が進んでいくのがおもしろい。


Dahlia

ATTACKが起きてから10年後の日本。

ダリアの花を持って施設を訪れる。


太陽

歯痛は、心理的な痛み、代替ペインと呼んでいる。その痛みの原因を見つける話。


そんなことが原因?

緊張の連続の中での毎日のぬくもりって大切なのだ。


獣の夜

女性ふたりでジビエ料理を食べまくる。

勢いのある話だ。

女ふたりのつながりって強い。


スワン

心の澱をかき混ぜる。

心の底に眠っていた恨み、悲しみ、怒りといった負の感情を目覚めさせる。

これって、恐ろしい気もするけど、その後は、すっきりするもの?


ポコ

飼い犬のポコの最後の姿を見て、

コロナ禍にあっても、 強く生きようとする朔の姿がよい。


あした天気に

ほんと最近、てるてる坊主なんて作らなくなったなあ。

それだけ、天気予報の精度があがったってことだよね。


うまくいかないことを何かのせいにする。そういうことってあるなあ。



何かの問題を抱えている人が、立ち止まり、自分を見つめ直し、新たな気持ちで進んでいく。

そんなお話だった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

葬式同窓会

乾ルカ 中央公論新社 2023年10月


 



 

卒業後7年ぶりに再会した、北海道立白麗高校3年6組の元クラスメートたち。それは同窓会ではなく、クラス担任だった水野先生の葬儀だった。思いがけず再会した皆は、高校時代の思い出話に花を咲かせる。そして水野が授業中におこした〝事件〟が切っ掛けで不登校になったクラスメートがいたことを思い出す――。かつて高校生だったものたちを睨む〝過去〟。大人になるとは




水野が授業中に起こした事件、そんなことがあっていいのかと腹立たしい気持ちになる。


高校時代のこと、楽しいことばかりではならない。

思い出したくないこともある。

大人になったからといって、 あの頃はよかったとひとまとめにはできないこと、あるだろうな。


北別府華、いやな人物。

実際にあった暗い部分を掘り出して、小説にしようなんて。


望月、お調子者って感じだったけど、人をおとしめてまで、自分の利益にしようなんて、間違ってる。


ずっと暗い気持ちで読んでいたが、今までのできごとがつながる、ラストへ向けての収束 のうまさ。

この暗い気持ちから、一気に明るい方向に持っていくうまさ…

さすがだ。



大人というのは、自分の考えをちゃんと持って、恐れずに相手に伝えられる人のことだ」


優菜は、最後には、自分の考えをちゃんと言えてよかった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐