トリカゴ

辻堂ゆめ 東京創元社 2021年9月




 

 

蒲田署強行犯係の森垣里穂子は、殺人未遂事件の捜査中に無戸籍者が隠れ住む生活共同体を発見する。その共同体“ユートピア"のリーダーはリョウ、その妹のハナが事件の容疑者となっていた。彼らの置かれた状況を知った里穂子は、捜査が“ユートピア"を壊すのではないかと葛藤を抱くようになり…… 



最初に載っていた鳥籠事件。

あまりにかわいそうだった。



自分が悪いわけでもないのに、無戸籍になってしまった人たち。

その人たちが集まって共同体を作り暮らしていた。


蒲田署強行犯係の森垣里穂子は、ハナの関係した事件を追っているうち、その共同体を知ることになる。


森垣里穂子が、ハナをはじめとして、無戸籍者に寄り添うところがいい。


ハナの関係した事件が、どんな解決をみせるのか?鳥籠事件が、どのように関係するのか?というミステリーもさることながら、無戸籍者のことを 考えさせられる話だ。


最後には、無戸籍者たちにも、明るいきざしがみえてよかった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

狙撃手の祈り

城山真一 2023年10月


 



 

離婚届を置いて失踪した妻、発見された銃弾、28年前の未解決事件。
平穏な生活が一変する秘密と嘘。

東京都北区十条で楽器店を営む青井圭一。雑誌記者の妻・沙月とは取材がきっかけで知り合った。
ある夜、妻の沙月が圭一に差し出したのは離婚届だった。明日から一週間取材に行くから、帰るまでに答えを出してほしい――。
確かに、圭一の友人のミュージシャンの不倫スキャンダルを沙月がスクープしたことで、最近夫婦関係はぎくしゃくしていた。しかしそれが離婚になるとは思えない。そして一週間後、電話口で「このまま家に帰ったら、許してくれる?」という言葉を残して沙月は消息を断つ。

ほぼ時を同じくして、亡くなった圭一の叔父の遺品の中から銃弾が発見される。叔父の友康はこの楽器店の先代で、幼い頃に両親を亡くした圭一の育ての親でもある。平穏な人生を送っていた叔父と銃弾が結びつかず混乱する圭一。追い打ちをかけるように、その銃弾が28年前に起こった警察庁長官狙撃事件に使われたものと同じ型という可能性も浮上する。

警察庁長官狙撃事件は未解決のまま公訴時効を迎えていた。そして、沙月がこの未解決事件を追っていたことも明らかになる。
叔父と長官狙撃事件の間に何らかの関係があるのか。もしあるとしたら叔父はどう関わっていたのか。今回の沙月の失踪はその未解決事件の取材と関係しているのか。

この世界が今日も明日もこのまま続くだろう、そう思っていた人間が、期せずして社会の深淵を覗くサスペンスミステリー。





Amazonの紹介文、長いなあ。




失踪した妻の沙月は、何を調べていたのか?

見つかった銃弾は叔父とどんな関係があるのか?

そして、題名にある、狙撃手は、なにを祈ったのか?


警察庁長官狙撃事件とオウム真理教事件をモチーフにしたフィクション。


話がどうつながっていくのかと思いながら読んだ。


子を思う親の気持ちが、行動を起こさせたってことかな。


お気に入り度⭐⭐⭐

砂時計

 警視庁強行犯係 捜査日誌

香納諒一 徳間書店 2023年10月




 

 

マンションの一室で三十八歳の女性が死亡。
大量の睡眠薬をアルコールとともに服用したことで昏睡状態となり死に至ったようだ。
テーブルには「疲れました。ごめんなさい」と印字された遺書らしきプリントも。
自死と思われたが、所轄は警視庁捜査一課の大河内茂雄部長刑事に現場への臨場を依頼した。
不自然なことが多かったのだ。
部屋のパソコンからはここ数カ月のメールが消去されていたし、死の前日にスーパーの宅配サービスに注文を入れていることもわかった。
マンション住人からの聞き込みから、複数の男の出入りが確認され、事件当夜には男女の言い争う声も聞かれていた。
大河内刑事は、被害者が中学生のときに父親が殺人を犯していたことをつきとめる。
また被害者は二年前にも大量の睡眠薬を服用し病院に搬送されたこともわかった。
捜査を進めるうちに、被害者のまわりでうごめく黒い影に存在に気づく……
事件の謎に挑む警視庁捜査一課強行犯係のベテラン刑事の活躍を描く3篇。




警視庁強行犯係を主人公とした作品は、他にも出版されているようだが、私は読んでない。

この作品が初めて。




聞き取りから、犯人を特定していく。

相手の反応を見て、ほころびをさがしていく。

地道な捜査だが、小さな違和感から、犯人を見つけていく過程は、見事だ。


事件に関わった人達の苦しみ……

そこに救いはあるのか 。

刑事の生きざま、そこに答えがある。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐



青天の霹靂


監督 劇団ひとり

出演

大泉洋 柴咲コウ 劇団ひとり / 笹野高史 風間杜夫

 

 

自分は特別な存在だと思っていた晴夫(大泉洋)。四畳半のアパートでレトルトカレーを頬張りながら、TVで人気急上昇の後輩マジシャンを眺める日々。目を背け続けてきた現実に“普通の日常"を手に入れることすら難しい、と気付き始めていた。
生まれてまもなく母に捨てられ、今では父とも絶縁状態。何をやっても上手くいかずに人生を諦めかけていた彼のもとに突然もたらされる父の訃報。
自分の惨めさが溢れ出し、生きることの難しさを痛感する晴夫。そこに青空から一筋の雷が放たれる!
そして晴夫は40年前の浅草にタイムスリップ。
そこで、若き日の父(劇団ひとり)と母(柴咲コウ)に出会う。そして、ひょんなことから父とコンビを組み、一躍人気マジシャンになっていく。生まれて初めて味わう満たされた日々。全てが順調に思えた矢先、明らかになる母の妊娠。
そして、ある決断を迫られることになる父。明らかになっていく家族の愛と想い。そして晴夫自身の出生の秘密。
果たして彼と家族を待ち受ける思いもよらぬ真実と結末とは――




原作は、読んだが、ちょっと前なので、忘れている部分が多い。

新しい気持ちで見れて、よいかも(笑)



人生をあきらめかけていた晴夫。

タイムスリップして、昭和の時代に…


そこでの経験が、彼に生きる意味を与える。



大泉洋と柴咲コウとの病院での会話に泣けた。



笑いあり、涙あり、感動あり、いい映画だ。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


あなたはここにいなくとも

町田そのこ 新潮社 2023年2月




 

 

恋人に紹介できない家族、会社でのいじめによる対人恐怖、人間関係をリセットしたくなる衝動、わきまえていたはずだった不倫、ずっと側にいると思っていた幼馴染との別れ――いまは人生の迷子になってしまったけれど、あなたの道しるべは、ほら、ここに。もつれた心を解きほぐす、ぬくもりに満ちた全五篇。



問題を抱え、立ち止まっている人たちの短編集。


ここに登場するおばあさんたちに癒やされる。


亡くなった人もいれば、病気で家を離れる人もいる。

でも、彼女たちの生き様がいろんなことを教えてくれる。


悩める人達が、次に進もうとしているところがいい。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

余命10年


監督 藤井 道人

出演 小松 菜奈、坂口 健太郎、山田 裕貴、奈緒、井口 理、黒木 華、田中 哲司、原 日出子、リリー・フランキー、松重 豊



 

 

数万人に一人という不治の病で余命が10年であることを知った二十歳の茉莉。
彼女は生きることに執着しないよう、恋だけはしないと心に決めて生きていた。
そんなとき、同窓会で再会したのは、かつて同級生だった和人。
別々の人生を歩んでいた二人は、この出会いをきっかけに急接近することに―もう会ってはいけないと思いながら、
自らが病に侵されていることを隠して、どこにでもいる男女のように和人と楽しい時を重ねてしまう茉莉。
―「これ以上カズくんといたら、死ぬのが怖くなる」。思い出の数が増えるたびに失われていく残された時間。二人が最後に選んだ道とは……?。




余命10年というのは、20歳の少女にとって、つらいことだろう。


恋はしないと決めていたが、同窓会で会った和人と過ごす時間が、楽しくなっていく……



人生、長さに比例するものでもない。

和人と過ごした時間は、充実していた。


家族にも愛され、茉莉は、幸せな時間をずごせたと思う。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐

君が手にするはずだった黄金について

小川哲 新潮社 5023年10月




 

 

認められたくて、必死だったあいつを、お前は笑えるの? 青山の占い師、80億円を動かすトレーダー、ロレックス・デイトナを巻く漫画家……。著者自身を彷彿とさせる「僕」が、怪しげな人物たちと遭遇する連作短篇集。彼らはどこまで嘘をついているのか? いや、噓を物語にする「僕」は、彼らと一体何が違うというのか? いま注目を集める直木賞作家が、成功と承認を渇望する人々の虚実を描く話題作!




エッセイのようなフィクション。


作者は、

何事も深く考えてしまう人のようだ。

電話の応答で

「どちらの小川さんですか?」

と聞かれて、僕は何者なのかと考えこんでしまうと いつた具合。



三月十日」

震災があった一日前。

震災の日のことは詳細に覚えているのに、その一日前のことは、覚えてない。

同じ24時間なのに。

記憶は曖昧なもの。

その記憶を思い出そうとする話が面白かった。



君が手にするはずだった黄金について」の片桐。

偽物」のババリュージ。

彼らの行っていた行為。

何のためにそのようなことをしていたのか。

小川の解釈―――彼らの立場にたっての考え方が示されている。

人から認められたいとか、成功しているように見せかけたいとか、そのために嘘を重ねることが痛い。


新しい刺激を受けた読書となった。





余談だが、

ミステリー小説における犯人の当てる方法とか、載っていた。

これからは、ここに気をつけて読んでみよう。

それでもだまされるんだろうな。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

宙(そら)わたる教室

伊与原新 文藝春秋 2023年10月






 

 

東京・新宿にある都立高校の定時制。
そこにはさまざまな事情を抱えた生徒たちが通っていた。

負のスパイラルから抜け出せない21歳の岳人。
子ども時代に学校に通えなかったアンジェラ。
起立性調節障害で不登校になり、定時制に進学した佳純。
中学を出てすぐ東京で集団就職した70代の長嶺。

「もう一度学校に通いたい」という思いのもとに集った生徒たちは、
理科教師の藤竹を顧問として科学部を結成し、
学会で発表することを目標に、
「火星のクレーター」を再現する実験を始める――。





年齢も性格もばらばらな定時制高校の科学部に集まった四人。

藤竹教師のもと、それぞれが、自分の特性を生かし、新しい実験に取り組む。


たばこで青空、みそ汁で積乱雲、水あめで地震を作る……

こういうのを、キッチン地球科学というらしい。

次は、どんな実験?って、わくわく感がたまらない。



科学部で、けんかもあり、挫折もあったが、それぞれが助けあい、成長していく。

その真剣な姿がまわりの人たちも巻き込んでいく。


こういう、協力しあい、ひとつのことを成し遂げる話に、私は弱い。


やり残したことは、いつからでもやり直せるのだと彼らが証明してくれた。


ちょっと出来すぎでは?と思ったら、実際にあった話に基いていることを知り、驚き!


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

照子と瑠衣

井上荒野 祥伝社 2023年10月






 

 

「身勝手な女」と呼ばれたって一ミリも後悔なんかしないわ。 照子と瑠衣はともに七十歳。ふたりにはずっと我慢していたことがあった。照子は妻を使用人のように扱う夫に。瑠衣は老人マンションでの、陰湿な嫌がらせやつまらぬ派閥争いに。我慢の限界に達したある日、瑠衣は照子に助けを求める。親友からのSOSに、照子は車で瑠衣のもとに駆けつける。その足で照子が向かった先は彼女の自宅ではなく、長野の山奥だった。 新天地に来て、お金の心配を除き、ストレスのない暮らしを手に入れたふたり。照子と瑠衣は少しずつ自分の人生を取り戻していく。照子がこの地に来たのは、夫との暮らしを見限り、解放されるため。そしてもう一つ、照子には瑠衣に内緒の目的があった――。




までの生活を捨てて、

70歳のふたりが長野の山奥へ。

行動力あるなあ。



照子と 瑠衣は、性格が違うから、かみ合わない所があるけど、そこがまた、いい関係を築けているように思う。




新しい場所で、その土地の人たちと新しい関係を作っていくふたりにたくましさを感じた。


照子の内緒の目的には、ほろり。




お気に入り度⭐⭐⭐⭐

月のうらがわ

麻宮好 祥伝社 2023年10月




 

 


深川の新兵衛長屋に住む十三歳のお綾。三年前に母を亡くしたが、大工の父直次郎、弟正太と慎ましく暮らしていた。ある日、父の朋輩重蔵の店賃滞納で揉めている中、隣に坂崎清之介という写本を生業とする侍が越してきた。本好きのお綾は、部屋の片づけを束脩代わりに坂崎に手習いを見てもらうことに。そこで書きかけの本 『つきのうらがわ』を見つける。子が亡き母の住む月へ辿りつこうとする物語だった。「続きを考えさせてくれませんか」とお綾は頼みこみ、正太と重蔵の子おはると一緒に考え始める。次第に子どもたちは優しい坂崎を慕うようになる。だが、坂崎には人を殺して生国を追われたという噂があった――。



3年前に母を亡くした13歳のお綾が主人公の人情物語。


人から、いやな言葉も聞くけれど、

迷った時は、自分の目でちゃんと見て、ちゃんと耳で聞くことが大事》

という母の言葉を守り、 父と弟と暮らすお綾。


隣に引越てきた坂崎に文字を習い、そのかわり、坂崎の部屋を片付けていたが…



大切な人との別れ。これはつらい。


お綾だけでなく、他にも、大切な人を亡くし、立ち直れない人たちがいた。


人は人と関わり合って、何かを渡したり受け取ったりする。》


人と関わることで、癒やされることも…。


悲しい時、泣くことができるのは、まわりに信頼できる人がいるとき。

泣くことで、心が壊れることなく、次に進むことができる。


人間は弱い。人が強くなるのは、誰かのために生きること》


お綾の成長がたのもしい。


別れを乗り超えて生きていくという、やさしさの中にも、力強さを感じた物語だ。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐