サクラサク、サクラチル

辻堂ゆめ 双葉社 2023年7月


 



 

「絶対に東大合格しなきゃ許さない」――両親の熱烈な期待に応えるため、高校三年生の高志は勉強漬けの日々を送っていた。 そんなある日、クラスメートの星という少女から、自身をとりまく異常な教育環境を「虐待」だと指摘される。 そんな星もまた、自身が親からネグレクトを受けていることを打ち明ける。心を共鳴させあう二人はやがて、自分達を追い詰めた親への〈復讐計画〉を始動させることに――。 教室で浮いていた彼女と、埋もれていた僕の運命が、大学受験を前に交差する。驚愕の結末と切なさが待ち受ける極上の青春ミステリー。



が子を東大に合格させるために行っている高志の両親の行為、間違っている。

しつけであるわけでなく、虐待だ。

高志は、よく耐えていたと思う。


高志は、自分が悪いからだと思っていた。

子どもにとって、自分の家庭が普通と思ってしまうことはあるのかも。


しかし、クラスメイトの星と交流を重ねるうち、自分の置かれた環境は異常だと気づく。


星は親から搾取され、学校も休み がちだった。


そんなふたりは、親への復讐を誓う。

どんな復讐なのか、気になった。


嫌がらせ等の犯人は、想定内だったけど、

ふたりの復讐に、スッキリ。


これからは、親に惑わされることなく、自分で決めた道を進んでほしい。




お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

1(ONE)

加納朋子 東京創元社 2024年1月




 

 

謎に彩られた日々の中で、 あなたは私の一番になった 『ななつのこ』から始まる〈駒子〉シリーズ、 20年ぶりの最新作! 


大学生の玲奈は、全てを忘れて打ち込めるようなことも、抜きんでて得意なことも、友達さえも持っていないことを寂しく思っていた。そんな折、仔犬を飼い始めたことで憂鬱な日常が一変する。ゼロと名付けた仔犬を溺愛するあまり、ゼロを主人公にした短編を小説投稿サイトにアップしたところ、読者から感想コメントが届く。玲奈はその読者とDMでやり取りするようになるが、同じ頃、玲奈の周りに不審人物が現れるようになり……。





ななつのこ』から始まる〈駒子〉シリーズ、 20年ぶりの最新作! と 言われても、「ななつのこ」の内容ほとんど忘れてるよ。


でも、内容忘れていても、

主人公が犬を飼うことで、生活が明るい方に変わっていく様子や

日常の謎を解いていく話は、十分楽しめた。


それに犬目線での話もあり、飼い主を守ろうとする犬のけなげな様子が微笑ましい。


そして、最後まで読んで気づいた。

なるほど、これは、続編だ。


 玲奈とその兄、両親。

素敵な家族だと思った。


「ゼロ」の中で、玲奈は、

〈気になっていたあの人の新生活が読めてうれしいです〉ってコメントしていた。

これも伏線か。



つけたし

以前は、作者にファンレター。

今は、ネット小説にコメント


昔の常識は今の非常識。昔の普通は、今なら虐待〉


20年という年月は、たくさんのことを変えた。

考え方も常識も変わった。

でも、変わらないものもあると感じた読書となった。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


鏡の国

岡崎琢磨 PHP研究所 2023年9月




 

 

大御所ミステリー作家・室見響子の遺稿が見つかった。 それは彼女が小説家になる前に書いた『鏡の国』という私小説を、死の直前に手直ししたものだった。 「室見響子、最後の本」として出版の準備が進んでいたところ、担当編集者が著作権継承者である響子の姪に、突然こう告げる。 「『鏡の国』には、削除されたエピソードがあると思います」――。 削除されたパートは実在するのか、だとしたらなぜ響子はそのシーンを「削除」したのか、そもそも彼女は何のためにこの原稿を書いたのか……その答えが明かされた時、驚愕の真実が浮かび上がる。




室見響子の遺稿で、 ほぼノンフィクションだという小説「鏡の国」


幼なじみであったり、同じ職場である男女が、親しくなっていく様子が描かれていて、ミステリー要素は最初はないのだが、過去の出来事の新しい発見があり、 そのことについて調べていくというストーリー。


友情、恋愛関係、個々の悩み……

ネット配信、コロナ禍における状況などをうまく取り入れ、おもしろいミステリー作品となっている。


これだけで終わってない。

もう一つの仕掛けがあって、これには、 見事にだまされた。

こういう手口があったか!



ただ、

編集者がいう違和感はわかりづらかったけど。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐




放課後ミステリクラブ

①金魚の游ぐプール事件

知念実希人 ライツ社 2023年6月




 

 

夜の学校。プールに放たれた金魚。だれが、なんのために? 4年1組の辻堂天馬・柚木陸・神山美鈴、通称「ミステリトリオ」が先生の依頼で動き出す! 「ぼくは読者に挑戦する」 名探偵・辻堂天馬の挑戦に、キミはこたえられるかーー?



ミステリーの入門書のような作品。


小学生が主人公。

個性的なキャラクター。


身近で起きる事件なので、物語に入りやすい。


挿絵も多く読みやすい。


それでいて、

読者への挑戦状があり、 本格推理なのだ。




あの知念実希人さんが書いたのって、驚きだったけど、あとがきを読んで納得。


子どものミステリー好き、本好きが増えるといいな。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐

水車小屋のネネ

 津村記久子 毎日新聞社 2023年3月




 

 

誰かに親切にしなきゃ、 人生は長く退屈なものですよ 18歳と8歳の姉妹がたどり着いた町で出会った、しゃべる鳥〈ネネ〉 ネネに見守られ、変転してゆくいくつもの人生―― 助け合い支え合う人々の 40年を描く長編小説 毎日新聞夕刊で話題となった連載小説、待望の書籍化!




高校を卒業したばかりの18歳の理佐が、8歳の妹・律を連れて知らない町に働きに出る。

無謀ともいえる行動。


しかし、

姉妹が、その土地で長く暮らせたのは、

理佐ががんばったのはもちろんだが、そば屋の守さん、浪子さん、絵描きの杉子さん、学校の藤沢先生など、まわりの人達の助けがあったからにほかならない。


そのありがたみがわかるからこそ、大人になった姉妹は、困っている人に手を差し伸べる側にたつことが出来たのだと思う。



  鳥が水車の番をするなんて信じられない話だが、この物語を読むと、ネネなら、やれるという気持ちになった。

ネネとの言葉の掛け合いがおもしろい。

ネネに癒やされる。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


老人ホテル

原田ひ香 光文社 2022年10月




 

 

生活保護を受給する大家族で育った天使は、キャバ嬢時代に知り合った投資家の綾小路光子と再会する。訳あり老人たちが長逗留するビジネスホテルにひっそりと暮らす光子の指南で、極貧人生から抜け出そうと、生きるノウハウを学ぶことになるが……。秘密を抱えた二人の「投資版マイフェアレディ」!




ビジネスホテルの清掃員として働く天使。

彼女には、そこに滞在する綾小路光子に話を聞くという目的があった……



大家族のテレビ放送、

視聴者が面白がって見るから、 高視聴率になるのだろう。

自分の意思に関係なく、それに出演していた天使。いやなことも多かっただろうと思う。



その天使に話を聞いて、書こうとしているホテル暮らしのライターの幸子。

過去をほじくり出して自分が目立とうとするいやな女性に思えた。

次第に印象は変わったけど…



親に恵まれず、知識もない貧困の天使が、光子の助言に従って、変わっていく様子は、読んでいて面白い。



生活保護、投資、家計の見直し等、お金に関する話がメインの話。


最後は、納得がいかないなー



話の筋からそれるが、

ホテルにずっと滞在したら、月いくらいるのだろう?


お気に入り度⭐⭐⭐


八月の御所グラウンド

万城目学 文藝春秋 2023年8月




 

 

死んだはずの名投手とのプレーボール 戦争に断ち切られた青春 京都が生んだ、やさしい奇跡 女子全国高校駅伝――都大路にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生。 謎の草野球大会――借金のカタに、早朝の御所G(グラウンド)でたまひで杯に参加する羽目になった大学生。 京都で起きる、幻のような出会いが生んだドラマとは-- 今度のマキメは、じんわり優しく、少し切ない 青春の、愛しく、ほろ苦い味わいを綴る感動作2篇





京都が舞台。

なので、「鴨川ホルモー」を思い出した。


京都、それもお盆の時期だから、こういうことがおこるのかも。


野球がしたいという純粋な気持ちで、集まっているんだな。

 切ないような、温かいような気持ちになった。



メインは、野球の話なのだろうが、方向音痴の 駅伝選手の話もよかった。


補欠だったのに、自分が選ばれたことに対して、まわりの人の気持ちを考えてなかったことに悩む坂東に 、ライバルチームの荒垣の言葉がいい。

来年もがんばれ!



お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

成瀬は天下を取りにいく

宮島未奈 新潮社 2023年3月




 

 

2020年、中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。 コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。 M-1に挑戦したかと思えば、自身の髪で長期実験に取り組み、市民憲章は暗記して全うする。 今日も全力で我が道を突き進む成瀬あかりから、きっと誰もが目を離せない。 2023年、最注目の新人が贈る傑作青春小説!



成瀬は、強烈なキャラだ。


好奇心旺盛で、自分がやりたいと思ったことは、人の目も気にせずに挑戦する。


思い立ったらすぐに行動するので、あきらめる結果になることもあるが、それでも、始めることが重要なことなのだと思う。


 成瀬は信念を持って全力で取り組む、まっすぐで、魅力的な人だと思った。


実際、まわりにいたら、変人って目でみてしまいそうだけど……


この成瀬に振りまわされる島崎は、たいへんだと思ったが、彼女は、それが楽しくもあったのだ。

成瀬と島崎の関係性もいいなと思った。


200歳までがんばれ!


滋賀愛に満ちた作品でもあった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

キスに煙

織守きょうや 文藝春秋 2024年1月




 

 

愛した人は、殺人者かもしれない――。

かつてフィギュアスケーターとして活躍し、引退後はデザインの仕事をする塩澤。
彼と好敵手として競り合い、今もトップスケーターの地位にある志藤。
互いに、自分の持たないものを持つ相手として意識し続ける二人だが、塩澤にはライバル心だけではない、ひた隠しにするもうひとつの思いを抱き続けていた。
ある日、塩澤の昔の恋人であり、志藤とは犬猿の仲であったコーチのミラーが転落死したとのニュースが入る。孤高のスケーターで敵も多かったミラーの死は、周囲に動揺をもたらす。


フィギュアスケーターとしてライバルであり、親友でもある塩澤と志藤。

塩澤が引退してからも、交流は続いていた。



「off stage」で語られる不穏な空気。

誰の視点で書かれているのか?

事件とどう関わっているのかと不安になる。



塩澤の志藤に対する思いが、純粋でいじらしい。

塩澤と志藤のやりとりににんまり。


 ミステリーの中 にあっても、胸キュンものだった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

スピノザの診察室

夏川草介 水鈴社 2023年10月





 

 

雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。




マチ先生は、高い技術を持っているにも関わらず、亡くなった姉の子どもの龍之介と暮らすため、 今は、地域の人達の診察をしている。


治らない病気もある中で、患者とどう向き合っていくのか。

マチ先生の相手に寄り添う診療がいいと思った。


幸せとは何かを問いかけて くる物語だ。


大学准教授の花垣に頼まれての大学病院でのマチ先生の内緒の活躍にほくそ笑む。



研修医の南茉莉は、マチ先生のもとで研修を重ねていくうち、マチ先生の影響を受け、成長していく。

マチ先生と南茉莉とは、いい感じで、花垣教授にからかわれている時のやりとりが面白かった。


京都の銘菓、どれもおいしそう!


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐