ペンギンは空を見上げる

八重野統摩 東京創元社 2018年5月




 

 

将来、NASAのエンジニアになりたい小学六年生の佐倉ハルくんは、風船宇宙撮影を目指しています。ハルくんは意地っ張りなこともあって、同じクラスに友達はひとりしかいません。しかし、あることをきっかけに、クラスのだれとも話そうとしない、金髪の転校生の女の子に妙になつかれました。結局、撮影は三人で挑むことになりますが……。



引き続き、八重野統摩さんの作品。



風船ロケットで実験を繰り返す小学六年生の佐倉ハル。

物理や英語も勉強していてNASAのエンジニアを目指している。

努力家なんだと思う。


しかし、ハルは学校で孤立しているし、家でも母との関係がぎくしゃくしてるけど過去に何があったのか?


転校生の鳴沢イリスは、 教室で誰とも話をしようとしない。


しかし、あることをきっかけに、ハルはイリスになつかれる。



ハルに拒否られても、話しかけにいく人のいい三好。


ハルは三好とイリスとともに、風船ロケットの実験を行うが……



ハルとイリスと三好と……

その関係が徐々に変わっていって、信頼できる関係になっていく様子に心うたれる。


そして、ハルと家族の話し合いの場面では、家族愛を感じた。



最後に明かされる真実に驚き。

そういうことか。

 今までのことに納得がいく。


ハルを応援したい。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐



同じ星の下に
八重野 統摩 幻冬舎 2023年10月



 

 12月の北海道。中学2年の少女・沙耶(さや)は、自分を日常的に虐待をしてきた両親が、今夜、海で自分の殺害を計画していることを知っていた。ところが下校途中「児童相談所の職員」を名乗る男の車に乗せられ、そのまま誘拐・監禁される。監禁下の交流から、ふと彼女は、男が、じつは「本当の父親」ではないかと疑い始める。一方、男は身代金2000万円が目的の営利誘拐であると犯行声明を北海道警察に送りつけ、粛々と計画を進める。男は一体、誰で、目的は何なのか?



中学2年の少女・沙耶(さや)は、児相の職員の渡辺と名のる男に誘拐される。

足を鎖で拘束されているとはいえ、家で虐待されていた沙耶にとっては、監禁されている場所でさえ、快適で幸福ともいえる時間だった。


渡辺は、2000万円を要求すると言っているが、沙耶の両親は、娘のために、お金を用意するのか?


渡辺の真の目的とは?



渡辺と沙耶は、誘拐犯と人質という立場であるにも かかわらず、次第に心を通わせていく様子が微笑ましい。


虐待されている事実があっても、児相は、なかなか保護ができないという実態。

むつかしい問題だ。



 こういうことだったのか。

渡辺も闇を かかえていたんだな。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐




隣人を疑うなかれ

織守きょうや 幻冬舎




 

 

自宅マンションに殺人犯が住んでいる? 隣人の失踪をきっかけに不穏な疑念を抱いた主婦の今立晶は、事件ライターの弟とともにマンションの住人たちを調べることに。 死体はない、証拠もない、だけど不安が拭えない。 ある夜、帰宅途中の晶のあとを尾けてきた黒パーカの男は誰なのか? 平凡な日常に生じた一点の黒い染みが、じわじわと広がって心をかき乱す、傑作ミステリー長編。 ご近所さんのこと、どれだけ知っていますか?




ここ最近起きた殺人事件は、場所も殺し方も違うが、連続殺人なのか?


事件ライターの涼太は、隣のマンションに住む姉とともに、同じマンションの中に殺人犯がいるかもしれないと犯人探しを始める。


誰が犯人なのか?

昔の事件とも関係してきて、思わぬ方向に事件は進んで行く。



隣人は、善人か?悪人か?

同じマンションの中に殺人犯がいるかもしれない。

こんなことがあったら、ぞっとする。


晶の元ヤンキーの大胆な行動。

それに晶の兄嫁の彩は、 裏表のある女で、男の前と女の前で態度を変える女。

この特徴あるのふたりが、事件を追いかけているその様子が面白かった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


平安時代ツアー

紫式部と源氏物語 ゆかりの地をめぐる

東京ニュース通信社 2023年12 月




 

 2024年の大河ドラマ「光る君へ」の放送に合わせて、主人公・紫式部にゆかりのある地のほか、紫式部と関わりが深い藤原道長、清少納言、和泉式部のゆかりの地、源氏物語の舞台など、平安時代をたっぷり体感できるスポットを余すことなく取り上げた、最新ツアーガイド。京都の名所・旧跡などを中心に、実際に行ってみたくなるスポットが満載です。紫式部の年表や紫式部と関わりの深い人々の紹介ほか、平安時代の年中行事、祭り、源氏物語を題材にした美術品などなど、興味深い、気になる情報も多数掲載。さあ、本書を手に今すぐ、大河ドラマの舞台へ出かけよう!



NHK大河ドラマ「光る君へ」を意識して作られた本。


紫式部と源氏物語のゆかりの地が、

こんなにもたくさんの場所があることに驚き。


写真が豊富で、その写真がいい所をとらえていて、とても素敵な写真。

そんな写真とともに紹介されていて、

行ったことのある場所では、そんな所だったのかと新しい発見があり、

知らない場所は、行きたくなる。


京都などの寺めぐりは好きだが、こんな風に紫式部と源氏物語のゆかりの地をめぐるという目的で行くというのは、また違う楽しみがあるように思う。


実際に行かなくても、読んでいるだけで楽しい。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

なれのはて

加藤シゲアキ 講談社 2023年10月




 

 

ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動することになったテレビ局員・守谷京斗(もりや・きょうと)は、異動先で出会った吾妻李久美(あづま・りくみ)から、祖母に譲り受けた作者不明の不思議な絵を使って「たった一枚の展覧会」を企画したいと相談を受ける。しかし、絵の裏には「ISAMU INOMATA」と署名があるだけで画家の素性は一切わからない。二人が謎の画家の正体を探り始めると、秋田のある一族が、暗い水の中に沈めた業に繋がっていた。


 1945年8月15日未明の秋田・土崎空襲。 芸術が招いた、意図しない悲劇。 暴走した正義と、取り返しのつかない後悔。 長年秘められてきた真実は、一枚の「絵」のミステリから始まっていた。


イベント事業部の守谷京斗と吾妻李久美は、

一枚の絵の展覧会を企画。

その絵の著作権をめぐり、作者を調べるが、そこには、深く重い家族の歴史があった。


過酷な環境にあって、それぞれが生ききった人生は、壮絶なものだつた。


戦争が、一日早く終わっていたらと思わずにはいられない。


報道局から異動になった守谷京斗の事情やイベント部の吾妻李久美と彼女の母との確執も描かれ、深い内容になっている。


そして、展覧会は、行うことができたのか?


あの時のあの人は、あの人だったんだ。


ラストは、 よかったなあと暖かい気持ちになった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

私たちの世代は

瀬尾まいこ 文藝春秋 2023年7月




 

 

「明日が怖いものではなく楽しみになったのは、あの日からだよ」 今でもふと思う。あの数年はなんだったのだろうかと。 不自由で息苦しかった毎日。 家で過ごすことが最善だとされていたあの期間。 多くの人から当たり前にあるはずのものを奪っていったであろう時代。 それでも、あの日々が連れてきてくれたもの、与えてくれたものが確かにあった――。




コロナ禍に学生だった世代の心晴と冴。

自由が奪われ、学校にも行けない日々。

当たり前の生活が奪われ、つらい経験をしたに違いない。

そのことが原因で、不登校になったり、いじめられたりしたこともあったかもしれない。

けれど、そんな中でも、得たものはある。



心晴にオンラインでいろんな習い事をさせようといた心晴のママ。


夜の仕事をしながら、娘冴のこれからを考えて行動していた冴のママ。


形は違えど、子どもを愛しているからこその行動だったのだと思う。



心晴と家庭教師とこんなつながりがあったとは!


育児放棄されていた蒼葉のことを思うとつらいが、冴のママのように行動をすぐ起こしてくれる人がいてよかったと思う。




就活で知りあったふたりが、親しくなっていき、お互いを尊重しあう姿がよい。


登場人物たちが、前向きになれたことがよかった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

オールノット

柚木麻子 講談社 2023年4月




 

 

友達もいない、恋人もいない、将来の希望なんてもっとない。 貧困にあえぐ苦学生の真央が出会ったのは、かつて栄華を誇った山戸家の生き残り・四葉。 「ちゃんとした人にはたった一回の失敗も許されないなんて、そんなのおかしい」 彼女に託された一つの宝石箱が、真央の人生を変えていく。



苦学生の真央が出会った試食販売の店員四葉さんとの心温まる話かと思いきや四葉さんの育った山戸家の話や仕立屋のミャーコさんの話やクッキー缶に描かれている女の子の絵の話など、時代をさかのぼり描かれる壮大な物語だった。


ジェンダー問題や性被害、貧困といった問題が含まれている。


女性にやさしくない世の中だったと感じた。


オールノットとは、真珠のひとつが外れても、バラバラにならない 作りのことらしい。

人生、ひとつの失敗があっても、すべてが悪くなるわけではないと言っているようだ。


お気に入り度⭐⭐⭐

生きる

監督 黒澤明

出演 志村喬/小田切みき/小堀誠/金子信雄/千秋実/菅井きん/宮口精二/加東大介

1952年



 


黒澤明が人間の真の生きがいを問うたヒューマンドラマの傑作。胃癌に冒され余命幾ばくもないことを知った公務員が、市民のために小公園を建設しようと奔走する姿を描く。



TVで放映されていたので鑑賞。


市役所で無為な時間を過ごしていた男。


自分が癌に冒され、余命幾ばくもないことを知る 。


彼 は消沈し、どうしていいかわからない。


息子夫婦に話そうとするが、話せない。


自堕落な時間を過ごしていたが、

ある時一心発起、市民の人たちのために、働く。


その働きぶりは、彼が亡くなってからの 彼と関わった人たちの話で明らかになっていくこうせ。


生きるとは、どういうことなのか。


♪命短し恋せよ乙女♪とブランコで歌う場面が印象的。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

暗い引力

岩井圭也 光文社 2023年12月





 

 

わたし、悪くない。ひとりで破滅なんて絶対しない。妻に先立たれ養子の息子と向き合う老人。仕事が忙しい妻を支える気弱な夫。地方の美術館でくすぶり続ける学芸員。倒産や理不尽なリストラで無職となった同級生たち。借金苦から逃れようともがく老女。会社ぐるみで不正を隠蔽する社畜たち。彼らに正論は通じない。ひとつの嘘から、転がりだす悪意の連鎖。強がり、もがき、這い上がろうとする嘘つきたちが最後につかんだものは?



 暗い引力に引き込まれてしまうような結末が待っている短編集。

それは、自分が起こした結果なのだから仕方ないこと。

この結末にどう向き合うのか?

乗り切れるのか?




海の子」

養子の息子が、どんな経緯で養子になったのかを聞くが……


僕はエスパーじゃない」

妻の顔色ばかりを見ている夫。

妻の問いかけに、夫は、妻の期待した答えを返すことができるのか?


 「捏造カンパニー」

訪問者の嘘を見破ったのに、そのことを確認するための電話が、墓穴を掘ることになる話が面白かった。


極楽」

借金から逃げるため、認知症のふりをしていたら……


蟻の牙」

書簡や電子メール、通話記録などから、企業の不正が明らかになっていく話。

夫を亡くした妻の執念は深い。


堕ちる」

自分の妻の絵だけを何年間も詳細に書き続ける。

そのこと自体がおそろしい気がした。

もっとおそろしいことが起きるけど~



全然違った内容の話で、ここまで読者を引き込ませるとは!


どんでん返しのような驚きはないが、じわじわと黒い影が襲ってくる感じ。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

夫よ、死んでくれないか

丸山正樹 双葉社 2023年10月




 

 

大学の同級生だった麻矢、璃子、由里香。 卒業後疎遠だった3人は、三十代半ばで璃子の離婚騒動をきっかけに再び集まるようになる。既婚、バツイチ、子持ちと立場は異なるが夫への不満という共通点のある彼女たちの集まりの最後は、大抵この言葉で締めくくられる。 「うちの夫、死んでくれないかしら」。 そんなある日、麻矢の夫が何の前触れもなく姿を消してしまう。 会社も無断欠勤しているらしい。夫は一体どこへ、夫の身に何が起こったのか――。 誰もが、結婚前にはいいことしか言わない。どうして教えてくれなかったのだろう、結婚した後に、激しい孤独や、生活の虚しさや、将来への不安を抱えることなんて。 結婚の本質と危うさに迫る、ノンストップ・ミステリ。




大学の同窓生3人は、今も交流があり、会って話すことと言えば、夫の悪口。

それもひとつの不満のはけ口なのだと思う。

結婚後は、思っていたのと違うことって、そりゃ、あるよ。


ポロッとこぼした愚痴から、まわりが異常に反応してしまうことってあるなあと。

それもこわい気がした。


女3人の関係が、かたく結ばれていて、それが、うらやましいような、そこまでとなるとこわいような……。


麻矢の夫の失踪の真相、まあ、想定内。



お気に入り度⭐⭐⭐