シュレーディンガーは量子力学を波動方程式によって理解しやすくしてくれた科学者。
そういえば、ボーアやハイゼンベルグなどはあるけど、ディラックのイラストはまだ描いてなかったなあ・・・とふと、思いました。いずれ。
さて、第2日4限は、組み立てた霧箱で放射線の観察と実験をします。
まず、放射線の軌跡をみるための準備。
霧箱にいれた箱全体に行き渡らせるための作業と、ドライアイスでアルコールを冷やす作業を行います。
奇跡を見やすくするため、見る側からライトの光を当てます。
ライトはLEDで手作りしたものを使いますが、こういう電子工作は苦手な人もいるでしょうから、ご家庭で作る場合は、市販のLEDライトで照らしてもいいでしょう。
しばらくして冷えてくると、アルコール蒸気の過飽和層ができてきて、飛び交う宇宙線の軌跡が見えてきます。
自然放射線の軌跡の形から、放射線の種類が推測できます。
とくにはっきりわかるのは、一直線の長い軌跡。これは宇宙線から生まれた高エネルギー放射線のミューオンの軌跡です。
非常に大きなエネルギーで飛んでいるので、寿命も長く(相対性理論の効果です)、地上に到達する放射線の8割を占めます。
電子と似た性質を持ちますが、質量だけが電子の200倍ほどあります。
水平というと横から飛んできているということなので、宇宙線という感じがしませんが、地球は丸いので、例えば夕日の光のように、宇宙から大気中を水平に長い距離走ってきたミューオンです。
次に長い軌跡は電子、つまりベータ線です。ミューオンほどエネルギーが高くないので、軌跡も少しヒョロヒョロとしています。
太くて短い軌跡はヘリウムの原子核、つまりアルファ線です。
ガンマ線は光で、帯電していないため、軌跡をつくりません。
通常の霧箱だとここまで性能が高くないので、自然放射線はほとんど見えません。したがって、霧箱実験は放射性物質を使って行います。
ここで用いている放射性物質は、以前売っていた、ガスランタンのマントル(登山用品です)。糸を網状にした形態のものです。
どういうわけか、放射性物質のラドンが含まれていて、そこからアルファ線が放射されています。
林さん情報によると、あの福島原発事故のあと、アルファ線を出すタイプのものは販売されなくなったとか。
このガスマントルを注射器に入れ、ラドンを含む空気を注射器で霧箱に注入します。
短く太い軌跡がいっぱい見えますね。
ところで、画面真ん中に見えるV字型の軌跡は、何でしょう。
ラドンの放射性崩壊は図のような系列で連続して起こります。
Vの字に見えるのは、1つ目のアルファ線を出したあとの原子核がほとんど間を置かずに2つ目のアルファ線を出した結果。
2つの放射線が同時に現れたわけではありません。
最後の写真、右側中央にある細いV字の軌跡。
これはさきほどの軌跡とは違い、同時に生まれたものと思われます。
ガンマ線が電子と陽電子に変わった(対生成した)ときの、電子、陽電子の軌跡でしょう。
運が良ければ、見ることができますが、そうしょっちゅう起こる反応ではありません。
磁場がかかっていれば、それぞれの軌跡が逆向きのカーブをするので、電子と陽電子であることがはっきりするのですが。
では、今回は、このへんで。
次回が、最終回となります。
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