放送大学20231日目その2 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 有名なフレミングの左手の法則は、教育のための法則。

 学生たちが電流が磁場から受ける力の向きを理解するのに四苦八苦しているのを見て、覚えやすい方法はないかと考えたのが左手の法則です。

 さて、放送大学1日目の続きです。

 静電気のあとは静磁気と、電流と磁気の関係。

 静磁気はガリレオの時代にギルバートが研究し、当時の科学者に大きな影響を与えました。空間を飛び越えて働く磁力は、太陽と惑星の間に働く力の候補として大いに魅力があったからです。

 電気磁気の研究で、もっとも重要だったのは、ボルタによる電池の発明でしょう。電池の登場で、一定の電流が作れるようになり、電気と磁気の研究が大いに進んだのです。

 

 

 以前は、電池の例としてレモン電池も紹介していましたが、前回と今回は全体のバランスを見て割愛しています。

 

 

 静磁気の最初は強磁性。

 でも、その仕組はあまり知られていません。

 磁石のNSは方位を用いて調べるのがベストなのですが、放送大学の建物は鉄だらけで、実験室内では場所により磁石の向く方向が変わるため利用できず。NSのわかっている磁石との関係で手作り磁石のNSを決めてもらいました。

 強磁性の仕組みを見るための「粉磁石」は古くから知られているものです。

 ぼくが知っている限りでは板倉さんの「仮説実験授業」で紹介されたのがもっとも古いのですが、板倉さんもそれ以前の教育実験の成果を多く取り入れているという話で、オリジナルが誰のアイディアだったのかはわかりません。小さな磁石(実際の鉄では「磁区」と呼ばれます)の向きが揃うことで、全体が磁石として反応するようになる、という実験です。

 ニクロム線に電流を流して加熱させ、強磁性を消す実験は、物理サークルの先輩の山本さんから教えていただいたもの。キュリー点を超えると磁性をなくすのですが、その原因は向きのバラバラな熱運動。粉磁石の反対ですね。

 ニクロム線が冷えていくと、徐々に磁区の向きが揃い、最後には磁石の磁場のため、ニクロム線も弱く磁化されます。

 これは、ちょうど溶岩が冷えるときに地球磁場で磁化されるのと同じ。火山や海底の岩盤の磁化の研究が、かの大陸移動説の強力な裏付けになった話も、少しだけさせていただきました。

 

 

 強磁性に比べると、反磁性・常磁性は、一般にはほとんど知られていません。反磁性・常磁性を発見したのはファラデー。場の理論の提唱者にして、数々の電磁気現象の発見者。数学を知らない偉大な物理学者です。

 緑色の鉛筆は100円ショップで手に入れましたが、この塗料は滑りがよく、反磁性実験にぴったり。なんと、竹串でさえ反応します。

 竹串の場合は、摩擦を減らすため、鉛筆の上に少し斜めに傾いた状態にして、かるく上からつついて上下に振動させ、磁石を近づけると反応します。

 昨年度まではやじろべえを作ることで実験していましたが、鉛筆を使う実験に戻すことで、より簡単に実験できるようになりました。

 

 

 さて、いよいよ電磁気。

 その象徴的な実験として、例年見ていただいているのが、やかんスピーカー。電流と磁石が力を及ぼし合うのを利用して、電流の振動を音の振動に変換するのがスピーカーです。

 このコイルと磁石を直接頭に当てると、頭蓋骨を鳴らす骨伝導スピーカーにもなります。

 

 

 電流の回りに右回りに磁場ができるのは「右ねじの法則」、電流が磁場からどちらにも垂直な向きに力を受けるのが「左手の法則」です。電磁気の法則は立体的な関係になるので、向きを直感的に知るためには、右手や左手といった「道具」が必要になります。

 これらの知識は中学や高校で学びますが、実際に実験する機会は少ないので、それを体験してもらうことが、ここでのテーマです。

 

 最後は例年やっている探求実験。

 自由な発想で議論して、各グループの意見を発表していただいています。

 ファラデー的な発想や、マクスウェル的な発想が登場して、興味深いですね。

 科学の理論は唯一ではないことも、この探求実験を通して感じていただけると思います。

 

 このあと、各グループの発表についての講評と、実験の原理についての解説を行っていますが、これはここでは、割愛。

 受講生の皆さんの特典とさせていただきます。

 

 では、今回はここまで。

 

 

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