第1章 量子の国へ
1
あー、つまんないな。せっかく6年生になったのに。
小学校からの帰り道、さりは雨上がりの空をながめました。太陽を背(せ)にすると、大きな虹が見えます。
太陽の光が空中の雨粒で七色に分かれて反射してくるんだったよね。プリズムで光を七色に分けたり、ホースの水をまいて虹を見たり、まえはいろいろ、みんなでやったのになあ。
さりは3年生のときから、仲間を集めて、科学の実験をして楽しんできました。どの仲間も、科学が大好きな子ばかりです。
小学校の隣にある高校の科学部に遊びにいっているうち、自分たちでも科学部を作りたいと思ったのです。高校の科学部の人たちは、自分たちのことを科学探究隊、略して科探隊と呼んでいました。(*1)
そこには、不思議な力をもったネコ人間というか、妖精(ようせい)みたいな子が出入りしていました。名前はミオくん。なんでも、物理法則の番人で、いろんな世界を行き来して、その世界の問題を解決しているのだそうです。さりも、何度か、科探隊とミオくんの不思議な冒険に連れて行ってもらいました。(*2)
さりたちも、科探隊をまねて、自分たちのことをひそかにキッズ科探隊と呼ぶことにしました。
なんか、いい響きでしょ。
いつも冷静で論理的な、れん。ノートになんでも記録するメモ魔の、しもん。突拍子もない思いつきでみんなを驚かす、かのん。
とても楽しい仲間でした。
でも。
5年生の二学期に、しもんはお父さんの仕事の都合で、福井に引っ越しました。福井は恐竜の化石の見つかったところです。お別れの時、しもんは化石掘りをするんだと、ちょっとさみしそうにいいました。
れんは家の方針で、中学校は難しい私学を受験することになりました。だから、6年生になってからは、れんは塾通い。さりたちと遊べなくなりました。
かのんは、中学はさりと同じ公立に進みますが、中学では陸上部に入ってみたいと、学校が終わると毎日走っています。
あれほど楽しかったキッズ科探隊も、5年生までで一区切り。
科学の探究は、一人でもできるもん。
さりは、めげませんでした。
身の回りは自然現象でいっぱいです。
観察したり、実験したりするのは、やっぱり、楽しい。
ともだちが去っても、さりの科学への興味はなくなりませんでした。
【つづく】
(*1)『いきいき物理マンガで冒険』『いきいき物理マンガで実験』(日本評論社)をご覧ください。
(*2)電子本『さりと12のひみつ』日本評論社(Amazon、Kindle版)をご覧ください。
***
娘と相談した結果、作品のタイトルは『さりと量子の国』とすることにしました。
この作品はマンガではなく、イラスト付きのノベル形式、つまり絵物語で発表することにしました。
小説形式の利点は、マンガより、科学内容の説明がくわしくできることでしょうか。『ソフィーの選択』のような話にできたらなあ、と思っています。
副題の「小6からの量子力学」は、娘がこの春に小6になったので、それに合わせました。娘が読んでわかる内容にしたいと思っています。
ブルーバックスに「10才からの量子力学」というようなタイトル(うろ覚えですみません)の本がありますが、読んでみたらとても10才ではわからない内容でした。
ぼくの「さりと量子の国」はタイトル倒れにならないようにしたいですね。
関連記事
さりと量子の国01 第1章 量子の国へ1〜小6からの量子力学
さりと量子の国03 第1章 量子の国へ3〜小6からの量子力学
さりと量子の国04 第1章 量子の国へ4〜小6からの量子力学
さりと量子の国05 第1章 量子の国へ5〜小6からの量子力学
〜ミオくんと科探隊 サイトマップ〜
このサイト「ミオくんとなんでも科学探究隊」のサイトマップ一覧です。
*** お知らせ ***
日本評論社のウェブサイトで連載した『さりと12のひみつ』電子本(Kindle版)
Amazonへのリンクは下のバナーで。
『いきいき物理マンガで冒険〜ミオくんとなんでも科学探究隊・理論編』紙本と電子本
Amazonへのリンクは下のバナーで。紙本は日本評論社のウェブサイトでも購入できます。
『いきいき物理マンガで実験〜ミオくんとなんでも科学探究隊・実験編』紙本と電子本
Amazonへのリンクは下のバナーで。紙本は日本評論社のウェブサイトでも購入できます。