さり「やほお! また、来ちゃいました!」
とっぴ「あ、小学生・・・えっと・・・」
あかね「こんにちは、さりちゃん」
さり「どうも、こんにちはです、せんぱいがた!」
とっぴ「うふっ、せんぱいだって!」
ろだん「きょうはなんだ? ミオくんは来てないぜ」
さり「あ、そうですか。いつもいるわけじゃないんですね。そうですかあ」
とっぴ「うわ、あからさまにがっかりしてる」
さり「いえいえいえ、そんなことないですないです。きょうは、前回とはべつのしつもんがあって、お話をうかがいにきました」
とっぴ「なに? また、へんなの?」
さり「へんじゃないです。オーロラです」
ろだん「オーロラ? あの、北極(ほっきょく)とか南極(なんきょく)とかで見られる、光のカーテンみたいなやつか」
さり「そうですそうです! それです、オーロラです! まさに光のカーテンです。ろだんせんぱい、さすがです!」
ろだん「いや、それほどでも」
さり「どうして空が光るんだろうって、みんなで考えたんですけど、わからなくて。それで、科学部(かがくぶ)をだいひょうして、わたしがはけんされたんです」
とっぴ「ふうん、ミオくんに会いたかっただけじゃないの?」
あかね「とっぴ! そういうこといわないの!」
ミオくん「やほ! あれ? その子、また来てるね」
さり「わー、ミオくんだ! おひさしぶりです、たつみ小学校科学部キャプテン、さりです」
とっぴ「やっぱり、ミオくんめあてじゃん」
さり「ちがいますちがいます。それは、ミオくんに会えてうれしいですけど。でも、きょうはオーロラのひみつをうかがいに来たんです。ぜんかいのレッドムーンの話をみんなにしたら、みんな、山根高校(やまねこうこう)科探隊(かたんたい)のファンになっちゃったんです。今回も、科探隊のせんぱいがたなら、オーロラのひみつをときあかしてくれるにちがいないって」
とっぴ「ね、みんな、聞いた? ファンだって!」
あかね「もー、ちょうしがいいわね、とっぴ」
ろだん「でも、オーロラは・・・むつかしいぜ」
むんく「むつかしいほうが・・・おもしろい」
ろだん「まあ、そうかもな。ちょっと、おれもきょうみが出てきたな。しらべてみるか」
あかね「うん、いいかもね。きょうのテーマは、それにしましょうか」
とっぴ「よし、けってい! きょうは、オーロラ! ミオくんも来てるし、いざとなったら、北極でも南極でもつれていってくれるし」
ミオ「・・・オフの日は、時計の力をつかいたくないんだけど。前のときも、いったよね?」
とっぴ「さて、みんな、山根高校科探隊(やまねこうこうかたんたい)のめいよにかけて、オーロラのひみつにいどもう!」
あかね「おおげさね、とっぴ」
さり「あ!」
とっぴ「え? なに?」
さり「やまねこうこうって、ヤマネコってことばがはいってますね! ヤマネコといえば、ワイルドキャット。イタリア語ではリンチェイじゃないですか!」
とっぴ「え、そうなの?」
むんく「リンチェイ・アカデミー・・・」
さり「そうですそうです! かのガリレオ・ガリレイがいたという超有名(ちょうゆうめい)な科学者(かがくしゃ)のあつまり、リンチェイ・アカデミー、つまりヤマネコ学会(がっかい)!」
とっぴ「超有名なの? ぼく、知らないけど」
あかね「そういえば、まえにミオくんからしょうたいされて、ガリレオ島に行ったとき、ヤマネコのカードをもらったわね」
さり「それです! わたし、よみました! 『ガリレオ島の秘宝(ひほう)』! すごくおもしろかったです!」(※アドベンチャーゲーム「ガリレオ島の秘宝」)
とっぴ「あれは、たいへんだったなあ・・・洪水(こうずい)にあったり、海におちたり・・・」
あかね「とっぴがまちがった答をえらぶからよ」
ろだん「話をもどそうぜ。オーロラだろ。あの光、にたようなのを、どこかで見たんだよな。どこだっけ・・・」
むんく「オーロラは緯度(いど)60度から80度のあいだ(北極や南極に近い地域)で見られる。カナダとか」
とっぴ「ろだん、カナダ行った?」
ろだん「いや。そうじゃなくて・・・実験(じっけん)で・・・なんだったかな」
あかね「オーロラを見る実験なんて、あるの?」
ろだん「ていうか、にたようなかんじの光だったんだ・・・(スマホを見て)・・・あ、あった! これだ」
さり「あーっ、ほんとうですです! にてます!」
とっぴ「ろだん、これ、なんのしゃしん?」
ろだん「これだよ。明かりをけしてとったんだ」
さり「うわあ、すごい! なんですか、これ! かっこいいそうちですね!」
ろだん「真空放電(しんくうほうでん)の実験(じっけん)だよ。真空(しんくう)ポンプでガラスかんの中の空気をぬいてうすくして、ガラスかんのりょうがわに高い電圧(でんあつ)をかけると、中の気体(きたい)が光るんだ」
とっぴ「真空なのに、気体があるって、ヘンじゃない?」
あかね「そうね。うすくても気体がのこってるなら、真空(しんくう)じゃないわ」
ろだん「おれにいわれてもな。ふつうは真空放電(しんくうほうでん)って、よぶんだ。たしか、せいしきには低圧放電(ていあつほうでん)だったかな。やってる人たちは、そんなことわかってるよ」
あかね「でも、どうして気体が光るのかしら」
むんく「げんしはっこう・・・」
さり「げんしはっこう・・・って、なんですなんですか?」
あかね「思いだした! 原子発光(げんしはっこう)ね。ほら、分光(ぶんこう)くんの実験(じっけん)のとき、ミオくんがよんだ人がおしえてくれたじゃない!」(※『いきいき物理マンガで実験』第15話「原子の発光を見る」)
とっぴ「ええと、なんだっけ?」
ろだん「原子(げんし)のエネルギーはとびとびで、エネルギーをもらった原子が低いエネルギーにもどるときに出す光も、とびとびの原子にとくゆうなエネルギーの光になるっていってただろ」
とっぴ「えへへ・・・わすれた」
さり「とくゆうなエネルギーの光っていうと、どうなるんですか? エネルギーが高いほど明るいとか?」
あかね「とびだす光は光子(こうし)っていうつぶになっていて、光子のエネルギーがかわると、光の色がかわるのよ。にじの七色のじゅんに。エネルギーが高いと青く、エネルギーが低いと赤くなるの」
とっぴ「ええと、にじの七色っていうと、赤と緑と青と黄色と・・・」
さり「赤、だいだい、黄、みどり、青、あい、むらさきですね! このじゅんに光のエネルギーが大きくなるってことですか?」
あかね「さりちゃん、すごいね。にじの七色のじゅんばん、知ってるの」
さり「むかしの人は、にじの七色を『せきとうおうりょくせいらんし』って、じゅもんみたいにしておぼえたんでしょ? おもしろかったので、みんなでおぼえっこしたんです!」(※にじの七色をかんじで書いた『赤橙黄緑青藍紫』を音よみすると『せきとうおうりょくせいらんし』となる)
ろだん「すげえな、たつみ小学校の科学部は・・・」
さり「それで、でんきのエネルギーをもらって、気体が光るんですよね。どうやって、でんきのエネルギーをもらっているんですか」
ろだん「目に見えないけど、このガラスかんの中を、電子(でんし)のつぶがびゅんって、とんでいるんだ。それが気体の原子にぶつかって、エネルギーを与えている。電子のつぶは小さすぎて、人間の目には見えないけど、気体が光ることで、電子がとんできてぶつかっていることがわかる」
とっぴ「あれ? でも、もしこれとおなじしくみでオーロラが光ってるなら、高電圧(こうでんあつ)で電子をとばしているのは何かな?」
さり「あ、そうですね! かみなりですか?」
ろだん「さあ、どうだろうな」
ミオ「オーロラの場合は電圧とかは関係ないよ。もともとエネルギーの高いつぶがとんできて、空気中の原子を光らせるんだ」
とっぴ「エネルギーの高いつぶって、何?」
ミオ「太陽からやってくる、太陽風のつぶだね」
さり「うーん、ちょっと、ぴんときませんです」
とっぴ「ほんもののオーロラを見てみれば、わかるかも! ね、ミオくん!」
ミオ「だめだめ、きょうはオフ!」
さり「え? オーロラ、見られるんですか!」
とっぴ「ミオくんが時計にちょっとさわれば、どこへでも行けるよ」
さり「わあ、すごいです! わたしもみなさんといっしょに行けますか」
とっぴ「ミオくんがつれていってくれるよ」
さり「ほんとですか! ぜひぜひおねがいします」
ミオ「うーん、もう、しょうがないなあ。じゃ、今回だけ、とくべつサービスだよ」(時計をそうさすると、けしきがかわり、空にオーロラが見える)
さり「うわあーっ! これですこれです! ほんものだあ!」
あかね「きれい・・・」
ミオ「ここはカナダの北のほうだよ」
ろだん「みどり色に・・・赤っぽい色・・・光ってる感じは、やっぱり真空放電(しんくうほうでん)ににてるな」
さり「じゃ、あそこで、でんしが気体のげんしにぶつかって光らせているんですか」
ミオ「ぶつかってるのは、太陽風でやってきた陽子(ようし)と電子(でんし)。日本のような緯度(いど)の低いばしょでも、じょうけんがそろえば、赤っぽいオーロラを見られることもある。赤光(しゃっこう)っていってね。ただ、目では見えないことが多いよ」
とっぴ「太陽の風って、なに?」
あかね「聞いたことがあるわ。太陽から陽子や電子がとびだしてくるのを、太陽風というって」
とっぴ「うん? それ、おかしいよ。太陽からふいてくる風なら、赤道のあたりのばしょに当たるんじゃない? どうして、北極や南極の近くで見られるのさ」
さり「わたしも、そう思います!」
ミオ「地球の磁力線(じりょくせん)のせいだよ。電気をもったつぶは、磁力線のあるところだと、円をえがいてまわりながら、磁力線にそってすすむんだ。ちょうど、磁力線にまとわりつくようにらせんをえがいてね」
あかね「あ! ローレンツ力ね!」
さり「なんですか、それ」
あかね「うごく電気のつぶは磁力線から、じぶんの進む向きにすいちょくにローレンツ力とよばれる力をうけるの。いつも進む向きにすいちょくに力をうけると、つぶのうごきは円になるのよ。つぶが磁力線にななめに進むときは、円をえがきながら前に進むから、らせんになるの」
とっぴ「あかね、くわしいね」
あかね「来年(らいねん)の物理(ぶつり)でやるところよ。ちょっときょうみがあって、じぶんで勉強(べんきょう)したの。みんな、そうしてるでしょ?」
むんく「うん・・・数式(すうしき)とか・・・」
ろだん「まあ、おれは実験(じっけん)にかかわるところだけを、くわしくかな」
とっぴ「えっ、みんな、そんなことしてるの?」
あかね「あたりまえじゃない。すきなことなんだから、きょうみがわいたことは、じぶんでかってに研究(けんきゅう)するわよ。わたしたち、科探隊(かたんたい)、つまり、科学探究隊(かがくたんきゅうたい)でしょ」
とっぴ「いやあ、はは・・・ぼくは、そういうふうに考えたこと、なかったなあ」
さり「あ! わたし、わかっちゃったかも!」
とっぴ「え? なにが?」
さり「さっきの図ですけど、太陽風のつぶが磁力線(じりょくせん)にまとわりつくように進むなら、こんなふうに磁力線のかたちにそって進むでしょ? だから、赤道(せきどう)ふきんへは行かず、北極(ほっきょく)や南極(なんきょく)の近くへ運ばれるんじゃないですか?」
ろだん「おーっ」
あかね「そうね!」
むんく「うんうん」
ミオ「さりちゃん、せいかい! 太陽風のつぶは、この図のように磁力線(じりょくせん)にそって進み、高い緯度(いど)のばしょへはこばれるんだ」
ろだん「そっか・・・それで、北極(ほっきょく)や南極(なんきょく)の近くでオーロラが見られるのか」
とっぴ「ちょ、ちょっと、まった!」
あかね「なんなの?」
さり「なんですか、またなんか思いついちゃったんですか? とっぴせんぱい!」
とっぴ「この図だとさあ、太陽風が分かれて北極と南極にはこばれるんだから、北極のちかくでオーロラが見えるときって、南極のちかくでも同じようなオーロラが見えるんじゃない?」
ろだん「おー・・・」
あかね「じゃ、いま、南極のちかくへ行けば、そっちでもオーロラが見えるのかしら」
さり「わー、たしかめたいです! いますぐすぐ! ミオくーん!」
ミオ「・・・なんか、オフの日であそびにきただけなのに・・・いいね、これでさいごだから。南極にちかいばしょで、夜になっているところへ、いどうするよ・・・」
さり「うわあ! 見えます見えます! ここでもオーロラ、見えます!」
ろだん「すげえぞ、とっぴ! 当たりだ!」
とっぴ「いやーははは! なかなかろんりてきだったでしょ!」
あかね「まぐれあたりじゃない?」
さり「そんなことないです! とっぴせんぱいの思いつき、わたしもナットクでした!」
ミオ「うん、とっぴにしては、めずらしくかくしんをついたね」
とっぴ「ふっふっふ、どう、あかね?」
あかね「もう、すぐちょうしにのるんだから!」
さり「すごくオーロラわかりました! あした、みんなにほうこくします!」
とっぴ「そうだ、さりちゃんを科探隊のとくべつ隊員(たいいん)にしてあげよう」
さり「えー、ほんとですか! うそじゃないですよね!」
あかね「また、かってにきめて! ・・・でも、さりちゃんなら、いいかな」
ろだん「ああ、おれもさんせい」
むんく「ぼくも」
さり「わあ、うれしいですがんばります!」
ミオ「うーん、これからオフの日に来ても、いろいろいそがしくなりそうだなあ・・・」
※小3の娘に読んでもらって、わかりにくいところを少し変えたり、文章を追加したりしました。
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