ガリレオ島の秘宝 01 START
ある日、きみは久しぶりに、科探隊に遊びに行った。
科探隊は「なんでも科学探究隊」の略称で、個性的なメンバー、とっぴ、あかね、ろだん、むんくの四人からなるクラブだ。いつも不思議な実験をしたり、謎の議論をしたりして、科学の世界を楽しんでいる面白い連中だ。きみが遊びに行ったときはいつでも大歓迎してくれるので、きみはそろそろ、科探隊に入ろうかなと考えているところだ。
ところが、この日は特別だった。きみが見たことがない、第5のメンバーが登場したのだ。
「やほー」
どこからともなく、蝶ネクタイをした二本足で立って人間の言葉をしゃべる猫が現れたのだ。自分と同じくらいあろうかと思われる、大きな懐中時計を引きずっている。
これが噂のミオくんか、ときみは思った。とっぴたちから、その噂は聞いていた。科探隊の前にときどき現れて、科学の不思議な世界へ連れて行ってくれるという謎の猫だ。
ミオくんは、科探隊隊長のとっぴに、1枚のカードを手渡した。
「なに、これ」とっぴは興味しんしん、それを覗き込んだ。きみたちもいっしょになって、覗き込む。
カードにはワイルドな猫の絵が描かれていた。
「ネコ? トラ? ヒョウ?」とっぴは首をひねった。
「山猫だよ。これは山猫団の紋章(エンブレム)なんだ。ガリレオ島に隠された秘宝を科探隊に探してほしいって、山猫団から依頼を受けたのさ。ぼくが道案内するよ。レフェリーを引き受けたからね」
「山猫団って、なんなの?」あかねが首をかしげた。
「秘宝? おもしろそうだな」と、ろだん。
「ガリレオ島って、どこにあるの? 外国? だったら、ぼく、パスポートないよ」とっぴが心配そうにいった。
「だいじょうぶ、これを使うから」ミオくんは大きな懐中時計のリューズをカチリとひねった。
「あっ」
叫び終わらないうちに、きみたちはあっという間に見知らぬ町の港に移動していた。周りを見ると外国の人ばかり。港には大きな船が停泊している。どこだかわからないが、外国の港らしい。船のなかに、ひときわ目立つ帆船があった。
「あの船がガリレオ島に向かう船だよ。さ、乗って、乗って」ミオくんにうながされて、船のタラップを上ると、背の高いヒゲもじゃの船長が出迎えてくれた。
「ペラペラペラ・・・」
「うわ、英語?」
「ちがうよ、イタリア語。ここはイタリアの港町だからね。ぼくが船長の言葉を訳してあげるよ。『偉大なる科探隊のみなさん、ようこそガリレオ島へ。山猫団はあなたたちに期待しています。ガリレオ島のどこかには、ガリレオの秘宝が隠されています。秘宝へ至る迷宮には、いにしえのリンチェイ・アカデミーによって、いくつもの関門が設けられています。この数百年、数え切れない挑戦者が迷宮に挑みましたが、最後まで到達できた者はいません。どうか、あなたたちの力で、迷宮を突破し、ガリレオの秘宝を手に入れてください』だってさ」
「うわあ、『偉大なる』だってさ! そういわれると、断れないなあ」
「とっぴったら、調子いいんだから。でも、秘宝って、ちょっと面白そうかな」
きみたちが挑戦に前向きだと察すると、船長は何かいって、船の中央マストに向かって歩き出した。
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