こちらは、演示実験用のコイルモーター。クリップモーターをそのまま大きくしたもので、ぼくのオリジナルですが、不思議にこういうタイプを作って利用している人はいません。
クリップモーターは生徒が自分で作るにはちょうどよいかわいいモーターですが、日本の普通の高校の現場では、授業進度との関係で(つまり、大学入試との関係で)生徒実験の回数がどうしても制限されます。
演示実験だけでも見せたい。・・・となると、クリップモーターは小さすぎて、教室の後ろからは見づらいですね。
それに、あの小さなクリップモーターをどれだけ大きくできるかというのも、面白いテーマです。
このコイルモーターは幅、高さとも、20cmくらいありますので、演示実験には最適です。
クリップのかわりに太い裸銅線を用いて軸受け(電池との接続部も兼ねています)をつくります。コイル本体は、太めのエナメル線(いまはホルマル線とか、別の名称で呼びます)を使います。こちらは、ぱっと見ではわかりませんが、ちゃんとプラスチックでコーティングされているので、紙やすりで磨いて皮膜を落とし、通電できるようにします。
クリップモーターと同じく、コイルの横に突き出す回転軸部分がブラシの役割をします。
上の図では、左側の回転軸は全部皮膜を落としますが、右側の回転軸は図に示した半分の部分だけ、被膜を落とします。やりかたは簡単で、机の上に紙やすりを置き、そこに上図のように立てたコイルを押しつけ、軸の方向にごしごしとこすりつければ、軸の下半分だけが被膜が取れます。
図に【重要】とあるのが、このコイルモーターの要(かなめ)。
コイル部分は、大きな磁石(理科教材で売っています。結構高価)の外径が10cmくらいのときは、8cmくらいの直径にします。そのくらいの大きさの円筒形のもの(スプレー缶など)に10回ほど巻きつけて作ります。
図ではわかりにくいんですが、軸の部分はくるくるとスプレーに巻きつけてつくったコイルの両端部分です。コイルを束ねるように一巻きしてからのばします。回転軸がちょうどコイルの直径部分に重なるように気をつけてください。
クリップモーターでも、やはりこの回転軸の部分がコイルの中心にあるかどうかで、バランスがきまり、回転しやすさも変わります。電池をつながずに人力でコイルを回してみて、惰性でうまく回るようならバランスが取れています。
さて、大型化は簡単そうにみえますが、クリップモーターと同じ作り方をすると、大型化したコイルモーターはうまく回りません。
実際にコイルを巻いてみるとすぐにわかるのですが、軸の上半分と下半分では、どうしても半周分、コイルの巻き数に差が出ます。つまり、コイルの上半分と下半分では、質量が違うんですね。
重心が、コイルの中心からずれるため、回転はなめらかになりません。
小さなクリップモーターの場合は、この上下の質量の差は小さく、あまり問題になりませんが、大型化すると大きく影響してきます。
そこで、バランスをとるために、エナメル線を半周分切って、巻き数の少ない方にセロテープで貼り付けます。もちろん、貼り付けなかった方にも、バランスをとるためと、コイルがほぐれないようにするため、同じ数のセロテープを貼り付けておきます。
これで、できあがり。
単一乾電池1個で、じゅうぶん上手く回ります。さすがに、クリップモーターのような高速回転はしませんが。
「いきいき物理わくわく実験3」に載っている「キックモーター」も、やはりクリップモーターを大型化した装置ですが、こちらは、回転軸を水平方向から鉛直方向に変えることで、重心がずれることの影響を減らした装置です。おもしろい発想ですね。
このコイルモーターは、原型のクリップモーターにこだわって作りました。装置に工夫をするより、原型の装置をそのまま拡大して見せることにこだわったのは、クリップモーターの原理を説明するときに余分な説明がいらなくなるからです。実際の授業では、この「余分な説明がいらなくてすむ」というのは、重要な要素なんですね。
なお、裸銅線で作った軸受け部分、およびコイルの回転軸の皮膜をはがした部分は、時間がたつと酸化して皮膜ができますので、一年たったら、紙やすりで磨き、酸化皮膜を落としましょう。軸受け部分はアルミ棒でも作れますが、アルミは銅以上に空気中での酸化がはやいので、しょっちゅう紙やすりがけしないといけなくなります。
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