マクスウェルと光その1〜3原色の実験 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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マクスウェル青年

 

 

とっぴ「イヤァオ! ひさしぶり~!」
ひろじ「うん、ちょっと仕事で留守にしていたんだ」
あかね「上のイラストの人、だれ? すてきな人ね」
ひろじ「ジェームズ・クラーク・マクスウェル」
あかね「えっ、あの、おひげのおじさんのマクスウェル?」

ひろじ「だれだって、若いときはあるよ。ファラデーの場の理論を数式化した、スコットランド出身の物理学者だ。カール・セーガンによれば【科学オタク】だった(*1)」
とっぴ「オタク・・・?」
ひろじ「マクスウェルは科学以外では不器用で【若くして結婚したが、子供もなく、夫婦が愛情のきずなで結ばれていたようにも見えなかった】とまで書いてる」
とっぴ「え~っ、それは、いいすぎじゃない?」
ろだん「なんだか、気になるな」
あかね「わたしも」

ひろじ「あれ、とっぴくん、何を持っているの?」
とっぴ「ああ、これ? ブンブンゴマ。こうして、厚紙で円を切り抜いて・・・真ん中あたりに穴を2個あけて糸を通して・・・」
 

ベンハムのコマ03

 


とっぴ「こんな感じで糸を引っ張ると、ブンブンと回る。ほら」
 

ベンハムのコマ04

 


ろだん「おっ、おもしろいな!」
あかね「あ、むんくの持ってるブンブンゴマは、なんか色が見える!」
むんく「これ、貼ってあるの」
 

ベンハムのコマ01

 

あかね「え? 白黒? 色は?」
むんく「ふふ・・・」
ひろじ「これは、ベンハムのコマだね」
ろだん「そっか・・・目の錯覚だな・・・脳の方で、勝手に色をみちゃうのか・・・」
とっぴ「みんな、ぼくのコマも見てよ!」
あかね「つまんないわ。何も描いてないでしょ。白・・・ちょっと、灰色っぽいかな・・・」
とっぴ「えへへ! じつは・・・こうでした!」
 

ベンハムのコマ02

 


ろだん「おおっ!」
あかね「ええっ! なに? 色があったの?」
とっぴ「へへへーっ!」
ひろじ「すごい、マクスウェルの色ゴマだね(*2)」
とっぴ「ん? マクスウェル?」
あかね「電磁気の研究の人でしょ」

ひろじ「マクスウェルは、いろんなことをやっているよ。色の研究の他にも、土星の輪の研究、そうそう、一番最初に発表した論文は、楕円の研究(正式には卵形の曲線)だった。14歳の時、楕円の新しい書き方を示す論文を書いている。糸の両端をピンで留めて、それにペンをひっかけて動かすと、楕円が描けるという内容で、評判になった。(【註】このとき発表したのは、楕円より複雑な卵形曲線の引き方だそうです。*3参照)もちろん、14歳だから、正式に学会で発表したんじゃなく、王立協会のホーブス教授が代読したんだけど。それまで知られていたどの方法より簡潔でエレガントだと称えられた」
あかね「えっ、その方法、わたしも高校で習った・・・マクスウェルが考えたの? ・・・しかも、中学生のとき?」
とっぴ「すごいな」

ろだん「この色ゴマは、どうやってつかったんだ?」
ひろじ「まさに、とっぴくんがやったのと同じだよ。赤、青、緑に分割して色を塗ったコマを回し、それが無色になることを確認した。マクスウェルの研究が、いわゆる光の3原色の理論の決定打になったんだ」
とっぴ「こんな実験、誰でも思いつきそうだけどな」
ひろじ「それは、今だからいえることだよ。ちょっと、それより少し前の研究をたどってみようか。こういうとき、ミオくんがいると、ありがたいんだけど・・・」
とっぴ「ミオくんは最近、見てないな。仕事が忙しいのかも」

ひろじ「まず、光の研究といえば・・・」
あかね「ニュートン!」
ひろじ「その通り。ニュートンはプリズムで七色に分けられた光を研究し、すべての色は光線のさまざまな混合によってつくりだされるといっている。【緑色は黄色と青色から、黄色は隣接する緑色やレモン色やその他の色から出現する】と」
ろだん「ん?・・・なんだか、ちがうぞ・・・」
ひろじ「ニュートンは光は粒子だと考え、理論を進めた。波動説を唱える科学者たちとの論争には負けたけど、光の色は物理的な現象とと、見る側の人間の生理的な現象をきちんと分けて考えるべきだと見抜いていた」
あかね「そうか、当時はまだ何もわからなかった時代なのね」

ひろじ「ニュートンと激しく論争した波動説のホイヘンスだって、色についてはあやしいよ。【黄色と空色の二つから、赤と青を作り出すことができる。その4つから、残りのすべての色を作り出すことができる】といっているからね」
ろだん「ふうん・・・実験すればわかりそうなものだけどな」
ひろじ「干渉実験で名高いヤングも、【色の理論について】という講義の中で、基本色は3つ、赤と黄色と空色だといっている。ここから、何か気がつかないかい」
ろだん「その三色って・・・絵の具の三原色に似てるな。ええと、マゼンタ(赤紫)とシアン(青緑)と黄色だっけ・・・まあ、赤と黄色と青でも、似たような感じにはなるけどさ」
ひろじ「さすが、ろだんくんは実験済みだね。そう、ヤングたちの発想は絵の具で色をつくるときの経験から類推したものだ。研究の始めの頃は、こういう思い込みで混乱する。大科学者たちだってこれなんだからね」

あかね「そうね。わたしも、気をつけよう」
とっぴ「そうだよ。あかねはなんでも決めつけるところがあるから」
あかね「そういうとっぴは、自由すぎるでしょ!」
ひろじ「まあまあ・・・ヤングは実験を繰り返して、最終的に、3原色は、赤と緑と藤色の3つだとした」
ろだん「おしい!」
ひろじ「マクスウェルはかなり早い時期に、このコマを七色に塗って回転させ、コマが白く見えることを見抜いている。色数を減らしていって、最終的に、赤、緑、青の三色で白ができることを見つけた。1861年の【三原色理論について】という王立研究所での講演では、この三つの色を合成してカラー映像をつくることに成功している」
ろだん「すげー、どうやったんだ」
ひろじ「対象物を赤、青、緑の溶液をフィルターにして、三回撮影し、そのネガをポジにしてガラス板に焼き、それぞれ赤、青、緑のフィルターを通して、それぞれのポジに光を当て、それをスクリーンに重ねて、カラーの像を投影したんだって」

あかね「マクスウェルって、実験する人だったのね。数学の天才だから、理論ばかりやっている人だと思っていたわ」
ひろじ「マクスウェルは、むしろ実験が好きな方だと思うよ。光弾性といって、偏光板の間に入れたものが応力で色づいた模様をつくることも、詳しく研究している。この研究を王立協会で発表したのは19歳のときだというから、マクスウェルは学会ではまず、電磁気じゃなく光や色の研究者として有名になった」

あかね「ところで、最初にいっていた、マクスウェル夫妻の仲のことなんだけど・・・」
とっぴ「あれ? あかねが気になってたのは、そっち?」
あかね「いいでしょ!」
ひろじ「セーガンの本にはそう書かれていたけど、マクスウェルの伝記(*4)なんかを読むと、二人は、セーガンが思ったのとは違って、深い愛で結ばれていたと書かれている。マクスウェルは家族に当てた手紙で、妻になる人のことを熱烈に語っているしね」
とっぴ「そうだよ。オタクって、ふつうの人と違うわけじゃない。科学オタクだからって、いいじゃん!」
ひろじ「誤解がないようにいっておくと、セーガンも揶揄するつもりでいったんじゃないよ。むしろ、世界を変えるのは、1つのことを深く追求してやまないオタクなんだっていってる」
とっぴ「あ、セーガンの本、ぼくも読んでみようかな」
あかね「調子いいな、とっぴ」
 
(*1)カール・セーガン科学と悪霊を語る カール・セーガン著 新潮社
(*2)「いきいき物理わくわく実験3」日本評論社の記事「赤+青+緑=黒?」に、このマクスウェルの色ゴマの実験の発展版がありますので、ぜひご覧下さい。色ゴマの実験のバリエーションの一つですが、より謎めいた実験になっています。
(*3)正確には、糸を2つの焦点に留めて鉛筆を引っ掛けて回すと楕円になる、という基本的な絵の描き方は、それ以前に知られていました。14歳のマクスウェルが見つけたのは、糸のつなぎ方をもう少し複雑に変えた場合にどんな曲線が描けるかということ。それにしてもすごいですね。資料(*4)には「楕円」と記述されていますが、他のマクスウェルの研究本ではどれも「楕円」でなく「卵形」となっていますので、こちらの方が正しいでしょう。「楕円」となっているのは、カルツェフが勘違いしたのか、訳者が間違えたのか、理由はわかりません。
(*4)マクスウェルの生涯 カルツェフ著 東京図書

※これらの内容を下敷きにした冒険マンガを『いきいき物理マンガで冒険』に掲載しました。ぜひご覧ください。本については下方のリンクをご利用ください。
 
 
 

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