マクスウェルと光その3〜テーブルターニング | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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ファラデーマクスウェル青年


とっぴ「やほお!」
ひろじ「あれ、早いね。こないだ来たばかりなのに」
とっぴ「猫の回転の次は、テーブルの回転!」
ひろじ「とっぴくん、こういう話題が多くないかい?」
とっぴ「だって、気になるじゃん。夏休みだし、いいでしょ?」
あかね「どういう理屈よ」


ひろじ「テーブルターニングというのは、当時ヨーロッパで流行っていた降霊術の一種で、文字盤の上に置いたテーブルを周りの人が手で押さえ、質問をすると、テーブルが動いて質問に答えるというものだ。日本に寄港した船乗りがやっていたのが、日本にも伝わり、コックリさん(狐狗狸さん)になったというのが、井上円了の【妖怪玄談狐狗狸のこと】(仮説社で復刻されたことがある)に書かれている。日本で流行した当初の装置は、こんな装置だね」

 

こっくり01
 

ろだん「まさか、霊が降りてきて本当に答をいうわけはないだろ。とすると・・・バランスかな」
ひろじ「日本では、時を置いて何度もこっくりさんが流行した。装置もそのたびに簡単になって、昭和の時代には穴あきの五円玉を使う形に落ち着いたね」

 

こっくり02


あかね「あっ、これ、見たことがある。五十音と数字に、ええと、はい、いいえを書いた紙があって、その上に五円玉を置いて、三人で指を乗せて、【あなたは好きな人がいますか】とか、質問するの。こっくりさんじゃなくて、なんか、べつの呼び名だったような・・・」
ひろじ「流行に応じて呼び名も変わるからね」

ろだん「本当に、動くのかよ?」
とっぴ「よし、やってみよう! 文字盤を書いて・・・五円玉を置いて・・・ほら、あかね!」
あかね「わたしは嫌よ」
とっぴ「じゃ、むんく、ろだんとやるよ。3人いればいいよね。最初はどうやるの? 降霊術なら、なんか呪文があるのかな」
ひろじ「まあ、いろいろだね。ぼくが子供のときには【こっくりさん、こっくりさん、南の窓が開いていますから、おいでください】なんていって、招き入れた。【おいでなさいましたか】と聞いて、五円玉が【はい】のところに来たら、質問開始だ」
とっぴ「うわ、面白そう!」

ろだん「ま、やってみるか。(呪文を唱える)・・・お、動くぜ・・・」
むんく「・・・【はい】だって」
とっぴ「来た~~っ! よし、質問! ええと、あかねは女の子ですか」
むんく「・・・【はい】」
あかね「ちょっと、わざとやってるでしょ? 真剣にやってよ」
とっぴ「真剣だよ。じゃ、次の質問。ろだんは実験が嫌いですか」
むんく「動いた・・・」
ろだん「じわじわ動く・・・【いいえ】だ」
あかね「もう、やめてよ。自然に動くわけないでしょ」

とっぴ「動いているもん、しょうがないじゃん。じゃ、もっと難しいのにしよう。ええと、あかねは好きな子がいますか」
ろだん「お・・・」
むんく「あ・・・【はい】」
あかね「当たってないわよ!」
むんく「それは、誰ですか」
ろだん「お・・・五十音表の方に動くぞ・・・」
あかね「だめ~~っ!」

とっぴ「あーっ、あかね、なにするんだ。五円玉、飛んでっちゃったじゃないか」
ひろじ「質問が悪かったね。ぼくも何回かやってみたことがある。メンバーにもよるけど、たいてい五円玉は動いて、質問に答えてくれるね」
とっぴ「うーん、なんでだろう・・・」
あかね「霊のせいだなんて、いわないでよ、とっぴ!」
とっぴ「そんなつもりはないけど。実際に動くんだから、何か理由があるはずだろ」

あかね「こんなばかなこと、調べたがるのは、とっぴだけよ」
ひろじ「そうでもないよ。前にもちょっと触れたけど、マクスウェルが22歳のとき、雑誌【アスィニアム】にファラデーの書いた【テーブルターニングについて】という論文が掲載された」
あかね「ファラデーって、あの、電磁誘導の?」
とっぴ「ほら、科学者だって、興味を持つじゃん」

ひろじ「ファラデーは、ちょっとの力ですぐにテーブルが動くように装置を作り、それを複数の人間で押せるようにした。降霊術のいろいろな儀式を全部排除しても、テーブルが質問に答えるように動くことを確認して、テーブルターニングの正体を看破した。その記事を読んで、マクスウェルはすごく感激して、知りあいに手紙を送っている。【ファラデーは、テーブルは、それが動くように欲している人々の指の無意識の運動によって動くのだということを、直接的な機械的な実験で証明しています】」

ろだん「無意識の運動・・・?」
ひろじ「こっちの装置で、調べてみようか。ええと、五円玉に糸を通して・・・紙にこうやって、○をかいて、十字を引いて・・・」
 

 

 

ダウジング01
 

とっぴ「また、五円玉? ひろじさん、五円玉、好きだね」
ひろじ「いや、糸を通すのに便利だからさ。それに、軽いから、動きやすいし」
ろだん「これを手に持ってと・・・どうするんだ?」
ひろじ「動かさないように手を止めて・・・で、心の中で、振り子が縦に揺れるのをイメージする。ゆら、ゆら、ゆら・・・」
とっぴ「あ、動き出した!」
あかね「ろだん!」
ろだん「いや、わざとやってないぜ」
ひろじ「次は、横揺れをイメージする・・・ほら、横揺れしてきた」
あかね「・・・ホントだ・・・」
ひろじ「最後は、くるくる回るのをイメージして・・・右回りに、くる、くる、くる・・・」
とっぴ「うわあ、回り出した!」
むんく「筋肉が勝手に動いている」

ひろじ「そう。頭では手を固定しようとしていても、揺れをイメージするだけで、筋肉が反応して小さく動く。それが振り子の運動になる。ファラデーは、それを実証して見せたんだ」
とっぴ「質問に答えるのは?」
ひろじ「こっくりさんの特徴はね。こっくりさんをやっている人が答を知っていたり、予想がついたりする質問のときは、答が得られるけど、知識のない質問をするとまったく答えられなくなることなんだ。つまり・・・」

あかね「・・・霊じゃなく、やっている人が答えている!」
ろだん「そういえば、手に持った棒で、水道管の場所を当てる人がいるって、何かの本で読んだな」
とっぴ「あ、それ知ってる! 井戸を掘ったり、油田を当てたりするやつでしょ」
ひろじ「ダウジングだね。これもテーブルターニングと似た原理だ。こっちは、一人でやるんだけど。L字型の棒を2本軽く持って歩くと、目的の場所の上で棒が開く。もともとは、二股になった枝を両手で持って歩き、水脈や鉱脈があるところで、枝先がぴくりと動く、というやりかただったらしい」

 

ダウジング02
 

あかね「本当に当たるのかしら。こっくりさんは、知っていることしか答えられないんでしょ。水脈や鉱脈の場所なんて、誰にもわからないでしょ」
ろだん「たぶん・・・長くそういうのを探している人だと、地形とかいろんな条件で、ここならありそう、とか、勘が働くんじゃないか? 百発百中というわけにはいかないけど、たまには当たるだろ」

とっぴ「水道管は?」

 

ダウジング03


ひろじ「どこかの水道局で、古い水道管の場所がわからなくて、職員がダウジングを使っているという記事が話題になったことがあるよ。でも、それは魔法の力じゃなくて、職員の人の経験と勘が、ダウジング棒で拡大されるんだろうね」


ろだん「待てよ。その棒、どうして開くんだ? ちょっと、そこの鉄棒、使っていいかな・・・L字に曲げて・・・手に持って・・・と」
とっぴ「あ、開いた」
ろだん「なんだ。両手の指先を少し下げると棒が閉じて、指先を上げると棒が開く。手のほんのちょっとの動きで、棒は大きく動くんだ」
あかね「これも、無意識の運動かしら」


ひろじ「だろうね。ろだんくんが見つけた原理を知らなくても、手の動きが棒に伝わって開閉するのは同じだから、少し練習すれば、誰でも扱えるようになる。原理がわかっていないと、やっている本人にとっても、びっくりする出来事になるだろうね」
とっぴ「そうかあ・・・でも、面白いから、ぼくも練習して、みんなをびっくりさせてやろうっと」


あかね「ちょっと、とっぴ、そういうの、よくないわよ」
ひろじ「まあ、きみたちみたいに、わかってて遊ぶのはいいと思うけど、わからないまま遊ぶと、科学の世界から呪術の世界へ入りこんでしまう場合があるから、気をつけてね」
あかね「わたしはだいじょうぶだと思うけど・・・とっぴはどうかな」
とっぴ「なにいってるの。あかねだってあやしいよ」
ひろじ「呪術は信じる人にとっては実在する。信じたがる脳には、なんでも見えてしまうんだ。こっくりさんが流行ったとき、それを信じた子どもたちが体調を崩したり、いろいろ悪影響もあったからね」
ろだん「そうだな。病は気からって、いうしな」
ひろじ「昔、ユリ・ゲラーがスプーン曲げをやってみせて日本中に超能力ブームを巻き起こしたとき、司会者の人が【科学者がなんといおうと、ぼくはこの目で、それが起きたのを見た。自分の目で見たということにまさる証拠があるのか】と豪語していた」

 

ひろじ「でも、その人が見ていたと思っていたものは、思い込みによる幻想だった。科学の目で見ることのできる人、たとえばファインマンの場合は、実際にユリ・ゲラーに目の前で用意したごついスプーンを渡してスプーン曲げをしてもらったことがあるけど、いろいろやっても曲がらなかったそうだよ。スプーン曲げは、いまは手品師の人たちが誰でもやれるネタになっているから、種明かしはいらないと思うけどね」


とっぴ「そっか、ひろじさんは、マリックさんがテレビで初めてスプーン曲げをしたのを見て、すぐにやれるようになったといってたね」
とっぴ「うん。スプーンを作っている会社に電話をかけまくって、ある秘密を聞き出してわかったんだけど、ここではやめておこう。あの頃は、新しい超能力ブームが起きていたので、対抗上、ぼくも授業でマリックさんのスプーン曲げやスプーン切りをやってみせて、生徒にどうやったらできるか考えてもらったけど。もう、マリックさんは超能力者じゃなくて、手品師であることを明かしているからね。手品の種明かしはマナー違反だから、差し控えておこう」

 

※この記事を下敷きにしたマクスウェルが登場する話を『いきいき物理マンガで冒険』の「歪んだ世界」に掲載しています。ぜひご覧ください。本については下方のリンクをご覧ください。

 

 

 

 

 

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