「氏子」であるということ | 羽黒神社宮司のブログ

「氏子」であるということ

6月中は「水無月の祓い」(俗に「月祓い」と申します)で、氏子さん宅を訪問し、神棚の前で神事を行なうということを連日行なっておりましたが、18日の火曜日にようやく最後の集落をまわり終えました。

集落によっては、水無月の祓いの後、午後から神社にて除蝗祭と大祓式を齋行する地区もあり、18日に伺った集落も、30数軒の氏子さん宅の神事を終えて、午後から神社へ昇殿いたします。


この集落では、年末や年明けに行なうことが多い「左義長(さぎちょう)」も、この除蝗祭に併せて行われます。
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前年のしめ縄や、お札、お守りなどの御神霊にお還りいただき、ご神火によってお焚き上げをするわけですが、これは、戦後しばらくまでは「虫送り神事」が行われていた名残であります。

「虫送り神事」は、夏越祓(なごしのはらい)とともに、田畑に巣食う害虫を送る神事で、以前は、この御神火を藁松明に移して集落の田畑をまわり、人につく「罪・穢れ・災禍」とともに、川から海、そして根の国底の国へ送る、というもので、現在古式通りに行なっている神社は珠洲市内には1社しかなく、他は神社での神事のみであります。


左義長の後は、拝殿に入って、除蝗祭、ならびに夏越大祓式(なごしのおおはらいしき)を齋行し、人形(ひとがた)にて氏子の罪穢れを祓います。
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この日、今年の3月の春祭りから新たに氏子入りされたI氏が参列され、初めて直会(なおらい=祭典後にお神酒をいただく)までご参加いただきました。

I氏は、いわゆるIターンで、数年前に都会から珠洲の地に移り住み、空き家だった氏子さんの家を借りておられ、今年たまたま私と話す機会があり、ぜひ氏子入りをお願いしたところ、快くお受けいただいたのであります。
(もちろん、ご自宅の神棚には新しい神宮大麻をご奉斎いただき、事前にお祓いに伺いました)



私が宮司を兼務する神社の氏子には、ほかにもIターンで氏子入りされたお宅が数軒あるのですが、残念ながら、氏子入りもせず、集落の人とも最低限の付き合い程度しかなく、近所の人も、どんな人が何の仕事をして住んでいるのか知らない・・・という方も若干おられます。


Iターンで田舎に移り住む理由はそれぞれでしょうが、ハッキリ言って、知らない人がただ住んでいるだけなら、それは都心のアパート暮らしとまったく同じであります。

もともとあったコミュニティーの人々にとってそれはただ「薄気味悪い」だけ(-"-;A



ごく稀に、ですが、都会の生活に疲れて、田舎で静かに暮らしたい・・・故に、ご近所づきあいなどの「面倒」なことはしたくない・・・という方が(Uターンの人にも)おられますが、それですと、ただの迷惑な人であります。

田舎といえども、そこには生活のルールがあって、人同士のつながり、助け合いがあって成り立っているのであって、そこで子育てしているものにとって、上記のような方は、大袈裟に言えば「脅威」でさえあります。



「氏子」というものは、「氏神様」が掌握するテリトリー内に「住む」者であって、本来は「入る・入らない」という趣旨のものではありません。
新興宗教などを信仰して、氏子であることを拒否しても、そこに住んでいれば、そこはその集落の氏神様の「氏子区域」であるのです。

(ここでいう「氏神」は「氏の祖神」という意味ではなく、集落の産土(うぶすな)の神)

ですから、本人が好む好まざるにかかわらず、集落の者すべてが「氏子」であって、問題はそこに発生する氏神様の維持管理をする義務(具体的には氏子会費を払い、行事に参加する)を果たすか、拒否するか、であります。


では、「氏子」は、町内会とどう違うのか、といいますと、


生活上の便宜の為にある自治会とは違って、氏子会は、「神社」を通して、地縁の「神」を共有することであります。

季節ごとに、社殿や境内の清掃をし、祭りの為に集まって、共に飲食をする。

そこには、町内会のように「合理性」が存在しないのであります。


もう少しいうと、町内会やその他の自治体、またサークルなどの小コミニュティーに至るまで、その中心はそこに参加している「個」の集団であり、個々それぞれの為に存在する集団である為に、当然、個々の意見を集約して活動が行われ、必要が無いと思われる事項はどんどん無くなっていきます。

が、

氏子においてはそれはほぼありえません。


ただひたすらに、祖先より受け継いだものを模倣し、継承するのみであります。



しかもそれは、多くの宗教のように、賛同する信者で構成されているのではなく、そこにたまたま暮らしている者たち、「地縁」によって成り立っているわけで、誤解を恐れずに言うと、そこに最も必要なはずの「信仰」は、どちらかというと、後から付いてくる・・・です(^o^;)



実際、I氏も、突然信仰心が湧いてきたっヽ(゚◇゚ )ノ・・・わけではもちろんなく、私と話していて多少の興味はもたれたそうですが、それよりも、本当に地域の一員になるには、地域の神を共有し、祭りに参加することが必要だと思われたからかと存じます。
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もともと、能登の風土が好きで移り住まれた方ですからね~、

地域を知り、地域に溶け込むには、神社の祭りを見て、また参加するのが一番手っ取り早いんじゃないかな~(^~^)


特にこの6月のお祭りは、以前から、ご神前には氏子が自分の畑で作られたものをお供えする習わしです。
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以前からみれば、野菜の数は減りましたけどね~(昔は6尺案2台に乗りきらなかったそうです)、地域の人が、地域の神社を大切にする姿を見ると、ますますその地域を好きになってくるんじゃないかな~・・・って、思います!


逆に言うと、荒れた神社を見ると、その地域の住民を(または神主を)嫌いに思えてきますもんね(*_*)


直会のご馳走も、すべて氏子の当番さん方の手作りです。
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I氏が来てくれて、みなさん本当に喜んでおいででした。

もう、アレ食べろ、コレ食べろ、って大歓待ですね( ̄▽ ̄)


呑んでると、みなさんだんだん方言がきつくなり・・・理解できたかな?:*:・( ̄∀ ̄)・:*:


おまけに、この日はデザート付ヽ(゚◇゚ )ノ
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冷凍イチゴ!!

ただ凍らせただけ・・・でもめっちゃ美味いっすヾ(@^(∞)^@)ノ



楽しい1日でした♪


ただ、I氏が集落にとけこみすぎて、毒舌にならないかだけが心配です(^^ゞ