ひらきでカニクリを食べた後、師匠に「和菓子菓寮 ocobo」に連れて行ってもらいました。イートインで 季節の生菓子 お茶セット(ほうじ茶) +おこぼ餅付き(1040円) 2つの和菓子を選び師匠とシェアしていただきます。お店の名前にもなっているおこぼ餅は 羽二重のやわらかいお餅の中にクルミがいいアクセントになって入っていてとてもおいしいです♪。なかなか他では味わえない食感でとてもおいしいので、手土産にいいかも。さすが師匠、いいお店を教えてもらいました。ありがとう、ごちそうさまでした♪。

 

和菓子菓寮ocobo

名古屋市千種区観月町1

 

今日は久しぶりにグルメの師匠と覚王山で待ち合わせて、日泰寺の参道の「ひらき」へお昼を食べにいきました。さすが人気店だけあって10分ほど並びましたが、一番人気のカニクリームコロッケ定食(大きいの2個)1000円をいただきます。うーん、おいしい♪あと2つぐらい食べたい気分です。ライスも十分でお腹がいっぱいになりました。ごちそうさまでした♪

 

ひらき

名古屋市千種区山門町2

 

あらすじ
あの時桜の下で出会った少年は一体誰だったのか―鍋島と龍造寺の因縁がひと組の夫婦を数奇な運命へと導く。“天地に仕える”と次期藩主に衒いもなく言う好漢・雨宮蔵人と咲弥は、一つの和歌をめぐり、命をかけて再会を期すのだが、幕府・朝廷が絡んだ大きな渦に巻き込まれていってしまう。その結末は…。


ひと言
春ごとに花のさかりはありなめど あひ見むことはいのちなりけり この一首がすべてであるような葉室 麟さんらしい純愛小説でした。先に読んでしまった三部作最後の「影ぞ恋しき」でもそうでしたが、所々に挿れられた和歌がとてもいいです♪


ある時、咲弥は亡夫の多門が好きだった西行の和歌について話した。「深町殿は西行の和歌でお好きなものがございますか」咲弥に何気なく訊かれて、右京は思わず一首を口にした。
面影の忘らるまじき別れかな 名残を人の月にとどめて
西行にはすぐれた恋歌が多い。もとは佐藤義清という鳥羽院北面の武士だった西行は、鳥羽院の中宮だった待賢門院璋子に恋着したため出家したのだという。この和歌にも悲恋の思いが込められている。その思いが自分にもあるのではないか、と気づいて右京は後ろめたい気がした。気がつけば胸の中で咲弥の面影は大きいものになっていた。
(二)

光圀は中庭を散策していたが池の畔にひかえた咲弥を見ると足をとめた。かたわらには藤井をはじめ他の奥女中たちも居並んでいる。光圀が咲弥の前に立ち止まって声をかけようとした時、咲弥は折から咲いていた庭園の桜に目をやり、
春風も心して吹け散るは憂し 咲かぬはつらし花の木の本
と口ずさんだ。これを聞いて光圀は、「散るは憂しか」苦笑すると伽を命じることはなかった。咲弥が口にしたのは、藤井から教えてもらった光圀が花見の際に詠んだという和歌だった。光圀は桜が好きで、水戸の近くの桜を雨の日にわざわざ馬を飛ばして見にいったことさえある。雨がそぼふる日の桜こそ風情があるとして、雨に濡れつつ桜を愛で、宴を開いて酒と詩歌を楽しんだのだ。咲弥の和歌に託した拒絶は光圀の風流心に訴えるものがあった。
(六)

蔵人は桜を見ながら話し出した。「わしは近頃、わかったことがある」「どのようなことですか」「なぜ古の和歌を人々が大切にしてきたのかということだ」「ほう」「ひとがこの世に生きた証として遺すものは、心しかないと思う」「心を遺す?」「そうだ、素養があれば和歌を作り、和歌によってひとがどのような気持で生きたのか伝えることができる。されど和歌を作れぬ者にも、おのれの心を後世に伝える方法がある」蔵人は桜の向こうに広がる青空に目をやった。「どのようにすれば心が後世に伝わりますか」「咲弥殿は亡くなられた前の夫、多門殿が好んだ和歌のことを言われた。あれは多門殿が遺された心のことを話したのだと思う。自らの心にかなう和歌を見つけ、その和歌を後の世にまで伝えていけば心が伝わるのではないかな」「なるほど」「つまるところ、雅とはひとの心を慈しむことではあるまいか」清厳は蔵人がこれほど深く考えるようになったのか、と驚いた。心を残すための古今伝授とは蔵人でなければ考えつかないことかもしれない。蔵人はふと振り向いた。「わしは、桜も好きだが、ひとは山奥の杉のように人目につかずに、ただまっすぐに伸びておるのがよいと思う」「それは蔵人殿らしいですな」「何を言っておる。わしはお主のことを言っておるのだ」「わたしのことですか?」「そうだ。そなたは、その年で武士を捨て、僧として生きていこうとしておる。ひととしては見事だが、さびしくはないのか」「すべて捨てればさびしいと思うことはございません」「そうかな」蔵人は振り向くと、深い目の色をして清厳を見つめた。「わしはお主には捨ててはならぬ物があるような気がするのだがな」清厳は何も答えず、二人の間に桜吹雪が舞った。蔵人は青空を見上げながら、「ひとが生きていくということは何かを捨てていくことではなく、拾い集めていくことではないのか」とつぶやいた。そして、「わしは祝言の夜、好きな和歌を教えてくれと言われて答えられなかった。それから懸命に考えてきた。それで、たった一つだけわかったことがある。それは、わしには咲弥殿に伝えたいことがある、ということだ。わしの生きた証は咲弥殿に何かを伝えることだ」清厳は微笑んだ。「伝えたいことがあり、聞きたいことがあるのを恋というのでしょう」
(六)

蔵人の顔は出血のため青ざめていた。ゆっくり一歩ずつ歩いてくるが、待ち構えていた水戸家の武士たちも、気を飲まれたように動くことができなかった。蔵人にはそんな武士たちの姿が目に入らぬようである。門に立つ咲弥の姿を見て微笑した。蔵人がなおも歩き続け、咲弥に近づいた時、水戸家の武士の一人が駆け寄ろうとしたが、その肩を草加又六が抑えた。
「よせ、あの男は誰にも止められぬ」蔵人にもはや戦う力が残っていないことは明らかだった。それでも蔵人の歩みは止まらないのだ。又六が動こうとしないのを見て、他の者たちも前に出ようとはしなかった。蔵人は男達の前をゆっくりと咲弥に向かって歩いていった。咲弥の前に立った蔵人は苦しげだったが頭を下げて、「遅くなりました、申し訳ござらぬ」「本当に、十七年は待たせすぎです」咲弥の目には光るものがあった。「されど、咲弥殿との約束は果たせましたぞ」蔵人は嬉しげに笑った。「お好きな和歌を見つけられたのですね」「さよう ――」咲弥はうなずいて口にした。
春ごとに花のさかりはありなめど
蔵人が手紙に書いてきた和歌の上の句である。蔵人が見つけたのは『古今和歌集』のうち詠み人知らずの和歌だった。蔵人はあえぎながらも咲弥に続いて詠じた。
あひ見むことはいのちなりけり
蔵人は崩れ落ちるように倒れた。「蔵人殿 ――」咲弥が蔵人を抱えた。咲弥の胸に抱かれた蔵人は穏やかな微笑を浮かべていた。
(十四)

 

いつもお世話になっている方から、伊勢の外宮前の神路通りにお店を構える「糀屋 本店」の 糀ぷりんをいただきました。甘酒のような糀の風味が口の中に広がります。元々200年続く味噌醤油の醸造元だけあって、隠し味のたまり醤油ともよく合っておいしいです。3月にはおはらい町店もオープンするとのことなので、神宮にお詣りしたときには立ち寄ってみたいです。ごちそうさまでした♪

 

 糀屋 本店

伊勢市宮後1

 

あらすじ

推しが炎上した。ままならない人生を引きずり、祈るように推しを推す。そんなある日、推しがファンを殴った。

(第164回 芥川賞 受賞)

ひと言
ノミネートされた段階ですぐに図書館に予約を入れたので結構早くに読むことができました♪。全125ページ。あっという間に読み終えてしまいました。著者の宇佐見りんさんの略歴を見てびっくり。21歳 大学生 2019年には文藝賞も受賞し、今回 第164回芥川賞。「推し」の日常の描写がびっくりするほどリアルです。文章力はまだ及びませんが、なぜか村上春樹さんを読んでいるような感じがしました。うーん、この人は只者ではないかも?!


あたしには、みんなが難なくこなせる何気ない生活もままならなくて、その皺寄せにぐちゃぐちゃ苦しんでばかりいる。だけど推しを推すことがあたしの生活の中心で絶対で、それだけは何をおいても明確だった。中心っていうか、背骨かな。勉強や部活やバイト、そのお金で友達と映画観たりご飯行ったり洋服買ってみたり、普通はそうやって人生を彩り、肉付けることで、より豊かになっていくのだろう。あたしは逆行していた。何かしらの苦行、みたいに自分自身が背骨に集約されていく。余計なものが削ぎ落とされて、背骨だけになってく。〈あかりちゃん〉〈前も言ったけど夏休み中のシフト表出してね〉幸代さんからメールが届き、寝転がりながらスケジュールアプリをひらく。予定は推しありきで決まるので人気投票の結果発表日は早上がりにしてもらい、投票後の握手会の日は当然避ける。握手会のあとは余韻に浸りたいので一日空けておく。それでもCDは買いたいし三月にはライブもある。行けば予想外の出費があるからバイトは上限まで入れたかった。去年推しが舞台に出たときも観終わるたびにその役に会えなくなるのがどうにも寂しくなり、次も観たくなり、を繰り返しながら気づけば何度もチケットの追加購入の窓口に並んでいた。舞台のパンフレットはインタビューが載っているので必須だし、原作本は予習のために買っていたけど(でも初日は先入観のない状態で観たかったから初日が終わったあとに読んだ)、舞台イメージのブックカバーがついてくるものもほしい。いっぱいグッズ買っちゃったし写真は気に入ったのだ けでいいかなあなんて思っていたのが、パネルに貼られたサンプル写真を見て一転した。推しの書生姿と浴衣姿が二種類ずつ、血を吐いているのが一種類あって、一度見たらどれひとつだって置いて帰れないという気分になる。仮に同じ場面が同じ構図で DVDに収められていたとしても、切り取られた一瞬の印象の強さは写真でないと残らない。ここで逃したらもう手に入らないかもしれない。これ、ぜんぶで、と言うと あたしの横の女の人もぜんぶで、と言う。推しが目の前で動いている状況は舞台が終わるたびにうしなわれるけど、推しから発されたもの、呼吸も、視線も、あますことなく受け取りたい。座席でひとり胸いっぱいになった感覚を残しておきたい、覚えておきたい、その手掛かりとして写真や映像やグッズを買いたい。インタビューには「アイドルが芝居なんてと批判されるかもしれない、実際発表されたときはネットもそういう声で埋まっていました」とあったけど、自分の見せ方をよく知ったアイドルゆえの存在感は本職の俳優さんに引けを取らなかった。何より、頑固で潔癖な生き方が仇になって自分自身を追いつめていく、という役柄は推し自身によく似合った。もともとの舞台ファンからの評判も上々だったらしい。ライブではお金がいくらあっても足りないだろうから、結局ほぼ毎日シフトの希望を入れて出した。学校がないぶん今までより集中できるかもしれない、推しを推すだけの夏休みが始まると思い、その簡素さがたしかに、あたしの幸せなのだという気がする。
(P37)

司会者の言葉に相槌を打っている推しの顔はまともに見られなかった。居たたまれなかった。ファンはそれぞれ、自分の推しが座る椅子に座った気分を一緒に味わう。〈なんで?〉〈え、つらい〉あたしは手許の端末に打ち付ける。見る限りその場で更新している人たち全員からいいねがくる。泣き顔の絵文字でいもむしちゃんが反応する。太刀打ちができない、と思う。あの一件が与えたものの大きさを実感する。あのことが何か巨大なものを推しから奪った。みんな今までの倍は買っていたと思うけど、あたしたちが頑張るとかいう問題ではないのだと思う。それでも四位のミナ姉とは本当に僅差で百枚もない。あたしは今までのバイト代もほとんど使って五十枚買っだけど、それでも本当に限界まで切りつめてCDを買えていたなら、もしかしたら、と思う。皆がもう数枚ずつ買えていたら、推しは一位から五位へと、こんなにわかりやすく転落するようなこともなかったかもしれない。
推しは今までも、このシステムはあまり良心的じゃない、ファンの子に投票してもらえるのは本当にありかたいけど無理はしないでほしいというようなことをラジオでこぼしていて、結果もさほど気にしていないのはわかっていた。それでも、画面越しに居たたまれなさが惨むような気がする。それぞれ最後に一言お願いします、と最初にマイクを渡された推しはそれを両手で包み込むようにし、「まずは」と吹き込まれた息が音を立てた。「あれだけのことがあっても、まだこれだけの、一万三六二七票を入れてくれた子たちがいること、本当にありかたいです。期待に添えなくて申し訳ない。応えられなかったことに対する悔しさはたしかにあるけど、でも晴れやかな気持ちですね。一票一票の重さ、ちゃんと受け取りました。ありかとうね」推しはいつも挨拶が極端に短くて非難されることもあるけど、あたしには充分だった。……。……。もう生半可には推せなかった。あたしは推し以外に目を向けまいと思う。中古で売られている推しのグッズを見るのがつらいのでなるべく迎え入れるようにし、沖縄や岡山から届いた段ボール箱から取り出した古い缶バッジやブロマイドの埃を丁寧にぬぐい、部屋の棚に飾る。推し活に関すること以外ではお金を遣わない。バイトは相変わらずきつくてうまくいかなかったけど、それでも推しのために働いていると思えば気分も晴れた。八月十五日にはあたしが一番おいしいと思うスポンジの黄色いケーキ屋さんでホールケーキを買い、チョコプレートに描いてもらった推しの似顔絵の周りに蝋燭を立て、火をつけて、インスタにストーリーを上げてからぜんぶひとりで食べた。途中苦しくなったけど、いま諦めたら推しにもせっかく買ったケーキにも誠実でない気がして、喉に残る生クリームを苺の水分で押し込んだ。
(P66)

最後の瞬間を見とどけて手許に何もなくなってしまったら、この先どうやって過ごしていけばいいのかわからない。推しを推さないあたしはあたしじゃなかった。推しのいない人生は余生だった。
(P112)

突然、右上の部屋のカーテンが寄せられ、ぎゅぎゅ、と音を立てながらベランダの窓が開いた。ショートボブの女の人が、洗濯物を抱えてよろめきながら出てきて、手すりにそれを押し付けるようにし、息をつく。目が合いそうになり、逸らした。たまたま通りかかったふりをして歩き、徐々に早足になって、最後は走った。どの部屋かはわからないし、あの女の人が誰であってもよかった。仮にあのマンションに推しが住んでいなくたって関係がなかった。あたしを明確に傷つけたのは、彼女が抱えていた洗濯物だった。あたしの部屋にある大量のファイルや、写真や、CDや、必死になって集めてきた大量のものよりも、たった一枚のシャツが、一足の靴下が一人の人間の現在を感じさせる。引退した推しの現在をこれからも近くで見続ける人がいるという現実があった。もう追えない。アイドルでなくなった彼をいつまでも見て、解釈し続けることはできない。推しは人になった。
(P121)

 

 

金のうな玉丼を食べた後、自転車で足を延ばして栄のセントラルパークのスイーツメイトに期間限定で出店している「グッディ・フォーユー・六本木」へ寄りました。お店の一番人気の The チーズ&チーズケーキ(1695円)を購入。ホームメイド感たっぷりのチーズケーキでレモンがいいアクセントになっておいしいです。

それにしてもスイーツメイトには全国から評判のお店が来てくれるので要チェックです。ごちそうさまでした。

 

グッディ・フォーユー・六本木

東京都港区西麻布1

 

食べログのニューオープン店をチェックしていて偶然見つけたお店です。割烹料理屋として錦で60年以上続けてきましたが、今回のコロナ禍でお昼は鰻屋として2020年10月にオープンしたという「鰻割烹まるぜん」さん。写真の金のうな玉丼(1320円)を見て、これ食べたい!と今日のお昼に伺いました。今は豊田市となった旧小原村から取り寄せた卵がとてもおいしく、三河一色の鰻とよくマッチしてとてもおいしいです♪ごちそうさまでした。

 

鰻割烹まるぜん

名古屋市中区錦2

 

 

名古屋では栄の松坂屋ショコラプロムナードにだけ出店している、東京で大人気の「N.Y.C.SAND(ニューヨークシティサンド)」を買いに行ってきました。みなさんよくご存じで 20分ほどの列に並びます。N.Y.キャラメルサンド(1080円 8個入)他を購入。噛むと、とろーっと糸を引くキャラメルがおいしく、サクサクのバタークッキーもグッド! 2月14日までの期間限定なので名古屋にも大丸東京店のように常設店ができてほしいなぁ。おいしかったです。ごちそうさまでした♪

 

ニューヨークシティサンド 大丸東京店

東京都千代田区丸の内 大丸東京店 1F

 

名鉄百貨店で行われていた「全国逸品 うまいものまつり」も今日が最終日。食べログ ラーメン WEST 百名店 2020 にも選ばれている京都のラーメン屋さん「新福菜館」がイートインで来てくれているので、お昼を食べに行きました。見た目の黒さほど濃くはなく、いい味付けの醤油スープでとてもおいしいです。チャーシューもやわらかくてとてもジューシーでグッド。ヤキメシのセットもあったので、そちらも食べてみたかったなぁ。ごちそうさまでした♪

 

新福菜館

京都市下京区東塩小路向畑町

 

あらすじ
大石内蔵助ら赤穂浪人四十七士の吉良邸討ち入りを目の当たりにした雨宮蔵人。それから四年経ち、妻の咲弥と娘の香也とともに鞍馬山で静かに暮らしていた蔵人のもとに、少年が訪れた。少年は冬木清四郎という吉良家の家人だった。清四郎の主人を思う心に打たれた蔵人たちは、吉良左兵衛に会うため配流先の諏訪へ向かう。次第に幕府の暗闘に巻き込まれ…。


ひと言
「いのちなりけり」「花や散るらん」に続く三部作の完結編とのこと。えっ!この2冊読んでいない!早速図書館に予約を入れました。前2作を読んでいないせいもあるかもしれませんが、冬木清四郎の行動が合理性を欠くような気がして、どうして? んっ?と思うことが多かったように思います。ただ、所々に挿れられた和歌が、とても味わい深くその場面にあっていてとてもよかったです。早く前2作を読まなくっちゃ。


蔵人は盃を口に運んだ。「無謀な真似はいたしませぬ。殿への忠義の思いが果たせればと存じます」常朝が首をかしげて口をはさんだ。「冬木殿の忠義の思いは感じ入るが、なにやら性急に過ぎる気もいたしますな」清四郎は常朝に顔を向けた。常朝は、かような和歌をご存じであろうか、と言って詠じた。 

恋ひ死なむ 後の煙に それと知れ 終にもらさぬ 中の思ひは

恋していると相手に告げることだけがまことの恋ではない。相手に知られずに恋い焦がれて死んだ後、知られるのが恋なのだ、という意である。「わたしは忠義もこれと同じだと思っている。ひそかに、誰にも知られぬ心の中で尽くし抜くことを忠というのではあるまいか」 常朝が言葉を継ぐと、蔵人は感心して口を開いた。……。……。
「ただいまの和歌をお聞きして、西行法師の山家集にある歌を思い出しました。あるいは歌の心が通じておるのかもしれません」「ほう、どのような和歌であろうか」蔵人が興味ありげに訊いた。咲弥は静かに詠じた。

葉隠れに 散りとどまれる 花のみぞ 忍びし人に 逢ふ心地する

葉の陰に散り残っている花を見たとき、逢いたいと思い続けていたひとに会えた気持がするという歌だ。常朝が膝を叩いて感嘆の声を上げた。「なるほど、葉隠れとは美しき言葉ですな」
(三)

「されば上様と越智様が亡き母上様を偲ばれるのと同じではございますまいか。誰もがこの世を去ったひとの影を慕いつつ生きているのかもしれませぬ」蔵人は淡々と口にした後、それがしは、かような歌を存じております、と言って和歌を詠じた。

色も香も 昔の濃さに 匂へども 植ゑけむ人の 影ぞ恋しき

かつて清四郎が鞍馬の蔵人の家に泊まったおり、自らの心根を古今和歌集にある紀貫之の和歌に託して書状に認めた歌である。右近は少し戸惑った様子で耳を傾け、「影ぞ恋しきか ――」とつぶやいた。
(十)

「許嫁であるわたしが、清四郎様の罪をともに背負いたいと思ってはいけないのでしょうか。もう、清四郎様はわたしのことを許嫁だと思っておられないのですか」「いや、そんなことはありません」清四郎がうろたえて答えると、香也は涙が一筋、頬を伝う顔を寄せて訴えた。「でも、清四郎様は決して心の内を語ってはくださいません」「いままでも、そしてこれからもわたしか香也殿を大切に思う気持に変わりはありません」清四郎は思わず香也の肩に手をまわした。香也は清四郎の胸に頬を埋めながら、和歌をつぶやいた。

春ごとに 花のさかりは ありなめど あひ見むことは いのちなりけり

蔵人が幾多の試練を乗り越えて咲弥のもとに届けた和歌である。(父上、母上、わたしもいま、命の出会いを知りました)香也は目に涙をあふれさせて、そう思った。
(十一)

「わたしにはまだ、しなければならないことがあるというのか」「さようにございます。お前様は十七年かけて、わたくしに和歌を届けてくださいました。ですが、わたくしはまだ返歌を差し上げておりませんでした」「返歌をくれるのか」「差し上げますとも、お前様のお心をわたくしは受け止めました。今度は、わたくしの心をお前様に受け止めていただきとうございます」「それは嬉しいことだな」蔵人は咲弥を澄んだ目で見つめた。あたかもいまからこの世を去ろうとするかのような目だった。咲弥は蔵人の耳もとで和歌を詠じた。

君にいかで 月にあらそふ ほどばかり めぐり逢ひつつ 影を並べん

「西行法師の月にちなむ歌です。毎夜眺める空の月と競うほどに恋しいあなたとめぐり逢い、影を並べていたい、という思いの歌です」「めぐり逢ひつつ影を並べん、か」蔵人の目に涙がにじんだ。
(十一)