あらすじ
「誰の心にも淀みはある。でも、それが人ってもんでね」江戸、千駄木町の一角は心町(うらまち)と呼ばれ、そこには「心淋し川(うらさびしがわ)」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古びた長屋が建ち並び、そこに暮らす人々もまた、人生という川の流れに行き詰まり、もがいていた。青物卸の大隅屋六兵衛は、一つの長屋に不美人な妾を四人も囲っている。その一人、一番年嵩で先行きに不安を覚えていたおりきは、六兵衛が持ち込んだ張方をながめているうち、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして……(「閨仏」)。ほか全六話。生きる喜びと生きる哀しみが織りなす、著者渾身の時代小説。
(第164回 直木賞受賞作)

心淋し川
十九歳のちほは、志野屋という仕立屋から仕事を回してもらっていますが文句ばかり言われ、自分の住む町や家も嫌いでした。そんなちほにとって唯一の楽しみは、志野屋で会える上絵師の元吉と会うことでした。会えば会うほど期待は膨らみ、ずっと一緒にいたいと願うようになっていました。しかしある日、父親が呑み屋で客を殴ったと知らせが入り、ちほに嫌な予感が走ります。

閨仏
りきは二十歳の時から六兵衛の長屋に住むようになり、もう十四年が経ちました。この家にはりき含めて四人の妾がいて、いずれもおかめで醜女に分類されるという共通点がありました。年齢を重ねるにつれて相手にされなくなり、いつか長屋を追い出されてしまうかもしれない。不安や寂しさを抱えるりきですがある日、妙な悪戯心が湧いて張形という道具に小刀で顔を掘ります。それを見た六兵衛はりきの予想を遥かに超えて評価され、仏を彫ることに次第に没頭していきます。

はじめましょ
すべての食事が四文銭で片がつく『四文屋(しもんや)』。与吾蔵は先代から店を受け継ぎ、やり甲斐を感じていました。そんなある日、道を歩いていると聞いたことのある歌が聞こえます。歌っていたのは六、七歳の少女・ゆかですが、与吾蔵にその歌を聞かせてくれたのはかつて捨てた女性・るいでした。別れた時、るいは誰かの子どもを身ごもっていた。ゆかの母親はるいで、自分の子どもではないか。そんな疑問が生まれ、それから与吾蔵は母親を待つゆかと会うようになり、やがてゆかの親のことや歌の意味を知ることになります。

冬虫夏草
吉は大怪我を負って歩けない息子・富士之助と二人暮らしで、心町に引っ越してきて五年。富士之助の吉に対する暴言は止まらず、周囲の人間も止めさせることを諦めていました。そんなある日、町を訪れた薬売りの男性が吉のことを知っていて、高鶴屋のおかみと呼びます。吉は十年前のことを思い出し、親子がなぜ今のような生活を送ることになったのかが描かれます。

明けぬ里
ようは夫の桐八の賭博による浪費癖に困り、よくケンカしていました。そんなある日、悪阻で難儀しているところを女性に助けてもらいますが、その顔を見て驚きます。女性は、かつて同じ遊郭で働いていた明里でした。遊郭一の美貌を持ち、常に妬ましいと思っていた相手。ようは会いたくないと思っていましたが、明里は久しぶりの再会を喜び、昔話をします。明里には何か迷いが感じられ、その時はその正体が分かりませんでしたが、後に明里の言葉の真意に気が付きます。


ひと言
直木賞の受賞作であり、本屋大賞にもノミネートされているだけあって納得の作品でした。「閨仏」は下品な感じはなく、暖かい作品に仕上げる文章力が直木賞に選考されたんだと思います。「心淋し川」の「誰の心にも淀みはある。事々を流しちまった方がよほど楽なのに、こんなふうに物寂しく溜め込んじまう。でも、それが、人ってもんでね」という言葉が心に残りました。


「心川(うらがわ)でしよ? 心町の川だから心川。わざわざそう呼ぶ人は、滅多にいないけど」 「本当の名は違うんだ。心川はそれを縮めているだけでね、町の名もそこからついた。つまりは川の名が先で、町の方が後というわけだ」「何というの?」「心淋(うらさび)し川というそうだ」
誰かが戯れにつけたのか、何か由来があるのか、そのあたりは差配にもわからないという。「ただ、その名をきいたとき、どうにも惹かれてね。差配の話を引き受けることにした」「趣があるのは名ばかりで、汚い溜まりだと知ってがっかりしたでしよ?」「いや、そんなことはないよ。誰の心にも淀みはある。事々を流しちまった方がよほど楽なのに、こんなふうに物寂しく溜め込んじまう。でも、それが、人ってもんでね」
(心淋し川)

差配は、一冊の本を差し出した。むつかしい漢字が並んでいて、与吾蔵にはとても読めない。「ほら、与吾さんがよく唄ってる、地口尻取り。あれの種本だよ」え、と思わず本を開いた。やはり読むには難儀な代物で、恨めし気に差配を仰ぐ。「あすかやまの後は、こう続くんだ。かやま町には薬師さま しさまのかち路はりまがた まかたの名方ふたたびぐわん、てね。幡随院や助六も、その後に出てきたよ」へええ、と読めない書物をながめる。「読み仮名をふれば難はなかろうし、先を知りたかろうと思ってな」この本を誰より欲しているのは、与吾蔵ではない。目をきらきらさせる、いかにも嬉しそうな子供の笑顔が浮かんだ。「差配さん、ひとつ、伺いやすが」ひと息に酒が抜け、かっきりと頭が冴える。本を手にして土間に下りた。「鳶が鷹を生むことだって、ありやすよね?」「そりゃあ、あるだろうな」「ありがとうございやす、差配さん。これからちょっと、出掛けてきやす!」俯に落ちぬ風情の差配を残して、長屋をとび出した。初詣の待ち合わせ場所は、いつもの石段だった。まだ跡のついていない、まっさらな雪に足を踏み出す。はじめましょ――。ゆかの声が、朗らかに耳にこだました。
(はじめましょ)

 

先日の 糀ぷりんの方から、「これ おいしいから、食べてみて…」と 岡山県の清水屋食品の生クリームパンのチョコレートをいただきました♪。クリームパンと云えば広島 三原の「八天堂」が有名ですが、「八天堂」に勝るとも劣らない、パン生地もチョコクリームもフワフワで軽い口当たりのクリームパンです。それにしても、どうして中国地方ではこんなおいしいクリームパンが作れるんだろう?水なのかなぁ。ほんとうにおいしい生クリームパンごちそうさまでした♪。ありがとうございました。

 

清水屋食品

岡山市中区今在家455

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のお昼は、以前TVで町中華として取り上げられた「カミナリ飯店」へ中華風カツ丼(825円)を食べに行きました。もうひとつのボリューム満点 屋号を冠したカミナリ飯と迷ったのですが、「先日、TVで取り上げられた、中華風…」と注文すると「中華風カツ丼ですね。ありがとうございます♪」 と言って、スープをサービスでつけてくれました。うん、あまり食べたことのない食感で、おいしいです。

 

 

中華風カツ丼と決めてお店に伺いましたが、次は絶対カミナリ飯を食べに行こ。

ごちそうさまでした♪

 

カミナリ飯店 

名古屋市中村区名駅4

 

 

 

今日は3月1日。予約していた赤福の朔日餅(3月はよもぎ餅)を名駅に取りに行った帰り、円頓寺の本町商店街にオープンした「からあげ天国 からちゃん 」のザクから2個(名古屋みそソース付)(302円)を買いました。先ずはそのままのうま塩味でいただきます。1つが大きくて名前通りザクザクのから揚げです。名古屋みそは甘くて紛れもなく名古屋みその味です。うん、おいしいけどそのままの味の方が好みかな。他にも特製ソース、プレミアムソースがあるので他のソースでもいただいてみたいです。ごちそうさまでした。

 

からあげ天国 からちゃん

名古屋市西区那古野2

 

今日2月25日は菅原道真(菅公)のご命日の梅花祭。今年で定年なので有給休暇をもらって

そうだ京都、行こう。北野天満宮 梅花祭

 

 

京都駅から地下鉄に乗り、丸太町駅へ。先ずは菅原院天満宮神社へおまいりします。

ここは菅公の生誕地で、産湯の井戸も残されています。

 

 

歩いて、「カフェ ラインベック」へ。念願のリコッタパンケーキをいただきます。

お店の黒板には「パンケーキの命はメープルシロップにあり オリジナルのメープルソースにつけてお召し上がりください」とありますが、まずはシロップをつけずにいただきます。

 

 

うーん、そのままでもリコッタチーズが口いっぱいに拡がり十分おいしいです♪。お店自慢のシロップをつけるともっとおいしくなります。しあわせ♪ 

北野天満宮まで歩いて到着したのが10時55分。先にお気に入りの「とようけ茶屋」へ。

生ゆば丼をいただきます。

 

 

食べ終わってお店を出ると、案の定結構な行列が…。先にいただいてよかった♪。

 

 

手水舎がきれいにお花で飾られています。

 

 

昭和36年生まれ 61歳 は大厄。厄除割符を納めます。

 

 

右の本厄除の裏に氏名と年齢を書いて納め、左はお守りとして持ち帰ります。

 

 

コロナ禍で天神市はありませんが、いつものように長五郎餅は境内で販売してくれています。

2個入りをいただきます。

 

 

梅苑が公開されています。「老松」のお菓子 菅公梅付きですが、1000円は少し高いかな…。、もちろん見せていただきます。お菓子とほうじ茶をいただきながら、観梅を楽しみます。

 

 

 

 

十分に梅苑を堪能して、「中村製餡所」へ。おみやげにあんこ屋さんのもなかセットをいただきます。皮にあんを好きなだけ詰めていただく最中です。

 

 

行ってみたかった「散り椿」の地蔵院(椿寺)へ。まだ時期的に少し早いですが、陽のあたる所は椿が咲いていたのでよかったです。

 

 

大将軍のバス停から 205系統で京都駅へ。京都タワービル地下の「ぎょうざ処 亮昌」で焼きギョウザをいただきます。

 

 

八条口の「志津屋」でカルネ(受カルネ!)を買って帰りました。

 

 

暖かくて梅も満開で、おいしいものでお腹いっぱいのとても楽しい京都旅でした。

 

 

 

 

 

今日から催されている名鉄百貨店の「福井県の観光と物産展」。先日の「秘密のケンミンSHOW」で取り上げられていた「えがわ」の水羊かん(800円)を買いに行ってきました。なめらかな口あたりで黒糖の風味が口の中で拡がります。思っていたより少し甘めかな。それにしても全国のおいしいものが身近なところでいただけるのはとてもありがたいです。ごちそうさまでした。

 

えがわ

福井県福井市照手3

 

あらすじ
ある日、高校に迷い込んだ子犬。生徒と学校生活を送ってゆくなかで、その瞳に映ったものとは―。最後の共通一次。自分の全力をぶつけようと決心する。18の本気。鈴鹿でアイルトン・セナの激走に心通わせる二人。18の友情。阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件を通し、進路の舵を切る。18の決意。スピッツ「スカーレット」を胸に、新たな世界へ。18の出発。ノストラダムスの大予言。世界が滅亡するなら、先生はどうする? 18の恋…。12年間、高校で暮らした犬、コーシローが触れた18歳の想い。昭和から平成、そして令和へ。いつの時代も変わらぬ青春のきらめきや切なさを描いた、著者最高傑作!
(2021年本屋大賞 ノミネート作品)


ひと言
「第5話 永遠にする方法」を読んだあと、ひょっとしてと思い、本のカバーを外してみた。やっぱり……。伊吹 有喜さんの素敵なプレゼントに思わず泣きそうになった。(以下本文のまま)

表紙には出会った頃のユウカがコートを着た姿で笑っている。足元には小さな犬がいた。


裏表紙の絵は黒板の前にいる今のユウカだ。大きくなった自分が、彼女の足元で幸せそうに寝転んでいた。

 



近鉄富田山駅前に隣接した八稜高校(本文のまま)とあるが、流行りのミルクボーイ的に書かせてもらえば


おかんが言うには、名前は忘れたけど、なんでも近鉄富田駅の近くにある高校やねんて…
そら、三重県立四日市高校やないか!。四日市高校は駅の近くというよりも、学校の敷地内に駅があるみたいな学校やねんで…。ほんでな学校のすぐ横に「リスドール」という四日市高校生いきつけのパン屋さんがあって朝5:30からやっててな、何でもパッションというパンが人気なんやて。

 


でも、おかんが言うには、八稜…何とかちゅう名前の高校やったような……。
ほな、四日市高校と違うかぁ。でもな、四日市高校の校章は「八稜星」と言うて、八稜高校と関係があるように思うんやけどなぁ…。それに犬の「コーシロー」も昭和49年~60年まで高校で実際に生徒たちと過ごしてた犬やねんで。
ほな、この「犬がいた季節」という本は、実話をもとにしたフィクションなんや。本屋大賞を取ってくれると嬉しいなぁ。
本屋大賞を取ったら、食べログ3.54 四日市駅前の「伊藤商店」の天然もののたいやきでお祝いしょか。

 


 

うん、そやな。俺、四日市まで買いに行ってくるわ。



 

 

最終話 犬がいた季節 も創立百周年の記念式典という形でコーシロー会のみんなの再登場と早瀬と塩見の再会もよかったです。本屋大賞の他のノミネート10作を読んでいませんが、伊吹 有喜さんのこの本が大賞になってほしいと思うような素敵な作品でした。

 


チロがいれば祖母の気持ちも晴れる。一緒に散歩をすれば、外出も楽しめるようになるだろう。動物が苦手な父は、きっとチロを連れてくるのを拒んだのだ。チロ、と祖母が再びつぶやいた。「チロは死んだんよ……」「いつ? まさか震災で?」「あの朝、チロが小屋でワンワン吠えて。なんでそんなに吠えるのって、叱りに出ていったら、地面が揺れて……。ばあちゃんは助かったけど、チロに瓦が……」チロだけやない、と祖母がくぐもった声で言った。「お向かいの家の子……。小さな子も……。なんとかみんなで屋根の下から掘り出したけど……みるみるうちに身体、冷とおなって……」祖母の背中が激しく震え、布団から肩がのぞいた。「何もしてやれんで。ただ一生懸命、ばあちゃんたち、さすってやるしかできなくて……」ベッドを下り、奈津子は祖母の布団の脇に膝をつく。祖母が枕の端を指でつかんだ。その手も震えている。「爆発するかもしれんから、避難するようにって言われたけど……すぐには逃げられへん。……瓦礫のなかには、まだその子の、お兄ちゃんが……。なのに、火……火が…… 」祖母が嗚咽をもらした。震える背中に触れると熱い。その感触に驚き、奈津子は手を引っ込める。真冬なのに、骨張った祖母の背はひどく汗をかいていた。「ごめん、ごめんな、なっちゃん」「大丈夫やから。私は全然……謝らんといて。お祖母ちゃんは何も悪いことしてへん」祖母をいたわりたいが、どうしたらいいのかわからない。おそるおそる、奈津子は祖母の肩に手を置く。その手に自分の手を重ね、祖母が慟哭した。「なんで、こんな年寄りが生き残って……あんな若い子ぉらが……。」……。……。
チロ、と祖母がつぶやいた。真っ白な毛のチロを思い出すと、コーシローの姿と重なった。
祖母の気持ちを少しでも紛らわせようと、奈津子は必死で会話をつなぐ。「うちの学校……高校ね、犬がいるんだ。白くてムクムクした毛の」祖母は黙って目を閉じた。……。……。
見下ろしている祖母の顔がわずかにはころんだ。その顔に奈津子はささやく。「卒業式に来てよ、お祖母ちゃん。そしたらコーシローに会えるから」「白い、ムクムクの、ワンちゃん……」祖母がかすかに微笑み、やがて寝息が聞こえてきた。
この街に来て初めて祖母は外出して服を買い、母と一緒に卒業式に出席してくれた。第一志望の大学に合格して上京する朝、奈津子はその折に撮った写真を祖母に渡した。コーシローを間に挟んで、祖母と二人で並んでいる写真だ。祖母が目を細めて写真を眺めた。「ああ、可愛い、可愛い。チロがなっちゃんと並んでいるみたいや」祖母が写真のコーシローを撫でている。大切そうにその写真をポケットに入れると、代わりに白い封筒を出した。「なっちゃん、これ。新幹線のなかで何か食べて」「いいよ、東京まであっという間。食べてる暇ないから」祖母に封筒を返すと、思いのほか強い力で押し戻された。……。それが五日前のこと――。あれは、受け取るべきだった。居間にしつらえた祭壇の前で寝ずの番をしながら、奈津子はぼんやりと考える。一昨日の朝、祖母は布団のなかで冷たくなっているのが見つかった。眠っているうちに他界したのだ。東京のアパートから実家に戻ると、祖母は居間に寝かされていた。穏やかな表情の顔に触れると冷たい。その感触に、あの冬の夜に触れた、祖母の背中の熱と汗を思い出した。あのとき、祖母は全身で泣いていたのだ。愛しいもの、小さな者に何もしてやれなかった自分を責めて。そうだとしたら、あのお金は受け取るべきだったのだ。好物を食べるか、CDを買うかして、祖母にお礼を言えばよかったのだ。……。……。

父が礼服の内ポケットから写真を取りだした。「これ、奈津子に相談しようと思って。お前がいやなら入れないが、お祖母ちゃんの棺に入れてやってもいいか?」その写真は、卒業式のときに撮ったものだった。コーシローを挟んで、よく見れば似た顔の祖母と自分が笑っている。こうして見ると、姉妹で共通しているぽってりした唇は、明らかに祖母の遺伝だった。父が写真をじっと見つめている。「この写真、『なっちゃんがくれた』って、お祖母ちゃん、ずいぶん大事にしててな……。亡くなったときも枕元に置いてあった。奈津子がいやでなければ一緒に持たせてやりたい」……。……。
四月上旬の午前十時、犬用のクッキーとおもちゃを持ち、奈津子は八稜高校を訪れた。……。
コーシローと呼びかけ、奈津子は隣にかがむ。「私のこと、覚えてる? 卒業式の日に、お祖母ちゃんと一緒に写真を撮ったよ」並木を見ていたコーシローが優しい目で奈津子を見た。続いて頬の匂いを嗅いだ。「覚えてるって? お前は賢いね」愛しくなり、両手で耳の後ろの付け根を撫でてやる。つぶらな茶色の目がじっと見つめてきた。「お祖母ちゃんは死んじゃったんだ。だけどね、私たちにおいしいもの食べてって、お金を置いていってくれた。だからコーシローにおやつを持ってきた。あとで食べてね」頬の匂いを嗅いでいたコーシローが奈津子の手を舐めた。「あのね、私……」せっかく受かった大学は入学式にも出ないで退学した。東京のアパートも引き払った。親には強く反対されたが、医学部の再受験を決めた。入学金や前期の授業料、上京にまつわる費用をすべて無駄にしてしまったが、祖母が遺してくれたものが背中を押してくれた。自分の葬儀代を引いたあと、残りはすべて孫の学資にしてほしいと、祖母は郵便局の通帳が入った袋にメモを挟んでいた。ほかにも成人式の晴れ着を贈りたいと、奈津子と久美子の名義で積み立てていた貯金もあった。それでもこれから一年の浪人生活、無事に医学部に入れてもあと六年。七年近く、親に負担をかける。だから志望は地元の国立大学医学部だけにしばった。上京の日、祖母がくれようとしたあの金封も遺品のなかにあった。中身の半分はコーシローヘのプレゼントに、残りの半分はいつか医師になれたとき、おいしいものかCDを買おうと思う。犬に話したところで、わかってもらえない。それでも、夢中になって話していた。
(第3話 明日の行方)

緑の草地にさわやかな風が吹き抜けていった。放牧場を抜けてさらに登り続けると、一番高い草地に祖父が孫のために遊具を手作りした、小さな広場がある。幼い頃、祖父に手を引かれてやってきた広場に立つ。はるか下に緑の茶畑が広がっていた。右手には御在所岳の山肌が迫り、左手はるか遠方には四日市の市街地が小さく見える。その先には青い海が広がっていた。海の向こうに見える土地は知多半島。祖父のふるさとだ。牧場を見たいと言った祖父は、どの景色が見たかったのだろう。長く過ごしたこの地だろうか。それとも、ふるさとの牧場だろうか。スケッチブックを広げ、大輔は景色を紙に写し取る。たとえ世界がどうなろうとも――、一瞬を永遠にする方法を、自分はこの腕に持っている。
牧場で描き始めた絵を夢中になってその日のうちに仕上げ、翌日、大輔は祖父のもとに持っていった。二度の危篤を乗り越えた祖父は痩せこけ、目を閉じていた。それでもベッドのそばに大輔が寄ると、薄目を開けた。[お祖父ちゃん、具合どう? 俺ね、今日、絵を描いてきた」描き上げた絵を大輔は祖父の目の前に置く。「ほら、見える? これ、広場からの景色。家も牛舎もあるよ」祖父がかすかに微笑んだ。「空がきれいでさ、昨日は知多のほうまで見えた。ほら、お祖父ちゃん、ここ」知多半島の位置を指差すと、祖父がわずかに手を動かした。「写真も撮ってきたけど、見る?」祖父がかすかに首を横に振り、絵に手を伸ばした。絵の中のふるさとに触れている。震えるその手が牛舎と家に移った。何度も絵を撫でながら祖父が微笑み、泣いている。なつかしい家と牧場に手を振っているようだ。そう感じた瞬間、ぼたぼたと涙がこぼれ落ちた。
放牧場の片隅ですすきの穂が揺れ出した頃、祖父は旅立っていった。病室に飾った牧場の絵は一緒に棺に入れた。自分が描いた絵を人に贈ったのは初めてだ。これはどの思いをこめたことも、寝食を忘れて描いたことも。
(第5話 永遠にする方法)
 

 

あらすじ
京の郊外に居を構え静かに暮らしていた雨宮蔵人と咲弥だったが、将軍綱吉の生母桂昌院の叙任のため、上京してきた吉良上野介と関わり、幕府と朝廷の暗闘に巻き込まれてしまう。そして2人は良き相棒である片腕の僧、清厳とともに江戸におもむき、赤穂・浅野家の吉良邸討ち入りを目の当たりにする事となるのだが。2人の運命は如何に……。


ひと言
今までにない切り口の忠臣蔵。おもしろいですがちょっと脱線しすぎかも……。今回も和歌がいいアクセントになっています。


「そなたが、浅野の大石なる者の言葉を御台所様にお伝えしたとは、まことか」と声をかけた。咲弥は于を畳につかえ、 「さようにございます」と答えた。 「なにゆえ、さようなことをいたしたのや」「なにゆえと申されますと」 「田舎武士の世迷言を、いちいち御台所様に申し上げてなんとしなはるのや」 「武士の言葉にはいのちがこもっております。世迷言ではございません」咲弥は毅然として答えた。 「ほう、そうか。それなら大石は言うたことは必ずやると言わはるのやな」「いのちに代えて成し遂げましょう」「そうか、そなたにとって武士とは花か ――」町子は咲弥をじっと見た。咲弥はふと和歌を口にした。
散るとみればまた咲く花のにほひにも 後れ先立つためしありけり
西行の和歌である。散る桜があれば、それに遅れて美しく映えて咲く桜もある、これがこの世の習いだという。大石たちが遅れても咲く花だというのである。「咲くか咲かぬか見届けさせてもらいますえ」町子はひややかに言うと、定子について中奥へと向かった。
(六)

斎は中庭を見た。「ひとがひとを想うことは不義ではございますまい」清厳の言葉には思いがこもっていた。「さように思われまするか」「わたしにも覚えがあることです」「ほう、清厳殿にもございますか」「されど、わたしはそのことを恥じてはおりませぬ。ひとを想えて幸いであったと思います」清厳は微笑した。斎はうなずくと、和歌を口にした。
山はみなかをりし花の雲きえて 青葉が上を風わたるなり
斎自作の和歌である。山の上の花のような雲が消えて、いまは青葉の上を風がわたる、という意だ。斎にとって、町子は花の雲だった。「この世で最も美しいものとはひとへの想いかもしれませぬな」斎の声がわずかに震えた。そのころ咲弥は柳沢屋敷に移されていた。……。
「お願いの儀がございます」「なんですやろう。上様の寝所に侍りたくないというのなら、わたしに言うても無駄なことや。右衛門佐様にできんことがわたしにできるわけがおへん」 町子はつめたく言った。「さようなことではございません。これを神田の飛脚問屋、亀屋に届けていただきたいのです」咲弥は懐から一枚の短冊を取りだした。咲弥が右衛門佐から素養を試された時に認(したた)めた短冊である。「これを届けてどうするのや」町子は短冊を手に取って見つめた。「亀屋の女主人は、わたくしの存じよりの者でございます。わたくしからと申せば、夫の雨宮蔵人に届けてくれましょう。そのおり、わたくしが柳沢様の御屋敷にいることをお伝えいただきたいのです」「さようなことをして、どうなる」「夫はわたくしを救いにまいりましょう」「ここは天下の柳沢の屋敷や。一介の牢人ずれに何ができると言うのや」「蔵人は何度生まれ変わろうとも、いのちに代えてわたくしを守ると言ってくれました」町子は眉をひそめた。「さようなことをそなたは信じてはるのか」「信じております」咲弥は町子の目を見つめ和歌をつぶやいた。
今ぞ知る思ひ出でよと契りしは 忘れんとてのなさけなりけり
町子ははっとした。かつて斎が町子に贈った西行の和歌である。「そなた、どうしてそれを」「京におりましたころ、親しくしていた御方が想いをかけた方にこの和歌をお伝えしたいと話しておられました」[そうやったのか ――」「町子様、わたくしにはその御方の想いがわかります。ひとたび胸に抱いた想いは消えることはどざいません」町子はしばらく咲弥を見返していたが、ふとため息をつくと短冊を懐に入れた。立ち上がり、部屋を出ていきかけて立ち止まった。「確かに、この短冊、そなたの申すところに届けさせよう。されど、そなたの夫が救いに来ると信じたわけではないえ」と言った。咲弥は顔を輝かせて頭を下げた。「ありがたく存じます」 町子は掻取の裾をさばいた。「女人を妬ましいと思うたのは初めてのことや」町子の声はすずやかだった。
(七)

 

昨日、師匠と覚王山で食事した後、「梅花堂」の鬼まんじゅう3個(450円)をおみやげに買いました。10日ほど前の「秘密のケンミンSHOW」で こちらの鬼まんじゅうが取り上げられており、ほんとうに十何年ぶりにいただきました。もちろんTVで取り上げられる前から電話予約は必須で2日前に予約を入れました。久しぶりの鬼まんはやっぱりおいしく♪、さつまいも本来のおいしさが前面にでてくる純粋で素朴な味です。やっぱり覚王山に来たらコレでしょ。ごちそうさまでした♪。

 

梅花堂

名古屋市千種区末盛通1

 

「名古屋情報通」というウェブの情報で、「から揚げの天才」という から揚げ&玉子焼き専門店が2月4日に稲沢にオープンしたということで、からたま3個 ライス付き(537円)2つをネット予約していただきました。デカい唐揚げが1個99円ととても安く、あのテリー伊藤さんのこだわりのおいしい玉子焼きもついて コスパが非常に高いです。味は「鶏笑」の方が好みですが、この安さと味も捨て難くて悩むところです。それにしても最近はから揚げのお店が増えてきてうれしいです♪。ごちそうさまでした。

 

から揚げの天才 稲沢店

稲沢市小池3