小説 小はん殺し結城純一郎の演説 (3)
【たくましい文化国家の建設】
責任政党たるわが党に課せられた今後の重大な使命と責務は、不断の反省を重ねながら
厳しい政治倫理を実践し、この輝かしい尊王攘夷の政治体制をたくましく守り育て、永い
民族の繁栄を築く土台を固め、そして誇りをもってこれを子孫に引き継いでいくことであ
る。
われわれは今こそこの国づくりの確たる信念に基づき、厳しく課せられた試練としての
苦行の嵐を乗り越えて、この満腔1年から、ただちに、たくましい文化国家を築いていく
ため、新たなる挑戦を開始しなければならない。防衛体制こそが、科学と文化を発展させ
てきた、これがわが党の基本観点である。
最重要課題の第一は、社会悪の追放である。自民党による長期独裁政治は、日本社会を
スキャンダラスとなし、精神の器を台所のゴミ袋としてしまった。第二次世界大戦後、日
本を占領した米国の高度な植民地文化制度は、セックス、スクーリン、スポーツの三S政
策であった。わが民族精神は米国のハリウッド・ハンバーガー文化によって破壊され、米
国の土足によって踏み荒らされてしまった。なんとしてもこの精神の植民地から独立精神
へと気高く脱却しなくてならない。
臣民の精神領域に加えられた侵略により、日本民族はむしろ意識的に、自分自身の手で
自らの歴史や価値、自然に対する侮蔑と抹殺を行ってきた。組織的な歴史と文化への大破
壊行為を、忘我において無自覚において推進してしまったのである。
同士諸君、見るがいい。占領軍とその傀儡政権であった自民党の悪政によって加えられ
た、わが民族の悲劇を。
照明は暗転となり、舞台天井からスクリーンが降下する。
スライド写真が投影される。
家庭崩壊殺人事件、町内崩壊殺人事件、農村崩壊殺人事件、
学校教育殺人事件。
自然虐殺、アメリカ国際金融動物による買収殺人事件。
無惨な写真スライドが次から次へと投影される。
伝統ある美しい日本はもうそこにはなかった。
あまりにも傷ついた日本……
暗転の会場からすすり泣く声。
水を打ったように沈黙が重力となって支配する会場に
悲しみの泣き声は広がっていった。
突然、シュプレヒコールがあがる。
おにちくしょう アメリカ つぶせ つぶせ
おにちくしょう アメリカ つぶせ つぶせ
おにちくしょう 自民党 つぶせ つぶせ
おにちくしょう 自民党を処刑せよ 処刑せよ
暗転の会場に轟くシュプレヒコールは外に陣取る報道スッタフにも聞こえた。
「はじまったわね」
フジテレビのアナウンサー伊藤ゆかりがカメラマン小泉に準備起動をうながした。
「なかには報道2001の白岩さんがおるけん、大丈夫だんべよ」
カメラマン小泉はリラックスしなよ、とあいさつがわりに伊藤ゆかりの乳房をコチョコ
チョと人差し指で愛撫した。すけべ!と伊藤ゆかりは小泉の手を払いのけた。
結城総裁を刺す政治少年テロリスト山口音矢が会場に侵入している情報は警視庁から産
経新聞にリークされていた。伊藤ゆかりたちスッタフの仕事は、会場が混乱し、警視庁機
動隊が会場に突入する場面をしっかりとカメラで捉え伊藤ゆかりが実況中継することだっ
た。
国家生活党は昨年の六月に政権を獲得したが、いまだ権力機構の掃討作戦はなしきれて
いなかった。東京地検はアメリカCIAの下請け機関だった。そして警視庁もアメリカC
IAの下請け機関だった。これらの権力機構を民族主義によって更新するためには、壮大
な時間がかかると英国フィナンシャルタイムズが報じていた。
「揺らぎ」「不均衡」「衝動」、政治ニュースは祭りのように興奮し、日々更新されてい
た。
スクリーンはすでに舞台天に飛んでいた。国家生活党大会代議員たちのシュプレヒコー
ルもおさまり、再び照明が明るくなったときである。正面通路を会場の奥から走ってくる
男がいた。政治少年山口音矢だった。音矢は学生服にアイボリーのコートを着ていた。そ
のコートが翼のようにひるがえっている。音矢の疾走はまっしぐらに舞台階段を上がって
いた。彼はズボンのバンドに手をやり、そこにあったドスを抜いた。「天誅!」と叫びな
がら結城純一郎の腹をめざしていった。そのとき、木刀が音矢の背に衝撃を与えた。会場
前列に陣取っていた国家生活党の防衛隊であった。音矢がよろけたとき、防衛隊の先頭が
音矢の足を両腕でタックルした。音矢は倒れこみそこに何人もの防衛隊が飛びこみ、政治
少年音矢は羽交い絞めされ舞台袖へと連れ去られていった。すでに結城純一郎総裁は舞台
袖にいた。その周りを防衛隊が囲んでいた。
責任政党たるわが党に課せられた今後の重大な使命と責務は、不断の反省を重ねながら
厳しい政治倫理を実践し、この輝かしい尊王攘夷の政治体制をたくましく守り育て、永い
民族の繁栄を築く土台を固め、そして誇りをもってこれを子孫に引き継いでいくことであ
る。
われわれは今こそこの国づくりの確たる信念に基づき、厳しく課せられた試練としての
苦行の嵐を乗り越えて、この満腔1年から、ただちに、たくましい文化国家を築いていく
ため、新たなる挑戦を開始しなければならない。防衛体制こそが、科学と文化を発展させ
てきた、これがわが党の基本観点である。
最重要課題の第一は、社会悪の追放である。自民党による長期独裁政治は、日本社会を
スキャンダラスとなし、精神の器を台所のゴミ袋としてしまった。第二次世界大戦後、日
本を占領した米国の高度な植民地文化制度は、セックス、スクーリン、スポーツの三S政
策であった。わが民族精神は米国のハリウッド・ハンバーガー文化によって破壊され、米
国の土足によって踏み荒らされてしまった。なんとしてもこの精神の植民地から独立精神
へと気高く脱却しなくてならない。
臣民の精神領域に加えられた侵略により、日本民族はむしろ意識的に、自分自身の手で
自らの歴史や価値、自然に対する侮蔑と抹殺を行ってきた。組織的な歴史と文化への大破
壊行為を、忘我において無自覚において推進してしまったのである。
同士諸君、見るがいい。占領軍とその傀儡政権であった自民党の悪政によって加えられ
た、わが民族の悲劇を。
照明は暗転となり、舞台天井からスクリーンが降下する。
スライド写真が投影される。
家庭崩壊殺人事件、町内崩壊殺人事件、農村崩壊殺人事件、
学校教育殺人事件。
自然虐殺、アメリカ国際金融動物による買収殺人事件。
無惨な写真スライドが次から次へと投影される。
伝統ある美しい日本はもうそこにはなかった。
あまりにも傷ついた日本……
暗転の会場からすすり泣く声。
水を打ったように沈黙が重力となって支配する会場に
悲しみの泣き声は広がっていった。
突然、シュプレヒコールがあがる。
おにちくしょう アメリカ つぶせ つぶせ
おにちくしょう アメリカ つぶせ つぶせ
おにちくしょう 自民党 つぶせ つぶせ
おにちくしょう 自民党を処刑せよ 処刑せよ
暗転の会場に轟くシュプレヒコールは外に陣取る報道スッタフにも聞こえた。
「はじまったわね」
フジテレビのアナウンサー伊藤ゆかりがカメラマン小泉に準備起動をうながした。
「なかには報道2001の白岩さんがおるけん、大丈夫だんべよ」
カメラマン小泉はリラックスしなよ、とあいさつがわりに伊藤ゆかりの乳房をコチョコ
チョと人差し指で愛撫した。すけべ!と伊藤ゆかりは小泉の手を払いのけた。
結城総裁を刺す政治少年テロリスト山口音矢が会場に侵入している情報は警視庁から産
経新聞にリークされていた。伊藤ゆかりたちスッタフの仕事は、会場が混乱し、警視庁機
動隊が会場に突入する場面をしっかりとカメラで捉え伊藤ゆかりが実況中継することだっ
た。
国家生活党は昨年の六月に政権を獲得したが、いまだ権力機構の掃討作戦はなしきれて
いなかった。東京地検はアメリカCIAの下請け機関だった。そして警視庁もアメリカC
IAの下請け機関だった。これらの権力機構を民族主義によって更新するためには、壮大
な時間がかかると英国フィナンシャルタイムズが報じていた。
「揺らぎ」「不均衡」「衝動」、政治ニュースは祭りのように興奮し、日々更新されてい
た。
スクリーンはすでに舞台天に飛んでいた。国家生活党大会代議員たちのシュプレヒコー
ルもおさまり、再び照明が明るくなったときである。正面通路を会場の奥から走ってくる
男がいた。政治少年山口音矢だった。音矢は学生服にアイボリーのコートを着ていた。そ
のコートが翼のようにひるがえっている。音矢の疾走はまっしぐらに舞台階段を上がって
いた。彼はズボンのバンドに手をやり、そこにあったドスを抜いた。「天誅!」と叫びな
がら結城純一郎の腹をめざしていった。そのとき、木刀が音矢の背に衝撃を与えた。会場
前列に陣取っていた国家生活党の防衛隊であった。音矢がよろけたとき、防衛隊の先頭が
音矢の足を両腕でタックルした。音矢は倒れこみそこに何人もの防衛隊が飛びこみ、政治
少年音矢は羽交い絞めされ舞台袖へと連れ去られていった。すでに結城純一郎総裁は舞台
袖にいた。その周りを防衛隊が囲んでいた。
小説 小はん殺し結城純一郎の演説 (4)
会場は騒然となった。自民党が送り込んだテロリストだ! 誰かが怒鳴った。静かにし
ろ! 防衛隊の隊長が両手を広げ制動する。会場の外と中はわれわれ大会防衛隊がしっか
りと防備している、安心して大会を続行していただきたい! 隊長は演壇のマイクを握り、
代議員たちに訴えた。やがて舞台袖から再度、結城総裁が登場した。彼は代議員に手をふ
っている。会場からうなる拍手。舞台中央の演壇、隊長は結城総裁と大会代議員たちに礼
をし、舞台袖へと去っていった。隊長、演壇を舞台奥のほうに設定していてよかったです
ね、と防衛隊員が袖でいった。隊長がうなずいた。自民党と警視庁はまだつながっている
からな、機動隊が会場に押し寄せ、大会ができなくなるようにするのが敵の狙い、最後ま
で防備戦争の貫徹だ! 隊長が防衛隊に喝を入れた。隊長は戦争の基本は防備だとあらた
めて思った。
同士諸君! 満腔一年国家生活党運動方針の基調を続行します。(九段会館が割れんば
かりの拍手)結城純一郎総裁の演説は再開された。
政治少年山口音矢による暗殺が失敗したことは、報道2001の白岩から外に陣取って
いた伊藤ゆかりに携帯メールで知らされた。
「失敗だって!」
伊藤ゆかりがカメラマン小泉にいった。
「ケ!なんてざまだ、失敗かよ、最高の場面にみんな準備していたのに!ちくしょう!」
カメラマン小泉は呪詛した。
「警視庁機動隊にいって次に何が起こるか聞いてくるよ」
報道クルーキャプテンの中村がそう言って機動隊の車両へと歩いていった。
愛知県本部名古屋支部の代議員藤田真紀子は結城総裁にケガがなくて安心した。彼女は
カリスマ主婦とメディアから命名されていた。夫は自民党の参院議員で名を藤田公孝。彼
女は夫と離婚して昨年六月の選挙で名古屋から衆議院に立候補し当選をしたのだった。真
紀子は菓子をつくる料理研究家でもあった。おいしい菓子を結城総裁に届けようと彼女は
母性本能で思った。
佐賀県本部代議員広田素子も結城総裁がテロリストの手にかからなくてよかったと安心
した。彼女の仕事は会計士であったが東大医学部を卒業しているので応急手当ができた。
さきほど防衛隊に「わたしは医学の心得があります。なにかあれば言ってください」と志
願してきた。素子に隊長が応じた。
「自民党が大会つぶしを仕掛けてきているので、今日は何があるかわかりません、そのと
きは医療班でお願いします」
「わかりました」
素子は了解し席に戻った。
演壇の結城純一郎は声を張り上げこぶしを振り上げた。
同士諸君、わが日本の傷口はあまりにも大きい。この責任の一切は、占領軍である在日
米軍とこれまで政権を担当してきた自民党にある。わが党はたくましい文化国家を建設し
なくてはならない。そのためにはまず、自民党本部の執行部幹部どもを断固として処刑せ
ねばならない。
すでに自民党本部ビルは、わが党の突撃隊である国家青年同盟によって占拠した。何故、
占拠が必要であったのかは言うまでもなく、資料データーの保存のためである。自民党は
アメリカからの要求どおりに日本を植民地として運営してきた。その数々の資料を自民党
本部は証拠隠滅しようとした。その情報は自民党本部職員としてもぐりこんでいたわが党
の秘密情報党員によってもたらされた。わが党の突撃隊はすぐさま自民党本部ビルに押し
かけ自民党職員をビルからたたき出し占拠したのである。(なりやまぬ拍手)
米国の下請け機関である東京地検と警視庁は違法行為であると国家青年同盟に対して、
自民党本部ビルからの立ち退きを要求しているが、自民党本部ビルは現在、三百名の勇敢
な若き戦士たちによって、占拠闘争が今も貫徹されている。この偉大な占拠闘争を支えて
いるのが国家婦人同盟である。国家婦人同盟による食料差し入れは連日、突撃隊を励まし
ている。(拍手)
すでにわが党は新宿駅西口広場に処刑場を設定した。自民党本部の幹部という悪徳政治
家の公開処刑は、NHKと民放によって現場からテレビ中継され、その電波は全国列島各
地に住む臣民の茶の間に届くだろう。「永田町の自民党本部幹部を処刑する議案」は岐阜
県本部の佐藤聖子代議員から提出され、わが党の中央委員会はこれを了承し運動方針とし
たのである。(拍手)
臣民の目の前でこれまで自分たちを支配してきた売国奴の政治家、財界人、国家官僚ど
もを公開処刑することによって、植民地支配の精神的権威を壊滅させることができる。ギ
ロチンこそ独立の第一歩である。
次に処刑台におくられるのは、マスコミ界の仕掛け屋どもである。マスコミ界からの内
部告発によって、わが党はすでにギロチン名簿を作成した。六十年間にわたり神聖な臣民
の茶の間に、精神破壊の毒素をたれ流し続けた、マスメディア権力の罪悪は重大である。
マスメディア権力によって、青少年がどれだけ、悪に蝕まれてきたかはかり知れない。
世界で優秀な日本民族の息子、娘たちをここまで弱体化させてきたのは断じて許すことが
できない。日本マスメディアの役割は占領支配政策の柱として、日本民族の精神支柱を壊
滅することであった。日本文明の全的滅亡を内部から実行してきたのが日本マスメディア
権力であったのである。仕掛け屋と実行者は処刑の実行という事実の前に突き出される、
売国奴たちに断固した運命を提示する、それが公開処刑である。(九段会館が割れんばか
り拍手)
たくましい文化国家を築くためにこそ、日本民族の子供たちに、売国奴たちがいかなる
末路をとげるのかを、事実をもって教育する必要がある。徳川幕藩体制の寺小屋教育、そ
こでのからだと心を鍛える原点から出発しよう。
マスメディア権力どもの処刑をえてこそ、この恐怖によって、現代のタレント、テレビ
俳優、歌手、コメディアンたちがわが党に忠誠を誓わせることができる。テレビなどで親
しんできた芸能人による、国家生活党への賛美宣言こそ、臣民は時代が変換したことを肌
身で感じることができるのである。
同士諸君。日本文明の全的滅亡から不死鳥のごとくよみがえった日本臣民道をいまこそ
全世界に提示しようではないか! アメリカ、西欧同盟、そして全アジア諸国は、全世界
は、「野蛮なサムライが二十一世紀に復活した」と、満腔維新の日本を非難するであろう。
しかし動揺してはならない。世界はすでに部族戦争に突入している。どの部族、どの民族
の遺伝子が二十一世紀世界で生存できるのかの壮絶な死闘に突入していることは明白なの
だ。日本民族は二十一世紀に生存する! これが全世界への回答であり満腔維新の宣言で
ある。(熱狂的な拍手)
ろ! 防衛隊の隊長が両手を広げ制動する。会場の外と中はわれわれ大会防衛隊がしっか
りと防備している、安心して大会を続行していただきたい! 隊長は演壇のマイクを握り、
代議員たちに訴えた。やがて舞台袖から再度、結城総裁が登場した。彼は代議員に手をふ
っている。会場からうなる拍手。舞台中央の演壇、隊長は結城総裁と大会代議員たちに礼
をし、舞台袖へと去っていった。隊長、演壇を舞台奥のほうに設定していてよかったです
ね、と防衛隊員が袖でいった。隊長がうなずいた。自民党と警視庁はまだつながっている
からな、機動隊が会場に押し寄せ、大会ができなくなるようにするのが敵の狙い、最後ま
で防備戦争の貫徹だ! 隊長が防衛隊に喝を入れた。隊長は戦争の基本は防備だとあらた
めて思った。
同士諸君! 満腔一年国家生活党運動方針の基調を続行します。(九段会館が割れんば
かりの拍手)結城純一郎総裁の演説は再開された。
政治少年山口音矢による暗殺が失敗したことは、報道2001の白岩から外に陣取って
いた伊藤ゆかりに携帯メールで知らされた。
「失敗だって!」
伊藤ゆかりがカメラマン小泉にいった。
「ケ!なんてざまだ、失敗かよ、最高の場面にみんな準備していたのに!ちくしょう!」
カメラマン小泉は呪詛した。
「警視庁機動隊にいって次に何が起こるか聞いてくるよ」
報道クルーキャプテンの中村がそう言って機動隊の車両へと歩いていった。
愛知県本部名古屋支部の代議員藤田真紀子は結城総裁にケガがなくて安心した。彼女は
カリスマ主婦とメディアから命名されていた。夫は自民党の参院議員で名を藤田公孝。彼
女は夫と離婚して昨年六月の選挙で名古屋から衆議院に立候補し当選をしたのだった。真
紀子は菓子をつくる料理研究家でもあった。おいしい菓子を結城総裁に届けようと彼女は
母性本能で思った。
佐賀県本部代議員広田素子も結城総裁がテロリストの手にかからなくてよかったと安心
した。彼女の仕事は会計士であったが東大医学部を卒業しているので応急手当ができた。
さきほど防衛隊に「わたしは医学の心得があります。なにかあれば言ってください」と志
願してきた。素子に隊長が応じた。
「自民党が大会つぶしを仕掛けてきているので、今日は何があるかわかりません、そのと
きは医療班でお願いします」
「わかりました」
素子は了解し席に戻った。
演壇の結城純一郎は声を張り上げこぶしを振り上げた。
同士諸君、わが日本の傷口はあまりにも大きい。この責任の一切は、占領軍である在日
米軍とこれまで政権を担当してきた自民党にある。わが党はたくましい文化国家を建設し
なくてはならない。そのためにはまず、自民党本部の執行部幹部どもを断固として処刑せ
ねばならない。
すでに自民党本部ビルは、わが党の突撃隊である国家青年同盟によって占拠した。何故、
占拠が必要であったのかは言うまでもなく、資料データーの保存のためである。自民党は
アメリカからの要求どおりに日本を植民地として運営してきた。その数々の資料を自民党
本部は証拠隠滅しようとした。その情報は自民党本部職員としてもぐりこんでいたわが党
の秘密情報党員によってもたらされた。わが党の突撃隊はすぐさま自民党本部ビルに押し
かけ自民党職員をビルからたたき出し占拠したのである。(なりやまぬ拍手)
米国の下請け機関である東京地検と警視庁は違法行為であると国家青年同盟に対して、
自民党本部ビルからの立ち退きを要求しているが、自民党本部ビルは現在、三百名の勇敢
な若き戦士たちによって、占拠闘争が今も貫徹されている。この偉大な占拠闘争を支えて
いるのが国家婦人同盟である。国家婦人同盟による食料差し入れは連日、突撃隊を励まし
ている。(拍手)
すでにわが党は新宿駅西口広場に処刑場を設定した。自民党本部の幹部という悪徳政治
家の公開処刑は、NHKと民放によって現場からテレビ中継され、その電波は全国列島各
地に住む臣民の茶の間に届くだろう。「永田町の自民党本部幹部を処刑する議案」は岐阜
県本部の佐藤聖子代議員から提出され、わが党の中央委員会はこれを了承し運動方針とし
たのである。(拍手)
臣民の目の前でこれまで自分たちを支配してきた売国奴の政治家、財界人、国家官僚ど
もを公開処刑することによって、植民地支配の精神的権威を壊滅させることができる。ギ
ロチンこそ独立の第一歩である。
次に処刑台におくられるのは、マスコミ界の仕掛け屋どもである。マスコミ界からの内
部告発によって、わが党はすでにギロチン名簿を作成した。六十年間にわたり神聖な臣民
の茶の間に、精神破壊の毒素をたれ流し続けた、マスメディア権力の罪悪は重大である。
マスメディア権力によって、青少年がどれだけ、悪に蝕まれてきたかはかり知れない。
世界で優秀な日本民族の息子、娘たちをここまで弱体化させてきたのは断じて許すことが
できない。日本マスメディアの役割は占領支配政策の柱として、日本民族の精神支柱を壊
滅することであった。日本文明の全的滅亡を内部から実行してきたのが日本マスメディア
権力であったのである。仕掛け屋と実行者は処刑の実行という事実の前に突き出される、
売国奴たちに断固した運命を提示する、それが公開処刑である。(九段会館が割れんばか
り拍手)
たくましい文化国家を築くためにこそ、日本民族の子供たちに、売国奴たちがいかなる
末路をとげるのかを、事実をもって教育する必要がある。徳川幕藩体制の寺小屋教育、そ
こでのからだと心を鍛える原点から出発しよう。
マスメディア権力どもの処刑をえてこそ、この恐怖によって、現代のタレント、テレビ
俳優、歌手、コメディアンたちがわが党に忠誠を誓わせることができる。テレビなどで親
しんできた芸能人による、国家生活党への賛美宣言こそ、臣民は時代が変換したことを肌
身で感じることができるのである。
同士諸君。日本文明の全的滅亡から不死鳥のごとくよみがえった日本臣民道をいまこそ
全世界に提示しようではないか! アメリカ、西欧同盟、そして全アジア諸国は、全世界
は、「野蛮なサムライが二十一世紀に復活した」と、満腔維新の日本を非難するであろう。
しかし動揺してはならない。世界はすでに部族戦争に突入している。どの部族、どの民族
の遺伝子が二十一世紀世界で生存できるのかの壮絶な死闘に突入していることは明白なの
だ。日本民族は二十一世紀に生存する! これが全世界への回答であり満腔維新の宣言で
ある。(熱狂的な拍手)
小説 小はん殺し結城純一郎の演説 (5)
2
飯田勲首相秘書官のオフイスはもちろん首相官邸にあった。あらゆる国会議員の情報は
内閣情報調査室と東京地検、警視庁公安部から飯田勲のデスクに上がってくるシステムは
確立されていた。飯田勲は警視庁公安部を自民党議員の動向調査に差し向けていた。自民
党議員の弱みや恥ずかしい情報を握り、それで自民党議員が首相官邸の奴隷になるべく恫
喝をするためである。
さらに自民党議員の二十四時間動向はそれぞれの女性秘書によって、メールで首相官邸
の飯田勲デスクにあるコンピュータに報告されるシステムも確立していた。自民党議員の
女性秘書はほとんど統一教会信者であった。飯田勲は情報収集の多重化システムを採用し
ていた。すなわち警視庁公安部からの情報と女性秘書からの報告である。そのふたつの情
報源を付き合わせることによって情報の裏がとれると飯田勲は確信していた。議員を叩き
落すときは、メディアにリークするのである。
そのリークほしさに飯田勲のところには、政治家のスキャンダルを売り物にしている週
刊誌記者が群がってくる。飯田勲は議員たちの女性秘書に命じて、全自民党国会議員が使
用するパソコンにメールスパイソフトをわからないようにインストロールさせておいた。
議員がメールを送信すれば、その内容はただちに飯田勲のコンピュータに送信されるとい
うシステムが成立していた。議員たちは自分が打ったメールが相手の他に、まさか飯田勲
のパソコンにまで送信されているとは誰も思っていなかった。自民党国会議員は飯田勲に
丸裸にされていた。もはや誰も首相官邸には逆らえなくなっていた。
しかしこれでも不十分だった。携帯メールをどうスパイするかの課題が残っていた。多
くの国会議員は携帯メールで連絡をとっているからである。飯田勲はNECに携帯メール
スパイソフトの開発を急がせていた。
深夜0時が過ぎていた。飯田勲はデスクでうとうとと疲れから眠っていた。「おまえを
殺してやる」声が聞こえた。首相官邸には幽霊が出るとの噂は第二次世界大戦終了後から
あった。兵隊の幽霊が出現するのである。時の首相を金縛りにして「おまえを殺してやる」
と兵隊の声が首相の寝室に木霊するのである。一九四五年から六十年間……何人もの総理
大臣が兵隊の幽霊に悩まされた。新しい首相官邸が建設され、しばらく兵隊の幽霊は出な
くなったのだが、「おまえを殺してやる」声のみの幽霊が最近出るようになった。ついに
首相は最近、「おれは殺されるかもしれない」などと口走るようになってしまった。飯田
勲は声のみの幽霊に覚醒した。また……兵隊が出たか……そうため息をついた。飯田勲は
戸棚からスコッチを取り出した。そしてグラスにとくとくとついだ。自分でも飲みすぎだ
と思っている。からだも肥満度を増している。首相官邸を仕切る飯田勲は影の総理大臣と
命名されていた。酒の力をかりて眠らなくてはならない。しかしと飯田勲は思った。権力
の味は最高だな……手放すことはない……できるだけ権力の座を保守しなければなあ……
そのためにおれは横須賀のあの男を総理大臣の位置に押し上げた。永久権力は可能なのだ
ろうか? 飯田勲はスコッチを飲みながら仕掛けのアイデアを考えていた。
デスクの上にはアンダーグランド小説が置いてあった。飯田勲は睡眠誘導のために読み
はじめた。自分と同じ名前が出てくるふざけた怪文書小説だった。
飯田勲首相秘書官のオフイスはもちろん首相官邸にあった。あらゆる国会議員の情報は
内閣情報調査室と東京地検、警視庁公安部から飯田勲のデスクに上がってくるシステムは
確立されていた。飯田勲は警視庁公安部を自民党議員の動向調査に差し向けていた。自民
党議員の弱みや恥ずかしい情報を握り、それで自民党議員が首相官邸の奴隷になるべく恫
喝をするためである。
さらに自民党議員の二十四時間動向はそれぞれの女性秘書によって、メールで首相官邸
の飯田勲デスクにあるコンピュータに報告されるシステムも確立していた。自民党議員の
女性秘書はほとんど統一教会信者であった。飯田勲は情報収集の多重化システムを採用し
ていた。すなわち警視庁公安部からの情報と女性秘書からの報告である。そのふたつの情
報源を付き合わせることによって情報の裏がとれると飯田勲は確信していた。議員を叩き
落すときは、メディアにリークするのである。
そのリークほしさに飯田勲のところには、政治家のスキャンダルを売り物にしている週
刊誌記者が群がってくる。飯田勲は議員たちの女性秘書に命じて、全自民党国会議員が使
用するパソコンにメールスパイソフトをわからないようにインストロールさせておいた。
議員がメールを送信すれば、その内容はただちに飯田勲のコンピュータに送信されるとい
うシステムが成立していた。議員たちは自分が打ったメールが相手の他に、まさか飯田勲
のパソコンにまで送信されているとは誰も思っていなかった。自民党国会議員は飯田勲に
丸裸にされていた。もはや誰も首相官邸には逆らえなくなっていた。
しかしこれでも不十分だった。携帯メールをどうスパイするかの課題が残っていた。多
くの国会議員は携帯メールで連絡をとっているからである。飯田勲はNECに携帯メール
スパイソフトの開発を急がせていた。
深夜0時が過ぎていた。飯田勲はデスクでうとうとと疲れから眠っていた。「おまえを
殺してやる」声が聞こえた。首相官邸には幽霊が出るとの噂は第二次世界大戦終了後から
あった。兵隊の幽霊が出現するのである。時の首相を金縛りにして「おまえを殺してやる」
と兵隊の声が首相の寝室に木霊するのである。一九四五年から六十年間……何人もの総理
大臣が兵隊の幽霊に悩まされた。新しい首相官邸が建設され、しばらく兵隊の幽霊は出な
くなったのだが、「おまえを殺してやる」声のみの幽霊が最近出るようになった。ついに
首相は最近、「おれは殺されるかもしれない」などと口走るようになってしまった。飯田
勲は声のみの幽霊に覚醒した。また……兵隊が出たか……そうため息をついた。飯田勲は
戸棚からスコッチを取り出した。そしてグラスにとくとくとついだ。自分でも飲みすぎだ
と思っている。からだも肥満度を増している。首相官邸を仕切る飯田勲は影の総理大臣と
命名されていた。酒の力をかりて眠らなくてはならない。しかしと飯田勲は思った。権力
の味は最高だな……手放すことはない……できるだけ権力の座を保守しなければなあ……
そのためにおれは横須賀のあの男を総理大臣の位置に押し上げた。永久権力は可能なのだ
ろうか? 飯田勲はスコッチを飲みながら仕掛けのアイデアを考えていた。
デスクの上にはアンダーグランド小説が置いてあった。飯田勲は睡眠誘導のために読み
はじめた。自分と同じ名前が出てくるふざけた怪文書小説だった。
小説 小はん殺し結城純一郎の演説 (6)
飯田勲隊長は舞台袖から再開された結城純一郎総裁の演説をしばらくながめていた。防
衛隊員にあとをたのむと任せ、袖から楽屋口へ歩いていった。防衛隊の控え室には、政治
少年山口音矢が椅子に縛られていた。
「これから打ち合わせをする、ヤツは別の部屋に移動させ監視しておけ」
隊長は防衛隊員に指示を出した。ふたりの防衛隊員が椅子に縛った音矢を持ち上げ、部
屋から移動する。
控え室にはそれぞれの防衛部署からキャップが続々と集結してきた。防衛隊員の制服の
ズボンとジャンパーは黒色だった。布の素材は機動隊の制服と同じ仕様だった。それぞれ
が黒い野球帽をかぶっていた。上から下まで黒衣装だった。情報チームのキャップが切り
出した。
「靖国神社境内には続々と旧右翼が集結しています。国家生活党大会撲滅集会が午後一時
から開催されています。主催は旧右翼の連合ですが、自民党青年部の杉山大蔵が連帯あい
さつで来ております。旧右翼連合による集会開催は、自民党幹事長の武部勤による策略で
あることは間違いありません。自民党は旧右翼を使い国家生活党大会が中止に追い込まれ
るよう画策しております。午後四時からデモ隊が出発します。コースは靖国通りから駿河
台に向かいお茶の水駅で流れ解散となっておりますが、旧右翼連合はわれわれの大会会場
である九段会館に突入してくると推測されます。すでに旧右翼の街宣車は三十台ほどが靖
国神社の門の前に並び、国家生活党を皆殺しにしろとマイクでがなり上げております。街
宣車の中には日本刀や長ドスなどが準備されております。武器に刃物を使用することは間
違いありません。街宣車もろとも九段会館に突入してくることは十分に予測できます。靖
国神社で定点観測しているルポからの報告によりますと、現在の集会参加者は約二千人、
デモ隊が出発する頃には三千人にふくれあがると推測されます。他方、左翼ですが駿河台
明治大学アカデミーコモンにおいて午後一時からファシズム国家生活党大会粉砕集会が開
催されています。ルポ報告によりますと全国大学全共闘、全国反戦青年委員会、全国反帝
高校生評議会による主催です。屋内アカデミーホールで一千名、屋外明大スクエア(広場)
にて一千名、合計数およそ二千人。デモ出発は午後五時です。コースは駿河台から靖国通
り、新宿駅解散です。新宿駅において暴動をたくらんでいると推測されます。左翼過激派
は靖国通りから九段会館に突入してくる推測されます。武器は火炎ビンを使用することは
間違いありません。集会参加者が占拠したアかデミーコスモの中に火炎ビンが入ったケー
ス箱が外から運ばれたのを定点ルポが望遠鏡で確認しました。旗竿部隊は五百人ほどです。
竹竿によって九段会館に突入してくると推測されます。鉄パイプで武装した決死隊の存在
はまだ未確認ですが、おそらく一〇号館か一四号館に待機しているのだと推測します。左
翼は格差社会と階級の固定化による下層国民の不満を暴動によって爆発させる戦術です。
国家生活党大会を実力で粉砕し、労働者階級のたぎる怒りを内乱へと転化せよと絶叫して
おります。以上」
いよいよ首都決戦の激突がはじまると控え室には緊張が走った。
「武道館の現状を報告しろ」
隊長は参謀で臣民軍担当の副隊長である世耕弘成参謀に促した。
「武道館は現在、ロックコンサートパーティを偽造し、武道館の中はロック音楽の大音量
がうなり国家生活党メディア音楽団員が舞台で演奏しております。全国から結集した国家
生活党臣民軍兵士はロックコンサートの観客を偽装し、一万名が武道館で待機しておりま
す。完璧なチェック体制により、敵のスパイや警視庁公安など、一匹として武道館へは潜
入させておりません。大会をなんとしても防衛するという戦闘意欲に兵士ひとりがひとり
が燃え上がっております。いつでも動けます」
「よし、臣民軍を午後三時に武道館から出発させろ。敵は靖国神社の旧右翼と駿河台の左
翼だ。一挙に壊滅しろ。わが党軍の戦略は大会を成功させることにある。戦術としては大
会防備でありながら、先制的に戦場を創出することにある。大会防衛でありながら先取り
として敵に攻撃を加える。戦場を敵味方彼我の関係において、わざとこちらから創出し、
最初から最後まで主導権を奪取する作戦だ。九段会館の外広場は旧右翼突入によって戦場
となるため、大会は武道館に移動する。九段会館での大会は結城純一郎総裁の大会議案基
調報告が午後三時半に終了予定となっている。ここで一旦大会を打ち切り、代議員一千名
は九段会館から武道館に向かってもらう。九段会館からの出発は午後三時五十分とする。
九段会館ホール裏の舞台搬入口から縦隊で党幹部と代議員は九段会館から脱出。九段会館
の裏から千代田区役所の裏を通過し、千代田公会堂の脇から内堀通りに出て、清水門から
北の丸公園に向かう。北の丸公園から党幹部と代議員が武道館の中に入る。党幹部と代議
員の隊列による移動行程の脇は防衛隊が固める。武道館での大会再開は午後六時とする。
それまで代議員には夕食をとってもらう。臣民軍、防衛隊、党幹部、代議員の夕食は、お
にぎりだが、国家婦人同盟が武道館に届けてくれる。夜の部は都道府県本部と各支部から
選出された代議員の発言となる。明日の予定だが武道館において午前の部は引き続き代議
員発言。午後の部は午後三時まで代議員発言。その後、大会報告の採択。そして中央幹部
委員の選出となる。午後五時が大会終了予定。今日と明日が大会防衛の決戦だ。臣民軍は
三個師団とする。第一師団は靖国方面隊、四千の部隊で靖国神社の旧右翼に襲い掛かれ。
火炎ビンを武器につかうと靖国神社を燃やしてしまう危険性がある。武器はゴキブリ退治
のバルサンをつかえ。目潰しの煙を一斉に投げ込みナチス棒と鉄管で殲滅しろ。デモ隊の
先頭を九段会館への突入へとおびき寄せ一挙に襲え。戦場は靖国神社境内と九段坂靖国通
りだ。左翼の定点観測ルポも靖国神社にいるはずだ。わが臣民軍が旧右翼部隊を壊滅すれ
ば、その情報はすぐさま明治大学で集会を開いている左翼どもに伝わるはずだ。第二師団
は駿河台方面隊。四千の部隊で明治大学から出発する左翼デモ隊に襲い掛かれ。戦場は明
大アカデミーコモス前の明大広場と駿河台明大通りの坂だ。左翼は火炎ビンを武器として
使用するだろう。高圧水銃のドラゴンを出動させ、水攻めにしろ。敵は烏合の衆として逃
げ惑う。そこを襲い掛かれ。駿河台で壊滅しろ。靖国通り、駿河台明大通りも車の交通が
激しい道路だ。車の往来をスットプして戦場に転化しろ。第三師団は武道館防衛隊。二千
で武道館防衛に従事しろ。武道館から靖国方面隊と駿河台方面隊を送り出した後の武道館
防衛の指揮は、防衛副隊長である世耕弘成参謀がする。大会防衛隊が九段会館から党幹部
と代議員を無事、武道館まで移動させる間が防衛の勝負だ。靖国方面部隊は旧右翼を殲滅
した後、武道館にすぐさま帰還し、世耕弘成副隊長の指揮下に入り武道館防衛体制に従事
しろ。駿河台方面部隊は駿河台で決着がついたら武道館へと撤収を開始しろ。警視庁機動
隊が騒乱罪を適用し、武道館を包囲するだろうが、ここで長期持久戦として対峙しろ。こ
の戦争は臣民軍の長征への出発としてある。思想戦争として戦え。ふたつの戦場での勝利
をもって、われわれは日本臣民軍創設に向けて、自衛隊に乗り込む。自衛隊を日本臣民軍
として再編するためである。今日の戦争は国家生活党臣民軍から日本臣民軍への飛躍をか
けた戦争であることを肝に銘じよ。イデオロギー戦争としての実践訓練だと思え」
隊長はもはや将軍であると防衛隊のキャップたちは思った。ふたつの戦場、首都決戦に
誰もが武者ぶるいした。膝がガクガクと自動的に動いている。大会を成功させ、同時一体
として、ふたつの戦場で勝利する。今日の戦争の後も警視庁機動隊との長期持久戦の対峙
は、突撃隊である国家青年同盟が占拠する自民党本部ビルと武道館というふたつの場所と
なる。指導主体が問われていた。
衛隊員にあとをたのむと任せ、袖から楽屋口へ歩いていった。防衛隊の控え室には、政治
少年山口音矢が椅子に縛られていた。
「これから打ち合わせをする、ヤツは別の部屋に移動させ監視しておけ」
隊長は防衛隊員に指示を出した。ふたりの防衛隊員が椅子に縛った音矢を持ち上げ、部
屋から移動する。
控え室にはそれぞれの防衛部署からキャップが続々と集結してきた。防衛隊員の制服の
ズボンとジャンパーは黒色だった。布の素材は機動隊の制服と同じ仕様だった。それぞれ
が黒い野球帽をかぶっていた。上から下まで黒衣装だった。情報チームのキャップが切り
出した。
「靖国神社境内には続々と旧右翼が集結しています。国家生活党大会撲滅集会が午後一時
から開催されています。主催は旧右翼の連合ですが、自民党青年部の杉山大蔵が連帯あい
さつで来ております。旧右翼連合による集会開催は、自民党幹事長の武部勤による策略で
あることは間違いありません。自民党は旧右翼を使い国家生活党大会が中止に追い込まれ
るよう画策しております。午後四時からデモ隊が出発します。コースは靖国通りから駿河
台に向かいお茶の水駅で流れ解散となっておりますが、旧右翼連合はわれわれの大会会場
である九段会館に突入してくると推測されます。すでに旧右翼の街宣車は三十台ほどが靖
国神社の門の前に並び、国家生活党を皆殺しにしろとマイクでがなり上げております。街
宣車の中には日本刀や長ドスなどが準備されております。武器に刃物を使用することは間
違いありません。街宣車もろとも九段会館に突入してくることは十分に予測できます。靖
国神社で定点観測しているルポからの報告によりますと、現在の集会参加者は約二千人、
デモ隊が出発する頃には三千人にふくれあがると推測されます。他方、左翼ですが駿河台
明治大学アカデミーコモンにおいて午後一時からファシズム国家生活党大会粉砕集会が開
催されています。ルポ報告によりますと全国大学全共闘、全国反戦青年委員会、全国反帝
高校生評議会による主催です。屋内アカデミーホールで一千名、屋外明大スクエア(広場)
にて一千名、合計数およそ二千人。デモ出発は午後五時です。コースは駿河台から靖国通
り、新宿駅解散です。新宿駅において暴動をたくらんでいると推測されます。左翼過激派
は靖国通りから九段会館に突入してくる推測されます。武器は火炎ビンを使用することは
間違いありません。集会参加者が占拠したアかデミーコスモの中に火炎ビンが入ったケー
ス箱が外から運ばれたのを定点ルポが望遠鏡で確認しました。旗竿部隊は五百人ほどです。
竹竿によって九段会館に突入してくると推測されます。鉄パイプで武装した決死隊の存在
はまだ未確認ですが、おそらく一〇号館か一四号館に待機しているのだと推測します。左
翼は格差社会と階級の固定化による下層国民の不満を暴動によって爆発させる戦術です。
国家生活党大会を実力で粉砕し、労働者階級のたぎる怒りを内乱へと転化せよと絶叫して
おります。以上」
いよいよ首都決戦の激突がはじまると控え室には緊張が走った。
「武道館の現状を報告しろ」
隊長は参謀で臣民軍担当の副隊長である世耕弘成参謀に促した。
「武道館は現在、ロックコンサートパーティを偽造し、武道館の中はロック音楽の大音量
がうなり国家生活党メディア音楽団員が舞台で演奏しております。全国から結集した国家
生活党臣民軍兵士はロックコンサートの観客を偽装し、一万名が武道館で待機しておりま
す。完璧なチェック体制により、敵のスパイや警視庁公安など、一匹として武道館へは潜
入させておりません。大会をなんとしても防衛するという戦闘意欲に兵士ひとりがひとり
が燃え上がっております。いつでも動けます」
「よし、臣民軍を午後三時に武道館から出発させろ。敵は靖国神社の旧右翼と駿河台の左
翼だ。一挙に壊滅しろ。わが党軍の戦略は大会を成功させることにある。戦術としては大
会防備でありながら、先制的に戦場を創出することにある。大会防衛でありながら先取り
として敵に攻撃を加える。戦場を敵味方彼我の関係において、わざとこちらから創出し、
最初から最後まで主導権を奪取する作戦だ。九段会館の外広場は旧右翼突入によって戦場
となるため、大会は武道館に移動する。九段会館での大会は結城純一郎総裁の大会議案基
調報告が午後三時半に終了予定となっている。ここで一旦大会を打ち切り、代議員一千名
は九段会館から武道館に向かってもらう。九段会館からの出発は午後三時五十分とする。
九段会館ホール裏の舞台搬入口から縦隊で党幹部と代議員は九段会館から脱出。九段会館
の裏から千代田区役所の裏を通過し、千代田公会堂の脇から内堀通りに出て、清水門から
北の丸公園に向かう。北の丸公園から党幹部と代議員が武道館の中に入る。党幹部と代議
員の隊列による移動行程の脇は防衛隊が固める。武道館での大会再開は午後六時とする。
それまで代議員には夕食をとってもらう。臣民軍、防衛隊、党幹部、代議員の夕食は、お
にぎりだが、国家婦人同盟が武道館に届けてくれる。夜の部は都道府県本部と各支部から
選出された代議員の発言となる。明日の予定だが武道館において午前の部は引き続き代議
員発言。午後の部は午後三時まで代議員発言。その後、大会報告の採択。そして中央幹部
委員の選出となる。午後五時が大会終了予定。今日と明日が大会防衛の決戦だ。臣民軍は
三個師団とする。第一師団は靖国方面隊、四千の部隊で靖国神社の旧右翼に襲い掛かれ。
火炎ビンを武器につかうと靖国神社を燃やしてしまう危険性がある。武器はゴキブリ退治
のバルサンをつかえ。目潰しの煙を一斉に投げ込みナチス棒と鉄管で殲滅しろ。デモ隊の
先頭を九段会館への突入へとおびき寄せ一挙に襲え。戦場は靖国神社境内と九段坂靖国通
りだ。左翼の定点観測ルポも靖国神社にいるはずだ。わが臣民軍が旧右翼部隊を壊滅すれ
ば、その情報はすぐさま明治大学で集会を開いている左翼どもに伝わるはずだ。第二師団
は駿河台方面隊。四千の部隊で明治大学から出発する左翼デモ隊に襲い掛かれ。戦場は明
大アカデミーコモス前の明大広場と駿河台明大通りの坂だ。左翼は火炎ビンを武器として
使用するだろう。高圧水銃のドラゴンを出動させ、水攻めにしろ。敵は烏合の衆として逃
げ惑う。そこを襲い掛かれ。駿河台で壊滅しろ。靖国通り、駿河台明大通りも車の交通が
激しい道路だ。車の往来をスットプして戦場に転化しろ。第三師団は武道館防衛隊。二千
で武道館防衛に従事しろ。武道館から靖国方面隊と駿河台方面隊を送り出した後の武道館
防衛の指揮は、防衛副隊長である世耕弘成参謀がする。大会防衛隊が九段会館から党幹部
と代議員を無事、武道館まで移動させる間が防衛の勝負だ。靖国方面部隊は旧右翼を殲滅
した後、武道館にすぐさま帰還し、世耕弘成副隊長の指揮下に入り武道館防衛体制に従事
しろ。駿河台方面部隊は駿河台で決着がついたら武道館へと撤収を開始しろ。警視庁機動
隊が騒乱罪を適用し、武道館を包囲するだろうが、ここで長期持久戦として対峙しろ。こ
の戦争は臣民軍の長征への出発としてある。思想戦争として戦え。ふたつの戦場での勝利
をもって、われわれは日本臣民軍創設に向けて、自衛隊に乗り込む。自衛隊を日本臣民軍
として再編するためである。今日の戦争は国家生活党臣民軍から日本臣民軍への飛躍をか
けた戦争であることを肝に銘じよ。イデオロギー戦争としての実践訓練だと思え」
隊長はもはや将軍であると防衛隊のキャップたちは思った。ふたつの戦場、首都決戦に
誰もが武者ぶるいした。膝がガクガクと自動的に動いている。大会を成功させ、同時一体
として、ふたつの戦場で勝利する。今日の戦争の後も警視庁機動隊との長期持久戦の対峙
は、突撃隊である国家青年同盟が占拠する自民党本部ビルと武道館というふたつの場所と
なる。指導主体が問われていた。
小説 小はん殺し結城純一郎の演説 (7)
将軍である飯田勲隊長はさらに防衛軍事方針を伝えた。
「地下にもぐった合衆国統一党に不気味な動きがある。有力な情報によると、やつらは在
日米軍と結託し、九段会館にテロ攻撃を仕掛けてくるらしい。その内容は米国大統領府が
ニューヨーク国際貿易センターのツインタワーを遠隔操作による無人飛行機で激突させ、
それと同時にビル内に仕掛けた高熱爆弾を爆発させツインタワーを崩壊した戦術。油断す
るな。帝都東京の制空権は安保条約が破棄されたが今だ在日米軍にある。自衛隊がわれわ
れの軍であるなら、上空の防衛は貫徹できるのであるが、自衛隊を米軍の下請け機関から
日本独立軍への再編止揚は途上にあるところだ。九段会館、武道館の防衛は何よりも上空
に注意しろ。向かってくる飛行機を発見したら、すぐさま党幹部と代議員を外に非難させ
ろ。米軍は、わが党軍戦士による在日米軍基地破壊炎上同時多発ゲリラ攻撃の復讐戦を必
ず行うはずだ。アングロ・サクソンを甘くみるとわれわれは撃破されてしまう。かと言っ
て再び米国の植民地に戻ることはできない。国家生活党が壊滅されても日本独立はなしと
げるしかない。大会が成功するのか、それとも失敗するのか、日本独立を宣言する国家生
活党大会を全世界が注目している。国家生活党大会が成功すれば、それに勇気付けられア
メリカ合衆国内の国家生活主義者が、米国大統領府自らが911テロを策動した究極の大
陰謀を暴露する。アメリカ合衆国内部からの告発が勃発すれは、ヨーロッパの国家生活主
義者が911テロとは国際金融動物とアメリカ合衆国影の政府と米国大統領府によるプロ
グラム起動であったことを情報戦として暴露していくだろう。国家生活党大会が失敗すれ
ば911テロの真相追究はアンダーグランドに閉じこめられてしまう。国際金融動物は国
家を破壊し、グローバル金融資本主義によるワン・ワールドたる単一世界政府をつくろう
としている。やつらにとって国家とは生活の母体ではなく、為替相場の投機対象でしかな
い。全世界でナショナルなオリジナリティある国家生活主義者が胎動することをやつらは
マスゴミを使って阻止している。やつらは国家と庶民の自立的な生活基盤を破壊しながら
世界金融市場の奴隷へと国家を落とし込めてきた。ゆえに国際金融動物は合衆国統一党総
裁の竹中平蔵を全面的に支援している。わが防衛隊は竹中平蔵による国家生活党大会への
テロ攻撃を断固として粉砕する。合言葉は、やられる前にやりかえせだ。地下にもぐった
竹中平蔵を、現在、国家生活党の秘密軍司部門が必死になって探索している。防衛隊の諸
君は武装的身体を全面的に発動し、最後まで大会防衛に従事してほしい。戦争の基本は何
度も言うが防備である。敵の攻撃を失敗させる武装的構えを思想として内固めてほしい。
以上」
飯田勲隊長から防衛軍司方針を聞くと黒い衣装の防衛隊キャップたちは、控え室からそ
れぞれの部署へと戻っていった。副隊長の世耕弘成参謀は兵站部に武器の準備を携帯電話
の暗号メールで送信すると、武道館で待機している臣民軍兵士に指示を伝達すべく、すぐ
さまオートバイで武道館へと走っていった。携帯電話は皇居前の警視庁高層ビルにある電
波盗聴システムによってスキャンされている可能性があった。臣民軍には口頭で伝達する
のが安全だった。
「地下にもぐった合衆国統一党に不気味な動きがある。有力な情報によると、やつらは在
日米軍と結託し、九段会館にテロ攻撃を仕掛けてくるらしい。その内容は米国大統領府が
ニューヨーク国際貿易センターのツインタワーを遠隔操作による無人飛行機で激突させ、
それと同時にビル内に仕掛けた高熱爆弾を爆発させツインタワーを崩壊した戦術。油断す
るな。帝都東京の制空権は安保条約が破棄されたが今だ在日米軍にある。自衛隊がわれわ
れの軍であるなら、上空の防衛は貫徹できるのであるが、自衛隊を米軍の下請け機関から
日本独立軍への再編止揚は途上にあるところだ。九段会館、武道館の防衛は何よりも上空
に注意しろ。向かってくる飛行機を発見したら、すぐさま党幹部と代議員を外に非難させ
ろ。米軍は、わが党軍戦士による在日米軍基地破壊炎上同時多発ゲリラ攻撃の復讐戦を必
ず行うはずだ。アングロ・サクソンを甘くみるとわれわれは撃破されてしまう。かと言っ
て再び米国の植民地に戻ることはできない。国家生活党が壊滅されても日本独立はなしと
げるしかない。大会が成功するのか、それとも失敗するのか、日本独立を宣言する国家生
活党大会を全世界が注目している。国家生活党大会が成功すれば、それに勇気付けられア
メリカ合衆国内の国家生活主義者が、米国大統領府自らが911テロを策動した究極の大
陰謀を暴露する。アメリカ合衆国内部からの告発が勃発すれは、ヨーロッパの国家生活主
義者が911テロとは国際金融動物とアメリカ合衆国影の政府と米国大統領府によるプロ
グラム起動であったことを情報戦として暴露していくだろう。国家生活党大会が失敗すれ
ば911テロの真相追究はアンダーグランドに閉じこめられてしまう。国際金融動物は国
家を破壊し、グローバル金融資本主義によるワン・ワールドたる単一世界政府をつくろう
としている。やつらにとって国家とは生活の母体ではなく、為替相場の投機対象でしかな
い。全世界でナショナルなオリジナリティある国家生活主義者が胎動することをやつらは
マスゴミを使って阻止している。やつらは国家と庶民の自立的な生活基盤を破壊しながら
世界金融市場の奴隷へと国家を落とし込めてきた。ゆえに国際金融動物は合衆国統一党総
裁の竹中平蔵を全面的に支援している。わが防衛隊は竹中平蔵による国家生活党大会への
テロ攻撃を断固として粉砕する。合言葉は、やられる前にやりかえせだ。地下にもぐった
竹中平蔵を、現在、国家生活党の秘密軍司部門が必死になって探索している。防衛隊の諸
君は武装的身体を全面的に発動し、最後まで大会防衛に従事してほしい。戦争の基本は何
度も言うが防備である。敵の攻撃を失敗させる武装的構えを思想として内固めてほしい。
以上」
飯田勲隊長から防衛軍司方針を聞くと黒い衣装の防衛隊キャップたちは、控え室からそ
れぞれの部署へと戻っていった。副隊長の世耕弘成参謀は兵站部に武器の準備を携帯電話
の暗号メールで送信すると、武道館で待機している臣民軍兵士に指示を伝達すべく、すぐ
さまオートバイで武道館へと走っていった。携帯電話は皇居前の警視庁高層ビルにある電
波盗聴システムによってスキャンされている可能性があった。臣民軍には口頭で伝達する
のが安全だった。