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あらすじ BattleDay0-Day86

 

*******Day86以降・前回までの話*********
 
コオは、父の退院後ケアマネージャー立石と連絡を取あうようになる。

父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に短期入所していたこと、莉子が父の自宅介護で必要なことを自分で決定できず、立石が困っていることを知る。莉子をキーパーソンとする、という大前提を先に明確にしたうえで、コオが影で動く立石との連携は機能し始める。

 ゴールデンウイークにコオ達家族は1泊の短い家族旅行を楽しんだのだが、自分たち家族だけが楽しんだことにコオは罪悪感を覚える。

旅行から帰った次の日、莉子にケアプログラムを提案するために出かけるが、莉子は外で父と話したい、といったコオを拒否、家から追い出そうとする。コオは、何とか父と言葉を交わしはしたが、母の言葉でコオを責め立てる莉子と、それを止めない父に疲弊して実家を後にした。遼吾に状況を話し、助けを求めたが、コオを突き放す遼吾の言葉に、絶望する。

過去の瘴気に毒され、感情に溺れ切ったコオを理解できず、コオを放置することを選んだ遼吾。

コオは絶望を抱えたままそれでも、日常を送ろうとする。

そのなかで、コオは莉子の統合失調症を疑いつつ、莉子が決められなかった主治医を決めようと考える

 ****************************

 

 この「主治医を決めなくてはいけない」という、自宅介護のシステムは実はあまりコオはよくわかっていなかった。けれど、確かに主治医は決まっていた方がいいだろう。ここは深く追求の必要はない。

 莉子は父が最初に救急搬送された大学病院を希望しているが、普通大学病院は紹介状でもない限り、こういういわゆる【普通】の患者は受けないのは常識だ。コオは2回入院しているが、両方とも紹介状があったし、特定疾患とよばれるものだったり、手術が必要になるものだったからだ。【普通】で見てもらおうとするとバカ高い初診料をとられるうえに、結局外部の病院に回されるのが関の山だ。

 

 探すべきは脳出血で入院し、未だに尿道カテーテルが取れていない父の状況から考えて

 1.尿道カテーテルの交換を定期で可能な病院。泌尿器科か内科。

 2.脳血管外科

 3.内科

の3つだろう、と判断した。泌尿器科もいれると3つ回るのはどう考えても大変だ。できればおおきめの総合病院で泌尿器科と脳血管外科と内科全部あれば、それがいい。だめなら、内科はカテーテル交換もしてくれるところを探そう。

 なんといっても今莉子は車を持っていないはずだから、なるべく実家から行きやすいところがいいだろう。

 

 こんなの簡単だ。多少の時間は必要だが、コオは1時間程度で選び終えると、ケアマネージャーの立石にFAXを入れ、あとから確認の電話をした。立石は、自分も賛成だということ、そしてこれを莉子に立石からの提案、ということで話をする、と約束してくれた。

 

 正確な日時は覚えていないが、この頃、コオは、莉子の友人、太田笛子にメールを出している。太田笛子は莉子の友人だった。コオが莉子の友人で名前以外の情報を知っているのは彼女だけだ。職業上彼女はホームページを開いていて、メールアドレスも載せていた。体験申し込み用のホームページには、彼女の経歴がのっており、ほぼ間違いないはなかった。ただ、フルネームがなかったので、コオはまず万が一別人である可能性を考えて次のようなメールを書き、また、同時に電話番号にショートメッセージもいれた。

 

 《 間違っていたらごめんなさい、深谷莉子の御友人の太田笛子さんではないでしょうか。私は莉子の姉です。伺いたいことがあってこのメッセージを送らせていただきました。もしまちがえなければご返信いただけますでしょうか?》

 

 コオは聞きたかった。莉子はやはり友人にはコオがいらいらするほどの気を使った話し方をしているのだろうか。それとも、やはり、病気で・・・それなら、友人の彼女なら、気づかないわけがない。

自信がなかったのだ。莉子が、精神的に病んでいる、というのは確信に近いものがあったが、それでもなお、あの異常な行動と対応は姉のコオに対してだけではないかと思っていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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コオは、父の退院後ケアマネージャー立石と連絡を取あうようになる。

父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に短期入所していたこと、莉子が父の自宅介護で必要なことを自分で決定できず、立石が困っていることを知る。莉子をキーパーソンとする、という大前提を先に明確にしたうえで、コオが影で動く立石とのの連携は機能し始め、コオは父の自宅介護に必要な金額の見積もりをした。

 ゴールデンウイークにコオ達家族は1泊の短い家族旅行を楽しんだのだが、自分たち家族だけが楽しんだことにコオは罪悪感を覚える。

旅行から帰った次の日、莉子にケアプログラムを提案するために出かけるが、莉子は外で父と話したい、といったコオを拒否、コオを追い出そうとする。コオは、何とか父と言葉を交わしはしたが、母の言葉でコオを責め立てる莉子と、それを止めない父に疲弊して実家を後にした。

遼吾に状況を話し、助けを求めたが、コオを突き放す遼吾の言葉に、絶望する。

過去の瘴気に毒され、感情に溺れ切ったコオを理解できず、コオを放置することを選んだ遼吾。

コオは絶望を抱えたままそれでも、日常を送ろうとする。そのなかで、コオは莉子の統合失調症を疑う。

 ****************************
 

 コオは、統合失調について更に情報を集めることと、行政のメンタルヘルス関係の相談窓口を調べ始めた。


 が。

 

 鬱にしても統合失調にしても、あるいは単なる決断ができない甘ったれにしても、ともかく莉子は自分自身で何かを決めるのが難しいだけではなく、そもそも物事を調べることができないようだ、とコオはうすうす気づいていた。コオはインターネットの中には必要な情報は公的なもの・一般的なものは大概見つけられるのを信じている。銀行も役所もかなりの情報をwebに載せている。けれど、3か月前も、莉子は、銀行に直接言って聞く、と言っていた。何を聞くのかもよくわからなかったけれど。

 もともとPC関係が得意なタイプではないとは思っていたが・・・直接店舗に行って何かを質問しても、あの何を聞きたいのかわからない話っぷりでは、おそらく聞かれた方が困って適当にあしらわれて終わり、というパターンではないだろうか。つまり、莉子は、望む情報はほとんど手に入れられない。それを前提にするならば。

 莉子の病気を調べるのは後回しか?父の方で決まってないことを先に決めてしまわなければ。いや、多分その方が莉子自身の負担も減るはずだ。

  

 「先に、パパの主治医決めなくちゃ。」

 

 コオはつぶやいて、病院情報を先に調べることにした。

 生産的なようだがり現実を逃避していたがために耽溺していたのが本当だ。

 

 実家に行って以来、コオと遼吾は口を聞けば言い合いになり、コオはやり切れない想いに眠れなくなり、明け方まで争う日がたびたびあった。コオは感情に溺れ、自家中毒を起こしたようになっていた。しかし、遼吾は、決してコオを突き放した言葉を反省することもなければ、反省する必要を感じてすらいなかった。

 コオは自分が感情に溺れたことを差し引いても、あの時の遼吾の言葉は言ってないけない言葉だったと思っている。そして、今だに遼吾がそれを理解できない事を想うと、やり切れない思いと、絶望的な思い、そして、自分はやはり遼吾とは一緒にいてはいけないのだ、と思う。そして、それがとてつもなく、哀しい。

 今になっても、、もう二度と、遼吾が支えてくれる、というかつての温かい安心感を持つことはないと思うから。

 

 

 

 

 

 

 

 

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父が退院した。コオは、父の退院後ケアマネージャー立石と連絡を取り、父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に短期入所していたことを知る。更に立石は莉子が父の自宅介護で必要なことを自分で決定できず、困っていることをコオに伝える。コオは今後自分の提案を、立石がプロとして莉子に提案してくれるように依頼する。莉子をキーパーソンとする大前提を先に明確にしたうえでの連携は機能し始め、コオは父の自宅介護に必要な金額の見積もりをした。

 ゴールデンウイークはコオの長男・遼太が帰省してくることになり、コオ達家族は1泊の短い家族旅行を楽しんだのだが、自分たち家族だけが楽しんだことにコオは罪悪感を覚える。そしてケアマネージャーと相談し、莉子にケアプログラムを提案するために出かける。

莉子は、外で父と話したい、といったコオを拒否し、ドアの内側に閉じこもるが、コオは庭側から父に声をかける。

莉子は、コオを追い出そうとするが、コオは莉子ではなく父に話をしようとする。莉子が狂い始め、母の言葉でコオを責め立てる。それを止めない父。コオは、実家を後にし、遼吾に状況を話すが、その時の遼吾の言葉に、絶望する。コオを理解できず、遼吾はコオを放置することを選んだ。

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  仕事に行く。子供の弁当を作り、3食をつくる。片付けは遼吾がする。

 コオは機械のように動くことができる。・・・しばらくの間は。

 

 コオが、そして、新たにスタートしたことがある。

 明らかに、莉子はおかしい、とコオは思っていた。コオに対する敵意はたしかに昔からあったけれど、ヒステリーの激しさと、やはり、言動は、常軌を逸している。特に、コオが引っかかったのが ”誰かがわからないように、お姉ちゃんに(ある考えを)吹き込んでいる”というフレーズだった。父が退院する前にあの寒い公園で莉子に会ったときも思ったが、莉子は、被害妄想があるようだ。
 これまで鬱とかノイローゼかもしれない、と思っていたが、莉子のあの被害妄想、子供の時以上に意思疎通のできない話しかた。これは・・・統合失調症の症状ではないだろうか。コオは、学生時代に3人の統合失調症の診断を受けた人達を知っている。一人は、小学生の時からの友達だった。ひとりは同じ年、同じ学部の学生、そしてもうひとりは大学院時代の同じ研究室の男子学生だった。
 同じ研究室だった男子学生は、結局、急性症状で入院した。入院前から、話をしていると、短時間なら意味が通っているのだが、時間が長くなれば長くなるほど、一貫性が亡くなってくるという特徴があった。簡単に言うと、A=B, B=Cの話はできる、でもその2つからA=Cが導き出せない。そして細かいことから話し始めるので、結局何が話したいのかわからなくなる、というのが常で、ひどく莉子の話し方と似ていた、という気がした。

 

 コオは、統合失調について更に情報を集めることと、行政のメンタルヘルス関係の相談窓口を調べ始めた

 

 

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*******Day86以降・前回までの話*********
 
父が退院した。コオは、父の退院後ケアマネージャー立石と連絡を取り、父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に短期入所していたことを知る。更に立石は莉子が父の自宅介護で必要なことを自分で決定できず、困っていることをコオに伝える。コオは今後自分の提案を、立石がプロとして莉子に提案してくれるように依頼する。莉子をキーパーソンとする大前提を先に明確にしたうえでの連携は機能し始め、コオは父の自宅介護に必要な金額の見積もりをした。

 ゴールデンウイークはコオの長男・遼太が帰省してくることになり、コオ達家族は1泊の短い家族旅行を楽しんだのだが、自分たち家族だけが楽しんだことにコオは罪悪感を覚える。そしてケアマネージャーと相談し、莉子にケアプログラムを提案するために出かける。

莉子は、外で父と話したい、といったコオを拒否し、ドアの内側に閉じこもるが、コオは庭側から父に声をかける。

莉子は、コオを追い出そうとするが、コオは莉子ではなく父に話をしようとする。莉子が狂い始め、母の言葉でコオを責め立てる。それを止めない父。コオは、実家を後にし、遼吾に状況を話すが、その時の遼吾の言葉に、絶望する。コオを理解できず、遼吾はコオを放置することを選んだ。

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  遼吾は、マンションに戻ると自分だけで南側のリビングに行った。

 コオは一人、北側の部屋にいた。日の当たらない北側の部屋は小さくて寒い。実家のように。


 どうして、こんなことになってしまったのだろう。
 コオは今だかつてなかったほど、遼吾が遠かった。
 

 けれど、日常は容赦なくやってくる。
 コオの持論の一つは、『自分が止まると世界が止まる』だ。だから、決してコオは立ち止まらない。過去の瘴気にやられて壊れかけていても、絶望で目がくらんでいても、壊れたまま、走ることをコオは好んだ。それはもしかしたらそのままコオはばらばらになってしまうかもしれない危険もはらんでいるのだが、それでも、コオは、自分が立ち止まることで世界を止めたまま死ぬよりは、走り続けているうちに倒れて死ぬほうがマシだ、と思っていた。
 もっとも、そうしなければ子供の頃に、コオはコオの心象風景の中にある、【黒いモノ】に捕まってとっくの昔に死んでいただろう。
 実際、コオは既にこのとき、自分の感情に溺れて【黒いモノ】に飲まれていたから、あとは、止まれば終わりだ、とわかっていた。
 封印したはずだった過去と一緒に【黒いモノ】も勢いを増したけれど、コオの過去の経験は、動き続けることで、逃れることができることもある、ということを、コオに学習させていた。
 

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父が退院した。コオは、父の退院後ケアマネージャー立石と連絡を取り、父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に短期入所していたことを知る。更に立石は莉子が父の自宅介護で必要なことを自分で決定できず、困っていることをコオに伝える。コオは今後自分の提案を、立石がプロとして莉子に提案してくれるように依頼する。莉子をキーパーソンとする大前提を先に明確にしたうえでの連携は機能し始め、コオは父の自宅介護に必要な金額の見積もりをした。

 ゴールデンウイークはコオの長男・遼太が帰省してくることになり、コオ達家族は1泊の短い家族旅行を楽しんだのだが、自分たち家族だけが楽しんだことにコオは罪悪感を覚える。そしてケアマネージャーと相談し、莉子にケアプログラムを提案するために出かける。

莉子は、外で父と話したい、といったコオを拒否し、ドアの内側に閉じこもるが、コオは庭側から父に声をかける。

莉子は、コオを追い出そうとするが、コオは莉子ではなく父に話をしようとする。莉子が狂い始め、母の言葉でコオを責め立てる。それを止めない父。コオは、実家を後にし、遼吾に状況を話すが、遼吾の言葉に、絶望する

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 遼吾は、マンションに戻ると自分は南側のリビングに行った。

 コオは一人、北側の部屋にいた。日の当たらない北側の部屋は小さくて寒い。実家のように。


 子供の頃、部屋をコオと莉子は一つずつもらえることになった。最初8畳の広い、南側の部屋がいい、といったら怒られた。そこは父と母二人の部屋に決まってるでしょ、それくらいわからないの?と言われてコオは恥じた。

 たしかにそうだ、と思った。

 そして、かわりにコオは一番狭い4畳半の部屋がいい、といった。やはり南を向いていて暖かい部屋だった。でも、母は、「高校生になったら、莉子ちゃんと交換してあげるから」 と言ってコオを北側の6畳の部屋にした。そして数年後。高校生になってコオは部屋を移るのを楽しみにしていた。狭くてもいい、庭の見える、部屋に移りたかった。小学校から中学生の間もずっと我慢してたのだ、やっと移れる。あのとき約束したよね?でもそのとき母は、やはり怒ったのだ。お前のために、とエアコンまでつけたのに、と。


 私は選択肢を与えられているようで、与えられてなんて無かったのだ、とコオはその時思った。
 

 寒い北側の部屋の、天井の模様も、聞こえてくる鳩の声も、大嫌いだった。南側の部屋の戸袋にコウモリがすを作ったとき、母は”お姉ちゃんじゃなくちゃできないから”と、コオにコウモリを捕まえて、巣を取り除くようにいった。言われたとおりにしたコオに、『気持ち悪い』といった。
 あの、寒い実家の部屋から、私は逃げ出せた、と思っていたのに。
 私はなんで生まれてきたんだろう。誰にも愛されないのに。
 コオは、これまでなかったほどの孤独を感じた。それは、実際に一人きりでいるよりも、ずっとずっと、孤独だった。

 

  コオは、既にその時自分の過去と感情に溺れていた。自力では出られないほどどっぷりと。そして、たしかに遼吾は、それを理解することもできなかったし、理解できないからコオを救い出すこともしなかった。
 

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父が退院した。コオは、父の退院後ケアマネージャー立石と連絡を取り、父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に短期入所していたことを知る。更に立石は莉子が父の自宅介護で必要なことを自分で決定できず、困っていることをコオに伝える。コオは今後自分の提案を、立石がプロとして莉子に提案してくれるように依頼する。莉子をキーパーソンとする大前提を先に明確にしたうえでの連携は機能し始め、コオは父の自宅介護に必要な金額の見積もりをした。

 ゴールデンウイークはコオの長男・遼太が帰省してくることになり、コオ達家族は1泊の短い家族旅行を楽しんだのだが、自分たち家族だけが楽しんだことにコオは罪悪感を覚える。そしてケアマネージャーと相談し、莉子にケアプログラムを提案するために出かける。

莉子は、外で父と話したい、といったコオを拒否し、ドアの内側に閉じこもるが、コオは庭側から父に声をかける。

莉子は、コオを追い出そうとするが、コオは莉子ではなく父に話をしようとする。莉子が狂い始め、母の言葉でコオを責め立てる。それを止めない父。コオは、実家を後にし、遼吾に状況を話すが、遼吾の言葉に、絶望する

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「あなたは・・・あなたは私の味方じゃない!!」
コオは叫んだ

「なんでそんな事言われなきゃ、いけないわけ?俺は中立だよ。中立じゃなくちゃ、何も進まないから・・・」

「私は・・・中立なんて望んでない!!それじゃ、他人と一緒じゃない。あなたは、他人じゃなくて、私の夫なんじゃないの?何故味方じゃないの?それとも、あなたは、私がやってることが間違ってると思ってるの?莉子のほうが正しいと思ってるの?」
「莉子さんは間違ってるだろう。そんなのわかってるじゃないか。」
「でも、莉子が間違っている、っていってるのに、中立なんてありえない!」

どちらかが嘘だ。莉子が間違っている、のが嘘か、中立なのではなく、莉子の味方なのか。子供の時と同じだ。いくら自分が正しい、と主張しても、中立、喧嘩両成敗、といってジャッジしてもらえない。それは、コオが正しくないなら何が間違っているのか説明してほしい。それができないであくまで中立、というなら。
 それは莉子の味方をしているのと同じではないか。
 私は。
 私は遼吾だけは私の味方だと思っていたのに。
 

 

 

 

 

 

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父が退院した。コオは、父の退院後ケアマネージャー立石と連絡を取り、父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に短期入所していたことを知る。更に立石は莉子が父の自宅介護で必要なことを自分で決定できず、困っていることをコオに伝える。コオは今後自分の提案を、立石がプロとして莉子に提案してくれるように依頼する。莉子をキーパーソンとする大前提を先に明確にしたうえでの連携は機能し始め、コオは父の自宅介護に必要な金額の見積もりをした。

 ゴールデンウイークはコオの長男・遼太が帰省してくることになり、コオ達家族は1泊の短い家族旅行を楽しんだのだが、自分たち家族だけが楽しんだことにコオは罪悪感を覚える。そしてケアマネージャーと相談し、莉子にケアプログラムを提案するために出かける。

莉子は、外で父と話したい、といったコオを拒否し、ドアの内側に閉じこもるが、コオは庭側から父に声をかける。

莉子は、コオを追い出そうとするが、コオは莉子ではなく父に話をしようとする。莉子が狂い始め、母の言葉でコオを責め立てる。それを止めない父。コオは、実家を後にする。

コオの心が壊れていく。

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 駐車場で待っていた遼吾は、運転席でスマホを眺めていた。

 コオは助手席に乗った。

 

 「どうだった。」

 「・・・痣。」「え?」

 「痣。みて。足と・・・腕と。あちこち。莉子にやられた。」

 

 気がつくと、あちらこちらに痣があった。それを見ただけでも、莉子が異常だったのがわかる。もともと莉子は力があまりある方じゃなかったのに。◯◯ガイの馬鹿力だ、とコオは思った。

 

 「病院行く?」

 

 コオは首を振った。痣くらいで病院に行くやつはいない。

 

 車を動かし始めた遼吾に、コオは、何が起こったのかを語った。父に、伝えるのがやっとだったこと。莉子はヒステリーを起こして聞く耳持たなかったこと。狂ったように喚き散らしたことも。コオが声を震わせて話していると

 

 「わかったからもうやめてよ!」

 

 ひどく嫌そうに、遼吾が言った。

 

 「・・・え?」

 

 「もう、わかったからやめてよ。そんなまねなんかしなくたって、いいから。やめて。莉子さんがヒスるとどんなか俺だって知ってるんだから。」

 

 コオにはそれは完全な拒絶として、聞こえた。

  今まで、常にコオの傍にあった黒いドロリとしたモノ、物心ついたときからあった、黒い穴の中から盛り上がってきて、コオを捕まえようとしているなにか。それに、これに捕まったら死ぬんだ、と長い間思っていたモノ。苦しくなると、それはコオの心象風景として常に現われていた黒い、なにか。私はいつもそこから逃げ出そうとしている。時には成功する。でも、コオが、なんとか逃れでて、一息ついたとき、必ず人が死ぬ、私の代わりに。私が死ねばよかったのに。

 狂ったようにコオを責め続けた莉子。死んだ母と同じ言葉で。だから、コオは二人に責め立てられたのと同じだ、と感じていた。

 コオは思った以上に遼吾の言葉にショックを受けていて、それを吐き出すことでバランスを取ろうとしていたのだと思う。でも、それを拒絶されたことで一気にバランスが崩れた。

 

 「助けて、助けてよ・・・苦しい」

 

 コオが絞り出した言葉に、遼吾はとどめを刺した。

 

 「誰も救われないんだよ。そんなこと言っても。」

 

 黒い、それ、にコオの心が一気に飲み込まれた瞬間だった。

 あのときの遼吾の言葉を聞いたときの、どうにもならない、何かに飲み込まれてしまったような絶望感と焦燥感を、今もコオは思い出す。何故、飲み込まれてしまったのだろう。あんな言葉で。何故、遼吾は助けてくれなかったのだろう。手を伸ばしてくれなかったのだろう。

 他人をコントロールすることはできない。他人は、自分の思ったような反応を返してくれるわけではない。

 

 他人は。

 でも、でも遼吾は。

 遼吾は、私の、配偶者なのに。

 遼吾は、他人ではなくて、配偶者なのに。

 

 遼吾は・・・抱きしめて、大丈夫だよ、とはいってくれなかった。

 俺が付いてるから、大丈夫、と。

 

 遼吾も、父と母と同じだ。

 私の味方ではなかった。

 

  ・・・私は、一人ぼっちだ。私を会いしてくれる人なんて、やはりこの世に誰もいなかったのだ。

  

  コオは、実家を出る前まで強固に信じていたそれ、を思い出し、その思いに身を委ねてしまった。

 

 

このブログは小説の体裁をとっており、物書きの私Greerが文責ですが、

実際に戦っているのはK(コオのモデル)です。

合作なので、コオこと、Kへのメッセージも承っております・・・どうぞよろしくお願いします。

 

コオの人生が一変してしまったこの日、Day97が、まだ続きます。

 

再び、メンタルヘルスに公式ジャンルを変更しました。

しばらくメンタルヘルスに偏った話が続くから・・・と思ったのですが、実際何度も書きますが、様々な問題の複合した結果起こっている事なのでジャンル選びが難しいです💦

 

 

毒親問題は現在の莉子を作り上げましたが、コオのメンタルにも暗い影を落としています。

過去のものだったはずのコオにとっての毒親問題が牙をむいてコオを食い荒らしていきます。

 

人のせいにしてはいけない、いつでも20歳過ぎたら自分の責任、

しかし、脳の癖はそう簡単に矯正できないことがわかります。

 

精神疾患を持った子供。それを放置していた親。親が亡くなって残されたきょうだいに、負担がのしかかる。

これはよくあるケースだそうです。

介護問題は、親が年をとっていけば必然的に持ち上がる問題なので

この2つの問題は最終的に一緒にやって来ることになります。

 

同じ状況に悩む人の情報のひとつになればいい、

そして、戦い方があることも、知らせたい、

とコオのモデルKが言ったことがこのブロク作成の動機でした。

 

あ、それからまだ本編ではあまり登場してない

行政の対応の酷さも知らせたかったそうです(笑)

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父が退院した。コオは、父の退院後ケアマネージャー立石と連絡を取り、父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に短期入所していたことを知る。更に立石は莉子が父の自宅介護で必要なことを自分で決定できず、困っていることをコオに伝える。コオは今後自分の提案を、立石がプロとして莉子に提案してくれるように依頼する。莉子をキーパーソンとする大前提を先に明確にしたうえでの連携は機能し始め、コオは父の自宅介護に必要な金額の見積もりをした。

 ゴールデンウイークはコオの長男・遼太が帰省してくることになり、コオ達家族は1泊の短い家族旅行を楽しんだのだが、自分たち家族だけが楽しんだことにコオは罪悪感を覚える。そしてケアマネージャーと相談し、莉子にケアプログラムを提案するために出かける。

莉子は、外で父と話したい、といったコオを拒否し、ドアの内側に閉じこもるが、コオは庭側から父に声をかける。

莉子は、コオを追い出そうとするが、コオは莉子ではなく父に話をしようとする。莉子が狂い始めた。父と話しているコオを追い出そうと喚き叫ぶ莉子に。とうとう莉子を平手打ちするコオ。父は、ただ、言った

「お姉ちゃん、今日はもういいから帰りなさい。」

 ****************************
 

 「もう、こんなの、かなわんから。」

 「うん、わかった。」

 

 すべてが遠くでおこっていることのようだった。平手打ちで莉子が我に返るのか、とおもったがそれどころか、莉子の目は釣り上がり、泡を吹いて倒れるのではないかと思うようなヒステリー状態は更に加速した。コオは逆に、冷めた、

 

 「誰?誰がそんな考えをお姉ちゃんに吹き込んでるの?」

 「・・・?何言ってるの?誰が吹き込むのよ。何の必要があって。」

 「お姉ちゃんもわからないように、吹き込む人がいるってことよ!!!」

 

 なんなのだ。莉子は気が狂ってる。何を言っているのかさっぱりわからない。

 

 「なによ、お姉ちゃんなんて、普通の人のフリしちゃってさ!!いままでさんざん迷惑かけてきたくせに!!」

 

 コオはグラグラと目眩がしてよく前が見えなくなってきた。

 大丈夫・・・私は、ダメな人間だったけど、迷惑も・・・親にはかけたけど・・・でも、普通に、みんなと関係を持てるように・・・頑張ってきたから・・・やることをやって・・・人に親切にするようにして・・・自分でやっっていけるように仕事について・・・普通の人のフリじゃなくて・・・今は、ちゃんと。ちゃんと。 

 お母さん、私、ちゃんとやってるよ?

 莉子は、コオの一番弱いところを知っている。なにより背後についているのは死んだ母だ。それはコオがあとになって思ったことで、そのときは、ただただ、まるでサンドバッグになったようなものだった。

 キンキン。キンキン。更に莉子はわめき続ける。

 

 「弁護士呼ぶからね!!弁護士!」

 「呼べば。警察でも、弁護士でも。今の状況の録音でもあれば、莉子のほうがおかしい、ってだれだってわかる。」

 

 目眩をこらえながらコオはいった。『録音』という言葉が出た途端、莉子が目を見開いた。恐ろしい形相になった。

 

 「録音!!何、録音してるっていうの!? よこしなさいよ!!ヒィーッ、ヒィーッ!!」

 

悲鳴ともつかない声を上げて莉子がコオに飛びかかり、コオが方にかけていたボディバッグを取り上げようとした。コオは引っ張り返しながら、もううんざりだ、と思った。本当に録音をしておけばよかった、と頭の片隅で思った。

 

 「もし録音があったらっていったの・・・。あれば、ってね・・・」

 「ともかくもう帰りなさい、俺はこんなのは困る!!」

 

父が断言するように言った。やはり、父は莉子を止めるようなことはなかった。「うん、こんな飲みたくないよね。」コオはうなずいた。

 

 「パパ、気をつけて、それじゃあ。」

 

コオは父に声をかけドアを開けて外に出ようとし、ふと、メモをするために持ってきたボールペンが2つにへし折られて床に落ちている事に気づいた。

 狂ってる。莉子は狂ってる。

 コオはほとんどぼぉっとしながらそれを拾い上げ、まだなにか言っている莉子と父を残し、ドアを締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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父が退院した。コオは、父の退院後ケアマネージャー立石と連絡を取り、父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に短期入所していたことを知る。更に立石は莉子が父の自宅介護で必要なことを自分で決定できず、困っていることをコオに伝える。コオは今後自分の提案を、立石がプロとして莉子に提案してくれるように依頼する。莉子をキーパーソンとする大前提を先に明確にしたうえでの連携は機能し始め、コオは父の自宅介護に必要な金額の見積もりをした。

 ゴールデンウイークはコオの長男・遼太が帰省してくることになり、コオ達家族は1泊の短い家族旅行を楽しんだのだが、自分たち家族だけが楽しんだことにコオは罪悪感を覚える。そしてケアマネージャーと相談し、莉子にケアプログラムを提案するために出かける。

莉子は、外で父と話したい、といったコオを拒否し、ドアの内側に閉じこもるが、コオは庭側から父に声をかける。

莉子は、コオを追い出そうとするが、コオは莉子ではなく父に話をしようとする。莉子が狂い始めた。

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 「…それで、このケアプログラムならさ、お母さんの残してくれたお金使って、5年はいける計算なんだ。だから…」

 「は?何偉そうに、言ってんの?それね、立石さんがいってくれたと同じだから❗️❗️ お、ん、な、じ。意味ないの❗️」

 馬鹿にしたように、また莉子が喚く。同じなのは当たり前だ。元々コオが提案したものなのだから。

「お金なんていらない‼️介護の覚悟もない人に関わってほしくない!出てって!出てって!!!」

「いい加減にしてよ!!」

 

上り框にいたコオを莉子がわめきながら外に押し出そうとし、コオはついに莉子の左頬を平手打ちした。距離が近すぎて力がうまく入らなかった。

 

 「お姉ちゃん、今日はもういいから、帰りなさい」

 

 父は、莉子を止めようとはしなかった。そして、コオには、そう言った。

 

…子供の時と同じだった。莉子は何をしてもいいのだ。お姉ちゃんなんだから…コオは今まで積み重ねてきたものがガラガラと崩れていく音が、聞こえたような、そんな気がしていた。