超能力で、スプーンを曲げて何になる?
ブログネタ:【長澤まさみより】超能力信じる? 使えたらなにしたい?
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スキャナーズとう映画を観て、俺は心底、超能力がほしいと願わずにはいられなかった。
映画の中で描かれるそれは、スプーンが曲がりました、などというレベルではなく、
意志の力で、人間の頭を吹き飛ばすという、強烈なものだった。
こんな力が俺にあったなら。
と、昔の俺は思う。
俺を苦しめるすべてのクソやろうどもを、ひとり残らず吹き飛ばしてやれるじゃないか。
離れた場所で、
手も触れずに。
まさに完全犯罪だ。
まあ、ガキがよくやる、暗い夢想に過ぎないのだが。
その後、「超能力モノ」は数多く映画になったし、コミックにもなった。
その中で、大友克洋の作品群は、俺の心を鷲掴みにした。
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童夢。
この漫画は、映画も、小説すらも超えた作品だ。
不可解な事件が多発する団地に、
不可解な老人。
障害を持った大男。
そして、少女。
老人と少女が超能力で戦う場面は、のちに多くの作品に影響を与えることになる。
漫画などガキが読むものだと思っている人がいるならば、是非一読してほしい。
荒唐無稽のSFアクションとしてでなく、サスペンスとしても読むことが出来るからだ。
小説で言うところの「行間」を、絵でもってやっている。
こんな漫画は、稀有な存在だ。
ちなみに、通常は小説から選出される、日本SF大賞を、この漫画がその年、受賞している。
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- アキラも大友克洋の代表作。
- 超能力を駆使して、自分に向って発射された、砲弾さえ止め、破壊する。
あの「マトリクス」も、少なからず影響を受けているのかもしれない。
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いじめにあう少女が、超能力で逆襲、次々にクラスメイトはおろか、多くの人々を惨殺するという作品。
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フェノミナン。
短編 「すんもの憂鬱」
くそったれが!!
すんもは怒りに任せ、大声を張り上げた。
と同時に、テーブルにあった土偶を、払い落とした。
床に落ちた土偶は、無惨にも四散し、画面上から消えた。
憤激のなか、すんもは自分の現状を哀れんだ。
どんなに怒り狂っても、顔は笑っている。
顔の変化がないということは、アメーバブログ運営側が、「すんものへや」に、さして力を入れていないと言うことの、表れでもあった。
なんということだ。
酒でも飲まなくてはやってられない。
そう思って、アイテムリストを覗いてみても、酒など無かった。
すんもは、怒りを通り越して、絶望した。
すんもは、アメーバピグを心底憎んでいた。
ユーザーたちは、新たに始まったアメーバブログの新サービス、「ピグ」に夢中だった。
容姿も。
服装も。
髪型も。
おまけにペットまで、持てるという。
到底、すんもが太刀打ちできる相手ではなかった。
そして、すんものユーザーの、山南零という男も、とんでもないやつだった。
今までに、山南から「たべもの」をもらったことなど、一度も無かったのだ。
当の山南のブログを盗み見てみると、飯がない、などと毎日のように嘆いているようだったが、おかずがないだけで飯はちゃんと食っていた。
山南のくそったれが!!
怒鳴ってみたが、山南は、ブログなどそっちのけで、いかがわしいサイトをブラウジング中のようだった。
俺たちは、このまま、アメーバブログの全てのユーザーたちから、忘れ去られてしまうのだろうか。
そう考えると、すんもは涙が止まらなかった。
もっとも、それは、画面上には反映されなかったが。
泣きに泣いて、やっと平常心を取り戻したすんもは、古い友人を思いだし、郷愁に包まれる。
すんもが登場する以前、けっこうな数のユーザー達が、こぞって導入した「メロ」と呼ばれる前時代的なバーチャルペットもどきの、ブログパーツだった。
すんもは「メロ」を、本心では馬鹿にしていた。
全くもって、時代遅れだぜ。
俺は、アメーバブログ標準のアプリだが、おまえは違う。
今現在、メロを導入しようとするユーザーなどいるわけないわな。はははははっ。
そんなことを過去に言っていた自分が、まさか同じ目に遭おうとは。
すんもは、このアメーバブログという世界の、時代の流れの早さに感嘆し、しばし感傷的な気分に浸っていた。
すんもは、同じブログ上に存在する、同じ山南に飼われているメロの「むふっとふわりん」というふざけた名前の、メロを訪ねた。
驚いたことに、むふっとふわりんの部屋は、すんもの部屋と引けをとらない、しっかりした作りのものだった。
すんもは顔をしかめた。
むふっとふわりんは、鼻提灯をつくり、いびきをかいて寝ていたのだった。
鼻提灯が破裂し、むふっとふわりんは、目覚めた。
「だれ?あんた?」
「すんもだよ」
「あんた、名前無いの?」
すんもはその時初めて、気付いたのだった。
山南のやつ、この俺に、名前すら付けていないとは。
すんもは、今一番気になることを、むふっとふわりんに訪ねた。
「なあ、アメーバピグって始まっただろう?あれのせいで俺達、忘れ去られてしまうのだろうか?」
「あんた、そんなこと気にしてるの?」
まあこれでも飲んで。
そう言いながら、むふっとふわりんは、サイドボードからウイスキーのボトルと、ショットグラスを二つ持ち出してきた。
なんとウイスキーは、アイラ島のシングルモルトだった。
「おお、すごいな。ずいぶんと良い酒があるじゃないか。ここには」
むふっとふわりんは、何も答えずに、乱暴にショットグラスを二つ、テーブルにたたきつけ、ウイスキーを注いだ。
「ささ、飲んで飲んで」
すんもとむふっとふわりんは、酔っぱらいながら、自分たちの行く末と、アメーバピグの動向について語り合った。
「まあ、あいつらも、そう遠くない将来、俺達と同じように忘れ去られるに決まってる」
むふっとふわりんは、遠い目を、窓の外に向けながら、そう言った。
すんもは、その言葉に同意した。
むふっとふわりんが、すんもに視線を向けた。
「おい、山南が、エロサイト巡回を終えて、戻ってきたみたいだぜ」
すんもも、山南の姿を確認した。
山南は、自分たちが同じ部屋で語らっている姿を見て、凝然としているようだった。
「おいやまなみ、きこえるか?」
むふっとふわりんの口から、吹き出しがあわられ、そんな言葉が表示される。
山南は、驚きのあまり、口をあんぐりと開け、呆然としていた。
すんもも、言ってやりたいことがあったのを思いだし、山南にその言葉をぶつける。
「おい、やまなみ。おまえがくちこみきじを、めったにかかないために、おれのばんづけはいまだ、さんだんめなんだよ!」
あのクソやろう。
むふっとふわりんが、顔をしかめて、すんもに言った。
「山南のやつ、今こうして、俺達と向き合っている状況を、ブログに書くつもりだぜ」
「あいつなら、そうするだろう。頭がいかれてるからな」
結局は、山南のやつに、ブログを書くネタを与えただけだったな。
むふっとふわりんは、鼻提灯をふくらませながら笑った。
「おい、くそったれやまなみ!おれたちはいま、うまいさけをのんでるんだぜ!おまえはさけなんぞ、のめるわけもないだろうがな!」
ちくしょうめ。
山南の声が聞こえ、すんもとむふっとふわりんは、腹を抱えて笑い出した。
山南を見やると、やつは水を飲みながら、泣いていた。






