日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -93ページ目

これはもう、殺し合いに等しい

超能力で、スプーンを曲げて何になる?

【長澤まさみより】超能力信じる? 使えたらなにしたい? ブログネタ:【長澤まさみより】超能力信じる? 使えたらなにしたい? 参加中
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「曲がれ!スプーン」オフィシャルサイト
長澤まさみオフィシャルブログ




念力でスプーンが曲がるなどということは、通常考えがたいが、

量子力学や、その他物理化学の入門書などを読んでみると、

世の中の「物質」が、今こうして、形態を保っていることの方が、驚きの現象だということを知る。

また、量子の世界では、観測者の存在次第で、量子の振る舞いが決定する。

ということは、

我々が、その脆弱な分子や原子の結びつきを、

意志の力で、コントロールできるのではなかろうか。



俺は、そんなSFじみたことを、信じてみたくなった。







過去には、何人もの超能力者が、世間に話題を振りまいた。

あの有名なユリゲラーにいたっては、ちょっとしたブームになり、

何度もテレビに出演し、スプーンを握り締めて、

「曲がれ!」

と、テレビの前で声を張り上げていた。

ガキだった俺は、テレビの前でスプーンをさすりながら、

ああ、やっぱりこの人、いんちき臭いなあ。

と、子供ながらに思ったものだ。

もちろん、俺のスプーンは、曲がらなかった。


仮にスプーンが曲がったにせよ、それが何になる?

単なる自己満足か。

そんなことが出来ても、女の子にモテルわけもないし、子供の世界では、プラスになどならなかった。

事実、クラスメイトの中にも、スプーンが曲がるなどと言い出す奴がいたが、

彼らが、クラスの中でとりたれられ、珍重されることはなかった。


俺は、ユリゲラーがマスコミから姿を消すのと同時に、

超能力のことは、忘れ去ってしまった。


それから、時は流れ、俺はまた超能力に、夢中になる。




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スキャナーズとう映画を観て、俺は心底、超能力がほしいと願わずにはいられなかった。


映画の中で描かれるそれは、スプーンが曲がりました、などというレベルではなく、


意志の力で、人間の頭を吹き飛ばすという、強烈なものだった。


こんな力が俺にあったなら。


と、昔の俺は思う。


俺を苦しめるすべてのクソやろうどもを、ひとり残らず吹き飛ばしてやれるじゃないか。


離れた場所で、


手も触れずに。


まさに完全犯罪だ。



まあ、ガキがよくやる、暗い夢想に過ぎないのだが。



その後、「超能力モノ」は数多く映画になったし、コミックにもなった。



その中で、大友克洋の作品群は、俺の心を鷲掴みにした。


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童夢。


この漫画は、映画も、小説すらも超えた作品だ。


不可解な事件が多発する団地に、


不可解な老人。


障害を持った大男。


そして、少女。


老人と少女が超能力で戦う場面は、のちに多くの作品に影響を与えることになる。


漫画などガキが読むものだと思っている人がいるならば、是非一読してほしい。


荒唐無稽のSFアクションとしてでなく、サスペンスとしても読むことが出来るからだ。


小説で言うところの「行間」を、絵でもってやっている。


こんな漫画は、稀有な存在だ。


ちなみに、通常は小説から選出される、日本SF大賞を、この漫画がその年、受賞している。



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アキラも大友克洋の代表作。
超能力を駆使して、自分に向って発射された、砲弾さえ止め、破壊する。

あの「マトリクス」も、少なからず影響を受けているのかもしれない。


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いじめにあう少女が、超能力で逆襲、次々にクラスメイトはおろか、多くの人々を惨殺するという作品。

原作では、超能力で、町ひとつを壊滅させた。


ちなみに、俺が書いた短編「憎しみの果てに」 は、この映画と同じ、超能力といじめ、そして憎しみを描いてる。
(興味のある方は是非読んでくれると、うれしいな)ここをクリック


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フェノミナン。

前回、ブログで紹介したばかりだが、この映画は、上記の作品群とは一味違う。

ある日突然発現された超能力によって、めちゃくちゃ頭がよくなり、本も一晩に何冊も読めるようになる。

頭の中で、尽きることなく湧き続けるアイデアを、主人公はみんなのために使おうとする。

しかし、みんなは彼を恐れ、自分から遠ざけようとする。

この映画の中で、主人公が印象的なことを言っている。


「この力は、人間誰しもが持っている。これは人類の大いなる可能性のひとつだ」


さらに、

この映画の中でも、超能力を使うシーンが出てくる。

手をかざし、サングラスを浮かせ、空中でくるくる回しながら、主人公は言う。

「これは、サングラスと僕との共同作業だ。僕が一人でやってるわけじゃない」

確かそんなことをいっていたような気がする。


俺はそのとき思ったものだ。

スプーンも、曲がれ!などという命令口調じゃ、曲がってやろうとはしないだろう。

だから、こう言うべきなのだ。



「お前が曲がってくれたら、俺はとてもうれしいな。曲がってくれるかい?」




その日の昼休み。


俺は久々に、スプーンを握り締めてみた。

職場には、鉄製のスプーンなどなく、コンビニなどで弁当と一緒に配られる、

プラスチック製のものが、ひとつあるだけだった。


俺は真剣に、スプーンに語りかける。


「お願いだから、曲がっておくれ」


俺は目を閉じて、さらに続けた。

頭の中にプラスチックの原子構造が、分解するところを思い描く。


「ちょっと失礼」


職場のおばちゃんが、休憩室に入ってきた。


目が合った。

俺は、スプーンを握り締めたままだ。

おばちゃんは、怪訝な視線を隠そうともせずに、俺を凝視した。

「おにぎりなのに、スプーン使うのかい?ああ、スープか何か持ってきたかい?」

「ええ」

俺はそのまま、スープを準備するまねをした。



カップを握り締め、お湯を入れる演技。

ポットへと向ったが、もちろんカップは空だった。



おばちゃんが消えた後、俺は白湯を飲み干した。


PS

そういえば、超能力が使えたとして、何をしたいか。

書いていなかったな。

強烈で、抗うことの出来ないマインドコントロール能力を使って、

俺の娘の母親を、優しく懐柔する。

どうだろう?

きっと、ばら色の家庭生活が始まるのではないか?



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短編 「すんもの憂鬱」


日々を生きる。~妻よ。おまえはいったい何を望んでいるのか。

くそったれが!!


すんもは怒りに任せ、大声を張り上げた。


と同時に、テーブルにあった土偶を、払い落とした。


床に落ちた土偶は、無惨にも四散し、画面上から消えた。



日々を生きる。~妻よ。おまえはいったい何を望んでいるのか。


憤激のなか、すんもは自分の現状を哀れんだ。


どんなに怒り狂っても、顔は笑っている。


顔の変化がないということは、アメーバブログ運営側が、「すんものへや」に、さして力を入れていないと言うことの、表れでもあった。



なんということだ。



酒でも飲まなくてはやってられない。


そう思って、アイテムリストを覗いてみても、酒など無かった。


すんもは、怒りを通り越して、絶望した。




すんもは、アメーバピグを心底憎んでいた。



ユーザーたちは、新たに始まったアメーバブログの新サービス、「ピグ」に夢中だった。




日々を生きる。~妻よ。おまえはいったい何を望んでいるのか。-未設定

容姿も。


服装も。


髪型も。


おまけにペットまで、持てるという。


到底、すんもが太刀打ちできる相手ではなかった。



そして、すんものユーザーの、山南零という男も、とんでもないやつだった。


今までに、山南から「たべもの」をもらったことなど、一度も無かったのだ。


当の山南のブログを盗み見てみると、飯がない、などと毎日のように嘆いているようだったが、おかずがないだけで飯はちゃんと食っていた。



山南のくそったれが!!



怒鳴ってみたが、山南は、ブログなどそっちのけで、いかがわしいサイトをブラウジング中のようだった。



俺たちは、このまま、アメーバブログの全てのユーザーたちから、忘れ去られてしまうのだろうか。



そう考えると、すんもは涙が止まらなかった。


もっとも、それは、画面上には反映されなかったが。



泣きに泣いて、やっと平常心を取り戻したすんもは、古い友人を思いだし、郷愁に包まれる。


すんもが登場する以前、けっこうな数のユーザー達が、こぞって導入した「メロ」と呼ばれる前時代的なバーチャルペットもどきの、ブログパーツだった。



日々を生きる。~妻よ。おまえはいったい何を望んでいるのか。

すんもは「メロ」を、本心では馬鹿にしていた。


全くもって、時代遅れだぜ。


俺は、アメーバブログ標準のアプリだが、おまえは違う。


今現在、メロを導入しようとするユーザーなどいるわけないわな。はははははっ。


そんなことを過去に言っていた自分が、まさか同じ目に遭おうとは。


すんもは、このアメーバブログという世界の、時代の流れの早さに感嘆し、しばし感傷的な気分に浸っていた。



すんもは、同じブログ上に存在する、同じ山南に飼われているメロの「むふっとふわりん」というふざけた名前の、メロを訪ねた。


驚いたことに、むふっとふわりんの部屋は、すんもの部屋と引けをとらない、しっかりした作りのものだった。


日々を生きる。~妻よ。おまえはいったい何を望んでいるのか。

すんもは顔をしかめた。


むふっとふわりんは、鼻提灯をつくり、いびきをかいて寝ていたのだった。


鼻提灯が破裂し、むふっとふわりんは、目覚めた。


「だれ?あんた?」


「すんもだよ」


「あんた、名前無いの?」


すんもはその時初めて、気付いたのだった。


山南のやつ、この俺に、名前すら付けていないとは。



すんもは、今一番気になることを、むふっとふわりんに訪ねた。


「なあ、アメーバピグって始まっただろう?あれのせいで俺達、忘れ去られてしまうのだろうか?」


「あんた、そんなこと気にしてるの?」


まあこれでも飲んで。


そう言いながら、むふっとふわりんは、サイドボードからウイスキーのボトルと、ショットグラスを二つ持ち出してきた。


なんとウイスキーは、アイラ島のシングルモルトだった。



「おお、すごいな。ずいぶんと良い酒があるじゃないか。ここには」


むふっとふわりんは、何も答えずに、乱暴にショットグラスを二つ、テーブルにたたきつけ、ウイスキーを注いだ。


「ささ、飲んで飲んで」


すんもとむふっとふわりんは、酔っぱらいながら、自分たちの行く末と、アメーバピグの動向について語り合った。


「まあ、あいつらも、そう遠くない将来、俺達と同じように忘れ去られるに決まってる」


むふっとふわりんは、遠い目を、窓の外に向けながら、そう言った。


すんもは、その言葉に同意した。


むふっとふわりんが、すんもに視線を向けた。


「おい、山南が、エロサイト巡回を終えて、戻ってきたみたいだぜ」


すんもも、山南の姿を確認した。


山南は、自分たちが同じ部屋で語らっている姿を見て、凝然としているようだった。


「おいやまなみ、きこえるか?」


むふっとふわりんの口から、吹き出しがあわられ、そんな言葉が表示される。


山南は、驚きのあまり、口をあんぐりと開け、呆然としていた。


すんもも、言ってやりたいことがあったのを思いだし、山南にその言葉をぶつける。


「おい、やまなみ。おまえがくちこみきじを、めったにかかないために、おれのばんづけはいまだ、さんだんめなんだよ!」



あのクソやろう。



むふっとふわりんが、顔をしかめて、すんもに言った。


「山南のやつ、今こうして、俺達と向き合っている状況を、ブログに書くつもりだぜ」


「あいつなら、そうするだろう。頭がいかれてるからな」


結局は、山南のやつに、ブログを書くネタを与えただけだったな。


むふっとふわりんは、鼻提灯をふくらませながら笑った。



「おい、くそったれやまなみ!おれたちはいま、うまいさけをのんでるんだぜ!おまえはさけなんぞ、のめるわけもないだろうがな!」




ちくしょうめ。




山南の声が聞こえ、すんもとむふっとふわりんは、腹を抱えて笑い出した。



山南を見やると、やつは水を飲みながら、泣いていた。








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