日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -64ページ目

早起きは、なんの得にもなりはしない

なんてこった。

職安へ八時四十分までに、行かなければならなかった。

解雇されてから、

俺は、午前十時前に起きた事がなかった。

いや、まてよ。

ひとりキャンプに行ったときは、七時に起きたっけ。


俺は目覚めるとシャワーを浴び、家を出た。


五分前に職安に着き、失業者どもの詰め込まれた会場へ入った。

満員ではなく、俺は余裕を持って座る事が出来た。

その日のミッションは、書類を提出し、呼ばれるまで待つだけで良かった。

俺は待つあいだ、本を広げ読んだ。

意外な事に、そんなやつが、周りに何人もいた。

そうは言っても、その倍ぐらいの人数が、携帯をいじくり回していた。


どちらも、とんでもない事だった。


仕事もないのに、そんな事やっている場合か、と、


職員の冷たい視線が、俺たち全員をあざ笑っているかのようだった。


今日は、必死な形相で職員に怒濤のごとく質問攻めにするおばさんもいなかった。


その日のミッションは、すんなりと終わった。

時計を観るとまだ十時前だった。


早起きしたんだ。

モーニングでも食いに行こう。


俺は心の中でつぶやくと、(ツイッターじゃないぜ)

俺はファミレスへ向かった。





レストランの中は、とんでもなく空いていた。


老人が三組ほど。

みんな新聞を読んでいた。

何故か全テーブルに新聞が置かれていた。

新手の販売促進か?


スクランブルエッグとソーセージの飯。

そんな飯が、何故か数年前の家族旅行を思い出してしまい、

俺はそれを頭から押しやった。


飯をゆっくりと食い、コーヒーをすすりながら、

俺はまたしても、本を読み始めた。


失業し、恐ろしくなるくらいに時間があったが、かといって、

喜びながら本を読む事など、俺には出来なかった。


どんなにくだらない事か忘れてしまったが、つまらない事に時間を使ってしまう。


どういう訳か、一日十時間労働し、残り二時間の自由な時間の方が、

充実していたような気もする。



コーヒーを飲みながらの読書はよいものだった。

気が付くと、昼になっていた。

ランチを食いに来たという顔の、


OLたち

職人たち

家族連れ


老人や失業者の時間は終わりだった。


俺は最後のコーヒーを注ぎに行き、

席に着きゆっくりと飲んだ。


たった今、入って来た母子が斜め前の席に座った。


心の中がざわついて、


腹の中が、痛んだ。


俺はその母子を、見たくはなかった。



なぜなら、


娘を思い出してしまうから。



俺のすばらしい朝は、それほどすばらしくもなく、

どうしようもないという訳でもなく、


だただた、過ぎてゆくばかりだった。

他人の頭の中なんて、のぞきたくもない。

人の頭の中に侵入できるとしたら・・・誰の頭の中を覗いてみたい? ブログネタ:人の頭の中に侵入できるとしたら・・・誰の頭の中を覗いてみたい? 参加中
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インセプション



茹だるような暑さの中。

その日、俺はシネコンへ行き映画を見た。

インセプション。

とんでもなく面白かった。

おすすめである。


これほど感情を揺さぶられる映画は、そうはないだろう。

近年見た映画を振り返えってみると、

ダークナイトがそうだった。


この映画と同じ監督である。


ネタバレになるから、詳しくは語れないが、

夢を自由にデザインし、作り上げ、

それに浸れるとなると、

人間にとって、それが現実以上のものになるという恐怖。

これはとても恐ろしいことだ。


俺は映画マトリクスで、機械につながれ、

嘘っぱちのステーキを食うシーンを思い出してしまった。


もっと語りたいところだが、やめておこう。

これから観る人の楽しみを奪いたくはない。



さて。


誰かの頭の中を覗いてみたいか、というお題について。


そんなおぞましいことは、俺はごめんだ。

人の頭の中に入って、アイデアを盗んだり、何かを植え込んだり。

そんなことをするくらいに、自分は何も持っていないということを

証明をするようなものだ。



そんな、他者に対しての興味の持ち方は、間違っているよね。




俺が興味を持っている人物。


一番覗いてみたい、誰か。

それは自分自身の頭の中なのだ。


本当の自分を、自分の頭の中に入って確認したい。

俺はいったい何者なのか。

何のために、生きているのか。

頭の中に、答えがあるかもしれない。


もっとも、

脳みそが自我を作り出しているのならば、

自分自身の頭の中を覗くことなど、出来る訳も無いのだが。

ご容赦ください

目覚めると酷い頭痛で起き上がれず、俺は眼を閉じた。

痛みはいつもの場所だった。

まったく、なんてこった。

これじゃあ、何も出来やしない。

しばらく、もがいていると、痛みは少しだけ弱まっていくような気がした。

俺は一度眼を開いた。

開け放たれた窓からは風もなく、蒸された空気が部屋の中を押しつぶしている。

しかたなく、眼を閉じた。

なんとか眠ったようだった。

そして、夢をみた。



夢のなかの俺は、何か大事なものを運ぶ使命を帯びていた。


まったくもって、映画の観過ぎだな。これは。


この仕事は、誰かとペアでやるものらしい。

始めは美女だった。

二人、車に乗りこんだ。

俺はもちろん運転席。

走り出すと、すぐに妨害がはいった。

俺はそいつらを巻き、新たな合流ポイントへと向かった。

次に現れた女は平凡な女だった。


俺はその女と並んで、夜の町を歩いた。


歩きながら、いろいろなことを話した。

その女は、とても良いやつだった。

少し太めで、眼が細く、とんでもない容姿、というわけでもなく。

仕事が終わったら、この子と一杯やりたいと思った。

気が付くと、女が俺の方を見ていた。


その視線は、俺に好意を抱いていると読み取れた。


なんてこった。


俺にも、つきが回ってきたと、夢の中で思っている。


ははは。

呆れたもんだ。


俺は目覚め、こめかみを擦った。

痛みはいくらかましになっている。



今見た夢を忘れないうちに、書き留めようと思った。


こうして、PCの前に座って。


出来上がったものは、酷いものだった。


もうちょっとましなものは、書けないものか。


落ち込んでしまいそうだ。



ある作家が言っていたっけ。

ものを書くには、とにかく良く読み、よく書く以外にない、と。


今の俺は、本も読まなくなったし、

こうして、PCの前に座り、戯言を書くことも少なくなった。


何の意味がある?

夢の話なんかを書いて。



どうでもいいか。




きっと練習にはなるだろう。


作文の。