日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -66ページ目

救済

なんてこった。


書いていた文章が、一瞬にして消えてしまった。

俺は途方に暮れた。

七割方書き終わっていたのだ。


しばらく呆然としていたが、もう何も思い浮かばなかった。


書き直そうという気にもなれなかった。

会社をクビになり、自由な時間を持て余している今。

俺は何に対しても、意欲というものが湧かなかった。

喜んで飯を作っていたことも、遠い過去のようだ。



俺は空っぽになってしまったのか。

以前は、書きたい事が山ほどあった。

娘の母親について、それ以外の事についても。


今はどうだというのだろう。


ただただ気分が悪く、得体の知れない何かに対して、不安な日々を送っている。


以前は、必死に書いていたときもあった。

何だったのだろうね。

あのころは。




敬愛するブコウスキーがこんな事を言っていた。


 わたしにははけ口が必要だった。楽しみが。書く事によって

 自らを解き放つことが。
 
 書く事によって心の安らぎを保つことが。



その当時、俺はこの一説を読み、俺と同じじゃないかとひどく感動したものだった。



今はどうだって?

痛めつけられなくなった分、何かを吐き出す必要がなくなってしまたんだろう。

おそらくは。


だからといって、

再度、強制収容所の看守に、執拗に痛めつけられるのは、二度とごめんだが。

脆弱な決意

問題は自分の部屋にある。


ゴミ溜めだった。

今日こそ掃除しよう。

こんな事を、毎日想うのだった。




部屋の状態が、自身の精神状態を反映するんだっけ?


実際にどうなのかはわからないけれども、

とにかく、気分が悪くて仕方がなかった。


単純に、


きれいな部屋で考え事をした方が、良いに決まってる。


俺の部屋は、万年床の周りには物が溢れ(多くは冬の衣類)

とんでもない事になっている。

どこから手を付けてよいか。


まったくもって、わからない状態だ。


居間と和室は、先日きれいにした。

そちらで過ごす時間は、快適だった。


自室にパソコンがある以上、不快な思いをして、

物を書いたり、何かを調べたりしなければならなかった。



さて。



腹が減ってきた。


俺は飯を食いに、外へ出かける事だろう。



部屋の掃除は?


どうするつもりなのだ?

いったい。


愚かさ

慎重に書かれた文章は、死んだ文章だ。

byチャールズブコウスキー




目覚めると、昼過ぎだった。


吐き気。

頭痛。


ぼんやりと天井を眺めている間に、また眠りに落ちた。


夢すら観なかった。



俺は目覚め、歯を磨き、家を出た。



飯を食うために、ファミレスに行き、

飯を食い終わると、夜まで本を読んで過ごした。



家にいたくはなかった。

俺は逃げていた。


現実から。



だからって、俺を責めないでくれ。



強がるつもりなんて、もうないから。


自分の愚かさだって、身に染みているし。



お願いだから、もうすこしだけ休ませておくれ。