日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -65ページ目

移動と夢想と猫

車で走る。

俺は行く宛もなくさまよっていた。

飯は日が暮れてから食った。

一日一食。

その方が、健康に良いに違いない。


金があれば、沖縄に行きたかった。


毎日海に潜り、

ラフテーとか、

ゴーヤーチャンプルーとか、

ステーキとかを食う。


それは、ひどく胸が痛む夢想だった。


本屋の駐車場に車を止めると、目の前の車の下に、白いものが動いていた。

猫だった。

俺をじっと見つめている。

俺は車を降り、猫に近づくと驚いて飛び出してきたが、

逃げることはなかった。



「くそったれ猫が」


猫は眠ってしまった。



その日でたったひとつ。


心が安らいだ瞬間だった。







$日々を生きる。~モラルハラスメント。離婚。解雇。そして、これから。

思い描いた夢と、金について

部屋掃除、その後

とんでもない量の服だった。

以前のその前の、働いていた会社のユニホームや、

冬に脱ぎ捨てたままのジャンバー。

フリース。

トレーナー。


膝に穴があいて履けなくなった、チノパン。

それらが、万年床を取り囲むように、堆く積まれていた。


なんてこった。



俺はそれらの服の山を掘り起こし、脱衣場へ積み上げた。

足の踏み場もなかった。

これじゃ、風呂にも入れやしない。


服を移動したくらいでは、何も変わらなかった。

あいかわらずの、ゴミ溜め。


俺は途方にくれ、服の山の下から発掘した雑誌を読んでしまい、

すっかり時間を浪費してしまった。


また腹が減ってきた。


酒も飲みたくなってきた。



失業中でも、容赦なく腹は減る。



自炊すべきだったが、どうしても、体が動かなかった。


米を研ぐとこすら面倒だった。


明日からは、飯は一日一食だ。


俺は決意し、近所のそば屋へ向かった。