救済 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

救済

なんてこった。


書いていた文章が、一瞬にして消えてしまった。

俺は途方に暮れた。

七割方書き終わっていたのだ。


しばらく呆然としていたが、もう何も思い浮かばなかった。


書き直そうという気にもなれなかった。

会社をクビになり、自由な時間を持て余している今。

俺は何に対しても、意欲というものが湧かなかった。

喜んで飯を作っていたことも、遠い過去のようだ。



俺は空っぽになってしまったのか。

以前は、書きたい事が山ほどあった。

娘の母親について、それ以外の事についても。


今はどうだというのだろう。


ただただ気分が悪く、得体の知れない何かに対して、不安な日々を送っている。


以前は、必死に書いていたときもあった。

何だったのだろうね。

あのころは。




敬愛するブコウスキーがこんな事を言っていた。


 わたしにははけ口が必要だった。楽しみが。書く事によって

 自らを解き放つことが。
 
 書く事によって心の安らぎを保つことが。



その当時、俺はこの一説を読み、俺と同じじゃないかとひどく感動したものだった。



今はどうだって?

痛めつけられなくなった分、何かを吐き出す必要がなくなってしまたんだろう。

おそらくは。


だからといって、

再度、強制収容所の看守に、執拗に痛めつけられるのは、二度とごめんだが。