日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -322ページ目

妻の声で眼が醒めた。


娘を寝かし付けたまま、眠りこんだらしい。



犬の散歩についての、苦言だった。


妻は語気を荒げて、まくし立てる。


朝、散歩に行けずに庭に縛る。そして、糞尿をする。


それが臭い。


何故、散歩をさせられないのか、という話しだった。


糞尿は散歩途中、道端にさせる。


散歩コースが、空き地か田畑なので、


それで済んでしまうのだった。


考えてみれば、身勝手な話しだと思う。


都市部で暮らしていたら、買い物袋をぶら下げ、


糞を拾い上げているはずだ。

 



俺は妻と娘の寝室を出て、ソファーのある部屋へ行った。


一年以上、このソファーが俺のベッドなのだった。


安物の、ソファーと呼べるのか、わからないものに横たわり、


布団を被った。




眼を閉じた。


幹線道路から、トラックの唸りが聞こえてくる。


何も、起こしてまで言うことじゃないよな。


思ったが言葉にはならなかった。

 



夢を観ていた。


尊敬か憧れか。


人生の成功者。


そんな人物に、夢の中で会っていた。


どこまでも紳士的な物腰だ。


名もない俺に対して、嫌な顔一つしないで話しをしてくれている。


こんな人になりたい。


夢の中で思っていた。

 





いつもより早く起きて、犬と散歩をした。


静かな朝だった。


照り付ける朝日に、老犬は眼を細めている。



「昨日は悪かったな」



尻尾を振って答えているのか。


いつもは泣きそうな顔の老犬も、今朝は笑っているように見えた。


こんな俺にも、夢を観る資格はあるはずだ。



どんな夢でも、日々、生きていれば、実現の可能性はゼロではない。



宝くじだって、買わなければ当たらない、よな。



呟いていた。

 

更新できない

更新できません。

 

なぜか、記事を入力しても、していないと赤字で怒られる。

 

どうなってるんでしょうか??

 

 

拒絶

yuuhi

挨拶の他に、もう一つ始めたことがある。

帰宅前の電話だ。


「今から帰るから」

「わかったよ」


最初は、これで終わりだった。


二回目の電話。

只今、電話にでることが出来ません。



キーを回し、車を走らせた。

雨で濡れた路面に、桜の花びらが張り付いている。

雨はもう上がっていて、西の空に、雲の裂け目から夕日が覗いていた。

カーステレオのスイッチを入れた。


この先君がどんなに変わっても、いいよ。

また笑って話せるはずだから。


そんな詩が、聞こえてきた。

最初は、その曲のメロディーが心に響いた。

今は、この部分の詩が好きだった。



玄関を開けた。

「ただいま」

やはり、返事はない。



俺は、老犬と散歩に出かけた。

塾通いの小学生が数人、老犬を見てうれしそうに笑っている。

俺は、声をかけていた。


「こんばんは」

子供たちも、声を返してきた。


家に戻ると、寝るまで、会話のたびに罵りられた。


少しずつ、壊れていく。

完全に壊れる前に、この家を飛び出してしまいたいと、思った。

思っただけで、出来るはずもなかった。

何も考えられない。

考えたくもなかった。


「何よそれは」

「本当に呆れたわ」

娘の寝巻きをみて、上下、別々のもを着せてしまったと初めて気付いた。

頭痛が襲ってきた。



酒で、治そう。

そう、思った。