日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -318ページ目

缶コーヒー考察

kanco


コーヒーはブラックと決めていた。

それでも、缶コーヒーのブラックはひどいものだった。

サーバーで入れた後、何時間も放置した味がする。

ブラック以外の缶コーヒー。

面白半分、飲んでみた。

微糖。

糖類68%カット。

ブラックの缶コーヒーより、美味いじゃないか。

ミルクやその他添加物で、香りの無さを補っているのか。

香り。

缶では再現不可能なのかもしれない。

ブラックでは、香りの有る無しがはっきりとわかるのであった。

缶コーヒーで美味いブラックコーヒーは有り得ないのか。

そう思えてくる。



読者の皆様は、缶コーヒー。

飲んでいますか?

家出

「なんでTVのコンセント抜いてない訳」


妻が帰宅して、最初に浴びせられた言葉だった。

たった2,3時間の待機電力の無駄。

それでも、俺に言葉を浴びせる理由としては、十分すぎる出来事だった。



迂闊にも、娘の面倒に忙殺され、忘れていた。

後悔もしなかった。

惨めさを感じただけだ。



家を飛び出そうと思った。

ちょっと考え、諦めた。

所持金は、100円を切っていたのだった。





帰宅途中、ハンバーガー屋でコーヒータイムと洒落込んだ。

まっすぐに帰宅する気分になれない。

そして、金もない。


200円。


コーヒーと鳥のハンバーガー。

ちょっとした贅沢だな。

そう呟きそうになって、自分で自分を笑った。

コーヒーはもちろん、お替りした。





玄関に立ち尽くしていると、俺のデジタル家電が投げ出された。

コードが娘に引っかかると危ない、などと言っている。

充電のため、置いてあったものだった。

どうせ外へ逃げても、どこへ行く事も無く家へ戻るだけだ。

そして、玄関にはチェーンがかけられているだろう。

部屋に戻り、寝るしかなさそうだ。



布団に潜り込んだ。


目を閉じて、眠ろうとしたが、はっとして目を見開いた。

明日から、連休じゃないか。


地獄、だな。

声に出して、呟いていた。


臨界点

「部屋に閉じこもっていないで、草取りでもしなよ」


外に出て、鎌を握る。


思い切り、地面に叩き付けた。


刃の部分が、土にめり込んで見えなくなっていた。






俺に自由はない。


就寝前の僅かな時間。


唯一ほっとできる時間だった。


やることといえば、PCに読書。


あまり面白くもないTVを、ぼんやりと観る。


それくらいのものだった。


日中は、妻の意向に100%従う。


こういう人生もあるさ。


下卑た呟き。


自分が嫌になる瞬間でもある。




草刈。


徹底的にやった。


何時間、庭で作業したのだろう。


疲れては休み、また作業する。


それを繰り返した。


すでに日も低くなり始めていた。


妻が時々、カーテンの隙間からこちらを覗いてくる。


食い物の匂いがした。


飯を作っているようだった。




おまえら二人で、勝手に食え。


俺は、お前らと一緒に飯など喰わん。


呟いていた。





それでも腹は減っていた。


結局、俺は妻と顔をつき合わせながら飯を喰っていた。


プライドというものはないのか。


卑しく生きる。


それもいい。


西日の中、俺は草を刈りながら心の中で呟いていた。