家出
「なんでTVのコンセント抜いてない訳」
妻が帰宅して、最初に浴びせられた言葉だった。
たった2,3時間の待機電力の無駄。
それでも、俺に言葉を浴びせる理由としては、十分すぎる出来事だった。
迂闊にも、娘の面倒に忙殺され、忘れていた。
後悔もしなかった。
惨めさを感じただけだ。
家を飛び出そうと思った。
ちょっと考え、諦めた。
所持金は、100円を切っていたのだった。
帰宅途中、ハンバーガー屋でコーヒータイムと洒落込んだ。
まっすぐに帰宅する気分になれない。
そして、金もない。
200円。
コーヒーと鳥のハンバーガー。
ちょっとした贅沢だな。
そう呟きそうになって、自分で自分を笑った。
コーヒーはもちろん、お替りした。
玄関に立ち尽くしていると、俺のデジタル家電が投げ出された。
コードが娘に引っかかると危ない、などと言っている。
充電のため、置いてあったものだった。
どうせ外へ逃げても、どこへ行く事も無く家へ戻るだけだ。
そして、玄関にはチェーンがかけられているだろう。
部屋に戻り、寝るしかなさそうだ。
布団に潜り込んだ。
目を閉じて、眠ろうとしたが、はっとして目を見開いた。
明日から、連休じゃないか。
地獄、だな。
声に出して、呟いていた。