日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -290ページ目

神林 長平 「戦闘妖精雪風」

SF小説、戦闘妖精雪風が好きである。




ジャムと呼ばれる、宇宙からの侵略者。


機械なのか生命体なのかよくわからない敵と対峙する、機械のように冷たいパイロット、深井零。


雪風という人工知能を搭載した戦闘機を駆り、機械である雪風しか信用しない。


彼も、人間より機械に近い存在なのである。



上官であるブッカーという男が手製のブーメランを作り、飛行精度を上げるため、それにコンピューターを内蔵させた。

どこへ投げても、正確無比に戻ってくるブーメランで怪我をするというエピソードが象徴的だった。

ちなみに、主人公の搭乗する戦闘機雪風は、情報収集が主な目的で、強力なエンジンと武器を搭載する。


目の前で仲間が犠牲になろうとも援護などはしない。


情報を持ち帰り、なんとしてでも帰還しなければならないのである。


そこから、ブーメラン飛行隊と呼ばれている。





「戦闘妖精雪風」


「グッドラック」

の2編


アニメ版もある。




トラバステーションへTBしました。

雨音

雷雨。

激しく降りつける雨で、路面が泡立ったようになっている。

すでに日は落ちて、周囲は闇だった。

外灯と自動販売機の明かりを照り返し、黒い路面が白く滲んでいた。

雨の中から、微かに土の匂いがする。

頬杖をして、それをテントの下で眺めていた。

夏祭りの準備が終わり、一服しているときの雨である。


「お前の親父と、よく酒を飲んだよ」


声をかけられた。

親父の遊び友達だった。

生前、よく家に来て酒を飲んでいた。

病気になり、親父が酒を断ってからもそれは続いた。

親父は、一滴も飲まずにその人に付き合っているのだった。

手土産として時々持ちこまれた自然薯が、旨かった。

親父が死んでからは、喰っていない。



俺は、曖昧に返事をして、黒く濡れた路面に視線を戻した。

雷鳴と雨音を聞いていたかった。

何時間でも、飽きずに聞き続ける事が出来そうだった。


「お前の親父は、、、、」

その後の言葉は、雷鳴にかき消された。

同時に、稲妻で目の前が白く反転した。


「親父は酒が強かった」

同じことを、何度も繰り返してしまう。

酔うと、こうなっってしまうのだろう。

俺は笑顔を貼り付け、適当にそれに応じた。

「こいつも、強いよ」


別の方向から、声がした。

同じ役員を一緒にやっている人だった。



特別、酒に強いわけではなかった。

酒量が増えれば、当然酔ってしまう。

何故か、陽気な気分になれないだけなのだった。

飲み続けると、気持ちが冷めていく。

そして、少しだけ絶望感を忘れることが出来るのだった。


「いくら飲んでも、かわらねえよな」

紙コップに、ビールが注ぎ足された。

一気に飲み干す。




雨音が心地いい。

俺は酔っているのだろうか。

それは体だけで、心は酔っていないのではないのか。


「もうそろそろ、止みそうだな」

ビールが注がれた。


酔いで手元が狂っているのか、溢れてテーブルを濡らした。


「そうですね」

言いながら、俺は心の中では、いつまでも降り続ければいいと思っているのだった。

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今日はお休みします。

町内行事で、更新する時間がありません。



とても静かな昼下がり。

何故だろう。

今日は、蝉の声が聞こえません。