絵
テーブルの上に、紙切れが置かれていた。
よく見ると、娘の描いた絵であった。
クレオンが散らばったままになっている。
拾い上げてケースに入れた。
誰もいない部屋で、娘の絵を観続けていた。
お父ちゃんを描いてごらん。
そう言うと、器用に手首を返して円を描く。
次はわんわんを描いて。
そのまま、すぐ横のスペースにクレオンを走らせる。
描かれたものは、俺の顔と同じような円だった。
娘の後ろ姿をみて、子供の頃を思い出したのだった。
兄弟のいない俺は、家の中で一人、絵を描いたりして過ごした。
お袋に、兄弟が欲しいと言った事がある。
お父さんに相談するね。
そう言って、お袋は笑っていた。
娘には悪いことをした。
弟や妹と遊ぶことは多分ないだろう。
妻が娘に、兄弟が欲しいと言われたとき、何と答えるのだろうか。
そんなことを考えると、暗いものが目の前を覆った。
よく見ると、娘の描いた絵であった。
クレオンが散らばったままになっている。
拾い上げてケースに入れた。
誰もいない部屋で、娘の絵を観続けていた。
お父ちゃんを描いてごらん。
そう言うと、器用に手首を返して円を描く。
次はわんわんを描いて。
そのまま、すぐ横のスペースにクレオンを走らせる。
描かれたものは、俺の顔と同じような円だった。
娘の後ろ姿をみて、子供の頃を思い出したのだった。
兄弟のいない俺は、家の中で一人、絵を描いたりして過ごした。
お袋に、兄弟が欲しいと言った事がある。
お父さんに相談するね。
そう言って、お袋は笑っていた。
娘には悪いことをした。
弟や妹と遊ぶことは多分ないだろう。
妻が娘に、兄弟が欲しいと言われたとき、何と答えるのだろうか。
そんなことを考えると、暗いものが目の前を覆った。
一人でねんこ
PCモニターの、右下にある時計に目をやった。
午前3時をまわっている。
眠れない。
いつものように、娘を寝かしつけているうちに眠ってしまったようだ。
3時間くらいは寝たのか。
午前0時に妻が部屋に入ってくることで、起こされたのだった。
自室に戻り、ぼんやりとしていた。
ふと、娘が二日前に言った事を思い出した。
「おとうちゃん、おかあちゃんといっしょにねんこしないの」
娘の唐突な質問に、妻はしばし沈黙した。
そして、こう言って笑ったのだった。
「おとうちゃんは、一人でねんこするんだよ」
PCの電源を落とし、布団へ潜り込んだ。
目を閉じると、紫色の残像のようなものがちらついていた。
やはり、眠れなかった。
もう一度、PCの電源を入れた。
ぼんやりとした意識のまま、キーを叩く。
得体のしれないものが、込み上げてきた。
俺は、腹の底に溜まった、どす黒いものを感じずにはいられなかった。

