昨夜観た夢
奇妙な夢を観た。
新宿の高層ビルの谷間で、インストラクターらしい者の前に20人くらいの人が集まっている。
イントラの指導のもと、入念にストレッチをする参加者のなかに俺もいた。
これから、みんなでジョギングをするようだった。
イントラの指導を無視し、俺は自分のやり方でストレッチをやった。
特に足首と、太腿の裏側を入念にやった。
クールな、ナイキのトレーニングウエアを着ている。
実際にそんなものは持っていない。
ブーメランのようなロゴで、ナイキとわかったのだった。
首までジッパーを上げて、軽く足踏みをした。
イントラを先頭に走り出した。
徐々にスピードが上がってゆく。
風が全身を通り抜けて、心地よかった。
不思議と息が上がらない。
俺は、さらにスピードを上げてゆく。
そして、先頭のイントラも抜き去った。
奇妙な風景だった。
車が一台も走っていない。
歩行者もいなかった。
後ろを振り返ってみる。
誰もいなかった。
立ち並ぶ高層ビルだけが、異質な光を放っている。
俺一人だ。
そう思ったと同時に、息苦しくなった。
トレーニングウエアの襟が口に張り付いているのではないか。
そう思えるくらい息苦しい。
襟を何度直してもそれは変わらなかった。
限界に達したとき、目が覚めた。
俺はうつ伏せに寝ていて、口元を枕に押し付けていたのだった。
台所で、水を飲んだ。
頭痛がする。
こめかみに指を押し当てながら、コンロの方に目をやった。
フライパンに蓋がしてある。
開けてみると、ゴーヤーチャンプルーだった。
俺のためにおかずを作ってくれたのかもしれない。
そのとき、携帯にメールが入った。
妻からだった。
弁当のおかずに、持って行くように。
そんな内容だった。
朝飯に少しそれを喰って、残りを弁当に詰めた。
汗が噴出してきた。
耐えられなくなって、窓を開けた。
そして、リアルワールドでは風さえ吹いていなかった。
ウインナー、そして
「昨日はご苦労様でした。どうせ、すぐにやらなくなるのだから、ゆっくりやってちょうだい」
そう言って、娘を預けるため出掛けていった。
皮肉のこもった言葉を聞いても、何も感じなかった。
俺は、そのまま庭に出て草取りを始めた。
少しずつ気温が上がり始めていた。
朝なので、それほど暑さは感じなくてすむ。
今日で、2日目だった。
しばらく作業に熱中した。
毎日やって、どれくらいかかるだろうか。
庭をひと回りするころには、最初に草を刈ったところからは、新しい草が生え始めていることだろう。
何故、早朝に草刈などを始めてしまったのか。
しばし考えたが、ただの気まぐれなのだと思うことにした。
汗が滲み出してきたところで、作業を止めた。
昼食用の弁当を作ろうと思った。
あんたのために、ご飯など作る気がしない。
数日前、妻に言われたことを思い出した。
しばらくの間、弁当など作ることが無かった。
昼食は、100円で買えるカップラーメンで済ませてしまっていた。
コップに水を注いで、氷をいれて一気に飲んだ。
冷蔵庫の中を覗いて何を弁当箱に詰め込むか考えていた。
妻からメールが来た。
「無駄なお金使わないようにウインナーとシュウマイお弁当に持っていきなよ」
俺は、ウインナーとシュウマイを冷蔵庫から取り出していた。
曇っているのに暑くなるぞ。今日も。
フライパンを炙りながら、呟いていた。
やっているのに家事~そして怒号
「何度言ったらわかるのよ」
いきなり、部屋に押し入られての怒号だった。
「何でカーテンが合わさっていない訳。何度も言っているじゃない」
戸締りは、俺の仕事だった。
雨戸を閉め、カーテンを閉めた。
時々、カーテンの金具がレールに引っかかり、完全に閉まらないことがあった。
いつも注意はしていたのだが、見逃してしまったのか。
俺は就寝前の、わずかな自分の時間を楽しんでいたところだった。
PCの、液晶画面に開かれたウインドウを最小化しながら、妻の話をうつむいて聞いていた。
何で言われたことが出来ないのだ。
それによって、非常に不愉快な思いをしている。
そんな言葉を、延々と俺に浴びせてくる。
家事の分担は、ほぼ決まっていた。
小さなことだが、俺の仕事はあった。
食事の後片付け。
布団の上げ下げ。
風呂の掃除。
犬の世話。
ゴミ出し。
洗濯(自分のもの)。
娘の面倒も見るし、家の掃除も時々する。
そして、抜けてしまうことが時々あった。
「ちょっと言わないと、やらなくなるんだから」
昨日、布団を上げるのを忘れてしまった。
そのことを、叱責されているのである。
黙って、うつむくしかなかった。
それでも、話は延々と続いた。
何度言ってもわからないんじゃ、あんたは本当に馬鹿だ。
こんな調子じゃ、仕事もろくに出来ないんだろう。
そして、甘やかされて育ったからこうなったのだという結論に達っして話は終わろうとしていた。
「あんたはいいよね。こうやって好き勝手に部屋でパソコンやって遊んでいて」
「いったい何をやっているんだか知らないけど、、、」
言いながら、部屋を出て行った。
寝室から、ゲームをやっているなどと聞こえてきた。
わざと、聞こえるように言っているのだった。
PCを続ける気にもなれず、電源を引き抜き、布団へ潜り込んだ。
胸がむかついて、眠れない。
目を閉じた。
寝室から、また声が聞こえた。
「何で、言ったことが出来ないんだろう」
言われたことは、やっているじゃないか。
そう思っても、時々抜けてしまうことを責められているのだった。
腹の中が煮えていた。
少し眠って、すぐに目覚めることを繰り返した。
そして、いつの間にか、朝になった。
夜が明けても、まだ腹の中が煮えていることに、俺は驚いていた。
