日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -20ページ目

無料バーガーと140円コーヒー

無料バーガーの券を一枚持っていた。

期限は明日で、私は仕方なしという感じでバーガー屋へ足を運んだ。

店内は貧乏臭さと、

騒々しさと、

肥った店員のやっつけ仕事的な対応があいまって、

私を不愉快にさせた。

それでも、無料チケットを消費せねばならなかった。

商品を受け取り、窓際の席へ座る。

何故か饐えた匂いがした。

子供が店内を猛烈な勢いで走り回る。

ノートパソコンを弄ぶおじさん達。

携帯型ゲーム機で、

テーブルを囲むように集まり、

モンスターなんとかを遊ぶ中高生。

テキストを広げて勉強に励む若者。

スマートフォンをさすり続ける地味な青年。



あんたはどうなんだよ、って?



そう。

私はノートを広げて、

目の前のつまらない出来事を、

書き留めていただけ。

クソババアと銀行と

銀行へ行った。
駐車場は混んでいて、次から次へと車が入ってきた。
私は入庫を終え、車を降りて銀行の方へ歩いている所だった。
駐車場の入り口付近の駐車スペースで、
車の向きを整え、入庫しようとしている車がいた。
私は立ち止まり、待っていた。
大きく前へでて、バックで入れようとしている。
なかなかバックしないので、私の事を通そうと止まっていると私は判断した。
ところが、私が前に進むと、その車は急にバックした。
私はハッとし、今度は車の前の方から進もうと向きを変え、歩を進めた。
すると、あろう事か、車は私の方へ進んできた。
右往左往する私。
その時、笑い声が響いた。
私はあたりを見回す。
赤い軽自動車からだった。
下品に顔を歪めながら笑う、下品なおばさんと目が合った。
私は反射的に目を逸らした。
クソババアが。
心の中でつぶやく。
ATMで現金を引き出し、車へ戻る時にも、
クソバアは私をみていた。
私も見返すと、クソババアが笑った。
私は我慢ならずに、クソババアの方へ真っ直ぐに歩いて行く。
クソババアは視線をそらし下を向く。
私は我に返り、自分の車へ向かった。

いったい俺は、なにをやってるんだ。

微かな自己嫌悪。
そして、処理出来ずに腹の奥で燻る怒り。

結局、一歩も前に進んでないじゃないか。

私は車へ乗り込み、アクセルを踏んだ。

クソババアの方を見やる。
赤い軽自動車はもう無かった。

命よりも大切な、お仕事

一時間くらい前に、職場の人間から電話があった。

台風の直撃により、出社を一時間遅らせるとの通達だった。

外はとんでもない風雨で、私の友人の所は業務を早めに切り上げたという。

私は尋ねた。
「外はものすごいことになってるのですが、
これで出社できるのでしょうか?」

職場の人間は、当たり前だという様にこう答えた。

「上の人間が、一時間遅らせると言っているのに、台風だから会社に行けないとは言えないでしょう」

私は何も言えなかった。

嵐の中、

ものが飛び交い、

路面に様々なものが落ちているこの夜に、

我々は命懸けで会社にいかなければならなかった。

友人に話すと、スゲえな、と言って笑っていた。

またこうも言った。

台風だから行けない。

それで良いんじゃないか、と。