日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -178ページ目

バレンタインデーの想い出

小学生のころ。


自分が周りの友達と違っているのではないか、という思いがあった。


俺が思うところ、同級生はみな、涼しげな目元、顔立ちをしていた。


俺自身は、どこかバタ臭い容姿に、背も低く、おまけに色黒だった。


どう考えても、周りから浮いた存在だった。


それは密かなおもいで、そんなことに悩むほど、その当時のおれは、屈託もなかった。



自分らしく振る舞うことの出来た、数少ない日々であったと思う。






バレンタインデーだった。



俺はそんなものに頓着するような子供ではなかったと思う。


その日も、普段と変わりなく、くだらないジョークでクラスメイトを笑わせたり、女の子のスカートをめくったりしていたはずだ。


だから、女の子には、多分嫌われているだろうと自分では思っていた。



運動も勉強もそこそこで、おまけにちびで色黒。


チビ黒サンボなどと呼ばれ、それでも快活であったためか、そこそこ目立つ存在ではあった。





どことなくうわついた教室の空気に、鈍感な俺も、特別な日だと言うことがわかった。



放課後、ランドセルを開けると、チョコレートが入っていた。



俺は歓声をあげた。


クラスメイトが集まってくる。


Mも同じだった。


Mはクラスの中のヒーローだった。

長身で運動神経の良いMは、だれが観ても、明らかに輝いていた。





誰が一番多くチョコレートをもらったかと言うこをクラスメイトが騒ぎ立てた。



10個。



数えてみると、Hと俺のチョコレートのの数は同じだった。



今考えても、釈然としない。


何故、俺はその当時、そんなにもクラスの女子の耳目を集めていたのか。







それ以後、俺が歓喜することは、なかった。








しかし。


読者の方から、プレゼントをいただきました。


どうもありがとうございます。


娘と二人きり

「あの蝉はなんて言うの?」

「ちがうよ。ホタルだよ。ガンボちゃん」

娘と二人、図書館でアニメを観た。

娘が選んだアニメだった。

いつも、娘が家で観ているアニメで、主人公に付き添う家臣とおもわれる、小さな虫が愛嬌があって可愛らしかった。そのホタルがガンボという。

鬼が三人いた。

主人公と敵対しているのだという事も、今日はじめてわかった。

主人公が閻魔大王から奪い取ったものを、奪還する任を受けているのだ。

それは、棒状のもので主人公がいつも、手に持っていた。

その棒の名称は失念したが、娘は知っていて俺に教えてくれた。

あらためて観るとなかなかに面白かった。

敵対的な間柄であっても、闘争シーンはない。

こんなアニメもあるのだと、感心してしまった。


おじゃる丸。

娘と2人きりで観たアニメだった。

ショートストーリー ~成功哲学って? 第一話

「非局所性って知ってるか、新田?」


「またお前の得意な、ナポレオンヒルじゃないだろうな」



田中は時々、この手の話をした。


昔、思考は現実化するなどと、事あるごとに言っていた。


それは、成功哲学を説いた自己啓発本の受け売りで、本人はいまだに成功の兆しすらないのだった。


最近は、引き寄せの法則とやらにはまっていて、車と家と金を引き寄せるため、頭の中に自分の欲しい物をイメージしろ、そうすれば、それは必ず現実化すると、俺にいった。


それを使って、お前はいったい何を手に入れたのだと聞くと、田中は口を尖らせてこう言った。



思考が現実化するには、タイムラグがあるのだと。




田中の車は、いまだ10年落ちのカローラだった。




ビールを一口飲むと、田中が話を続けた。



「オカルトなんかじゃねえんだよ、サイエンスだよ、れっきとしたサイエンスだぜ」


「ほう、それで、いったい何だって言うんだい?」


「おまえ、テレポートって信じるか?」


やっぱり、オカルトじゃないかと思った。それでも、話には付き合うつもりでいた。


「俺がそんなもん、信じるわけがないだろう。それこそサイエンスじゃないな、そんな話」


田中はにやりとしながらこう言った。


「それがな、量子力学の世界では、実際にそのテレポートってやつが観測されてるのさ」


俺は不本意ながら、少しだけ田中の話に興味をそそられていた。


真偽のほどは、後で調べれば、わかる。


田中は少し胸を張って、説明を始めた。


「まずここにAとBの粒子がある」


そういいながら、田中は自分のビールと、俺の猪口をひったくった。


「この二つは常に対になっている。わかるな?」


「ああ」


「それでだ。これは相互に関連しあってスピンしている。Aが右周りでBが左周り、という具合にだ」


「ここまでは、わかった」


田中がちょっと考えるような、顔をして、コップと猪口を腕を広げるようにして離した。


「これが宇宙の端と端」


宇宙の端と端で、粒子が関連しあっているということなんて、ありえないと思ったが、喩え話だろうと思って黙っていた。


「そして、ここが重要なポイントなんだが、量子力学の世界では、観測者が現象を観測するまでスピンがどっち回りか確定していないんだ」


???


何だそれは。


「よくわからんな」



田中は苛立たしげな表情のまま言った。



「だからさ、なんていったらいいのかな。観測するまでは、右回転と左回転が重なった状態なんだよ。わかったか?」



俺はいよいよわからなくなって、左手で軽くあごを擦った。






2話へつづく