日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -154ページ目

財布の中身に感謝出来るか?

ウイスキーが半分より減っていた、とする。


今の俺なら、まだこれだけあるじゃないか、と思う。


以前の俺なら、もうこれっぽっちじゃないか、と思う。




俺は成長したのか。


それとも、狂っているのか。






俺の中には、のんだくれのDNAが千鳥足で二重螺旋を描いている。


チャールズ・ブコウスキーが大好きな理由は、それではないかとすら、思えてくる。



今の俺は、金があれば全て、酒に使ってしまうだろう。



しかし、金は無かった。



くそったれなこの状況を、忘れさせてくれるほどのアルコールは、買えるはずもなかった。


せいぜい偽物のビール1,2本だった。


酔いが廻るはずもなかった。



そのおかげで、飲酒による肝臓ガンに罹るリスクも減少しているはずだ。



俺は感謝すべきなのだ。


今この瞬間に。


財布の中身に。



そして。




俺の子供の母親に。



感謝。


それは、意外なところに潜んでいるものなのかもしれない。




冷蔵庫に偽物のビールを放り込んで、自室へ向かおうとした。


目の前を、俺の子供の母親が通り過ぎ、思い切り扉を閉め、ガタンと大きな音を立てた。




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財布の中身に教えられたこと

時々、忘れた頃に、千円札がテーブルの上に置かれている。


俺は黙って、それを財布の中に仕舞った。




十日後、俺は財布の中を覗いた。


200円。



以前だったら、200円しかないと落胆したことだろう。


しかし、今の俺は違った。



まだ、200円もある。



そう思った。



俺は第三のビールを買い、部屋で小さな幸せを味わった。




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あんた、だれ?

朝起きると、ひどく静かな台所に立ち、飯を食った。


飯を食い尽くしたので、米を磨ぎ、釜へ放り込んだ。


流れるような作業はほとんど、オートマチックだった。


そこでふと疑問が生じた。




誰のために、米を磨いだのか?




窓から日の光が差し込み、全てのものが白い膜を張って見えた。



俺は、何をしている?



俺は思い出した。


バイトの面接に行くのだ。


2件面接を受け、どちらかの仕事を始めるつもりだった。



なぜだろう。



世界が現実感を失っていた。


台所に放置されたワイン。


昨晩洗った皿。


塩。砂糖。パン粉。


不可思議な高揚感があった。


すべてがうまくいっているように思えて、叫びだしたいくらいだった。




俺は狂っているのか?




リビングにかすかな人の気配を感じた。


引き戸を開けると、女が座っていた。


きれいな顔をしている。


そこで、以前からこの女を知っていることがわかった。


はじめてあったときよりも、幾分太ったようにも見えたが、それでも、美しく知的だった。




あんた、どこの誰?



現実から遊離した意識を働かせ、俺は考えた。



粒子となって四散した記憶が、一気に脳味噌になだれ込み、俺はすべてを理解した。



目の前の女は、







俺の子供の母親だった。








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