財布の中身に感謝出来るか?
ウイスキーが半分より減っていた、とする。
今の俺なら、まだこれだけあるじゃないか、と思う。
以前の俺なら、もうこれっぽっちじゃないか、と思う。
俺は成長したのか。
それとも、狂っているのか。
俺の中には、のんだくれのDNAが千鳥足で二重螺旋を描いている。
チャールズ・ブコウスキーが大好きな理由は、それではないかとすら、思えてくる。
今の俺は、金があれば全て、酒に使ってしまうだろう。
しかし、金は無かった。
くそったれなこの状況を、忘れさせてくれるほどのアルコールは、買えるはずもなかった。
せいぜい偽物のビール1,2本だった。
酔いが廻るはずもなかった。
そのおかげで、飲酒による肝臓ガンに罹るリスクも減少しているはずだ。
俺は感謝すべきなのだ。
今この瞬間に。
財布の中身に。
そして。
俺の子供の母親に。
感謝。
それは、意外なところに潜んでいるものなのかもしれない。
冷蔵庫に偽物のビールを放り込んで、自室へ向かおうとした。
目の前を、俺の子供の母親が通り過ぎ、思い切り扉を閉め、ガタンと大きな音を立てた。
↑いつもクリックありがとうございます。
