日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -125ページ目

労働者からの手記

また、だった。

いきなり数日前になって、休日返上を言い渡された。

しかし、従う以外になかった。


果たして、俺は耐えられるのだろうか?

思ったのはそれだけだった。

不思議と、怒りも憤りもなかった。

もう、どうでもよかった。


毎日、ドロドロになって家に帰り、定量の三倍の鎮痛剤を酒で飲み下す。

三時間後には、バイトに向かう。

その繰り返しで、週に一度の休息日が無くなる事について、考えたくもなかった。

かと言って、誰かに対しての怒りや、不満すらも、今は無かった。


どこかが、壊れてしまっているのかもしれない。


バイトの帰り道。

訳もなく、涙が溢れ出して止まらなくなる事があった。

やはり、怒りも、悲しみの感情すらも無かった。

ただ、涙が流れ落ちるだけだった。



頭の中のものが、膨れ上がって、右目を奥の方から圧迫するような感覚があった。

バックの中を漁った。

鎮痛剤。

残り僅かだった。

俺はそのときだけ、微かな憤りを覚えた。

3days

今日で三日だった。


偏頭痛が続いている。


それでも、吐きながらバイトに行き、仕事に行っている。



定量の三倍の鎮痛剤。


それでも、まったく効かない。




たった今も、吐きそうだ。


どうなってる?


このまま、頭が破裂しちまうのか?




耐えられないぜ。


まったく。




まあ、こんなものだろう。


くそったれ!バイト

くそったれが。

最初に思ったのはそれだった。

これだけの仕事量を、そんな短時間で出来るはずはなかった。

それは、普段の半分の時間で仕事を終わらせる事を意味していた。

俺は社員とよばれる若い指示者に聞き直した。

「一人で、その時間までに終わらせるんですか?」

「はい」

「……」

冗談だろう?

俺は我が耳を疑った。

もう一度、若い男に聞き直した。

男の目は、どこまでも誠実だった。

「二人作業の場合ですよね?」

「ひとりの場合も、いっしょですよ」



俺は作業を開始した。

肉をぶった切る機械のメンテナンス。

山と積まれたゴミの片付け。

とんでもない量の、使える肉とそうでない肉を分類し、計量し所定の場所へ積み上げる作業。

まな板の洗浄などなど。

俺は、いっしょに働くバイトの兄ちゃんに、愚痴ってみる。

「この作業、ひとりで、○○時までに終わります?」

「ああ、一人じゃ無理ですね」

「ですよね」

肉の量も少なかったし、途中から兄ちゃんも手伝ってくれたので、予定時間の十分オーバーで作業は終わった。

社員とよばれる若者に、次の作業の指示を受け、俺は準備に取りかかった。


十分オーバーについて、咎められる事もなかった。