娘との朝
朝起きると、娘が傍らに座っていた。
俺の娘の母親は出かけているという。
その日。
バイトは休みだった。
娘を抱き上げ、俺は部屋を後にした。
笛やら、ピアノ(おもちゃ)やらを娘は演奏している。
それに飽きると、絵を描き始めた。
なんだか、とんでもなく、穏やかな朝だ。
胸がむかつくような、いつもの朝とはまるで違った。
外は日差しが強い。
猫は窓際で、寝そべっている。
近寄って、撫でようとすると、拒絶のひと鳴きを俺にあびせた。
絵を描いている娘の顔を見やる。
なんてかわいいんだろう。
目。
鼻。
口。
すべての顔の造作が、完璧なバランスで並んでいる。
後5年か10年もすると、とんでもない美人になるに違いなかった。
俺は娘に笑いかける。
娘も微笑み、また、紙へ顔を戻した。
しばらくすると、微かなエンジン音が聞こえた。
「おかあちゃんが帰ってきたぞ」
娘は立ち上がり、カーテンを引っ張り上げて外を確認した。
それから、俺のところに戻ってくると、小声でこういうのだった。
「お父ちゃん。お母ちゃんが帰ってきたから、早く隠れて!」
「……」
俺は立ち上がり、自室へ向かった。
振り返り、娘に手を振る。
娘も小さく手を振った。
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