日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -127ページ目

日食

日食の時に、世界中で何人かは、決まって失明するという。

原因は、観察するためのメガネが不十分なためらしい。

黒い下敷きや、ガラスの板にろうそくの煤で作ったグラスでは、光の一部は防げても、有害な光線全ては防げないという。

ちゃんとしたものが必要だ。


空は曇っている。

おまけに雨まで降っている。


日食グラスを買うことの出来なかった俺は、複雑な気分でそのときを迎えようとしている。



まあ、こんなものだろう。

アブダクション~目覚まし時計のセットは忘れずに

布団の上で、目覚めた。


すでに外は明るくなりかけていた。




俺はとっさに携帯を引き寄せ、時間を確認した。



「そんな馬鹿な」



すでにバイトが始まっている時間だった。


どうなっているのだ。



いつ、布団の上に転がり込んだのか、記憶になかった。



俺は帰宅するなり、500㎜の偽ビールを飲み、


ワインを一杯(我が家にはワイングラスなどという代物はなかった、


普通のコップになみなみと注いだワイン)飲み、二杯目に取りかかったところまでは思い出せた。



その後の記憶が欠落し、突然、布団の上で朝が訪れていた。



俺はこの状況を、必死で説明しようとした。


糞ビールとワイン一杯程度では、どう考えても記憶を無くす筈もなかった。


俺は酒に強い方だ。


テーブルの上には、三分の一ほどのワインが飲みかけのまま残されていた。


それも、おかしな事だった。


俺は酒を飲み残すというようなことは、決してしないからだ。




どうなっているのだ?



考えているうちに、ある可能性が浮かび上がった。



エイリアン・アブダクション。



どこかの惑星の、頭と目玉が異常にでかい灰色の宇宙人に、俺は攫われたのかもしれなかった。



「こんなところに、とんでもないオヤジがいるぜ。おもしろいから攫っていって、例の物を埋め込んでやろう」



俺は宇宙人に連れ去られ、発信器のような物を頭の中に埋め込まれてしまう。



おい!まてよ!?



俺はすでに攫われていて、埋め込まれた異物のために、偏頭痛に襲われるんじゃあるまいか?



とんでもないことに思いを巡らせているうちに、俺は現実に引き戻された。




そして、この現状を正確に理解した。





バイトに遅れている。


いや、無断欠勤しようとしている。




俺は即座に、バイト先に電話した。


ひどく沈鬱で、疲れ切った声で。




俺は病人になっていた。




「すみません。体調不良で休ませていただきます」



それでも、不十分だった。



すでに仕事が始まっている。


これは、ごまかしようがなかった。


俺はただ素直に、休みの連絡が遅れたことを謝った。



あまりの衝撃に、俺の目は冴えきっていた。



もう眠ることはできそうになかった。



仕事までは、まだ時間があった。



テーブルの、飲みかけのワインに目がいった。


俺はそれを飲み干し、布団に横たわる。




しばらくすると、俺は眠ったようだ。



いや



またしても、宇宙人に攫われたのかもしれない。






どうせ攫われるならば、


今度は人間型の、できれば美形の宇宙人に


あんな事や、こんな事をされたかった。




日々を生きる。~妻よ。おまえはいったい何を望んでいるのか。


↑いつもクリックありがとうございます。


ペタしてね

期待~土用の丑の日

睡魔に襲われながら、帰路についた。


俺は帰宅して、キッチンに鰻があることを、密かに期待した。


あまりにも、はかない願いだったのだが。






日中。



職場では、土用の丑の日ということで、鰻の話題で盛り上がっていた。


職場責任者の携帯が鳴り、奥様から鰻はどうするといった内容の電話がかかってきたりした。



おばちゃんたちはもっと堅実で、明日、値が下がってから鰻を買うという。


以前の俺ならば、土用の丑の日に鰻を食うなど、失笑ものだった。


みんなが鰻を食うから俺も喰うなんて、馬鹿馬鹿しすぎる。


そう思ったことだろう。


しかし、現在の俺は、土用の丑の日に鰻を食いたかったし、


そんな話題に加わって、話をすることが楽しかった。





そして、もちろんのこと。


俺の携帯は鳴らなかった。




義母、娘、俺の娘の母親は、嬉々として遊びに出かけていった。



俺のために、鰻を買うはずもなかろう。


自分たちは外食で夕飯をすませるはずだ。


ひょっとしたら、鰻屋で。









俺は帰宅した。



大急ぎで玄関を駆け上がり、キッチンへ行った。




凝然と、キッチンを見遣る。






食い物は、何もなかった。







日々を生きる。~妻よ。おまえはいったい何を望んでいるのか。


↑いつもクリックありがとうございます。