期待~土用の丑の日
睡魔に襲われながら、帰路についた。
俺は帰宅して、キッチンに鰻があることを、密かに期待した。
あまりにも、はかない願いだったのだが。
日中。
職場では、土用の丑の日ということで、鰻の話題で盛り上がっていた。
職場責任者の携帯が鳴り、奥様から鰻はどうするといった内容の電話がかかってきたりした。
おばちゃんたちはもっと堅実で、明日、値が下がってから鰻を買うという。
以前の俺ならば、土用の丑の日に鰻を食うなど、失笑ものだった。
みんなが鰻を食うから俺も喰うなんて、馬鹿馬鹿しすぎる。
そう思ったことだろう。
しかし、現在の俺は、土用の丑の日に鰻を食いたかったし、
そんな話題に加わって、話をすることが楽しかった。
そして、もちろんのこと。
俺の携帯は鳴らなかった。
義母、娘、俺の娘の母親は、嬉々として遊びに出かけていった。
俺のために、鰻を買うはずもなかろう。
自分たちは外食で夕飯をすませるはずだ。
ひょっとしたら、鰻屋で。
俺は帰宅した。
大急ぎで玄関を駆け上がり、キッチンへ行った。
凝然と、キッチンを見遣る。
食い物は、何もなかった。
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