前回の記事で書いたように、夏休みを利用して、ここぞとばかりに本を買っては読み漁っているのですが、会計学でいうバランスシート(B/S)と損益計算書(P/L)の関係が、人間の知識にも当てはまるなと感じています。

普段仕事をする際には、自分の持っている経験や知識を活かして、アウトプットを出していくわけですが、これは言うなれば、機械をつかってモノを生産するようなものです。実際のモノづくりでは、生産に使えば使うほど機械は消耗しますが、知識は機械と違って、使っても「消耗する」ということはありません。しかし、知識というのは時間とともに、陳腐化したり、あるいは忘れてしまったりして、その価値と量は頭のなかでどんどんと減っていくわけです。これは言うなれば、「固定資産」という価値が、「減価償却」というコストに置き換わって徐々に減っていくのと同じです。

一方で、読書をするというのは「設備投資」に相当するもので、新しい知識、あるは昔読んだ本を読み返して記憶を新たにすることで、頭の中の知識のストックの量と価値を高めることができるのです。

もちろんこれまでも新しいプロジェクトが始まるごとに、その業界の関連知識をインプットするためにそれなりに本は読むわけですが、どうしてもジャンルが偏ってしまいます。今回の夏休みで読めた本と言うのは、高々5冊程度ですが、それでも普段あまり読まない本を読むことで、だいぶ頭の中が新鮮なネタで詰まってきた感じがしますし、何より、それにより少し視野が広まった気がします。

そういえば、1年以上前の記事で「仕事が忙しくなると視野狭窄に陥る」ということを書きましたが、この数カ月間、まさしくそういう状態になっていたのかもしれません。

明日からまた仕事が始まりますが(次はどのようなプロジェクトにアサインされるのかまだ分かりませんが)、また気持ちを新たに頑張りたいと思います!

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視野狭窄に陥らない


今週は、まるまる1週間夏休みを取っています。

実は休みを取るに至るまでは少し複雑ないきさつがあったのですが、それはまた別の機会に書くとして、せっかくまとまった時間ができたので、普段なかなか忙しくて読めない本を、ここぞとばかりに読んでいます。

そのなかで、以下の2冊は得るものが多かったので、簡単に紹介しておきます。

プロフェッショナルコンサルティング
波頭 亮,冨山 和彦
東洋経済新報社
発売日:2011-05-27


ストーリーとしての競争戦略


前者の「プロフェッショナルコンサルティング」は、波頭亮と冨山和彦という日本を代表する2人のコンサルタントの対談形式で書かれています。

今日の戦略コンサルティングにおいては組織のエグゼキューションを伴うプロジェクトが多く、論理的思考力だけではなく、胆力や人間力も必要とされるという点で、内容が複雑化、高度化しているという点に触れられています。

この点については「確かにそうだ」と言える内容で、これまでに私の経験した3つのプロジェクトのうち2つのプロジェクトが、純粋な戦略策定というよりは、組織内、あるいは会社間での「動き方」をサポートするものでした。

そこで求めらるものも、単に論理的に頭を使うということだけでなく、人間の行動に対する深い洞察を必要とすることが多く、同じプロジェクトで働くマネージャークラスの人が「今回のプロジェクトは難しい」(毎回言っているのかもしれませんが)と毎日つぶやくのを横で聞いていました。

ただしこの本では、そういう人間力が試されるようなプロジェクトが増えたというものの、若手のコンサルタントに必要なこととしては、「頭の良さ(論理的思考力)」と「3カ月でマスター(修士)を一つとるくらいの勉強量」が挙げられています。

これを読んで、プロフェッショナルなコンサルタントとして自分をどう磨いていくのかという認識を新たにさせられましたし、チャレンジするハードルが非常に高いことも再認識させられました。特に、論理的思考力については、毎日トレーニングしても半年間くらいたってようやく成果が表れ出すようなものだということで、私もまだまだ努力が必要だということです。

一方で、後者の「ストーリーとしての競争戦略」は、ロジックのつながりを意識して動的なシナリオとして戦略を構築すべきという主張が、非常に面白い本でした。

この本の存在自体は以前から知っていたのですが、本編でちょうど500ページもある分量で、なかなか読む時間が取れそうもないと少し敬遠していたのですが、読みだしてみるとビジネス書というだけでなく読み物としても非常に秀逸で、結局2日で読み切ってしまいました。

この本を読んで、これまで点で捉えていた戦略的要素が、ストーリーという一本の糸でつながったような快感を覚えます。物事が起こる順序をロジックと時間軸の両面で捉え、「風が吹けば桶屋がもうかる(この話のロジックのつながりは弱いですが)」式で、事業展開を動画のように捉えるという視点は、あたり前といえばそうなのですが、新鮮でした。

その中で特に興味深かったのは、単独では、すなわち他の戦略的コンテキストからは独立した状態では一見非合理に見える打ち手であっても、それが他の戦略コンテキストとの論理的つながりにおいて合理性を持ち得るという主張は目から鱗で、逆にそういう要素(この本の言葉ではキラーパス)が戦略ストーリーの中に組みこまれていることが、競争優位を持続させるポイントであると説いています。

こう書くと抽象的にで良く分からないと思いますし、詳しくは実際に読んでいただくのがベストなのですが、確かにこれまでの成功事例をストーリーとして紐解いていくと、確かにその中にここでいう「キラーパス」が仕込まれていることに気づかされます。

これまでの記事でも書きましたが、ロジカルに物事をつなげていくスキルが弱い(=直感に頼っている)ことが私の今の課題です。そのような状況で、この本は戦略やロジックを「難しく」考えるのではなく、「楽しく」考えるという発想にさせてくれた本でした。

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ロジカルに詰める


「ロジカルに詰める」というのが、今のプロジェクトでの私の主たる課題になっています。

実は前のプロジェクトにアサインされたときにも、ロジックに基づいてストーリーを展開する重要性を認識したのですが、また同じ課題にぶち当たっています。

この課題をクリアするには2つの方法があって、一つはロジック展開の「型」の引き出しをなるべく多く持つということ、もう一つは、それと並行する形で、自分が無意識に結論を出している思考プロセスを言語化あるいは可視化して、論理的な落ちがないかを緻密に検証するということです。

前者については、例えば交渉プロセスを組みたてる時は、交渉を通じて達成したいこと、交渉相手とのコンフリクトの有無、必ず合意したいこと、絶対に譲れないこと等を整理し、最終的に、どの項目をどの順番で話をすべきかなどを整理するというようなことです。

他にも、対策(打ち手)を考える場合に、現象から真因を掘り下げていって考える、目標と現状のギャップから考える、目標と制約条件から考えるなど、いくつかのやり方の「型」があります。

また後者について、実際に自分の思考を言語化しようとしているのですが、これがなかなか難しいということに改めて気付かされれます。ただし、これができるようになると、見落としていた視点や、ロジックのジャンプを見つけることができますし、人の話をきいて同様のことができると、非常に効率的な議論のファシリテーションができるようにできます。

現状はシニアコンサルタントの方のアドバイスを受けながら何とか課題をこなしていますが、やはり早く自分でロジックを組み立てられるようにならなければなりません。

ちなみに、ロジカルに詰めるという観点で、最近詰将棋をやり始めてみたのですが、それがビジネスに役立つかどうかは分かりません・・・。

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怒涛のように過ぎた3週間


前回の記事では、アップルやグーグルが、独自のアプリストアを運営して、そこでの優位性を強めようとしているということを書きました。この例のように、PCやモバイルに関連したのいわゆるITビジネスにおいては、アプリストアのような、いわゆるプラットフォーム領域での争いが激化しています。

端末だけ売っても価格競争に巻き込まれて利益が出せないことから、多くのメーカーが端末にサービスを垂直統合して、差別化を図ろうとしてきました。しかし実際は、端末とあわせてサービスを提供しようとした試みの多くが失敗してきました。提供できるサービスが中途半端であり、ユーザーニーズを満たすに十分なものにならなかったのが主な理由です。

そのため、サービスそのものではなく、サービスを提供するオープンなプラットフォームを提供し、その上に多様なサービスを展開する動きが広がってきました。実際に、アップルやグーグルは、ミュージックストアやアプリストアというプラットフォームを提供し、その上に多くのコンテンツを取りそろえることで、優位な立場を構築しています。アマゾンもその一角の勢力と捉えることができます。

一方で、日本企業はと言うと、個別のサービスやアプリ、あるいは端末ではグローバルに戦えたとしても、プラットフォーム領域ではなかなか対抗できていないように思います。楽天のように、Eコマース市場というプラットフォームでグローバル展開を含めて頑張っている企業はありますが、端末やOSまでのビジネスの広がりはありません。

サービスプラットフォームで対抗できないというのは、日本企業にとって大きなリスクを背負うことになります。つまり、ビジネスのルールを、プラットフォームを握っている企業、つまりプラットフォーマーにゆだねてしまうことになるからです。その一例が、昨日紹介した、アップストアの価格改定のような話です。

日本企業にとっては、まずは日本の市場を守るために、アップルやグーグルに対抗して新たなプラットフォームを構築することが必要だと思っています。そのためには、企業同士が手を組むことも必要でしょう。そして、プラットフォームのレベルで海外企業に戦えるようになれば、それをグローバル、特に成長著しいアジア地域に広げていくことが重要になると考えています。

先週、アップルの運営するアップストアの価格が突如改定されました。例えばこれまで115円だったアプリが85円に、1,800円だったFF3のような高額ゲームアプリも1,400円になりました。

一人のユーザーとしては価格が安くなるのは嬉しいことなのですが、アプリを提供する業者にとっては、突然自分たちの商品の価格が変わったのですから、スマートフォンやタブレット上のアプリマーケットを、アップルやグーグルに牛耳られている現状のリスクを強く感じたのではないでしょうか。

アップルによると、今回の価格変動の理由は、為替の変動による調整のためとされています。また、価格改定に際して、アップルからアプリ提供者には一切事前の連絡がなかったようです。

これが何を意味しているかというと、一つ目は、アップストアはグローバル市場であり、その取引通貨はドルであるということ、そして二つ目は、日本企業にとってアップストアでの取引は為替リスクを受けるということ、そして三つ目は、アップストアの支配権はアップルにあるということです。

これらは以前からわかっていたことではありながら、実際にアップルがそれを行使したことで、目の前のリスクとして顕在化してきたのではないでしょうか。

一方で、今回のことをきっかけに日本の企業が独自のアプリマーケットを作ろうとしても、それは容易ではありません。なぜなら、アップルはOSを押さえ、その上のストア(市場)を押さえることで、そこで取引される金額の一部を手数料として得るビジネスモデルを構築しているからです。よって、取引が分散されるような他のマーケットの存在は認めようとしませんし、実際にアップルの場合は、そういう他のストアをiOS上から締め出すことができます。

また、グーグルもアップルと同様に、自社のOSであるAndoroid上に独自のアンドロイドマーケットを持っていますが、グーグルも自身のマーケット上の取引に対するコントロール権を守ろうとしているようです。

OSを押さえている企業は、その優先的地位を行使することができます。PCでは、マイクロソフトがWindows上のソフトの開発・販売という領域で優位性を発揮してきましたが、スマートフォンやタブレットでは、アップルやグーグルが、アプリ流通マーケットというよりプラットフォームに近い領域で、その優位性を発揮するようになりました。

スマートフォンやタブレット上でのアプリマーケットにおいて、日本企業がアップルやグーグルに対抗して独自のマーケットを持てないとすると、スマートフォンやタブレット上におけるアプリやコンテンツの取引という領域で、日本企業がコントロールを取ることができなくなります。

これまでとは違う戦い方を仕掛けられているなかで、日本企業はどのようにすればいいのでしょうか?悩むところです。