一二三慎太の投球フォーム | アマチュア野球をめぐる旅。

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高校野球を中心にアマチュア野球(ときどきプロ野球)の観戦記。

明治神宮大会準優勝、一二三慎太(東海大相模)の投球フォームを連続写真から解析してみたい。

神奈川県大会優勝、関東大会優勝、明治神宮大会準優勝と見事な戦績を挙げている。
特筆すべきは右手の人差し指の爪に不安を抱えながら負けなかった投球術にある。

右利きの投手としては致命的な怪我ではあるが、微塵も感じさせない投球は圧巻の一言に尽きる。
MAX149km/hを計測したストレートの他に豊富な変化球を兼ね備えている。
カーブ・スライダー・フォーク・チェンジアップは、いずれも制球力と切れ味を備えている。


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ノーワインドアップモーションから打者をしっかり観察しながら投球に入っていく。
適度に力が抜け、184cm・80kgという恵まれた体格から相手打者を見下ろすように動作が始まる。
時折、肩の力を意識的に抜くような仕草をする事がある。
つまり、一二三は力まない事を意図したノーワインドアップモーションなのではないだろうか。


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次に踏み込む左脚を引き上げるシーンをご覧頂きたい。
垂直に引き上げ必要以上な回転運動を作らないようにしている様子が見受けられる。

投球に必要以上な回転運動とは踏み込む足が軸足より著しく交差する事を指している。
回転運動で投球動作に加勢させられるように思いがちだが、体の開きを誘発してしまう。


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回転運動が強くなるに比例してアウトコースに勢いのあるボールが集中してしまう。
あるいは、インコースに勢いのあるストレートを投げられないと言い換える事も出来る。

一二三が両サイドにストレートを投げ分けられるのは踏み込む足の引き上げ方に起因しているのだ。
垂直に引き上げた足をそのままにヒップファーストで次の段階へ移行している。

さらに、左脇を締めてグラブを引き込む動きに遊びが加わっていない事にもセンスを感じる。


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一二三の投球センスはヒップファーストからの本格始動からリリースの直前に集約されている。
いわゆるトップが深く、投球動作は時間軸に従い進むものの右腕がなかなか現れない。

大石達也(早稲田大)にも通ずる大学日本代表クラスに匹敵する「球持ち」の良さである。
「日本ハムの武田久級」と言えば言い過ぎかもしれないが、それに通じる高いセンスを感じる。

また、踏み込む足の膝の折れ方の角度も直角に近く、力強い踏み込みである。
前段階で溜め込んだ上体及び下半身で発動させた力を余す事無くボールに伝導している。

股関節の優れた柔軟性に裏打ちされた一流投手の動作である。


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リリース直後にグラブを持つ手を自然と胸に引き込んでいる様子が見受けられる。
一二三の場合、グラブを持つ手が遊んでいるシーンを見掛けた事はあまり記憶に無い。
投球に必要以上の回転運動がある場合、勢いに負けてグラブを外側または背後に飛ばしてしまう。


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一二三の投手としての特徴は何よりマウンドでの堂々たる立ち振る舞いにある。
四死球を与えても、ヒットを打たれても、点を失っても、安定した雰囲気が醸し出されている。
盤石な投球内容と洗練されたボールには常時余裕が感じられ相手打線を寄せ付けない。


出場が確実視されるセンバツはもちろん、その先にあるプロでの活躍までも期待したくなる。
欠点らしい欠点がなく、現時点での完成度と潜在能力の高さを兼ね備えた才能の持ち主だと思う。


「一二三、完封で決勝戦へ」(弊ブログ・11月19日付け記事)
http://ameblo.jp/go-baseball-studium/entry-10391630250.html

「一二三慎太の投球レポート」(弊ブログ・11月7日付け記事)
http://ameblo.jp/go-baseball-studium/entry-10382293212.html

「東海大相模に一二三慎太あり」(弊ブログ・11月3日付け記事)
http://ameblo.jp/go-baseball-studium/entry-10379627420.html