一二三、完封で決勝戦へ | アマチュア野球をめぐる旅。

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高校野球を中心にアマチュア野球(ときどきプロ野球)の観戦記。

明治神宮大会(高校の部)準決勝、東海大相模対帝京戦を観戦して来た。

現世代では全国屈指の戦力を備えていると言われている両校の「夢の対戦」。
高揚感をたっぷり持参して神宮球場に足を運んだ。
先発投手は一二三慎太、伊藤拓郎、両本格派右腕の登板を告げるアナウンスに胸が高鳴った。


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一二三は9イニングを打者33人に対して投球数128、被安打5・奪三振8・四死球2。
伊藤は9イニングを打者39人に対して投球数134、被安打7・奪三振4・四死球4。

この試合、要所要所で一二三と伊藤が捕手からのサインに首を横に振り、ストレートを選んでいた。
お互いがお互いを意識しながら、意地と意地が正面衝突しているような印象を受けた。

一二三の完封勝利に対して、伊藤は自責点は0ながら4失点で敗戦投手と明暗を分かれた。
伊藤の失点は全て失策に絡んでいる事が数字にも表れている。

2回表、一二三の先制適時打も三塁・田口公貴が痛烈な打球を避けてしまったような印象である。
田口が伊藤に詫びを入れるような仕草をしていたから捕れた打球という認識だった推測できる。
それにしても、一二三は投球も去る事ながら打撃でも潜在能力が高い。


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帝京・前田監督の指示もいつもより熱を帯びていたような気がした。


帝京が、一二三を攻略するチャンスは1回、無死一・二塁からクリーンアップを迎える場面のみであった。
三番・園田崇人を投手ゴロ、四番・岡部通織を一塁ゴロ、五番・久保田大智を一塁ゴロで凌ぎきった。
伊藤は辛抱強く投げ抜いたが、一二三の投球がそれを上回る素晴らしさだった。

帝京は8回のショート・松本剛、9回のセカンド・吉岡駿、合計3点の失策絡みの失点が悔やまれる。
8回の失点は打球が走者に隠れた不運もあったが、四球で出した走者を失策で返されるという内容。
一二三の投球内容から一点勝負の試合展開は明らかで帝京は勝機を自ら逸してしまった。


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一二三と門馬監督を始めとする東海大相模ナイン。


一二三は、神宮球場の球速表示で平均で130km/h台中盤だったが、直球は時折140km/h台を記録。
彼の魅力は現時点での投手としての完成度の高さと底知れぬ将来性を兼ね備えている事にある。

無駄のない理に叶ったフォーム、184cm・80kgという恵まれた体格には成長の余地が十分にある。
帝京打線は“超一流投手”への試金石、登竜門と考えていたが、満点の内容で通過した印象である。

爪の怪我を抱えながらの投球内容だけに全く底を見せていない。見える気配すらない。
登板過多による肩肘の消耗は気になるが、まさに肩肘を張らない投球だけに杞憂なのかもしれない。
名実共に「世代№1投手」の称号が懸かった明日の決勝戦を楽しみにしたい。


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平日開催なのに混雑していた神宮球場