一二三慎太の投球レポート | アマチュア野球をめぐる旅。

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高校野球を中心にアマチュア野球(ときどきプロ野球)の観戦記。

秋季高校野球関東大会決勝は、東海大相模が6-3のスコアで花咲徳栄を下して優勝を飾った。
東海大相模は5年ぶり5度目の関東大会優勝。明治神宮野球大会への出場が決まった。

神奈川優勝に続く、関東大会優勝の立役者は、一二三慎太である。
4試合32イニングを一人で投げ切り、12打数7安打6打点(2本塁打)と投打に大車輪の活躍。


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この股の割れ方と踏み込みの角度にセンスを感じるわけです


一二三のピッチングを簡単に紹介してみたい。
組み立ての中心は、きっちりコースに制球される140km/hを越えるストレートである。
手元で鋭く曲がる高速スライダー、時折投げるチェンジアップが、ストレートを引き立てる。
内外に投げ分けられるストレートに、左右に変化する二つの変化球。

準々決勝・浦和学院戦はセンバツでの今村猛(清峰)の省エネ投法を思い出させる熟練ぶりだった。
制球に注力したストレートを中心にカウントを整え、追い込むと一段スピードを上げる。

追い込んだ後は、速いボールに意識付けをさせながら変化球を続けるなど変幻自在であった。
人差し指のツメが剥がれ落ちていた影響と推測するが、力任せにならない大人びた投球に映った。


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胸の張りやヒジの角度も申し分ないように見える


余談ではあるが、スライダーは人差し指を浮かす投法が、2、3年前に大学球界で密かに流行った。
ボールの握りはスライダーと同様だが、人指し指を浮かして中指に力点を置く。

腕の振りは、ストレートと同じままで手首をこねる必要は無い。
習得すれば、肩・肘への負担が少なく、芯を外して打ち取るには有効な変化球である。


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フィニッシュでバランスが崩れないのは理に適ったフォームの証拠


一二三のピッチングフォームには、クセも無ければ欠点らしい部分も見当たらない。
左脚は打者に対して極めて合理的で直線的な動きをする。

左脚の膝下に無駄な動きを入れ込まない為、重心移動が後ろから無駄無く伝導する。
さらに高校生では滅多にお目に掛かれない程、深く踏み込む。
これは股関節の優れた柔軟性に裏打ちされた一流投手の動作である。

深い踏み込みによって、体は打者の方に向かって行くが、右腕がなかなか姿を現さない。
いわゆるボールの出所がわかりづらい、見えづらいという投球フォームである。

「日本ハムの武田久級」と言えば言い過ぎかもしれないが、それに通じる高いセンスを感じる。
球持ちが長い為、スピードガンの表示以上に体感では速く感じるのではないだろうか。


菊池雄星のような派手さは無いが、玄人好みの完成度の高さと将来性を兼ね備えた投手である。
次回登板は最速で16日(日)神宮球場での第一試合(秋田商業対高岡商業の勝者)になる。

センバツはもちろん、夏の大会、来年のドラフトまで追い掛けたい才能溢れる投手である。