斎藤佑樹に「伸び悩み」という評価が下される中、
評価を上げてきているのが大石達也である。
早稲田大の同級生でもある二人の投球フォームをU-26NPB選抜対大学日本代表戦から振り返りたい。
大石の投球は六大学でのリーグ戦で何度も観ているが、特徴はいわゆる「球持ちの良さ」である。
ネット裏付近から観ると如実に分かり、左脚をステップしても右腕はなかなか振られない。
打者からはボールの出所は勿論、腕の振り自体が見え難いように感じる。
大石の球持ちの良さ、長さを生み出しているのは左脚の始動にある。
踏み出しの際、ステップする脚(右投手は左脚)の始動は大きく二つに分類する事が出来る。
①膝の関節を真っ直ぐに伸びた状態で使う
②膝の関節を「くの字」型に使う
斎藤の左脚が伸び切って踏み出しているのに対して、大石の左脚は「くの字」型になっている。
「くの字」を形作るという、ひと手間の是非が投手としてのクオリティに大きく影響を及ぼす。
これは投手の優劣、将来性を判別する際に使用して欲しい。
それくらい投球フォームにおいて重要ポイントであり、高いセンスと努力を必要とする動作である。
「くの字型」のステップでは踏み込む脚が外を回らない為、必要以上の回転運動を生み出さない。
つまり、体の開きを自然と抑制するという効果がある。
さらに、つま先が踵より低く位置する為、着地の際につま先からステップする事をスムースにする。
大石の左脚がつま先からステップしているのに対して、斎藤は踵から踏み込んでしまっている。
大石・斎藤ともに左脚を踏み込み同じタイミングでありながら、ボールの位置が大きく異なる。
リリースポイントに対して斎藤の方が圧倒的に近く、大石は一段階もしくは二段階遅れている。
いわゆる「球持ちの良さ」は、この写真から明解に見て取れる。
投手の優劣、状態の良し悪しは投球フォームを解析すれば手に取るように分かるモノである。
ある意味、数学の方程式のようなモノである。
解が合っていたとしても、公式を使った解き方を身に付けていない場合、継続して得点する事は難しい。
また、答えが間違っている場合、その解き方に必ず間違いがあるはずである。
「くの字」型のステップは一朝一夕に身に付けられるような簡単なモノではない。
簡単な動作のように見えて体得するには早期段階での始動が求められる。
野球に限らずフォームというのは一度固定されたら、改良するには並大抵の労力では無い。
「くの字」に注目して観戦すれば分かるが、高校野球レベルではほとんどの投手が出来ていない。
観戦専門の方は、注目する投手が踏み込む際に「くの字」に注目して観戦して欲しい。
またプレイヤーの方は、相手・自軍投手のステップする脚が「くの字」になっているか、否か。
そんな見方をすると観戦に奥行きをもたらす事が出来るような気がする。
斎藤佑樹×大石達也(wasedasports.comより)
http://www.wasedasports.com/baseball/08autumn/saito_oishi.php