ポーランドのビドゴシチで開催されている、第11回パデレフスキ国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。
11月15日は、2次予選の第1日。
ネット配信を聴いた(No.1-1、No.1-2、No.2、No.3、No.4)。
なお、第11回パデレフスキ国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。
1.
42. PIERDOMENICO Leonardo – Italy (27.11.1992)
P. Rameau – Gavotte et six doubles
I. J. Paderewski – Humoresque de Concert: Cracovienne fantastique, Op. 14 No. 6
I. J. Paderewski – Miscellanea: Melody, Op. 16 No. 2
F. Liszt – Sonata in B minor, S. 178
ピアノはファツィオリ。
技巧的にも、音楽表現としても、それなりではあるのだがいま一歩洗練が足りない。
イタリア風にからっとしている、という見方もあるかもしれないが、それにしてもそっけなく聴こえる。
2.
01. BELYAVSKY Sergey – Russia (02.11.1993)
F. Chopin – Polonaise in F-sharp minor, Op. 44
I. J. Paderewski – Polish Dances: Mazurka in A major, Op. 9 No. 3
I. J. Paderewski – Polish Dances: Mazurka in B major, Op. 9 No. 4
I. J. Paderewski – Polish Dances: Polonaise in B major, Op. 9 No. 6
S. Prokofiev – Sonata No. 6 in A major, Op. 82
ピアノはファツィオリ。
彼らしいロシア風の音は聴かれるが、それ以外に持ち味が活かせていない。
プロコフィエフも、キレが命のこの曲でキレが乏しいのは痛い。
もっと彼の音色とパワーとを活かせる選曲にしたほうが良かったか。
3.
28. LIU Tianyuan – China (31.01.1998)
I. J. Paderewski – Album de Mai: Au Soir, Op. 10 No. 1
I. J. Paderewski – Album de Mai: Scherzino, Op. 10 No. 3
S. Rachmaninov – Sonata No. 1 in D minor, Op. 28
ピアノはカワイ。
相変わらずうまい。
ラフマニノフのソナタ第1番、渋い選曲だが、情熱みなぎり切れ味鋭く、この上ない名演となっている。
こういう地味な曲でも聴き手を飽きさせることなく、実力をしっかりアピールできるのはさすが(むしろ彼が弾くと地味な曲ではなくなる)。
やはり強力な優勝候補だろう。
4.
39. PACHOLEC Kamil – Poland (11.11.1998)
I. J. Paderewski – Miscellanea: Thème varié in A major, Op. 16 No. 3
I. J. Paderewski – Humoresques de Concert: Cracovienne fantastique, Op. 14 No. 6
S. Barber – Nocturn Op. 33 (1959)
J. Brahms – Sonata No. 1 in C major Op. 1
ピアノはスタインウェイ。
バーバー、ロマン的な味わいがよく出せている。
ブラームスも、力強い打鍵や鄙びたような音色が曲に合っている。
1次で弾いたファウストワルツのような技巧曲を今回選ばなかったのは、彼には正解だったのではないか。
5.
22. KRZYŻOWSKI Mateusz – Poland (06.03.1999)
F. Chopin – Nocturne in C minor, Op. 48 No. 1
F. Chopin – Nocturne in F-sharp minor, Op. 48 No. 2
I. J. Paderewski – Humoresques de Concert: Sarabande, Op. 14 No. 2
I. J. Paderewski – Miscellanea: Legende No. 2, Op. 16 No. 5
I. J. Paderewski – Miscellanea: Un Moment Musical, Op. 16 No. 6
K. Szymanowski – Fantasy in C major, Op. 14
ピアノはカワイ。
音に対する感性が相当に鋭く、また個性的な独自の語り口を持つ。
ショパンのノクターン、通常の演奏とは大分異なるが、特にop.48-2など、私がこれまでに聴いた同曲のどの演奏より美しいかも。
シマノフスキも幻想的な演奏(彼は1次でもシマノフスキを選んでおり、フリークなのかも)。
彼は大胆にも技巧的な曲を全く選ばないのでまだ底が知れないが、うまくいけば上位に進みそう。
6.
08. HAO Yilei – China (09.10.1996)
R. Schumann – Sonata in F minor No. 3, Op. 14
I. J. Paderewski – Album de Mai: Au Soir, Op. 10 No. 1
I. J. Paderewski – Humoresques de Concert: Cracovienne fantastique, Op. 14 No. 6
A. Scriabin – Sonata No. 10, Op. 70
ピアノはカワイ。
シューマン、全体的にテンポが重く、どっしりしている。
表現力はあるし、これはこれで一つの解釈なのだろうが、キレに欠け、聴いていて少しだれがち。
スクリャービンのほうは、彼のそうした慎重なテンポ設定がプラスに働き、幻想的な味を増している。
7.
02. BYRDY Łukasz – Poland (29.06.1994)
I. J. Paderewski – Miscellanea: Legende, Op. 16 No. 1
I.J. Paderewski – Humoresques de Concert: Cracovienne fantastique, Op. 14 No. 6
M. Mussorgsky – Pictures at an Exhibition
ピアノはヤマハ。
ムソルグスキー、どちらかというと軽めのタッチであり、この曲の壮大さが出てこない。
「雛の踊り」「リモージュの市場」「バーバ・ヤガー」といった技巧的な曲でのタッチコントロールもいまいち。
そのぶん緩徐な曲で特別な表現力を示す、といったことも特にない。
8.
29. LYNOV Philipp – Russia (06.01.1999)
I. J. Paderewski – Humoresques de Concert: Intermezzo polacco, Op. 14 No. 5
I. J. Paderewski – Album de Mai: Chant d’amour, Op. 10 No. 2
I. J. Paderewski – Humoresques de Concert: Cracovienne fantastique, Op. 14 No. 6
R. Schumann – Fantasy in C major, Op. 17
ピアノはスタインウェイ。
シューマンの幻想曲、技術的に大きな問題はないのだが、この曲で聴き手を唸らせるにはよほどの詩情が必要。
彼には別の曲のほうが良かったのではなかろうか。
第2楽章など力んだような感じで、あまりシューマンに聴こえない。
そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私がセミファイナルに進んでほしいと思うのは
28. LIU Tianyuan – China (31.01.1998)
22. KRZYŻOWSKI Mateusz – Poland (06.03.1999)
あたりである。
次点で、
39. PACHOLEC Kamil – Poland (11.11.1998)
08. HAO Yilei – China (09.10.1996)
あたりか。
次回、2次予選の第2日は、本日11月16日の10時(日本時間でいうと18時)に開始されている。
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