ロシアのモスクワで開催されている、第16回チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。
6月26日は、3次審査(ファイナル)の第2日。
ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。
ちなみに、第16回チャイコフスキー国際コンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(第16回チャイコフスキー国際コンクール(ピアノ部門) 出場者発表)
なお、以下はいずれもヴァシリー・ペトレンコ指揮、スヴェトラーノフ記念ロシア国立交響楽団との共演である。
1.
16 MELNIKOV Alexey / Russia Age: 29
Tchaikovsky: Piano Concerto No. 1 in B-flat Minor, Op. 23
Rachmaninov: Concerto for Piano and Orchestra No. 3 in D Minor, Op. 30
ピアノはスタインウェイ。
細身の音によるシャープな演奏。
解釈は正統的で、名人芸的なデフォルメを行わず、また一つ一つの音の明瞭度も高い。
それでいて音楽的に豊かで、チャイコフスキーでもロマン的なメロディを美しく歌わせているし、第1楽章展開部やコーダでは情熱的な盛り上がりをみせる。
ラフマニノフでは、第1楽章の第1主題でピアノからオーケストラへとメロディが移る部分や、第2主題部の途中部分で、速い走句になるときにテンポが急に速まるのが少し気になる(2015年浜コンで彼が同曲をひいたときにはそんなことはしていなかった)。
しかし、それ以外の点では特に違和感を感じず、終楽章も速めのテンポにもかかわらず明瞭でごまかしなく、かつ曲のもつパッションをも表現できている。
ただ、2018年浜コンの務川慧悟などもそうだが、細身でシャープな音を持つタイプのピアニストは、音楽的に優れていても音そのものの存在感の点で、協奏曲ではやや映えにくいかもしれない。
2.
11 KANTOROW Alexandre / France Age: 22
Tchaikovsky: Piano Concerto No. 2 in G Major, Op. 44
Brahms: Piano Concerto No. 2 in B-flat Major, Op. 83
ピアノはスタインウェイ(カワイから変更したよう)。
フランスらしい、硬質かつ透明感のある、鉱石のような音。
チャイコフスキーの協奏曲第2番はあまり聴かない曲なので判断が難しいが、それでも軽やかで美しく、技巧的華やかさもある。
ブラームスでもやはり音が美しい。
東洋はおろか東欧のピアニストにもなかなか出せない、西欧風のべたっとしない均整の取れた彼の音が、曲に合っている。
この曲には同じフランス系ピアニストのニコラ・アンゲリッシュによる名盤があるが(パーヴォ・ヤルヴィ指揮hr響)、その盤に通じるところのある、フランス風のさわやかなブラームスである。
テクニック面では、気になる個所がないではない。
例えば、第1楽章コデッタ部冒頭の広い音域にまたがるユニゾン上行アルペッジョ音型や、終楽章副主題長調部でピアノから木管へとメロディが移った際のピアノによるオブリガート音型(ユニゾン音階上行音型)が、ごまかし気味というか、弾き飛ばす感じになっている。
とはいえ、全体的には、この曲の情熱や情感を表現するのに必要なだけの技巧は、概ね持ち合わせているように思う。
そんなわけで、3次審査(ファイナル)第1、2日の5人の演奏を気に入った順に並べると
1. 11 KANTOROW Alexandre / France Age: 22
2. 18 SHISHKIN Dmitriy / Russia Age: 27
3. 01 AN Tianxu / China Age: 20
4. 16 MELNIKOV Alexey / Russia Age: 29
5. 25 YEMELYANOV Konstantin / Russia Age: 25
といったところか。
KANTOROW Alexandreを1番にしてみたが、ちょっと思い切りすぎたかもしれない。
1~3は、並べ替えても良いと思う。
音の美しさを採るならKANTOROW Alexandre、完成度を採るならSHISHKIN Dmitriy、スリリングさを採るならAN Tianxuか。
このあたりの優劣の判断は、なかなか難しい。
3次審査(ファイナル)の第3日は、本日(6月27日)予定されている。
ついに最終日。
そして、藤田真央の演奏は、日本時間で6月28日(金)の午前0時である。
全国のクラシック音楽ファンの方、ピアノファンの方、それから「蜜蜂と遠雷」の風間塵のファンの方、また「ピアノの森」のカイのファンの方、今夜はぜひ皆で一緒に応援しませんか?
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