第16回チャイコフスキー国際コンクール(ピアノ部門) 3次審査 第1日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

ロシアのモスクワで開催されている、第16回チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。

6月25日は、3次審査(ファイナル)の第1日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第16回チャイコフスキー国際コンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第16回チャイコフスキー国際コンクール(ピアノ部門) 出場者発表

1次審査 第1日

1次審査 第2日

1次審査 第3日

2次審査 第1日

2次審査 第2日

 

 

なお、以下はいずれもヴァシリー・ペトレンコ指揮、スヴェトラーノフ記念ロシア国立交響楽団との共演である。

 

 

1.

25 YEMELYANOV Konstantin / Russia  Age: 25

 

Prokofiev: Piano Concerto No. 3 in C Major, Op. 26

Tchaikovsky: Piano Concerto No. 1 in B-flat Minor, Op. 23

 

ピアノはヤマハ。

プロコフィエフ、滑り出しは少しぎこちないが、じきに本調子に。

彼らしく乾いた明瞭なタッチで(ペダルが薄めのためか)、その意味ではプロコフィエフらしい。

ただ、そのぶんペダルでごまかせないというか、タッチコントロールの精度がそのまま明るみに出てしまうわけだが、あまり洗練されたタッチとは言い難く、少しガチャガチャした感じになってしまっている。

それでも、第2楽章の緩徐な第4変奏から急速な第5変奏に移る個所での躍動感は印象的だし、終楽章も快速テンポで活きが良い。

チャイコフスキーのほうも同様の乾いたタッチで、第1楽章の第1主題などは軽快で良いが、全体的にはしっとりとした歌に乏しい。

タッチの洗練度もいまひとつ(特に第2楽章の中間部、ピアノ・ソロのスケルツァンドな速いパッセージにおいて、ムラが目立つ)。

それでも、やはりこちらも終楽章が速めで若々しく元気が良い。

 

 

2.

18 SHISHKIN Dmitriy / Russia  Age: 27

 

Tchaikovsky: Piano Concerto No. 1 in B-flat Minor, Op. 23

Prokofiev: Piano Concerto No. 3 in C Major, Op. 26

 

ピアノはスタインウェイ。

チャイコフスキー、力強く充実した音が聴かれ、テクニック的にも相当に洗練されている。

細部まで完成された、堂々たる演奏。

ただ、表現が直線的であり、これは彼の良さでもあるのだが、一方で第1楽章の第2主題など、ロマン的なメロディの歌わせ方がのっぺりして味わいに欠けるのが難点ではある。

プロコフィエフのほうは、ロマン派でなく近代音楽ということもあって、より彼に向いている印象。

第2楽章の第4変奏や終楽章の中間部など、緩徐な部分もそれらしい雰囲気が出せている。

そして、やはりきわめて安定した隙のない演奏となっており、終楽章コーダなどこれほどのテンポなら一つや二つはミスタッチがありそうなものだが、彼の場合は全くない。

 

 

3.

01 AN Tianxu / China  Age: 20

 

Rachmaninov: Rhapsody on a Theme of Paganini, Op. 43

Tchaikovsky: Piano Concerto No. 1 in B-flat Minor, Op. 23

 

ピアノは長江。

ラフマニノフ、緊張のためかピアノの入りが一拍ずれてしまう。

しかし、その後は冒頭のミスを挽回する見事な演奏。

彼はロマン的な感性、それもヴィルトゥオーゾ風のそれを持っている。

ホロヴィッツ的、と言ったらいいか。

第15変奏の細かなテンポ変化や、第22変奏の低音のアクセント、有名な第18変奏のディミヌエンドしていくフレージング、そして終盤の畳みかけるような迫力など、いかにも名人芸的だが曲によく合っている。

チャイコフスキーのほうも、パワフルさと技巧面で先ほどのSHISHKIN Dmitriyに劣らないし、ロマン的な表現の点ではむしろ優っている。

また、やはり名人芸的な味があり、終楽章では主要主題に独自のルバートを少しずつかけているし、コーダではまれにみる高速テンポで攻めていてエキサイティング。

ただ、これらの表現が完全にこなれたとまでは言えないかもしれない。

また、ミスタッチはときどきみられ、その点ではSHISHKIN Dmitriyのほうに軍配が上がる。

 

 

そんなわけで、3次審査(ファイナル)第1日の3人の演奏を気に入った順に並べると

 

1.  18 SHISHKIN Dmitriy / Russia  Age: 27

2.  01 AN Tianxu / China  Age: 20

3.  25 YEMELYANOV Konstantin / Russia  Age: 25

 

といったところか。

1と2は逆でも良い。

完成度を採るならSHISHKIN Dmitriy、スリリングさを採るならAN Tianxuか。

いずれにせよ、両人ともやはり優勝候補だろう。

藤田真央が、この2人にも増して精度の高いテクニックと、彼ならではの美しい歌心を存分に発揮することができるかどうか。

彼の優勝は、そのあたりにかかっていそう。

 

 

3次審査(ファイナル)の第2日は、本日(6月26日)予定されている。

日本時間6月27日午前0時よりMELNIKOV Alexey、同日午前1時45分よりKANTOROW Alexandreが演奏する(藤田真央は第3日)。

 

 


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