香川県の高松市で開催されている、第4回高松国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。
3月21日は、3次予選の第2日。
ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。
ちなみに、これまでの記事はこちら。
アウレリア・ヴィソヴァン Aurelia VISOVAN (Romania 1990- age: 27)
W.A.モーツァルト グルックの「愚民が思うには」による10の変奏曲 ト長調 K.455
小出稚子 委嘱作品 「うんぽこどんぽこ」
G.フォーレ ピアノ四重奏曲 第1番 ハ短調 Op.15
やはり彼女は細部の表現にそれほどこだわらないようで、フレーズの終わりなどそっけないことが多い。
ところどころに聴かれる「崩し」も独特で、モーツァルトではそれがうまくいっているとはあまり思えない。
ただし、フォーレの四重奏曲のほうではそれがけっこうサマになっているように感じるから、面白いものである。
坂本 彩 Aya SAKAMOTO (Japan, Hyogo 1989- age: 29)
W.A.モーツァルト パイジェッロの「主に幸いあれ」による6つの変奏曲 ヘ長調 K.398
小出稚子 委嘱作品 「うんぽこどんぽこ」
J.ブラームス ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 Op.25
相変わらず表現意欲が素晴らしい。
モーツァルトには「歌」があるし、室内楽ではブラームスにふさわしい、充実した力強さがある。
古海 行子 Yasuko FURUMI (Japan, Kanagawa 1998- age: 20)
W.A.モーツァルト パイジェッロの「主に幸いあれ」による6つの変奏曲 ヘ長調 K.398
小出稚子 委嘱作品 「うんぽこどんぽこ」
R.シューマン ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op.47
大変うまく、おそらく他の誰よりも基礎力がある(カンテ・キムと並んで)。
ただ、1次、2次審査でのソロ曲と比べて、今回のモーツァルトや委嘱作品や室内楽は超絶技巧曲というわけではなく、彼女の圧倒的なまでのすごさが出にくいのも確かである。
彼女の持ち味である、エッジの利いた、曲への鋭い切りこみも、これらの伸びやかな曲では発揮しづらいだろう。
それでも、彼女の卓越した技巧は十分に伝わるし、審査員に高く評価されるといいのだが…。
というのも、彼女が本選で弾く予定のリストのピアノ協奏曲第1番が、おそらく大変にキレのある演奏になると思われ、ぜひとも聴きたいのである。
ドゥミトリ・マイボローダ Dmitry MAYBORODA (Russia 1993- age: 24)
W.A.モーツァルト パイジェッロの「主に幸いあれ」による6つの変奏曲 ヘ長調 K.398
小出稚子 委嘱作品 「うんぽこどんぽこ」
R.シューマン ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op.47
素晴らしい。
やっぱり彼は、こうした一見地味な曲においても、特別に個性的な演奏をしてくれる。
モーツァルトもそうだし、風変わりな委嘱作品においてもそう。
そして、シューマンの四重奏曲。
リヒテルのように(彼がこの曲を演奏したかどうか知らないけれど)大きな構えで、深々と豊かに音楽を紡いでいく。
彼の個性は審査員たちにも十分に伝わったのではないだろうか。
ただ、その個性が高く評価されるかどうかは分からない(2015年浜コンでは評価されなかった)。
今回も、もしかしたら構えが大きすぎる、昨日のキトキンくらいには推進力があったほうがいい、などと思われてしまうかもしれない。
どうにか本選へ進んでほしいのだが。
カンテ・キム Kang Tae KIM (Korea 1997- age: 21)
W.A.モーツァルト グルックの「愚民が思うには」による10の変奏曲 ト長調 K.455
小出稚子 委嘱作品 「うんぽこどんぽこ」
J.ブラームス ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 Op.25
彼もまた、古海行子と同様、技巧的に大変優れているのだが(特にブラームス終楽章コーダはスリリング)、全体として今回は1次、2次審査ほどには他を引き離すことはできていないように思われる。
結局、どのコンクールでも同じなのだが、室内楽のある審査では結果が全く予想できなくなってしまう。
そんなわけで、第2日の演奏者のうち、私が本選に進んでほしいと思うのは
坂本 彩 Aya SAKAMOTO (Japan, Hyogo 1989- age: 29)
古海 行子 Yasuko FURUMI (Japan, Kanagawa 1998- age: 20)
ドゥミトリ・マイボローダ Dmitry MAYBORODA (Russia 1993- age: 24)
カンテ・キム Kang Tae KIM (Korea 1997- age: 21)
あたりである。
第1日と合わせて、本選に進める人数である5人を選ぶとすると
第1日
伏木 唯 Yui FUSHIKI (Japan, Hokkaido 1991- age: 27)
第2日
坂本 彩 Aya SAKAMOTO (Japan, Hyogo 1989- age: 29)
古海 行子 Yasuko FURUMI (Japan, Kanagawa 1998- age: 20)
ドゥミトリ・マイボローダ Dmitry MAYBORODA (Russia 1993- age: 24)
カンテ・キム Kang Tae KIM (Korea 1997- age: 21)
あたりになる。
一人余ってしまったので、キトキンを外した。
これは、演奏の出来で決めたというよりは、3次審査の演奏の良否は皆それほど大きな差がなかったため、本選へ向けての希望的観測で決めた。
というより、外れるのは他の人でも誰でもいいので、マイボローダと古海行子はぜひ残してほしい。
さて、3次審査の実際の結果は下記のようになった。
【本選進出者】
第1日
ゲルマン・キトキン German KITKIN (Russia 1994- age: 23)
伏木 唯 Yui FUSHIKI (Japan, Hokkaido 1991- age: 27) ○
第2日
アウレリア・ヴィソヴァン Aurelia VISOVAN (Romania 1990- age: 27)
古海 行子 Yasuko FURUMI (Japan, Kanagawa 1998- age: 20) ○
カンテ・キム Kang Tae KIM (Korea 1997- age: 21) ○
なお、○をつけたのは私が本選に残ってほしかった5人の中の人である。
5人中3人。
私が選ばなかった2人も、特に室内楽はとても良かったので、結果に異論はない。
しかし、マイボローダは落ちてしまった…(泣)。
2015年浜コンと同じパターンである。
技巧的な基礎力が重視されたのだろうし、彼の個性は好き嫌いが分かれるだろうし、コンクールという場ではどうしても評価されにくいのは仕方がない。
仕方がないのだけれど、やっぱり寂しい。
彼の弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、聴きたかった…。
古海行子の弾くリストのピアノ協奏曲第1番が聴けるのが、私には唯一の救いである。
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