第4回高松国際ピアノコンクール 1次審査 第1日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

以前にも書いた、心待ちにしていた第4回高松国際ピアノコンクールが、ついに始まった(以前の記事はこちら)。

香川県高松市で4年ごとに開催され、日本三大国際ピアノコンクールの一つに数えられるものだが、今回は第4回となる(公式サイトはこちら)。

予備審査では当初53名が通過していたが、その後棄権があったのか、結局全41名となっている。

楽しみにしていたディナーラ・クリントンが聴けないのは寂しい。

カテリーナ・グレーヴェもいなくなってしまっている。

二人とも、予備審査通過していたのに。

ただ、私にとっての一番の本命、ドゥミトリ・マイボローダ(ドミトリー・メイボローダ)が残ってくれていて、本当に良かった。

それに、寺元嘉宏や古海行子もいる。

3月14日は、1次予選の第1日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

 

 

ジ ヒョン・クヮク Ji Hyang GWAK (Korea 1991-  age: 26)

 

ラヴェル:「鏡」 より 第2曲 「悲しい鳥たち」

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第3番 嬰ハ長調 BWV848

ショパン:練習曲 ハ長調 Op.10-7

ストラヴィンスキー/アゴスティ:「火の鳥」組曲

 

端正な演奏でなかなか良い。

特にバッハは、歌いすぎない(濃厚すぎない)歌になっている。

 

 

小塩 真愛 Mai KOSHIO (Japan, Osaka 1991-  age: 27)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第13番 嬰ヘ長調 BWV858

ショパン:練習曲 変イ長調 Op.10-10

ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」からの三章

 

表現がやや硬めであり、もう少し音楽的な味が欲しいところ。

ストラヴィンスキーももう少しキレが欲しい。

 

 

ダニイル・ツベトコフ Daniil TSVETKOV (Russia 1984-  age: 33)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第8番 変ホ短調 BWV853

ショパン:練習曲 イ短調 Op.10-2

ストラヴィンスキー/アゴスティ:「火の鳥」組曲

 

まずまずだが、速い部分とそうでない部分の差が大きく、不安定に聴こえてしまう。

 

 

チンホン・リ Jinhong LI (China 1994-  age: 23)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第3番 嬰ハ長調 BWV848

ショパン:練習曲 嬰ト短調 Op.25-6

バーバー:ピアノ・ソナタ 変ホ短調 Op.26

 

ショパンは安定感がいま一つだが、バーバーは力強く勢いが感じられ、なかなか良い。

 

 

スーチェン・リ Siqian LI (China 1992-  age: 25)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第22番 変ロ短調 BWV867

ショパン:練習曲 ロ短調 Op.25-10

ラフマニノフ:前奏曲 ニ長調 Op.23-4

ジェフスキー:ウィンズボロ・コットン・ミル・ブルース

 

最初のクヮクと同じく、端正な歌が感じられる。

特にラフマニノフが味わい深いし、ジェフスキーも控えめながらグルーヴ感がある。

 

 

栗田 奈々子 Nanako KURITA (Japan, Chiba 1990-  age: 28)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第2番 ハ短調 BWV847

ショパン:練習曲 ヘ長調 Op.10-8

スクリャービン:幻想曲 ロ短調 Op.28

プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第3番 イ短調 Op.28

 

バッハやスクリャービンでのちょっとした味付けは悪くないが、ショパンやプロコフィエフなどではもう少しテクニックのキレが欲しいところ。

 

 

梅村 知世 Tomoyo UMEMURA (Japan, Okayama 1988-  age: 29)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻 第16番 ト短調 BWV885

ショパン:練習曲 変イ長調 Op.10-10

ドビュッシー:版画

 

こちらも悪くないが、もう少しショパンのロマン性やドビュッシーの硬質な詩情が出ると良いか。

細かい走句の明瞭度ももう少し上がるとなお良かった。

 

 

ヴァシル・コーティス Vasyl KOTYS (Ukraine 1984-  age: 33)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第13番 嬰ヘ長調 BWV858

ショパン:練習曲 嬰ト短調 Op.25-6

ラフマニノフ:コレッリの主題による変奏曲 Op.42

 

ショパンはミスタッチが何度もあり、他の曲を選んだほうが良かったかもしれない。

ラフマニノフは、主題の弾き方は味があってなかなか良かったが、その後はぎくしゃくしたところも多く、出来不出来のムラが大きい。

 

 

堀内 麻未 Mami HORIUCHI (Japan, Tokyo 1996-  age: 21)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻 第16番 ト短調 BWV885
ショパン:練習曲 嬰ト短調 Op.25-6
スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第5番 Op.53

 

丁寧で良いのだが、そのぶんやや安全運転気味というか、これといった強みに欠けるようにも思われる。

 

 

樋口 一朗 Ichiro HIGUCHI (Japan, Fukuoka 1996-  age: 21)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻 第24番 ロ短調 BWV893
ショパン:練習曲 イ短調 Op.25-11
スクリャービン:2つの詩曲 Op.32 より 第1曲
スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第5番 Op.53

 

やや単調な印象のある演奏。

テクニック的にも、ミスはないもののキレはいま一歩か。

 

 

テヒョン・オ Taehyeon OH (Korea 1996-  age: 21)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第5番 ニ長調 BWV850
ショパン:練習曲 ホ短調 Op.25-5
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第7番 変ロ長調 Op.83 「戦争ソナタ」 より 第2楽章、第3楽章

 

バッハはなかなかだが、ショパンはタメが多くて推進力に欠けるし、プロコフィエフのほうもそこそこ(終楽章はけっこう速いが、そのぶんところどころテンポが変わったり間が空いたりしてしまっている)。

 

 

ユペン・メイ Yupeng MEI (China 1994-  age: 23)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻 第7番 変ホ長調 BWV876
ショパン:練習曲 ハ長調 Op.10-1
ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調

 

これはなかなか良い。

特にショパンとラフマニノフが鮮やか。

断トツというわけではないが、今日の中では一番良いかも。

 

 

サン・ジッタカーン San JITTAKARN (Thailand 1992-  age: 26)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻 第24番 ロ短調 BWV893
ショパン:練習曲 イ短調 Op.10-2
ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」からの3章

 

まずまず弾けているが、やや表情付けが硬い。

がしがし弾く感じであり、もう少し味わいが欲しい。

 

 

ゲルマン・キトキン German KITKIN (Russia 1994-  age: 23)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第23番 ロ長調 BWV868
ショパン:練習曲 ハ長調 Op.10-7
ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調

 

音にロシアらしい潤いが少し感じられる。

ただラフマニノフなど、先ほどのユペン・メイと比べると細部に少し甘さがある。

 

 

イレイ・ハオ Yilei HAO (China 1996-  age: 21)

 

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻 第24番 ロ短調 BWV893
ショパン:練習曲 ロ短調 Op.25-10
スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第10番 Op.70

 

なかなか良い。

テクニックはそこそこあるし、スクリャービンでは浮遊するような雰囲気もよく出ている。

 

 

そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私が2次審査に進んでほしいと思うのは

 

ジ ヒョン・クヮク Ji Hyang GWAK (Korea 1991-  age: 26)

チンホン・リ Jinhong LI (China 1994-  age: 23)

スーチェン・リ Siqian LI (China 1992-  age: 25)

ユペン・メイ Yupeng MEI (China 1994-  age: 23)

ゲルマン・キトキン German KITKIN (Russia 1994-  age: 23)

イレイ・ハオ Yilei HAO (China 1996-  age: 21)

 

あたりである。

 

 

ところで、1次審査の最終日には、マイボローダがラヴェルの「ラ・ヴァルス」を演奏する。

これは、2015年の浜松国際ピアノコンクールでも1次予選に弾いた、彼の得意曲。

このとき、私はネット配信でこれを聴き、「こんなにすごいピアニストがいるのか」と驚愕したのだった。

彼の弾く「ラ・ヴァルス」は私にとって、クレア・フアンチの弾くショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」、ティファニー・プーンの弾くラヴェルの「ラ・ヴァルス」、ユリア・フィッシャーの弾くメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番、アリーナ・イブラギモヴァの弾くシューベルトの弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」あたりと同様、その演奏家を聴いた最初の機会で早くも一瞬にして惹き込まれた、いわば「一耳惚れ」の演奏である。

今回、2次審査以降であれば生演奏を聴くことができたのだが、「ラ・ヴァルス」は1次審査で弾くようで、私は生で聴くことができない。

それだけが、何とも心残りである。

 

 


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